第十話……武器屋とライアン
「いらっしゃい」
俺たちは武器屋に案内される。
そこは、少し不愛想な親父がやっている店だった。
いろいろな武器や防具が展示されている大きな店だ。
武器が好きな俺にとっても、目の補用となるような豪華な品揃えだった。
「フルフェイスの兜かぁ~、いいなぁ」
とりあえず俺は、グレートヘルムを手に取る。
これは頭と顔全体を覆ってくれる兜だった。
これぞ騎士、といった装備である。
他にもジロジロと見回す。
しかし、魔女とポコは興味がないのか暇そうだ。
「旦那、お勧めの剣とかないかい?」
ライアンが店の親父に聞く。
彼と親父は旧知の仲のようであった。
「いまのお勧めはこれかのぉ~」
親父が取り出したのは、鈍く銀色に光るロングソードだった。
鞘にもきめ細かい細工があり、貴重な品であることが一目でわかる。
「……お、どれどれ」
俺はライアンからロングソードを受け取ると、早速ひん曲げようとしてみた。
……ぬ。
曲がらない。
それを見た親父が笑う。
「あはは、その剣は魔法銀で作られているんだ。どんな力自慢でも曲げることは出来んよ」
……そうなんだ。
俺、なんか少しカッコ悪いね。
「へぇ~、魔法銀という金属があるのか? 知らなかったな」
「……まぁ、古代遺跡から発掘された品なんだ。今の技術ではとうてい作れんよ」
武器屋の親父の話を聞いてみると、この世界には遥か昔、魔法文明が栄えていたらしい。
そのころの遺産が、たまに洞窟などで発掘されるらしい。
そのお宝目当てに、冒険者が洞窟に通ったりするそうだった。
「あんたも洞窟に行ってみてはどうかね? 腕に自信があるんだろう?」
「洞窟かぁ、その前にやることがあるしなぁ」
「何をするんだい?」
「こいつに連れられて、闘技場に出るんだ」
「闘技場だって!?」
親父の眼が突如輝きだす。
「あんたそんなに強いのか?」
「……ぇ?」
……そんなに強い?
弱くもないかも知れんが、強いという自覚もあまりないんだが。
「あんた知らんのか? 闘技場で予選落ちすると奴隷にされるんだぞ!」
「ぇ~!?」
俺は慌ててライアンの方を向く。
奴は『言ってなかったっけ?』みたいな感じで頭をかく。
「……いや、カーヴ。お前なら決勝いけるって!」
ライアン自身が出ない理由が分かった。
……そりゃ、武器も買ってくれるわけだ。
投資家の鏡みたいなリスクヘッジの巧さだな。
「じゃあ、ライアンこれを買ってくれ!」
「……おう?」
俺は遠慮なく魔法銀のロングソードを買ってもらう。
「他にも、これも欲しいかな?」
「毎度あり~♪」
「……お、俺を破産させるなよ?」
ライアンの心配をよそに、おれは楽しくショッピングを始めた。
チェインメイルにスモールシールド。
ナイフにハンマー、エストックなどを買ってみた。
流石に、魔法銀のロングソードほどは他の品は高くなかったが、ほどほどの値段はした。
ライアンは渋々支払いに応じる。
「……お、お前、絶対に闘技場で勝てよな!」
「ああ、任せろって!」
何しろ負けたら奴隷行きだ。
まさか、わざと負けるはずがないのだ……。
「今後ともごひいきに~♪」
満面の親父の笑み。
俺は魔女とポコにも少し装備を買ってやった。
これからの冒険にあるていど必要だろうとの目算だったのだ。
購入した装備品をライアンの馬車に積み込み、俺たちは闘技場のある大きな町へと出発したのだった。
□□□□□
何日目かの夜。
俺たちは馬を休め、野営をしていた。
既に魔女とポコは休み、焚火に当たるのはライアンと俺だけだった。
「……なぁ、ライアン。お前なんで自分で闘技場に出ない? 俺の見た感じあんたは強いぜ」
ライアンには、沢山の古傷が目立つ。
それは古参兵特有のものだったのだ。
他を騙せても、俺の眼は騙せん。
「あはは、これを見てもそう言えるかな?」
彼は顔に手をやり、義眼を取り出した。
「俺はこの通り片目なんだ。もう片方の眼もあんまり見えねぇ……。ざまぁねぇよな……」
「そんなことはねえだろ?」
俺は、そんな気休めしか言えなかった。
確かに片目を失うと距離感がつかめなくなる。
健全な片目の方も弱いとなれば、戦闘は厳しいというしかなかった。
「ライアン、お前なんで目をやったんだ?」
「……それはな」
俺はライアンの話を、水入れの葡萄酒をあおりながらに聞いた。
彼は昔、王城の衛兵だったらしい。
王城でも有名な腕利きだったらしかった。
暫く平穏に暮らしていたが、5年前。
突如魔物の動きが活発になった。
なんども押し寄せる魔物との戦いにて、両の眼を痛めたらしい。
そして、王城の衛兵の仕事が十分に出来ないとなって、慰労金をもらって辞めたらしかった。
それ以来、弱い魔物を倒して日銭を稼いで暮らしているとのことだった。
……まぁ、俺も元は兵隊。
理由は違うが、俺たちは元宮仕えの流れ者仲間らしい。
俺は自分の境遇もライアンに話した。
そんな不思議なこともあるもんだな、と彼は首をひねったが、事実俺はこの地にいる。
俺たちはなんだか気が合った。
その晩、俺たちは朝まで葡萄酒を飲み、語り明かしたのであった……。
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