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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
160/285

159話 距離感

仲良くなった経緯をちゃんと書いておきたいのですが、それは妖界放浪記・長編へ追記しておきます。


そろそろ誕生日も近付いてきました。めでたいのですが、同時に社会人へのカウントダウンが迫ってきます。学生の誕生日はこれが最期となります。寂しい……。

「二人とも、食事を済まして頭を冷やす事を推奨致します。それとマツシタコウスケ、貴方は妲己に食事を運ばなくて宜しいのでしょうか?」

「ヤベェ…すっかり忘れてた!」

「早く行きなさい。さもなくば、あの方はここの者を皆殺しにすると激怒しますので」

俺はご飯を火で温め直し、妲己の元へ急いで持って行った。




幸助が離れた後、誰もが黙り込んだ。

特に雪姫と蚩尤は睨み合いながら食べ合う。空気は最悪そのもので、雰囲気が台無しになっていく。口を割るなら大体が意見の食い違い。まともに口を聞く事も出来ない。

「楽しく食事しませんか?折角作ってくれた料理が不味くなって嫌になってきます」

空気の悪さに不機嫌を見せたのは華名だった。

「申し訳ございませんカナ様。この二人を引き離しますので」

夜叉は頭を下げて謝罪する。しかし、華名はそんな事を求めているわけではない。

「いいえ、そうじゃないんです。会話しないのも可笑しいと思いません?コウスケがいなくなってから空気が悪くなってます。皆んなコミュ障でもあるんですか?」

華名はこの中でも妖界での生活経験が短く、一般的常識や人間界の言葉を多用する。

その為、“コミュ障”という単語はこの場の雪姫達には理解出来ないものだった。

しかし、華名に反応し、興味を持つ者が話しかけてきた。

「ねぇ華名?その“コミュ障”って何かしら?」

「えっ⁉︎知らないんですか‼︎」

当たり前だと思った話に質問されて驚く華名。

興味本位で聞いてきたのは悟美である。

「知らないわ。また幸助君と同じような変な言葉なんでしょ?」

「あー……貴女は世間知らずって感じがしそうです。もしかして、私よりも先に来たとかですか?」

世間知らずなのは華名の方である。

それは、華名が今話しかけている悟美は百の年齢を超えているからである。

華名の予想では40代が普通なのだろう。

「来たわよ。100年前ぐらい以上に」

「えっ……?お婆ちゃん⁉︎」

大変失礼な反応をした。

しかし、これがきっかけになるとは幸助は思わなかった。

「シシシッ!私は貴女より年上。婆ちゃんって呼ぶのも分かるわ」

「100歳でその若々しい肉体からだなんですか⁉︎凄い…なんていい世界なんですか!やっとこの世界の面白みが増えた気がします!」

華名は唐突にこの世界の仕組みに喜びだした。

彼女は強い望みがあり、その感情は常に休まる事なく喜怒哀楽と愛別離苦の感情が巡る。

非常に激しい感情の持ち主であり、子供の容姿をした大人とは思えないぐらいの我儘な性格。

「不思議ね〜。ちなみに貴女は幾つなのかしら?私よりは低いと思うけど」

「25歳ですけど?」

「良いわね。それで子供みたいな容姿でいるなんて意外な退行願望ね。なんで子供になったの?」

悟美が玩具として認識しない相手は珍しい。幸助は強くなったら壊すつもりでいるが、華名に対してはそんな情は一切なかった。

「ちょっと甘えたくてですね。こうなったら生活とか支えてくれるかと思いまして。良いですよ?この幼い体になって夜叉にお世話されるのは」

「ちょっと変わった趣旨趣向ね。お世話されるのが趣味って…シシシッ、ちょっと甘えさせてあげたくなるわね〜」

そう言うと、悟美が自らの食器に乗った炒飯を華名の口へ持っていく。

「え?悟美さん⁉︎」

「あーんってやつよ。子供は大きくならなくちゃだからいっぱい食べるといいわ」

華名は突然の行動に驚くも、すんなり受け入れて口を開ける。

「ん〜‼︎胡椒効いてて美味しいです!味が濃いのが好きなんです」

「褒められると嬉しいわね。貴女の口に合うようで何より。……可愛いわ」

「っっ‼︎ゴホッゴホッ!悟美ちゃん⁉︎」

悟美が素直に「可愛い」と言った途端、食べていた紗夜が咽せる。

「何かしら紗夜?」

「え…悟美ちゃんが人に可愛いって…?」

紗夜からすれば、悟美の言動は衝撃を醸すものだ。

相手を痛ぶり壊す趣味を持つ悟美からは想像出来ない素の要素。

「赤ちゃんとか可愛いと思わないのかしら?アレと一緒よ」

そして、どんどん自分の皿からご飯を口に入れてあげる悟美。

紗夜は華名の羨ましさに嫉妬するが、自分も同じ事をして欲しいと強請る。

「あ、あの!…悟美ちゃん。私も…そ、その…」

「して欲しい?良いわよ、紗夜がして欲しいなら」

「うへへ…悟美ちゃんの口移しがいい…」

思わず欲が出る紗夜。

それを聞き逃さず、華名は紗夜を揶揄う。

「紗夜さんって悟美さんが好きなんですね!ちょっとしてるところ見てみたいので、どうぞ!」

華名は止めず、二人が食べるところをまじまじと見ようとする。

悟美と紗夜の食をガン見して見るものだから、流石の悟美でも少し華名を嫌悪視した。

「やっぱいいわ。妹とやるなんてはしたない。烏天狗が見てるだろうからしないわ」

「……して、くれないんですか?悟美ちゃん」

紗夜は物欲しそうにする。

「しないわよ。人前で羞恥晒すのは構わないけど、紗夜は大事だから出来ないのが本音ね」

「悟美ちゃんになら…」

「いい加減、困らせる発言するなら腕折ってあげようかしら〜?」

「ヒィッ‼︎」

「シシシッ!やっぱり怖がってる紗夜が面白いわ」

二人は結局しなかった。華名は口を膨らませて不満をごねる。

「も〜見たかったです!ねえ夜叉!あの二人に口移しさせるように‼︎」

「無茶はいけませんカナ様。彼女達の尊厳を傷付けてはならないので」

「なんでですか⁉︎する雰囲気だったじゃん!私は悟美さんと紗夜さんの色物が見たいんです!」

「ですのでカナ様?二人には理性がちゃんとあります。無いのは貴女になってしまいます。少し落ち着かれては如何でしょうか?」

自分でも変態な事を言うのに気付いていない華名を宥めるのは至難の業。こうなると、やらせるまで無茶をさせようと駄々をごねる。

なので、ここは応急処置を取らざる得ない。

夜叉は華名の額に軽くキスをする。

すると、華名は撃沈したように意識が混雑する。

「ふぅあ⁉︎」

「フフッ、これで良いですか?」

「あ…はい……」

華名はうっとりするように、何かブツブツ呟き始めたが、暫くは問題は解消された。

「お見苦しいところをお見せしました。何事もなく食べて下さい」

これで一安心。夜叉は全員に対して軽く謝罪をした。


見せられた者は穏やかで居られる筈がなく、雪姫と蚩尤はいつの間にかその場から消えていた。

雪姫にそういう趣味はなく、ただ不快に思っただけ。

蚩尤は悟美に衝撃を受け、食事が喉を通らなかったとか……。

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