8.追放追放
訳あって追放された四人の冒険者。
彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。
テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、
そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話
前回のあらすじ
からあげ弁当の屋台を始めた追放者一行、大繁盛したものの諸々の申請をしていなかったため、屋台ごと追放されてしまうのであった。
「先日は散々でしたね、稼ぐどころか売上金はほぼ取られ、屋台を出すのにもお金を使ったのでうちは完全に無一文ですよ」
「つまり町長を脅して金を返してもらおうってことだね!」
「真面目に働けってことだよ、あんだけの騒ぎで売上没収と屋台追放以外にお咎めないのが奇跡ですからね?」
「そもそも冒険者は真面目に働くことになるのかヨ、公務員とかのが良いだろヨ」
「ぐっ痛いところを⋯⋯でももう僕らにはこれしか無いんです、分かったら草むしりでも何でもいいから依頼受けますよシシャエル」
「分かったから耳引っ張らないでヨー」
「長くて掴みやすいのが悪いんです」
「私は何してればいい?待機?」
「オイハナさんはコウルさんの様子見ててください、いつもの二日酔いですけど⋯⋯見てない時にどこかで暴れられたら困るので」
「ほーい、じゃあいってらー」
「⋯⋯」
「まあヒマだしギルドで駄弁りに行くか」
「ちゃんと、見ててくださいね?」
「見てろヨ」
「うわまだ行ってなかった、分かってる、分かってるからー!」
「まあそれでも駄弁りたいからギルドに連れてきたんだけどね?」
「あらあら、あんまり体調悪い人を連れ出しちゃダメよ?」
「大丈夫大丈夫コウルのおっさんだし、ここなら目の届く範囲だから、それにずっと室内でも気が滅入るでしょ?」
「ぶっ飛ばすぞゴラァ⋯⋯」
「あぁ言ってるが本当に大丈夫か、くれぐれもここで騒ぎを起こさないでくれよ?この間の事もあるし」
「あ、堅物で有名な受付のジュフさん、最近見かけなかったけど大丈夫?」
「ご丁寧に紹介ありがとう、最近は⋯⋯お前らの騒ぎもあったが、この辺りに凶暴なモンスターが多くなったとか、得体の知れないドラゴンが出るなどの報告が上がっていてな、その対応で⋯⋯」
「へー大変だねーそれでさー」
「あらま無関心」
「いや違うな、この疲れはほとんどお前らの問題の後始末だ、なまじギルド前だったせいで問い合わせ凄かったんだからなほんとまじいい加減にしろ追放者ども」
「すんません、再販は無いとお伝えください」
「知ってるわ中間管理職を舐めとんじゃねーぞごら」
「あらあら、あまり怒りすぎちゃダメですよー?ほらぁ、深呼吸深呼吸⋯⋯」
「あっ、ハイ⋯⋯いつもありがとうございます⋯⋯」
「(めちゃくちゃ顔赤い、こりゃ惚れてんな)フッ、そういうことなら私はクールに去るぜ」
「どういうことでだよ」
そろそろコウルのおっさんの様子も見なきゃなー、って思ってたとこだし見てやるか⋯⋯ってなんかメガネに絡まれてる、いつも絡み酒する側なのに。
「おーいお兄さん、このおっさんになんか用すかー?今二日酔いなんで私が聞きますよ?」
「貴方!アル・コウルさんのパーティメンバーの方ですか!?あっ小脇に抱えてる板に書いてあるしパーティメンバーの方ですね!」
「そうですが、どうしたんすか?おっさんの寝首を掻くなら今のうちですよ」
「いえいえそんな事ではなく、ぶっちゃけて聞きますと⋯⋯あなたはこの人追放したいですか!?」
「⋯⋯したいですけど、鉄の掟でしない事になってますね、それを認めたらうちのパーティは空中分解するので」
