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10.スキル『追放』

訳あって追放された四人の冒険者。

彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。

テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、

そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話

 前回のあらすじ

 ドラゴンに負けた追放者ども、悔しさに血と涙を流し悪夢を見たオイハナは力を望んでいた。

 そしてその悔しさと欲望と期待に応えるようにオイハナのスキルは覚醒するのであった。

 そのスキルとは⋯⋯。


「スキル!『追放』でぇぇぇっっっす!」

「でしょうね」

「だろうなァ!」

「だろうなとは何だ、だろうなとは、こちとら二十年待ってたんだぞ」

「ちなみに本当に追放で合ってるんですか?僕たち追放された側ですよ?」

「だからこそ今度は私たちが追放しまくれるってわけよ、じゃあ早速試し打ち」

「スキル『追放』!発動ぉ!」


 発動と同時にオイハナの意識は暗い空間に飛ばされた。

「⋯⋯なんかどちゃくそ真っ暗なとこに来ちゃった、アレか?自分が世界から追放されたのか?」

「やぁ、ようやくここに来たかオイハナ・アマザ。私は君のスキル『追放』に宿った、まあナビゲーターみたいなものだ」

「全身白タイツの化け物がなんか言ってるやこえー」

「話を聞いたらどうなんだ」

「はいはい、そんでここはどこなの?追放ルーム?」

「そうだ、追放ルームだ」

「合ってるんだ」

「簡単に言うと君の精神世界みたいなものだよ、まあくつろいでくれ、この中にいるのは私の方が長いからな」

「はーい」

「クッションとかポテチやら出して全力でくつろぐじゃん、それのやり方私知らないんだが」


 テーブルと椅子を出して真面目に聞くことにした。

「⋯⋯つまるところスキル『追放』自体は既に覚醒してて、今までもあんたと一緒に無意識下で追放バンザイだったと、やっべさっきあいつらの知能も追放バンザイしちゃった」

「そういうことだ、例を上げると君は料理が得意だろう?それは無意識下で食材のエグみやアクを追放で取り除いていたからだ、あと追放バンザイってなんだ」

「ちなみに追放無しで料理作るとどうなるの?」

「料理する資格なんか追放される」

「ふーん、追放すげー、追放わっしょい」

「てか!今までは無意識下での追放バンザイだったってことは!これからは私の意思で追放わっしょいってコト!?てかなんで急にこのスキル使えるようになったん?」

「やかましい、そういえば今は深夜テンションだったか」

「そう追放ねぇ」

「スキル『追放』は君が追放されたときに既に覚醒していたが、追放による悲しみと怒りが薄まり、不完全な覚醒となってしまったらしい」

「あー、あの時は酒飲んですぐに忘れて今回悪夢でそれを思い出したから追放トリガー引かれたわけ追放ね」

「理解力が高くて助かるよ、ちなみにスキル『追放』が覚醒すると語彙の半数ほどが追放に置き換わる」

「んま、シリアス展開なんてとっとと追放しときたいしねー、あと語彙に関してはさっきから追放的に理解してる追放よ」

「そしてこれが最後の答えだ。スキル『追放』はもともと人を追放し、追放された側の強さを引き上げる程度のものだった。」

「はえー弱そう」

「だがこの一ヶ月、君は追放者どもで集まり、ダンジョンやら屋台やら追放さえも追放したりされたりした」

「何を言ってるんだよ」

「こっちが聞きたい、それに加えて君の前世からの追放モノに関する歪んだ知識のせいで君の中の追放の概念がねじ曲がり、同時にスキル『追放』の概念もねじ曲がったのだ」

「おお!つまり万物全てを追放してついでに追放したやつを強化もできる万能最強チートスキルに!」

「認めたくないがそういうことだ。そしてこの力をむやみに使うと世界が滅ぶと考えた、君の頭の中のすみっこのすみっこに残った良心が私を産んだんだ、私がいる限りまともな理由でしか追放はさせないよ」

