第十五話……沼地の洞窟
俺たちは一路、畑の畔を進み、領主様の館へ。
木が生い茂る小道を急いだ。
ここの領主さまはアギー男爵という方だった。
「頼もうポコ!」
ポコが元気よく扉を叩く。
そうして出てきたのは、きっとこの男爵家の家宰であろう老人だった。
「どうなさいましたかな?」
「いえ、傭兵を募集していると聞きまして……」
俺たちはこの年長者に、安くていいから募兵に応じる旨を伝えた。
「……あ、ありがとうございます。大変助かりますじゃ」
「例の洞窟には何が出るんですか?」
「リザードマンがでるんですじゃ。どうやら中に水場があるらしく……」
リザードマン。
小さな亜龍種であるため、見た目より強力とされる。
硬い鱗に覆われ、水辺を好む。
……俺が知っているのはこれくらいだ。
「……まぁ、何でもいいや。で、次の討伐は何時なんだい?」
「丁度明日の朝になりますじゃ。よろしければ、今晩はゆっくり休んでくだされ」
その晩、俺たちは領主様の館で歓待された。
羊の肉に温かいトマトのスープ。
それは酸味が効いていてとても旨かった。
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翌日。
出発の朝を迎える。
総戦力は、館の衛士2名と村人4名と俺たちだ。
絶対に無理だろ?
こんな少数で……。
しかも、村人たちはろくな装備を持っていなかった。
「……いや待て、これじゃあ死にに行くようなもんだろ? 道案内さえしてくれれば、俺たちだけでいってくるぜ」
俺は家宰の老人に提案してみた。
「じゃあ、有難く今回は御頼み申しますかの? 道案内はこのジョーにお任せあれ!」
どうやら老人の名前はジョーらしい。
俺達に感謝する村人を村へと返し、俺たちは荷馬車に荷物を詰め込む。
「……では、行きますかの!」
「オラたちの分もたのむぞ!」
「敵を沢山狩ってきてくれ!」
沿道の畑仕事をする人達から温かい応援の声を貰う。
俺たちはその後も街道を進み、耕作地帯を抜け、森の中へと獣道を進んだのだった。
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森の中で休息。
夜を迎えた。
空にはフクロウが舞う。
「いや~、あんたがたが来てくださって助かりますわ。正直、村人を動員すると農作業が止まりますからな……」
「それに他所者なら死んでも構わないと?」
俺は意地悪く聞いてみた。
「あはは、厳しいですのぅ。でもその通りですじゃ。誰も領内の者には死んでほしくないですからの……」
「……しかし、それならお金を積んで冒険者でも雇えばいいだろ? 商人から借金をしてでも」
「あはは、ウチみたいな貧乏な領地ですと、金の貸し手もいませんじゃ」
悪い事言ったかな?
貴族様でも小さいとこは大変なんだなぁ。
「まぁ、要らないことを言ってすまねぇ。気分直しに、これでも食べてくださいよ」
俺は、趣味でこしらえている干し魚をジョーに渡した。
ジョーの皺は深い。
これまで沢山の苦労をしてきたのであろう。
金は貰えずとも、彼等の役に立つことは、俺の人生で貴重な宝になりえる気がした……。
俺たちはそこから1日ほど森を進み、3日目には目標の洞窟の前まで来たのであった。
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洞窟の入り口には、小さな湿地帯が拡がる。
おそらく、洞窟の中も水浸しのようであった。
「爺さん、ここへは何回来たんだ?」
「二回目ですじゃ!」
……二回目か。
案外、経験はないんだな。
俺たちは湿地帯の手前に馬車を停め、そこからは歩いていくことにした。
「爺さんはここで待っていてくれ。あとは俺達だけで行ってみる1」
「……あ、ありがたい。討伐できなくとも、次回の為に、洞窟の中の地図を書いてもらえると助かりますじゃ」
「わかった」
俺はジョーから羊皮紙とペンを預かる。
羊皮紙は書きかけの地図が書いてあった。
……きっと、これが前回の成果なのだろう。
羊皮紙には、うっすらと汗と血がにじんでいる。
「行くポコ~」
「いくぞよ~」
2人はえらく元気がいい。
爺さんの前では、無口だったのに……。
こいつら、案外人見知りなのかもしれないな。
「くそっ」
元気よく洞窟に入ったはいいが、意外なことに魔物はでない。
さらに、俺達は泥濘に足をとられ、霧も深く、前進するのさえ難儀な有様だった。
「早く歩くのじゃ!」
魔女のアーデルハイトだけは、沼地の上をすいすいと歩くことができる。
きっと魔法の力なのだろう。
俺とポコは泥濘に腰までつかって進んでいた。
そうしてしばらく進み、硬い地面のところまで進むと、魔物様のお出ましであった。
予想通りリザードマンが2匹。
奴等は、手には槍と盾を持っていた。
「……ギギギ、貴様等ハ何シニ来タ?」
「お前たちを倒しにきたポコ~」
……くそっ。
また良いセリフをタヌキに奪われた。
「デハ、生キテハ返サンゾ!」
魔物がそうすごんでくると、ポコは素早く俺の後ろに隠れた。
……それって、ずるくね?
「迸れ! サンダーボルト!」
先制の一撃は、魔女の電撃魔法であった。
二匹の魔物にそこそこの打撃を与える。
「シャラクセェ!」
魔物たちは距離を開けた戦いが不利と悟ると、魔女めがけて一気に走って距離を詰めてきた。
……そうはいくか。
俺は一匹目の魔物の顎に拳をめり込ませ、二匹目の腹に蹴りをお見舞いした。
「ギャー」
二匹の魔物が悶絶する。
倒れたところを特殊鋼のナイフで止めを刺した。
俺は、死んだ魔物の腹を裂き、魔石を取り出し、食べてみる。
【システム】……水の魔法に耐性が付きました。
……む、魔物の種類によって、食べる魔石の効果は違ってくるようだ。
「第二陣、くるぞよ!」
深い霧の中、魔女の警戒の声が響く。
相手の数は、……5、6匹?
……いやもっといる。
目を凝らして数えると、敵は総勢8匹という陣容であった。
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