第八話……契約と魔法
「契約ってなにをするんだ?」
俺は不思議に思っていることを聞いた。
「お前をわらわの主人として、主従の契約を結ぶぞえ。その代わりに死んだときに魂を貰うぞ!」
「……ぇ? ちょっと待ってくれ!」
なんだこの死神みたいな契約。
……いや悪魔か?
どっちにしても怖い。
「というのは、人間の場合でな。オヌシ人間ではあるまい? 命の炎をかんじないんじゃよ……」
「……ええ。まぁ、魔法で出来た人形みたいなもんだな」
俺は適当に答える。
多分これくらいの方が、この世界の住人には理解がしやすいだろう。
「わかった。魂はとらぬ。まぁ、あとで考えるとするか……。早速契約じゃ!」
「ぇ? ああ、うん」
まあ魂とられないんだったらいいかと思い、差し出された羊皮紙に署名。
どうやらこれで契約完了らしい……。
「名前はカーヴか。わらわはアーデルハイトという。今後とも頼むぞ、ご主人様」
「ご主人様はいらん。魂をとられそうで怖い! カーヴで頼むよ」
「じゃあ、よかろう」
魔女はウフフと妖艶な笑みを浮かべる。
見た目は幼いのに、何故か怖い雰囲気があるんだよなぁ……、こいつ。
まぁ、それはともかく。
俺は新たに魔女のアーデルハイトを従え、旅を再開したのだった。
□□□□□
その晩。
夜を迎え、テントを張った後に薪を燃やす。
「なぁ、聖剣の話しってるか?」
俺は魔女に聞いてみた。
「ああ、知ってるぞよ。魔族側の名称としては、封印の剣というんだろうがな……」
話を聞く限りだが、魔女は俺と同じくらいにしか聖剣について知らなかった。
俺は薪で炙った鮎を魔女に渡す。
「じゃあ、聖剣がどこにあるのかわかるか?」
「いまは分からぬ。きっと魔法封じの衣に包まれているのじゃろう。もし、わかったらすぐに教えてやるぞい」
魔女はそういって、俺の肩にしなだれかかってきた。
「お前との戦いで魔力を使いすぎた……。今は寝かしてたもれ……」
そう言うなり、魔女はスヤスヤと寝息を立てる。
……多分、彼女は魔法を使うと眠くなる体質なのかな?
そう思い、俺もそろそろ休もうかと思った矢先。
俺の【赤外線センサー】に反応があった。
この反応は、人間でも動物でもない。
……ということは、魔物か!?
俺は魔女をゆっくりと寝かすと、素早く身構えた。
「この辺ポコね」
暗がりから出てきたのは、あの謎タヌキだった。
くんくん鼻を鳴らしながら近づいてくる。
どうやら嗅覚でこっちを探してきたらしい。
「あ、こんばんは。おかげで助かったポコ」
「ああ、また会ったな……」
タヌキと話すと、どうやら彼のお母さんは快方に向かったらしい。
……で、そのお礼で旅を共にしてあげると言ってきたのだ。
「僕は役に立つポコ~♪」
「ああ、分かった。では夜の見張り番をしてくれ」
「わかったポコ」
俺はこのタヌキが嫌いじゃなかった。
だからといって役に立つとも思えなかった。
……確か名前をポコといったよな。
そう思いつつ、俺は静かに眠りに落ちていった。
□□□□□
「……う~ん」
俺は夜が白み始めるころに目を覚ます。
魔女はまだ寝ている。
俺は俺の毛布も魔女にかけてやった。
……グゥグゥ。
グゥグゥ。
……げ。
タヌキも寝てやがる。
なんの為の見張り番なのか馬鹿らしくなったが、俺はこのタヌキには期待していなかったのだ。
そう思い、つまらない怒りを鎮める。
……まぁ、隊でも俺が夜の見張りだったしな。
もう、慣れたもんだよ。
なんだか自分の下っ端根性が恨めしい。
「……まぁ、顔でも洗ってくるか」
俺は近くの沢に降り、桶に水をくむ。
そして、顔を洗った後。
近くで虫を採り、それを餌にして魚を釣ったのだった。
三十分後には、鱒やら鮎やらが桶にいっぱいになった。
「ただいま」
と、帰ったときに声を出したが、二人とも寝たままだ。
奴等が起きたのは、俺が釣った魚が焼き上がった頃だった。
……やれやれ、これじゃあ誰がボスだかわからないパーティ―だな。
だが、寝ぼけ眼の二人は可愛く、なんだか保護者のような気分になったのだった。
□□□□□
「お代わりポコ~♪」
「もっと食べたいぞよ!」
二人の食欲は旺盛だった。
これじゃあ俺は、ひな鳥に餌をはこんでくる親鳥じゃねーか。
「はいはい」
俺は獲ってきた魚を次々に焼く。
まぁ、隊でも料理番は、主に下っ端の俺だったのだが……。
「……でな。お主は修業が足らぬ。まずは修行に励め!」
食い意地の張った魔女のいうには俺は修行が足らないらしい。
……って、何が足らないんだ。
そもそも、コイツはもう俺の名前を忘れたのか!?
「……修行というのは魔法のじゃよ! 最低限使えた方が良い」
そうだった。
俺は魔法が使えないことを、昨晩魔女にばらしたのだった。
「ここのタヌキも使えないんじゃないか?」
俺は悔し紛れに言ってみた。
「ポコは魔法を使えるポコ~♪」
タヌキは小さな前足から、マッチの炎のような小さな火球を、ポンと出してみせた。
「……おお、凄い!」
思わず唸った。
このタヌキ、もしかして使えるのでは?
「次はお主の番じゃ!」
魔女は俺の頭を杖でぽこっと叩いた。
コイツ、絶対俺のことをご主人様だと思ってねぇだろ。
というか、普通は手のひらから火球とかでねーよ。
「……まぁ良い。旅をつづけながらに魔法を教えてやるぞよ」
というか、聖剣の情報もないのに、俺はどこへ行くんだろう。
本当にあてのなさそうな旅が続くのであった……。
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