6.弟子追放
訳あって追放された四人の冒険者。
彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。
テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、
そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話
前回のあらすじ
突如追放者どもの前に現れた異世界追放者!
そしてそいつを轢いた大型トラックも現れたのだった!
「今日はやけにあらすじのテンションが高いですね」
「そんなことより目の前のばかでかいトラックどうにかしなきゃ、町の大通りなのにほぼ塞いでるんよ」
「わかった善処しよう。後方の皆様方、申し訳ないが道を開けてくれるとありがたい」
「物分りのいいトラックで良かったー」
「これがさっきから言ってたトラックなんですね、車のようだけどまさか意思疎通出来るとは」
「普通できないっスからね。というか大丈夫かなあ、あのトラックさっき人轢いてたけど⋯⋯」
「見た感じ安全運転だし大丈夫でしょ、さっき轢いたのもアレだし」
「そうですね、結局轢かれたのもアレが勝手に飛び出したからですし」
「アレ呼ばわり」
「お、広場に停めれたみたい、じゃあアレ置いて行こうか」
「そのアレは地面に突き刺さってピクピクしてるっスよ⋯⋯?」
「酒かけとけばそのうち戻りますよ、ほら」
「酒うめェ〜」
町の中心から離れた空き地にて
「まるでこの時のためにあったような広い空き地、トラックも上手く停めれてるね。てか地主の許可とった?」
「私が取っておいた。地主の方も広い土地はまるでこの時のためにあったと快く許可してくださった」
「土地余らせてんの?」
「まあここ田舎ですし」
「てかそんなことはどうでもよくてっスね!なんでトラックのあんたまでこの世界に来てるんだよ、頼んだ覚えは無いっスよ!」
「その事か、私の主は居眠り運転でカケル君を轢いてしまった後、パニックを起こし横転、その後私は廃車になってしまったのだ」
「かわいそうだねー」
「そ、そっか⋯⋯あんたも災難だな、ってか俺もボーッとしてたしお互い様っスよ」
「君は悪くないさ、狭い道で時速百km以上出していたのも問題だろうし」
「俺悪くないかも」
「その後地獄の閻魔様から君の行方を聞いた後、こちらの神に頼み君を追ってきたのだ」
「サラッと地獄に落ちてますね」
「ハンドルを握られると性格が変わるタイプでね、主に合わせてめちゃくちゃノリノリでスピードを上げたのがいけなかったらしい」
「握られる側がそれなことあるんスね、てかこの世界地獄の概念あるんだ」
「三箇所くらいあるよ」
「実在するタイプだった、さすがファンタジー世界っスね!」
「ちなどこも温泉が有名」
「おお、元いた世界にも地獄はあった」
「ごほん、いつの間にか話が温泉の話になっていますよ。まあ悪い人⋯⋯車じゃないと思いますし乗ってあげたらどうですか?」
「そうだ、私はカケル君、君にせめてもの贖罪の為、私を使ってもらおうとしているのだ。私を使って仕事をしてもいい、ストレス発散としてスピードを出しまくってもいい、私に轢かれて元の世界に戻ることや私に乗って爆走することだってできる」
「さっきから走りたくてウズウズしてないっスか!?」
「そんなことはない、それより私のハンドルを握らないか?」
「だーめだこいつ」
「ってか元の世界に戻れるって言ってたけど、本当なの?」
「まあ私はトラックだからな、轢いたらどこか別の異世界に行くだろう、だからワンチャン戻れるというわけだ」
「はえーなるほど」
「その説明で行くわけないだろ、あーもう、乗ってやるから待ってるっスよ、何せ初運転なんスから⋯⋯」
「スキルで知識やら経験は詰め込まれてるっぽいから大丈夫っしょ」
「ちなみに、運転免許のスキルを持たないものが私に乗ると大変なことになるから気をつけてくれ、特に後ろからコソコソと乗り込もうとする男と妖精のような奴らに」
「あ、バレちまったァ」「バレたヨ」
「あー、ちなみにもう運転席に乗り込んでいる場合はどうします?」
