第十四話……さびれた村
翌朝。
俺はライアンに事の次第を告げ、今朝ナンシーから預かった宝剣を渡す。
魔女の鑑定によると、件の聖剣でない可能性は低かったのだが。
「じゃあ、俺が宝剣をクリフォード伯爵に渡せばいいんだな?」
「ああ、頼んだ。その宝剣が件の聖剣だった場合には俺の旅も終わりだ。とは多分ならないと思うけどな……」
「あんたにとってはどっちがいいんだろうな?」
ライアンは小さく笑う。
「あとライアン、この手紙を持って行ってくれ」
「ああ、確かに預かった」
俺はライアンに封をした手紙を託けた。
それはクリフォード伯爵にライアンの仕官を推挙するものだった。
彼の武勇は確かに陰りを見せていたが、その経験はきっと指揮官として生きるだろうと書いておいたのだ。
「じゃあまたな」
「おう、またな」
俺はライアンと別れた。
気楽な旅に付き従うは魔女のアーデルハイトとタヌキのポコ。
俺たちはまたのんびりと道を進むのであった。
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それから3日の行程が過ぎたころ。
俺たちは賑やかな町についていた。
町の名は知らない。
旅の疲れをとるように、比較的大きめの料理屋に入る。
「さぁ、何をたべようか?」
壁に掲げられたメニューを見ると、いろいろなものが記されていた。
「お肉食べようポコ」
「わらわもお肉が食べたいぞよ」
皆、肉が良いようだ。
「親父、今日は何の肉がある?」
俺は料理屋の中年の男に聞いてみた。
「今日は猪と鹿の肉がありますぜ!」
……鹿肉は良いが、少し高いんだよなぁ。
と考えていると。
「鹿肉を3人前ポコ!」
「あいよ」
……ポコが勝手に頼みやがった。
「なんでお前が勝手に頼むんだよ?」
「だってこの前、お金がはいったポコ。ケガ人がケチケチしたらいかんポコ」
「そうじゃそうじゃ」
くそ、魔女までもタヌキに味方しやがった。
しかし、俺はケガが酷い。
沢山食べないと回復しないのも道理であった。
「おう、親父。あとエールもくれ。それからポテトの盛り合わせも!」
「あいよ」
暫くすると鹿肉のロースがやってきた。
豪華なことに、たっぷりとワインとバターのソースがかかってやがる。
壁の値段表を見ると、一人あたり1万リーブル!?
……マヂカ!?
一万リーブルといえば、一人前の大工の給料3日分である。
銀貨に直せば二枚といったところであった。
「おいしいポコ」
「美味しいですわ」
2人ともご満悦だ。
当然ながら、味には俺も満足だ。
……だが、値段がな。
へっ、どうせケチな俺は出世できませんよーだ。
それからも俺たちは追加で注文。
ひたすら食べまくり、ビックリするようなお勘定を支払ったのであった。
その晩は宿屋に泊まり、久々にフカフカの寝具で寝た。
最近は野宿ばかりで、背中が痛かったのだ。
ちなみに、朝起きたら毛布三人分を魔女が独占しており、俺は可愛そうにタヌキを布団に寝ていた。
□□□□□
「お若いの、この先を南に進まれるのですかな?」
宿に代金を払い、外に出ようとすると、宿屋の親父に止められた。
「ああ、そうだが」
「こっから南は魔物が住む森がある。悪い事言わん。引き返して遠回りなされ」
「ん~、分かった」
俺は遠回りする気はさらさらない。
だが、親父の優しさを無下にするわけにもいかないので、一旦北側から廻って、南へと進路をとったのであった。
「魔物怖いポコ」
「そうじゃそうじゃ」
タヌキと魔女がブツブツ言う。
……おい。
お前らも魔物の親戚みたいなものじゃねーか。
暫く進むと狼群れに遭遇。
「ガルルルル」
すぐさま、戦闘を歩いていたポコが俺の足の後ろに隠れる。
群れは皆痩せていた。
餌が無いのだろうか?
確かに普通の旅人には危険な道のりかもしれない。
「出でよ!ファイアーボール」
魔女が大きな火球魔法を顕現。
狼の群れを追い払った。
「こわかったポコ」
……ぇー、お前は我がパーティーの番犬役じゃねーのか?
役に立たないタヌキだなぁ。
それから進むこと二日。
途中、ゴブリンとの遭遇などはあったが、比較的安全な旅程で小さな村についた。
畑はあれており、木々に果実も少ない。
飼われている家畜も痩せ、ひもじさと貧しさを顕著に現したような村だった。
「こんにちは、この村に宿屋はありますか?」
畑を耕すおじいさんに声を掛ける。
「ああ、あっちにあるぞ」
村の中を歩くと、男も女も村人が総じて痩せている。
子供もひもじそうで、老人に至っては見るに堪えない惨状であった。
とても栄養状態が悪いようであった。
「じゃまするぜ!」
俺たちはさびれた宿屋に入った。
「いらっしゃいませ」
壁にかかった料理メニューを見ると、マメのスープと黒パンしかねぇ。
三人で目を合わして、他の宿が良いと判断。
しかし、聞くところによると、この村にはここ一件だけだねと確認し、断念。
仕方なく今夜の宿をこの店に決めた。
カビも生えないくらい硬い黒パンをかじり、薄い豆スープを啜る。
「なんでこの村はこんなに貧しいんだ?」
俺は宿屋の親父にそうと問うた。
「いやあ、今年は不作でしてな。それにもまして若い衆が、村の外れにあるご領主様の館に、兵隊としてとられとるんですじゃ」
「なんかあるのか?」
宿屋の主人は近くにあった椅子に腰かけ話を続けた。
「あれは3年前になりますな。この村のはずれに地下洞窟がみつかったんでさ。そこへ探索に向かったのですが、どうやらそこは魔物の巣だったようで、月に一回は討伐軍をだすようになっているんですよ」
「まだ退治出来ねぇのか?」
「ええ、被害ばかりでこれといった戦果が出てない様です」
「ご領主さまは傭兵とかに興味はないのかな?」
俺は分かりやすく親父に打診してみる。
「それはおありでしょうけど、あまりお金は出せないでしょうよ」
……金にならないのか。
う~ん。
となやんでいると。
「傭兵やるポコ!」
「やってやるじょ」
ポコとアーデルハイトはやる気だ。
……偉いねぇ。
「「この伝説の勇者であるカーヴが!」」
えー、結局、やるのは俺かよ?
てか、勇者じゃないちゅーとるやん。
ぷんぷん。
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