「つまり⋯⋯全身白タイツ追放マンは私の良心で、あんたがいる限り私は自由に追放を使えないと、やだやだやだ」

「誰が全身白タイツ追放マンだ、私のことは追放さんと呼ぶといい」

「ちな追放さんが文句無しに追放させてくれるラインってどこ?」

「明らかにろくでもない奴や、不要なゴミくらいじゃないと難しいんじゃないか?」

「じゃあパーティメンバー追放して最強にすれば最強じゃん!アイツらイカれてるし」

「いや彼らは私から見てそこまで酷すぎるとは思えないからスキル『追放』は使えないよ、というか本当に仲間に対しての言い草が酷いな君は」

「えー、見たら絶対追放したくなると思うんだけどなー、じゃあちょっとアイツらのろくでもなさを教えてやるから!ここから追放しといて」

「ここから出るには何かを追放しなければいけないよ」

「じゃあ枝毛一本追放で」

「分かった」


「ふー、やっと戻ってきた」

「どうしたんですか、一分くらいぼーっとしててちょっと怖かったんですが」

「スキル、スキルは強かったんだヨ?」

「いやー、追放さんがいるから使いずらすぎる」

「追放さんってなんですか」


 めちゃくちゃ話した。

「話長っ、半分くらい何言ってるか分かんなくてモンスターの言葉かと思ったヨ」

「じゃァお前は分かンだろ」

「は?」

「つまり要約すると⋯⋯、スキル『追放』はあなたの影響で生物無生物問わず追放できるようになって、追放したものを任意で強化できると、結構強いのでは?」

「そゆことそゆこと、まあ全身白タイツ奇妙奇天烈頭頂部ハゲ追放さんにまともな追放理由じゃないとダメって言われたけど」

「確実に容姿説明に私情が挟まりまくってるヨ」

「追放モノで追放理由がまともでいいんですか」

「知らん、ただ分かったことは文句無しに追放できるのはハゲが不要と思ったものとろくでもない人間、つまり言いたいことは分かるかい?」

「まあそれならシシャエルとコウルさんならできるでしょうけど、というか鉄の掟破ってませんか」

「ユーシとおっさん追放してそこまで強くなるかヨ?我は追放出来ないからともかくヨ」

「こいつら追放して、てめェと二人組なるのはなんか嫌だからちゃんと俺も追放しろよなァ」

「そうそうその意気!ろくでもなさをもっと見せてくれ!」

「⋯⋯知ってましたけど僕たち本当に酷いですね、てか追放しないんじゃ無いんですか?」

「まあ追放した後普通に戻ってくればいいでしょ」

「それでいいのかヨ」


「それじゃ、追放者どもを罵ってスキル『追放』のハードルを地の底にまで落としていきますか」

「なんか嫌だな」

「まあ白タイツ追放さんも私の一部、私のあんたらの認識が下がれば下がるほど追放しやすくなるってわけよ」

「⋯⋯でもなんだかんだオイハナ我らのこと好きじゃねーかヨ?」

「おう追放されたアホ窃盗犯ボケナス害獣カスバカヨ妖精が、そそそそんな訳ないだろろろろろ」

「罵倒部分はスラスラ出てるのに言い訳がガッタガタすぎる、そんなんで大丈夫ですか」

「ダメだ、若干の照れが出ている、こうなったら精神世界からリモートで罵ってやるー!追放ー!」

「まじでなんなんだァこいつ」


 追放ルームにて

「という訳でさっき見た悪夢見せてー精神世界なら割とすぐ行けるでしょ!おお、この辺かな⋯⋯?」

「戻って来て早々悪夢見たいとかドMかな、というかあんまり舞台裏に出ないでどこに繋がってるか分かんないから」

「お、昨日の悪夢の場所だ、じゃあ追放者どもが出てくるまで待って⋯⋯よし、それじゃあ罵りに行きますか!」


 一方現実世界

「はいじゃあこっちは悪夢のあんたらと遭遇出来たので罵っていきまーすzzz」

「寝言を寝て言ってるヨ」

「え、これ僕ら聞かなきゃいけないやつですか」

「一人一人個別に罵っていきたいんですが、長ったるいのはめんどくさいのでまとめていきますzzz」

「おォ、早く終わりそうで良かったなァ」

「前提として良くない気がします」

「まずあんたら最近丸くなりすぎ!特におっさん!長いこと追放され続けてからの私らで絆されてるかもだけどね!もっと酒かけてぶん殴ってろよ!zzz!」

「思ってた罵倒と違う」

「まァ最近お前ら相手だと気ィ抜けてたかもな、じゃァお望み通りで行くかァ」

「いや最近も殴ってるだろヨ、ゴッツも人をいきなり殴るなってボカアッ」

「そんでもって、最近私ら周りに認めて嬉しいだろ!そりゃ嬉しいよ!だって周りいい人多いもん!zzz」

「何を急に言い出すんですか」

「でも私たちは追放者!今更追放されてもこびり付いた油汚れのように当然の顔で居座る覚悟を持った奴ら!だからさ、周りの目も気にせずもっと自由に冒険したいんだよ⋯⋯あんたらとzzz」

