9.敗北追放
訳あって追放された四人の冒険者。
彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。
テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、
そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話
前回のあらすじ
紆余曲折あった追放者ども一行は、Aランクパーティ昇格のためドラゴン討伐に向かうのであった。
ヘンキョウの町から徒歩三十分
オイハナたちはリンチ高原にやって来て早々ドラゴンに遭遇した。
「わぁ、ドラゴン居たよ、ドラゴンドラゴン」
「すぐに見つかりましたね、あれはレッドドラゴン。飛行能力は高くありませんが地上での強さが桁違いです」
「けっこうまん丸お目目なんだヨ、我の次くらいにかわいいかもヨ」
「それに町から結構近い場所に居ますし、早くギルドに報告しましょうか、この距離ならドラゴンなんてあっという間に着いてしまいますから」
「ドラゴンって結構首長ェんだな」
「あんたらさっきから動物園気分じゃん」
「あ、ガイドの人だ。もっと解説してもらっていいすか?」
「誰がガイドの人ですか」
「よォし、茶番も終わったし戦るかァ……!」
「戦うって、ギルドに報告して他の冒険者を呼びましょうよ、今は強い方を多く呼んでいるみたいですし⋯⋯それに」
「おゥ言い訳はもういいか?俺達ァ冒険者なんだ、自分達の獲物は自分で狩んだよ、分かったかァ?」
「かっけーさっすが冒険者経験が段違いっすねーははは」
「本当に思ってんのかヨ」
「⋯⋯分かりました行きましょう。ですが無謀な戦いにならないようにお願いします。いつでも逃げられるように準備はしておきますから」
「⋯⋯少しは良ィ顔になったじゃねェか、作戦は⋯⋯とりあえず様子を見てだなァ」
「おっしゃあ行くぞ!」
「かかってくんだヨドラゴンめ!ほらユーシとおっさんも早く来るんだヨ」
「話聞いてたかてめェら」
「おっさんが立てられる作戦なんて突撃くらいだと思ッでだぁ!」
「そうだっヨぁ!」
「ドラゴンに気づかれたしあいつらは尻尾のひと振りで吹き飛びましたし⋯⋯、もう逃げませんか?」
「いいぜェ、あんだけキレてるドラゴン相手に逃げられるならよォ、ほら行くぞ」
「⋯⋯はい」
数時間後
くそっ⋯⋯ユーシ君もシシャエルもやられて、コウルのおっさんだけじゃ防戦一方ーー。
私達じゃ⋯⋯ドラゴンなんて歯が立たないのか?
いや違う、私が一番役に立ってないんだ⋯⋯。
もっと私に力があれば⋯⋯!
その時オイハナの体が光り、目の前に文字が浮かび上がった、そこに書いてあったのは!
スキル 『超無限・全属性・チートマキシマムエクストラデス追放!』
この力で全てを追放して勝利!完!
「おーいオイハナ、とっとと起きるんだヨ」
「なーんだシシャエル生きてるし夢か」
「夢の中とはいえ勝手に殺すなヨ」
「うーん、身体が光ってチートスキル貰うまでは良かったんだけど、そっからが雑だったかなー」
「身体が光ってはいたヨ」
「身体が光ってはいたんだ、いやなんで」
「ぐえっ」
「あっ、尻尾の風圧に負けたユーシも転がってきたし……我らもやるとするヨ」
「応!まあ私達が無謀に突っ込んだせいだもんね!」
「本当にそうですからね、五分間引き付け続けた僕の分も頑張ってください」
「ユーシ君にしては頑張った!あとは任せなさい!」
「という訳でおっさん、なんかやることある?」
「⋯⋯のんきに来すぎだろ、アイツの気でも引いてろやァ」
「そんなんでいいのー?今明らかに何かチャージしてるし、盾で防いであげようと思ったのになー?」
「小脇に抱えられる程度の盾で何を守れるんだよ」
「たーしかに、よっし逃げるぞシシャエル」
「切り替えだけははえーヨ」
二人が駆け出した瞬間レッドドラゴンの口から炎のブレスが放たれた。
「あっつ!なんか魔法とかで防いでよ、土魔法得意って言ってたでしょ」
「あっちぃ!土魔法めちゃくちゃ魔力食うから使いたくないヨ!てかとっととトドメ刺せヨおっさん!」
「⋯⋯おっさん?」
さっきまでコウルの居たところにはとてつもない火力の火柱とアルコールの匂いが上がっていた。
「おっさぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「まあ血管に酒が混じってるようなやつだし簡単に引火するか、てかメインアタッカー燃えたし詰んだじゃん!」
「いやまあ前回はここから逆転したしヨ、エスゴブさん相当の奴が参戦⋯⋯」
「してこないね」
「逃っげるヨー」
その後、ヘンキョウの町のギルドにて
「よくそこから帰ってこられましたね、僕気絶してたから覚えてないんですけど」
「ドラゴンのやつね、ミディアムレアになったコウルのおっさんを食おうとしてたから、泣ーく泣く隠し持っていたエースゴブリンさんの肉を一切れ差し出したのよ」
「また僕のアイテムボックスに入れたんですね、てか一切れってことはまだあるな」
「本当に許さないヨあのレッドドラゴン、よくも命の恩人の肉を食べてくれたんだヨ」
「いや、エスゴブの肉が無かったら僕ら全員死んでましたからね。また命を救われたと思いましょう」
「たしかにヨ!やっぱりエースゴブリンさんは救世主!もはや勇者なんだヨ!」
