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第十五話……沼地の洞窟

 俺たちは一路、畑の畔を進み、領主様の館へ。

 木が生い茂る小道を急いだ。

 ここの領主さまはアギー男爵という方だった。


「頼もうポコ!」


 ポコが元気よく扉を叩く。

 そうして出てきたのは、きっとこの男爵家の家宰であろう老人だった。


「どうなさいましたかな?」


「いえ、傭兵を募集していると聞きまして……」


 俺たちはこの年長者に、安くていいから募兵に応じる旨を伝えた。 



「……あ、ありがとうございます。大変助かりますじゃ」


「例の洞窟には何が出るんですか?」


「リザードマンがでるんですじゃ。どうやら中に水場があるらしく……」


 リザードマン。

 小さな亜龍種であるため、見た目より強力とされる。

 硬い鱗に覆われ、水辺を好む。

 ……俺が知っているのはこれくらいだ。



「……まぁ、何でもいいや。で、次の討伐は何時なんだい?」


「丁度明日の朝になりますじゃ。よろしければ、今晩はゆっくり休んでくだされ」


 その晩、俺たちは領主様の館で歓待された。

 羊の肉に温かいトマトのスープ。

 それは酸味が効いていてとても旨かった。




□□□□□


 翌日。

 出発の朝を迎える。


 総戦力は、館の衛士2名と村人4名と俺たちだ。

 絶対に無理だろ?

 こんな少数で……。

 しかも、村人たちはろくな装備を持っていなかった。



「……いや待て、これじゃあ死にに行くようなもんだろ? 道案内さえしてくれれば、俺たちだけでいってくるぜ」


 俺は家宰の老人に提案してみた。


「じゃあ、有難く今回は御頼み申しますかの? 道案内はこのジョーにお任せあれ!」


 どうやら老人の名前はジョーらしい。

 俺達に感謝する村人を村へと返し、俺たちは荷馬車に荷物を詰め込む。



「……では、行きますかの!」


「オラたちの分もたのむぞ!」

「敵を沢山狩ってきてくれ!」


 沿道の畑仕事をする人達から温かい応援の声を貰う。

 俺たちはその後も街道を進み、耕作地帯を抜け、森の中へと獣道を進んだのだった。




□□□□□


 森の中で休息。

 夜を迎えた。

 空にはフクロウが舞う。


「いや~、あんたがたが来てくださって助かりますわ。正直、村人を動員すると農作業が止まりますからな……」


「それに他所者なら死んでも構わないと?」


 俺は意地悪く聞いてみた。


「あはは、厳しいですのぅ。でもその通りですじゃ。誰も領内の者には死んでほしくないですからの……」


「……しかし、それならお金を積んで冒険者でも雇えばいいだろ? 商人から借金をしてでも」


「あはは、ウチみたいな貧乏な領地ですと、金の貸し手もいませんじゃ」


 悪い事言ったかな?

 貴族様でも小さいとこは大変なんだなぁ。



「まぁ、要らないことを言ってすまねぇ。気分直しに、これでも食べてくださいよ」


 俺は、趣味でこしらえている干し魚をジョーに渡した。

 ジョーの皺は深い。

 これまで沢山の苦労をしてきたのであろう。


 金は貰えずとも、彼等の役に立つことは、俺の人生で貴重な宝になりえる気がした……。


 俺たちはそこから1日ほど森を進み、3日目には目標の洞窟の前まで来たのであった。




□□□□□


 洞窟の入り口には、小さな湿地帯が拡がる。

 おそらく、洞窟の中も水浸しのようであった。


「爺さん、ここへは何回来たんだ?」


「二回目ですじゃ!」


 ……二回目か。

 案外、経験はないんだな。


 俺たちは湿地帯の手前に馬車を停め、そこからは歩いていくことにした。



「爺さんはここで待っていてくれ。あとは俺達だけで行ってみる1」


「……あ、ありがたい。討伐できなくとも、次回の為に、洞窟の中の地図を書いてもらえると助かりますじゃ」


「わかった」


 俺はジョーから羊皮紙とペンを預かる。

 羊皮紙は書きかけの地図が書いてあった。


 ……きっと、これが前回の成果なのだろう。

 羊皮紙には、うっすらと汗と血がにじんでいる。



「行くポコ~」

「いくぞよ~」


 2人はえらく元気がいい。

 爺さんの前では、無口だったのに……。

 こいつら、案外人見知りなのかもしれないな。



「くそっ」


 元気よく洞窟に入ったはいいが、意外なことに魔物はでない。

 さらに、俺達は泥濘に足をとられ、霧も深く、前進するのさえ難儀な有様だった。


「早く歩くのじゃ!」


 魔女のアーデルハイトだけは、沼地の上をすいすいと歩くことができる。

 きっと魔法の力なのだろう。

 俺とポコは泥濘に腰までつかって進んでいた。


 そうしてしばらく進み、硬い地面のところまで進むと、魔物様のお出ましであった。

 予想通りリザードマンが2匹。

 奴等は、手には槍と盾を持っていた。



「……ギギギ、貴様等ハ何シニ来タ?」


「お前たちを倒しにきたポコ~」


 ……くそっ。

 また良いセリフをタヌキに奪われた。


「デハ、生キテハ返サンゾ!」


 魔物がそうすごんでくると、ポコは素早く俺の後ろに隠れた。

 ……それって、ずるくね?


「迸れ! サンダーボルト!」


 先制の一撃は、魔女の電撃魔法であった。

 二匹の魔物にそこそこの打撃を与える。



「シャラクセェ!」


 魔物たちは距離を開けた戦いが不利と悟ると、魔女めがけて一気に走って距離を詰めてきた。


 ……そうはいくか。

 俺は一匹目の魔物の顎に拳をめり込ませ、二匹目の腹に蹴りをお見舞いした。


「ギャー」


 二匹の魔物が悶絶する。

 倒れたところを特殊鋼のナイフで止めを刺した。


 俺は、死んだ魔物の腹を裂き、魔石を取り出し、食べてみる。



【システム】……水の魔法に耐性が付きました。


 ……む、魔物の種類によって、食べる魔石の効果は違ってくるようだ。



「第二陣、くるぞよ!」


 深い霧の中、魔女の警戒の声が響く。


 相手の数は、……5、6匹?

 ……いやもっといる。

 目を凝らして数えると、敵は総勢8匹という陣容であった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第十五話……沼地の洞窟 まで読みました。 「鹿肉を3人前ポコ!」 「あいよ」  ……ポコが勝手に頼みやがった。  ↑この流れが良かったです。( *´艸`) 魔女のアーデルハイトだけは、…
[一言] ポコはいいキャラですね。
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