「かーっ!コウルさんでも追放されないことがあるとは!追放道は奥が深い!」
「何言ってんだこの人」
「あぁ、名乗り遅れましたね、自分はバニス。正式追放記録九十二回を記録するコウルさんを密かにお慕いするものです!」
「なおさら何言ってんだこの野郎、あと声量が密かじゃねえ!」
「えっとつまり?自分が追放されたいドMだからこのおっさんを観察して、どうやったら追放されるか研究してると」
「だいぶ噛み砕いた表現かつ変態扱いは癪ですが、まあ大体そんなところでしょう」
「自分を異常だと思ってないやつが一番相手しててめんどくさいんだよなぁ、シシャエルしかり」
『ぶぇっくしョん!』
『どうしました、いきなりくしゃみして⋯⋯雑草の花粉ですか?』
『いや多分違うヨ、なーんかどっかで小馬鹿にされた気がしたんだヨな』
『いつもの事では?』
『え?』
「というか密かに慕ってるとか言いながらめちゃくちゃ会いに来てるけど、そこんところの信念追放してきた?」
「いい追放ギャグですね、ですがこれには長く深い訳がありまして⋯⋯」
「簡潔にまとめて」
「密かにコウルさんの正式追放記録が百回を超えるのを楽しみにしてたのですが、最近めっきり追放される話題も聞かなくなりまして」
「人の不幸を楽しみにしてるよこいつヤバ」
「その心配が七割、ここでの迷惑行動が仲間の耳に入り幻滅して追放されないかな、という淡い欲望が三割の理由で来ましたね」
「大丈夫全部が不純だから」
「やったあ」
「うーん、にしてもこんなめちゃくちゃやってるのに追放されないのは不思議だな」
「仲間に相談したところ、『お前は世の中に放っちゃダメなタイプの人間だ、このパーティで留め続けてやる』らしいです」
「めちゃくちゃマトモな人だ、可哀想に」
「やっぱりそうですよね!だからこそ自分を追放して楽になってほしいのです!」
「おう黙りな」
「あァ?さっきからうっせェなァ、何事だよ」
「あんたのストーカー来てるけど、話す?」
「あーまたてめェかメガネ、うるせェからお前が相手しといてくれやァ」
「やだよ既に疲れたんだが」
「こちとら二日酔いでずっと頭痛ェんだよ、治せるんなら良いけどよォ⋯⋯」
「こういうのは叩けば治る、二日酔い追放パーンチ!」
「おォ、若干治った気がするァあんがとな、それはそうと良くも殴ったなてめェ」
「いっでぇ!ただの理不尽おっさんめ!」
「フフフ、どうです?コウルさんを追放したくなってきたでしょう?するなら今のうちですよ⋯⋯」
「うるせェ最近見ねェと思ったらまた顔出しやがってぶっ飛ばすぞ」
「いだい」
「密かに慕ってるとかの話は何だったんだよただのストーカーが」
「すみません⋯⋯それはそうとオイハナさんあなたはどうして追放されたんです?」
「やばい目をつけられかけてる、助けておっさん」
「ヤダね」
そんなこんなで話していると、ギルドの入口を力強く開け、真っ直ぐにこちらに向かってくる三人組が現れた。
そしてその中の長髪の美女がバニスの頭を掴み床に擦り付けた。
「この度は!この男が大変ご迷惑をおかけし!申し訳ありませんでしたぁぁあ!!!」
「うわあ謝罪までの流れが早すぎる、一体いくらの修羅場を駆け抜けてきたんだ⋯⋯ってかあなたはそんなに謝らなくてもいいですよ」
「アヤマ、良かったな、謝らなくてもいいってさ」
「どうせお前迷惑かけてるだろ!お前が謝るわけないしこっちが謝らんといけないんよ!」
「なるほど、だがお前にはひとつ言うことがあるぞバニス」
「えっとなんでしょう?追放のアドバイスですか?」
「ほざくな、また口を縫い合わせて茹でるぞ、あ、この男の為にもどうか言ってやってください」
「じゃあ言いますね⋯⋯、オイてめえ!男一人と美人な女の子三人なハーレムパーティで、よくも追放されたい追放されたいだか言えるな!こんの贅沢者めっ!」