「本物の勇者を目の前に言うことでは無いですよね、ねぇ」
「あァ、やっぱりてめェらはうるせェなァ」
「あ、おっさん起きたヨ黒焦げだけど」
「よーし、全員無事帰ってこれたね!それじゃあドラゴン戦リベンジの作戦を」
「いや行くわけないでしょ、死にかけたんですよ僕ら」
「へ?い、いやでも町に来るかもなんでしょ?ギルドに問い合わせても今は人を動かすの難しいって言われたし」
「来るかもってだけです、あのドラゴンはまだ誰かを襲っていた訳では無いですし、そもそも僕たちでは勝てませんからね」
「い、いや⋯⋯今回は私とシシャエルが突っ走ったのが悪いし、だよねおっさん!ちゃんと行けば勝てるよね!」
「無理だなァ、レッドドラゴンと俺との相性が思っていたより悪ィ。俺以外にあの尻尾避けて逆鱗叩けるやつも居ねェだろ」
「ぐぬぬ、そうだけども⋯⋯」
「それじゃあ諦めてご飯にしましょ」
「ちぇー、パパっと作るからユーシ君洗い物お願いねー」
「今日もですか、交代制のはずだったのに」
「ごちそうさま!そんじゃおやすみ!」
「早すぎねーかヨ」
「いやー、今日はドラゴンに挑んで疲れたんですわ、じゃあまたあしたー」
「いやお前そんな働いて⋯⋯ってもう行ってるしヨ」
「うーん、あんまり元気が無さそうな感じでしたね」
「まあ明日になりァのんきな顔見せんだろ」
「そう、ですかね⋯⋯」
その夜、オイハナ・アマザは追放された時の夢を見た。
まあ私は思ったことをすぐ口にする癖があるから苦手な人は苦手なんだろうけども、にしては罵詈雑言が多い気がした。嫌われるようなことしたつもりないんだけどなー。そういうノリだったのかな。
テンプレ的な追放、だかなんだか言って誤魔化してたけど、悪夢に見るくらいには私の中じゃ辛かったらしい。
特に、肩を強く掴まれて追い出された時、強い拒絶を感じた時に⋯⋯。
私は⋯⋯。
「さ゛み゛し゛い゛」
「うわ少しだけ心配で寝顔見に来たら血と涙を流してさみしいって言ってるヨ」
「シーッ!静かにしてください⋯⋯少しだけ心配で様子見に来ましたけど起こしたら本末転倒ですよ⋯⋯てかあの鬼の形相で本当に寝てるんですか?悪夢見てるのかな」
「もはや悪夢見せてる側だろありャ」
「ん⋯⋯寝てるのにやかましいなぁ⋯⋯」
「起こしちゃいましたね、すみません、大丈夫ですか?」
「いいよいいよ、悪夢見てたから起きれて良かった」
「てか聞いて、さっき追放された時のこと夢で見ちゃった、それからあんたらにも追放される夢見て⋯⋯」
「分かったから!滝のように涙を流しながら言うんじゃないヨ!」
「悪夢見て情緒不安定になってますからたくさん褒めてあげないと、よっ!スタイルいい!」
「ヨっ!料理だけは上手いヨ!」
「よっ、追放者ァ」
「誰が料理しか取り柄のない貧乳追放者だコラ、あははっ」
「罵られて泣き笑いすんな、反応に困るァ」
「いやー、やっぱり追放者どもはこうでないとねー」
「それでなんですけど⋯⋯もしかして今日ドラゴンの討伐失敗して、その後再戦を拒んだのが辛かったんですかね?あの時は少し強く言い過ぎてしまいましたよね、もう言いませんからね、大丈夫ですから⋯⋯」
「ユーシが心配しすぎてお母さんみたいになってる、なんか言ってやれヨ」
「お、おう⋯⋯まあ私もワルカッタトオモッテルヨ」
「思ってないやつ」
「だってユーシ君もおっさんも真面目な顔すぎてふざけたかったんだもーん、肩の力抜いてもっとお気楽にいきましょ、知能追放してこー」
「はぁい、わかりやしたぁ」
「おばかでいこうヨお」
「ばーかばーか」
「ガチで知能無くなった、こわ」
「あんたが言ったんでしょ」
「そんでさー、私はあんたらと何にも縛られず冒険したいわけって訳よ!」
「つまりその為に負けっぱなしは嫌と」
「そう!負けっぱなしやだ!勝ちたいー!たとえユーシ君がザコでもー!」
「やかましっ」
「でもま、ドラゴン戦じゃ私が一番役に立ってなかったからね、私が強くなるまでは⋯⋯お預けにしといてあげるっ!」ペカーっ!
その時オイハナの身体が虹色に光り始め、目の前に文字が浮かび上がった。
「あっ、今日気絶してたときと同じ光り方だヨ」
「私こんなペカーって光ってたの?!てかこれはチートスキル覚醒のやつやつ!ついに来たぁ!確認したらとっととドラゴン倒しに行くよ!」
「判断クソ早い、てかそういうのってせめて戦闘中とかに覚醒してくださいよ」
「それか追放された直後に覚醒しろヨ」
「寝室でやることじゃねェなこれ、眩しっ」
「うっさい、多分次が10話記念だからでしょ、確認確認っと」
「ふーんなるほど、これが私のチートスキルかーらしいっちゃらしいね」
「勿体ぶらずに言うんだヨ」
「聞いて驚くなよ?その名もぉぉぉ!」
「スキル!『追放』でぇぇぇっっっす!」
「でしょうね」
「だろうなァ!」
「この作品でそれ以外の単語が出ることはないと思うヨ」
ついに覚醒したオイハナのチートスキル、もうざまぁする相手も居ない彼女が追放するのは誰なのか、それとも自分自身なのか。
ろくでもない奴らの冒険とろくでもなさはこれから加速していく!
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次回で記念すべき10話です、なんだかんだ書き続けられてて嬉しいです。
良ければ感想などお待ちしております。