「どーしよ、恥ずかしいこと言い始めたヨ」

「どっちの意味でですか」

「あとユーシ君は自分が弱いことを理由になんか逃げてる気がする、もっと血反吐出すまで頑張れzzz」

「思い出したかのように罵倒を、そんで個人に向けてるじゃないですか」


 追放ルームにて

「あーマジでなんであんな恥ずいこと言ったんだろ罵るはずだったのにー、もういっか!どーせあっちには聞こえてないだろうし」

 そして私はいつものあいつらの顔をした悪夢の顔を鷲掴みにして話しかけた。シシャエルには頭突きをした。

「私は追放されて寂しかったんだよ、でもユーシ君にシシャエル、コウルのおっさんと馬鹿なことやって正直救われた。」

「だからこれからもろくでもない冒険し続けてたい、分かったら着いてこい追放者ども!」

 ⋯⋯仕方ないですね! しゃーねーヨ まったくだァ

「⋯⋯なんか幻聴が聞こえた、どんだけあいつらのこと好きなんだ私」

「まあいいや!分かったか追放さん、あいつらのヤバさが!何故ならこんな私に好かれてるからな!」

「うんまぁいいと思うよ、スキル『追放』のハードル下げとくね」

「すんなりいったよオイ、なんで?」

「なんでかと言われても⋯⋯まあ私が君の良(・)心(・)だからだろうね」

「うーんイマイチ分からん、まあいいやこれからもよろしく!ってことで枝毛追放!」

「⋯⋯行ったか、まあこれで大丈夫。彼らなら追放してもオイハナの傍に居続けてくれるだろうしね」


 現実世界

「うーん、罵り終わったら気分がいいなーって、あんたらおでこ赤いじゃんどしたのウケる」

「お前が鷲掴んで頭突きしたからだヨ」

「いやー、こっちの動きが現実にもリンクしちゃうとはねー!まあ追放さんとの話は無事決着したから安心してねー!」

「それは良かったですね、本当に寝言も酷かったんですからね」

「なんかぎこちなくない?」

 二人の様子が妙におかしい、それにおっさんはもう寝たみたいだし⋯⋯ん、寝言?

「モシカシテサッキゼンブシャベッテタ?」

「はい、そうです」

「ウケるよwあんな恥ずかしいこと大声で言っちゃってヨぉ!」

「はい寝ます意識追放八時間後にアラームで」

「あっ意識飛ばして寝たヨ」

「⋯⋯僕らも寝ますよ、明日はドラゴンに再戦するんですから」

「にしてもまあ騒がしい人ですよ⋯⋯、明日は絶対勝ちましょうね」


 スキル『追放』の入手を経て絆を深めた追放者一行、奴らはドラゴンに勝つことができるのか。

 追放者どもの冒険はこれからだ!