「こちらの想定外な叱り方っ」
「くそう、こんな追放されたいだけの変人にこんな可愛い子三人とかおかしいだろ、こちとらおっさんと変な妖精とザコ勇者だぞ、入れ替えてぇー」
「あと変な女な、てか受付の姉ちゃん然りてめェ女が好きなのかァ?」
「違うわ、まあ普段関わってる変な奴らよりは好きだけど」
「やはりここは、自分とオイハナさんを追放しあって入れ替えるというのはどうでしょ」
「カスのトレードだなァ」
「私通信進化するタイプじゃないですよ?」
「やめい、お前みたいなイカれ追放志願者を野に放たない為にリーダーにしたってのに、こっちリーダー居なくなって大変になるだろ」
「一応私もリーダーですよ、ほら小脇に抱えてる板見てみて」
「ほ、本当ですね⋯⋯すみません、てっきりそちらのおじ様がリーダーかと」
「( °o°)」
「( °o°)」
「無口だと思ってた他の子が驚くレベルだった、てかそのタイプが二人なことあるんだ」
「はとこなんですよ」
「そうなんだ」
「(*^^)v」
「(,,> <,,)」
「可愛い」
「まァ何でもいいからとっととこいつ連れてってくれやァ」
「嫌だ!自分は今日こそ追放されるんだぁ!」
「一応聞きますけど⋯⋯何かいびられたり搾取されてるとかは」
「追放させてもらえなかったり、追放の機会を搾取されてますね」
「ご覧の通りです、ご迷惑おかけしました。おら、ドラゴン討伐で呼ばれたんだからとっとと行くぞカス」
「(・ω・)ノシ」
「(・ω・)ノシ」
「またねー!」
「⋯⋯あの男抜きでまた来てくれないかな」
「っぱ女好きだろてめェ、あとあいつ置いてどっかブラブラするタチだと思うか?」
「まだロリコンの方が可能性ある、あとそんときはあんたが相手しといてくれ、頼んだぜ」
「はァ、あっちもこういうのがリーダーだと思うと可哀想だなァ」
「こういうのとはなんだこういうのとは」
「はぁ、ただの草むしりなのに妙に疲れたヨ⋯⋯」
「お前が確認もせずポンポン抜きまくったからですよ、マンドラゴラ抜いた時は死ぬかと思いましたからね」
「てへぺろ、だヨ」
「そうですか晩飯抜きですね。ってかあの人たち宿で休めって言っておいたのにギルド来てるし」
「まあコウルのおっさんだし大丈夫だろヨ、我が手続きしとくから叱ってくるんだヨー」
「いやシシャエル一人で行かせるのも不安、こっちでやっとくからあっちで待っときなさい」
「お母さんかヨ」
「へー、追放されたいなんて物好きなんて居るんですね」
「ただの変態だろヨ」
「へー、じゃないよ、実際に見てないから言えるんだからな」
「いっつもしつこいくせによォ酒奢らせようと思った瞬間に姉ちゃん達来るからなァ、はた迷惑だぜ」
「いつもはた迷惑な人が何か言ってる、というかバニスさんがリーダーのパーティって言いましたよね?たしかその人達Bランクパーティですよ」
「へー、まあ私達の弟子はAランクだし大丈夫大丈夫」
「へー、じゃないよ、Eランクパーティごときですよ僕たち」
「そんじゃあ、一気にランクを上げるとしますかね」
「おお、ようやく主人公らしい発言だヨ」
「そんなに主人公らしいかァ?」
「私たちは最近出没したと言われているドラゴン討伐に挑戦しようと思います!はいリーダー権限で拒否権なーし」
「まあ目撃証言だけでも役に立てますし頑張りますか」
「地道なランク上げになりそうだヨ」
「もはや否定すら無しに捜索に切り替えるじゃん、現実を見なさい」
「こっちのセリフだ」
「お前がなァ」
「このマゾ追放希望者二日酔いロリコンがヨ」
「全部混ぜんな」
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