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第十三話……魔法使いのナンシー

 【システム】……緊急離脱!

 短距離空間の跳躍を開始します!


「ぐはっ!」


 補助脳が自動で空間跳躍を実行してくれて、敵の大魔法の直撃は躱した。

 だか、魔法が左半身を掠ってしまったがために、左腕は千切れ飛んでしまった。


 左の肩関節から大量の出血。

 痺れ上がるような激痛と、低血圧による眩暈がする。


 ……この空間跳躍は一か月に一回しか使えない。

 次ピンチになったら即アウトである。


 だが空間跳躍の瞬間移動地点は、相手の丁度背後。

 俺は残った右腕で、とっさに相手の首を掴んでいた。

 そして、魔法使いの首を釣り上げ、相手の足は地面から離れていく。



「……くっ、離せ!」


 負傷具合は明らかに俺の方が不利だった。

 しかし、俺は相手の魔法使いの鍛えていないだろう首筋に爪を立てる。

 そうして相手の頸椎に、短時間だけ高電圧を加えた。


「……ぎゃ」


 小さな悲鳴と共に、魔法使いは失神。

 ぐったりとその度倒れた。



「勝者、カーヴ!」


 審判が高らかに俺の勝ちを宣言する。

 ……だが、観客席から聞こえたのは悲鳴だった。



「あいつの血は真っ青だぞ!」

「あのカーヴってやつは人間じゃねぇ。きっと魔物だ!」


「さっさと殺しちまえ!」

「ひっこめカーヴ」


 相手は前回優勝した魔法使い。

 その人気は確固としたものだった。


 半面、俺に賭けたやつはすくねぇ。

 その場の俺は完全な悪役だった。


 観客席から俺に、罵声と石が次々に飛んでくる。



「……さてと」


 俺は左肩を止血。

 地面に転がっていた左腕を拾い上げた。

 身に着けていた鎖帷子もボロボロ。

 使っていた魔法銀の剣も、刀身が溶けて使い物にならなくなっていた。


 ……てか、決勝は明日だけど、こんな状態だったら絶対に負けるぞ。

 俺は観客席のポコに目配せをして、選手用の控室に戻ったのだった。



「疲れたなぁ」


 控室で待っていると、窓からタヌキのポコが入って来る。

 試合が終わるまで、他者とは交わりを持てないのがここのルールだ。

 何故なら賭けのイカサマ防止の為である。


「ボロボロぽこね~」


「ああ」


 ポコがなけなしの魔力で左腕に回復魔法を掛けてくれる。

 とりあえず、左腕はワイヤーで縫い、肩に縛り付けた。

 あとは自動修復機能の作動を待つばかりである。


 ……だが、どう考えたって、明日の決勝には修復が間に合わない。

 これはどうしようもない事実だった。



「……ポコ、ライアンには明日は賭けるなと伝えてくれ。勝つ見込みがない!」


「わかったポコ」


 ポコは魔法力を費やすと、再び窓から外に出ていったのだった。




□□□□□


 その晩。

 俺は夕食をとった後。

 簡易ベッドに横になっていた。


 傷口が腫れ、高熱が出る。

 うなされて起きると、びっしょりと汗をかいていたのだった。



 そんな時。


 コンコン。

 ドアをノックする音が聞こえた。


「誰だ!?」


「……失礼する」


 入ってきたのは昼間の対戦相手、ナンシーだった。

 昼間と同じく、ビキニアーマーにマントという出で立ちだった。


 ……暗殺か!?

 この状態で戦えば、俺に百に一つの勝ち目もない。

 俺は枕もとの特殊鋼の短剣に手をやった。



「私は害を与えに来たのではない。話し合いに来たのだ」


 こっちの殺気を気取り、相手は少し柔和な表情を浮かべた。


「……なんのようだ。俺は明日も試合をしなくちゃならないんだが?」


 俺は油断なく相手の様子を窺った。

 相手は、テーブルにある椅子に座ると、ドサッと革袋をテーブルの上に置いた。


 俺はゆっくりと皮袋の中を覗く。

 中身は金貨と宝石だった。


「2500万リーブルあります。是非、明日の試合を辞退してください」


 ……ぇ?

 辞退だって?


「……そ、そんなことをしなくても、明日の俺は満足に戦えないんだぞ!?」


 訳が分からなかった。

 俺が元気ならイカサマを持ち込む理由は分かる。

 だが、今の俺は半死半生だ。

 予選を突破した奴なら、なんなく倒されるだろう。



「実は、明日の決勝におでましになるのは、ラルゴ公爵のご子息様なのです。本来なら私が決勝で負けて差し上げる予定だったのですが。それを貴方が狂わせてしまったのです」


「……へ?」


「ラルゴ公爵のご子息様は病弱なお方で、戦いや武術を好みません。よって、今の貴方であっても戦いにならないのです」


「……ほぉ」


 なんだかおもしろい話だ。

 話をよく聞いてみると、今回、侯爵様のご子息が出るのは一部の支配階級の人たちには共有されていた情報だったらしい。

 あちこち買収工作もされていたようだ。


 ……まぁ、火星の闘技場も不正が横行していたしなぁ。

 つまりは、どこも一緒だってことだ。



「……ということは、今回は公爵のご子息の名声を高めるための大会であったと?」


「はい。ですから、優勝商品の宝剣も、カーヴ殿に差し上げるようにとの、公爵のお言葉を頂いております」


「ふ、む……」


 これって案外良い話なんじゃないだろうか?

 どっちみちライアンには、ポコを連絡に出したしね。


 俺だってこのお金を貰えるに越したことはない。

 2500万リーブルって言えば、お城勤めの衛士さんの給料の約20年分だ。

 どう考えたって、悪くない金額だと思う。



「大体の話は分かった。俺としてはもう一つの条件が欲しいところだが……」


「なんでしょう?」


 ナンシーは難題が出て来るのではないかと身構えた。



「ナンシー、俺はお前の体が欲しい……」


「……えっ?」


「嫌か?」


 俺は照れ隠しに頭をかく。


「私、強い人。大好きよ……」


 俺はビキニアーマーを纏った魔法使いを、簡易ベッドへと強引に誘ったのだった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第十三話……魔法使いのナンシー まで読みました。 カーヴさんの戦う姿が丁寧に描かれていてかっこいいと思いました! (*゜∀゜人゜∀゜*)♪
[一言] うおおおおおおおおお!!!!!!
[一言] 色っぽい話になってきました。 怪我してるのに元気ですね。
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