第十二話……ラルゴの町~本選~
翌朝。
今日もスタジアムの客席は満員だ。
……暇人どもめ。
俺はちょっとやさぐれてみる。
「142番、カーヴ!」
「いけ~」
「やっちまえ~」
俺は観客めがけて手を振る。
眼に入ったオッズ表を見ると、俺の優勝倍率は62.8倍。
悔しいが、俺は明らかに大穴のようだった。
「……対するは、86番、ゴードン!」
「いいぞ!」
「ゴードンやっちまえ!」
明らかに相手の方が人気だ。
相手は、高価な全身金属鎧を着た大男だった。
「試合開始!」
試合開始の銅鑼を聞くも、相手は突進してこない。
今までの動物たちとは一味違うようだった。
「小僧! こないなら此方から行くぞ!」
大男は大音声を上げてゆっくりと近づいてくる。
相手の獲物は、巨大なウォーハンマー。
殴られたらぺしゃんこになりそうな大きな業物だった。
「どりゃぁ~」
大男はハンマーを振り上げ、こちらの頭めがけて振り下ろしてくる。
――ガッ
「なんだとぉ!?」
俺は示威行為の為に、素手の左手一本でハンマーを受け止めて見せた。
しかし、これが裏目に出た。
こちらの剣が魔法銀であるように、相手のハンマーには電撃魔法が付与されていたのだ。
左手に高圧電流のようなものが走り、人口筋繊維が痙攣。
握力が急低下していく。
……かっこつけすぎたか。
無理をした分、強化靭帯がギシギシと悲鳴を上げる。
さらなる加圧で両足の足の裏が地面に埋まりそうになる。
「しゃらくせぇ~」
しかし、大男は怒っているようだ。
更に二撃、三劇と加えてくるも、今度は魔法銀の剣で受け流してみせた。
魔法銀の剣は電撃魔法を無効化。
とても頼りになる剣だった。
「いいぞ~、カーヴ!」
「なにやってんだ、ゴードン!」
大男は更に意地になって攻撃してくるが、そのすべてを払いのける。
そうすると、相手は大きくて重い武具の分だけ、息が上がっていく。
「……はぁはぁはぁ」
「命は獲らん、降参しろ!」
「誰がするもんか!」
降伏勧告をするものの、願う返答は帰ってこない。
もう俺は電撃の痙攣から復活している。
俺は動きの止まった大男の足の甲を、剣先で地面ごと思い切り突き刺してやった。
「ぎゃああああ!」
足の甲まで鉄に覆われていたが、そんなことを介さず、魔法銀の剣は貫いてくれた。
動けない大男の鮮血が、地面を真っ赤に染めていく。
「それまで!」
審判が、大男の試合続行不能と判定。
俺の勝ちが決まった。
「貴様、何をやっているんだ!」
試合場で蹲るゴードンに、文句を言う身なりのいい男。
どうやらスポンサーらしい。
だいの大男がションボリしている。
……なんだか、その姿を見て、少し可哀そうな気もするのであった。
俺はこの後、本戦の二戦目、三戦目を苦戦もあったが、なんとか勝利。
満を持して、準決勝を迎えた。
準決勝まで進むと商品が出るらしい。
きっと、ここで負けてもライアンは怒らないだろう……。
□□□□□
「142番、カーヴ!」
俺は観衆の声に応え、闘技場の真ん中まで出る。
しかし、ここまでの戦いで、いくらか負傷しており、チェインメイルの間から血が滲みでていた。
「対するは、2番。ナンシー!」
「ナンシー、ナンシー!」
「いいぞ、ナンシー!」
声援の量は1対9といったところ、相手の方が絶対的に人気な美人の闘士だった。
「気を付けてポコ。相手は前回の優勝者ポコ」
ポコが最前列でアドバイスをくれた。
道理で相手が人気な訳だ。
俺への声援は、どうやら身内以外は、大穴狙いの奴だけと見える。
自慢げに長い緑色の髪をかき上げる相手の武装は、肌を隠す部分が少ないビキニアーマーに真っ赤なマント。
……正直、そんなもんで体を守れるんですか、といいたくなる。
「試合開始!」
相手はシード選手なのだろうか?
全く負傷の気配がない。
……これは、明らかに長期戦は不利と考えよう。
俺は先手必勝とばかりに、魔法銀のロングソードで右側から相手の左胴を狙った。
――ヂン。
変な音がして、剣が弾かれる。
……くそ。
魔法結界か!?
打撃の衝撃で剣を握った手が痺れる。
相手はニヤッと笑って距離をとってくる。
その移動の仕方も空中浮揚して行う。
きっと、格好の時点で見当をつけるべきだったのだ。
相手は明らかに魔法使いだった。
……だけど、やっぱりなんか狡くない?
「いけ! ファイアボルト!」
相手は短い発声で、バレーボール大ほどの大きさの魔法の火球を錬成。
続け様に、こちらへ三連続で飛ばしてきた。
「……そのなもの、躱せば済むまでよ!」
俺は横に飛びのき、火球を避けた。
……、はずだったが、火球はUターンして追いかけて来る。
「……な、馬鹿な!?」
【システム】……電磁障壁!
俺はとっさにバリアーを張り、辛くも窮地を脱する。
火球がはじけ飛び、ぶすぶすと黒煙が上がる。
俺がバリアーを解き、煙を払って視野を確保した途端。
目の前には相手がいた。
……シマッタ!
謀られた。
前の火球は此方の視界を妨げるだけのもの。
本命は一気に距離を詰めての、これだったのだ。
時間にして約0.02秒。
極度の緊張からか時間が流れるのがゆっくり感じる。
俺を馬鹿にするように嗤う相手の顔。
そして目の前に錬成される魔法陣。
【システム】……緊急事態!
敵対生物から高エネルギー反応!
至急退避せよ!
とっさに補助脳も緊急事態を告げてくる。
だが、この至近距離だ。
躱すのには時間が無さすぎる。
「消し飛べ! 大魔法フレアサンダー!」
相手の短い詠唱ともに、俺の目の前が、高エネルギーによる眩い光に覆われたのだった。
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