「という訳でドラゴン戦だぁ!」

「あ、終わる流れじゃなかった」

「いつもならこのくらいの文字数で終わるのにヨ」

「昨日深夜まで起きててよく元気だなてめェら」

「ちょいまち私歯磨いてから行く」


 再びリンチ高原に足を踏み入れる追放者ども。

 今度は逃げも隠れもせずレッドドラゴンと相対する。

 レッドドラゴンは再び逆鱗に炎を貯め、追放者どもを迎え打つ構え。

 風が奴らの世界を揺らし、決戦の火蓋は切られた。


「追放者ども!行くぞぉぉぉ!!!」

「「「おう!」」」

 オイハナは小脇に抱えた盾を前方に投げ火炎放射を防ぐ、それと同時に横並びで奴らは駆け出し⋯⋯。

「はい炎を駆け抜けると同時にタイトルロゴどーん!」

「締っまんねぇヨ!」

「また何かの影響受けましたね!」

「オイドラゴンやァ、俺がまた燃えてなくて残念かァ?そいつァもうとっくに、追放済みだァ!」

 後方でコウルから追放されたアルコールの塊が爆発し土煙が舞う。

「そんでもってヨ!この土煙とお前の魔力が程よく混じったこの状況なら我の上級地魔法が難なく使えるって訳ヨぉ!」

 レッドドラゴンの体を囲むように土の壁が築かれ、その瞬間にコウルは懐に飛び込む。

「首元ががら空きだァ!」

 逆鱗に渾身の一撃が入った――。かに見えた。

「わりィ、アルコールが血に通ってねェとそこまで力が入らねェらしい」

「んなばかなっ!」

「それが有り得ーるかも」

「言ってる場合じゃねえヨ!」

 尻尾の振りにより土の壁は次々壊され、その衝撃がコウルに届く刹那上からの攻撃によりレッドドラゴンは動きを止める。

「晴天っ斬りぃ!」

「ダメだこれ追放強化十倍くらいじゃ効いてない、てかなんで千ザコごと追放できないんですか!」

「追放さんいわく千ザコさんの方が効果強いらしいー!」

「千ザコにまでさん付けしちゃってる」

 あえなくはじき飛ばされるユーシ、目の前には逆鱗への衝撃、晴天斬りの熱で炎を貯めきったレッドドラゴンの唸り。

「やばい、これ死――」

「まずいまずい、なんか無いかなんか無いかっ?」

「ユーシ死にかけてんのに青狸のようにポケット探んなヨ!」

「あ、お気に入りの歯磨き粉、朝からポケットに入れっぱなしだった」

「なんで!?もうそれでいいから追放して飛ばして!?」

「いやいやお気に入りだし追放条件がー、あっ」

 レッドドラゴンの炎がユーシの体を焼き付くそうとしたその瞬間、オイハナの手から白い光が放たれた。

「お気にの歯磨き粉でもさぁ!蓋にこびり付いたカスはさすがに要らないって訳!お前は今日限りで追放だ!」

 追放強化された蓋についた歯磨き粉はレッドドラゴンに直撃、そして辺りを白い光が包み込んだのだった。


「…やったか!?」

「フラグやめて!?」

「あっ土煙の中から横たわったドラゴンが⋯⋯立ったヨ」

「終わったァ!」

「ん……なんか、白くね?」

 レッドドラゴンは追放強化された歯磨き粉の影響で、ホワイトニングされていた。

「歯磨き粉の漂白効果ってそういうことじゃないですよね」

「ガイドの人的にはどうなのこれ、こっち攻撃してくる感じは無いけど」

「ガイドの人じゃないです、うーん、色だけ見たらホワイトドラゴンですね。この種は人に懐きやすくて友好的なんですが、どうやら性格がそうなったみたいですね」

「体は色以外そのまんまだがなァ」

「いやでも目が青色だヨ、ブルーアイズホ」

「やかましい」

「イデッ、いつもの十倍は痛いヨ」

「そーいや追放しっぱなしだったね、はい解除解除」

「やっぱり解除しないとなんですね」

「そーそー、しっぱなしだと自然と縁が切れちゃうらしいしー、それはヤだし」

「⋯⋯そうですね」

「まァいィ!これも勝ちは勝ちだろ!勝利祝いに飲むぞォ!」

「ここでですか、一応まだレッ⋯⋯ホワイトドラゴンさんの縄張りですよ」

「ホワドラはいいって言ってるヨ」

「やっぱモンスター寄りですよねシシャエル」

「最近その弄り減ったと思ったのにヨぉ!!!」

「いや事実⋯⋯って目がぁ!」

「ははっ!ユーシ君も酒ぶっかけられてやんのぁぁぁ!!!」

「ザマー見ろだヨぁぁぁ!!!コウルてめぇー!!!」

「やっぱてめェらはこうでねェとな、ガハハハ」


 こうしてレッドドラゴンを無事討伐 (?)した追放者一行、奴らのろくでもない冒険譚はこれからも続いていく!

ここまで読んでくださりありがとうございます。

節目の10話ということでむちゃくちゃしました。

これからも追放者どものお話を楽しんで貰えると嬉しいです。

良ければ感想などお待ちしております。

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