第十八話……退魔師への道
「また会おう、ライアン」
「ああ、達者でやれよカーヴ」
俺はライアンと別れ、貰った退魔の剣を眺める。
この世界で退魔術とは、ゾンビや悪魔などを倒すことのできる能力だ。
ゴブリンやオークなどにはあまり効果がない。
「アーデルハイト、退魔の魔法を教えてくれ」
「嫌じゃ」
「ぇ!?」
俺は困惑した。
この魔女は魔法を教えてくれるんじゃなかったのかい。
「わらわはまがりなりにも魔族じゃぞ! そんな魔族を退治する魔法なぞ知っているわけが無かろう」
「……そっか」
ということは、いわゆる聖職者に教えを乞うべきなのかな?
嫌だなぁ……。
火星の聖職者って、碌な奴がいなかったぞ!
「聖職者様を探すポコ!」
「……ぉ? おう!」
珍しく察しの良いポコの意見を採用し、このあたりでの聖職者を探すのであった。
□□□□□
俺は近くの村で聖職者を尋ねた。
……が、聖職者は町規模でないと赴任しないという。
俺は近くの町まで馬車を飛ばし、聖職者に会うことにしたのだった。
「お邪魔します」
「どうぞこちらへ、この退魔の館になんのご用ですかな?」
町の聖職者の館に入ると、いかにもといった荘厳な雰囲気が伝わってくる。
ちなみに魔女は聖職者が苦手ということで、羊皮紙に描いた魔法陣の中へと逃げ込んでいた。
「退魔の魔法を教えてほしいのですが、……できますか?」
「できますぞ! さればこの教会に10万リーブルお納めくだされ」
「……お? 応」
10万リーブルといえば王国金貨一枚。
一人前の大工さんの月給といった金額であった。
『……やめとけ、奴の方に聖は感じぬ!』
金貨を革袋から取り出そうとすると、頭に魔女からの言葉が伝わってきた。
『奴は偽物の聖職者だ』
……どうしよう?
俺は支払いをモジモジ渋っていると、目の前の聖職者は怒ってしまった。
「冷やかしならば、帰りなされ! しっし」
塩を撒かれるくらいの勢いで追い返された。
「なんで変なことを言うんだよぉ……」
教会から出た俺は、魔法陣から出てきた魔女に文句を言う。
「だって、あ奴には破魔の力を感じぬのだ。金が無駄になるぞ!」
「ふむ」
俺はやるせない気持ちになる。
この世界でも似非聖職者は多いのだろうか?
俺は寂しい気持ちで、町を出ようとした。
「待ちなされ! 我が退魔の秘宝を授けようぞ!」
そこに、変な老齢の物乞いが声をかけてきた。
そもそも、なんで俺が退魔の術を知りたいと判った?
「キヒヒ……、気になるであろう? 気になるであろう?」
……気になる。
確かに気になる。
「気になる。その退魔の秘宝とやらが……」
「……だろうの。オヌシの顔にそう出ておる。いまなら金貨20枚じゃぞ!」
……怪しい。
メチャクソ怪しい。
しかも高い。
だが、意外なことに魔女は賛成してきた。
『その老人、大きな魔力を感じる。胡散臭いが魔法使いと見た。きっと何かを知っておるぞよ』
……そうなのか。
しかし、退魔のスキル如きに金貨20枚か……。
別に退魔の魔法が使えなくてもいいんだけどな。
「金は一瞬の得。学ぶは一生の得じゃぞ!」
「……!?」
この爺。
こっちの考えが読めるのか?
油断はならぬな。
「払うポコ?」
ポコも心配そうな眼差しを向けて来る。
それだけ金貨20枚は大金なのであった。
……が、払おう。
魔女の意見に俺は賭けたのであった。
「20枚払う」
「ありがたや」
俺は金貨を革袋から取り出した。
その金貨を物乞いは確かめると、ついてこいと合図をしてきたのだった。
□□□□□
物乞いの老人についていくこと3時間。
俺は町はずれの荒れた村に来ていた。
「次は治水工事をしてもらうぞ!」
「……ぇ!?」
「いい体をしてるのだ。汗を流すと飯が旨いぞ!」
俺は金貨20枚を無駄にしたくないので、老人に従い、治水の為の石を運んだ。
それは陽が沈むまで行い、俺はくたくたになった。
「……で、退魔の術は教えてくれるのか?」
「……ああ、おしえてやる。約束は破らぬよ」
老人と河原で火を焚き、焼き魚を食らう。
ポコは、やり慣れぬ力仕事でぐっすり眠っていた。
「こっちへこい」
晩飯を食べた後。
老人は村はずれの荒れ地へと俺を誘った。
「……うん?」
俺は手に痺れを感じた。
手のひらに赤い斑点が浮かぶ。
……しまった。
毒だ!!
「……くっ、誰が!?」
「俺ダヨ! 俺!」
先を行く老人の声色が変わる。
それは地獄の底から響くような、おぞましい音色であった。
老人の体が崩れ、半透明な幽体が飛び出る。
クリフォード家の家宰トムじいさんの本の挿絵で見たことがある。
その姿は、上級のアンデッドモンスターであるデッドリーレイスであった。
「……キヒヒ。誰ガワレヲ滅ボス秘術ナゾ教エヨウカ! ココデ志ゴト滅スルガイイ!」
「まずい」
不味いというのは俺じゃない。
俺は少々の毒では死なない。
ポコの顔色がヤバかったのだ。
「出でよ、我が僕よ!」
大急ぎで魔女を呼び出す。
きっと相手が退魔師でないなら文句はないだろう。
「主殿、話は聞いておったぞよ」
「ポコの解毒を頼む。化け物は俺が担当する!」
「まかせた!」
アーデルハイトは薬に詳しい。
彼女にポコを託せば安心だろう。
……問題はこの魔物だ。
それは、今までで最大の魔力を感じる、紛れもない強敵であった。
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