「この世界の法の形によって裁かれるであろう」
「窃盗罪だし磔ですかね、2話と同じ構図もつまんないですしせっかくだから走らせますか」
「ユーシ、笑顔が怖いヨ?」
「あはははは」
その後アレはトラックの側面に磔にされた
「ぎゃああああ!!!!!許してヨ!ただの好奇心だったんだヨ!!!スピード出しすぎだヨぉぉぉ!!!!!」
「別に速さは問題無ェけど、結構揺れるなァ、やべなんか吐き気が」
「ちょっと待てヨなんでこいつが前方に磔されてんだヨこのままじゃ我に」
「オロロロロロロロォ」
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
「後方がバチクソうるさいけど運転大丈夫?」
「後方がバチクソうるさい割にはすごく運転出来てるっス、さすがチートスキル」
「ヒャッホォウ!法定速度も無い!邪魔な建物も無い!いくらでもスピードが出せる!この世界こそ私にとっての極楽だぁ!!!」
「一回地獄落ちたやつの態度じゃないですね」
「てかペダル踏んでもスピード調節できない、これハンドル離したり握ったりしたらどうなるんだろ」
「先程は取り乱してすまなヒャッホォウ!やはりハンドルを握られるとヒャッホォウ!情緒がヒャッホォウ!」
「遊ぶな」
「さっきから急発進と減速を繰り返すなヨォォォォオロロロロロ」
それから数時間ほどドライブして過ごした。
「ふぅ、やはり走るとは楽しいものだな、付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ、まぁまぁ楽しかったよ、てか燃料とか大丈夫なん?」
「こちらの世界では魔力で動くようにしてもらった、出来れば注いでもらえるとありがたいのだが」
「じゃあ魔法使えるシシャエルでも絞っとくね」
「ぐったりしてるのでやめてあげてください、てか多分ゲボ混じりますよね」
「あ、あの⋯⋯アネゴとユーシ先輩、あと一応お二人も、今日はありがとうございました」
「一応って言いやがったヨあいつ」
「お黙り」ジョボボボボ
「俺この世界に来て不安だったんです、元の世界にも少しは未練あるけれど、それ以上にこんな自分が生きていけるのかって。でも今日出会えて、先輩達みたいに誰かと毎日面白おかしく過ごせたらいいなって思えたんでス」
「いい感じに言ってるけど若干小馬鹿にしてる気がするヨ」
「主に小馬鹿にされてるのはあんたらだよ、てか私たちまだ出会って三日じゃない?」
「本当に今は黙っててくださいあんたら」
「なので俺!先輩達のような冒険者になろうと思うっス!」
「トラックあるなら配送業の方が稼げると思いますよ」
「まじスか、うーんどうしよう」
「さっきまでの展開が嘘のように揺らぐじゃん、まあカケルくんの好きにしたらいいと思うよ、何せ心の広いアネゴなのでね」
「おゥ、稼ぐんなら酒奢ってくれやァ」
「私はどんな選択をしようと主の役に立つため力を貸そう、あとできるだけ長距離を飛ばしてくれるとありがたい」
「こいつは走りたいだけだろヨ⋯⋯。ま、お前の好きにしたらいいんだヨ、何なら⋯⋯シシャエル先輩って呼んでもいいんだヨ?」
「ありがとうございまス先輩方、それにシシャエルも!」
「なんでだヨ」
「じゃあ俺早速仕事探してきまっス!」
「さあ主、共に行こうか!」
「トラック、あんたは着いてこなくていいっスから、ここで待ってろっス」
そうして彼は、この世界で新たな一歩を踏み出し始めたのだった。めでたしめでたし。
「いや僕らもカケル君に恥じぬよう頑張りますからね!何せ先輩なんですから!」
「さては先輩呼び気に入ったねーユーシくぅん、そんなに張り切っちゃってー」
「素直に嬉しいだけですから!さてと、今日はもう遅いですし宿屋で荷物整理とかしましょう」
「あー、その事なんだけどヨ、おつかいで買ってきたもん全部、トラックで走った時にどっか行ったヨ」
「俺ァ全部懐に隠してたから無事だぜェ、全部酒だけどよ」
「最悪だ」
「はじめてのおつかい失敗!今から買いに行くよ!」
「もうすぐ市場閉まりますよ!?町のはじっこからじゃ間に合わないです!」
「大丈夫、ちょうどここに主迎えに行くついでに走りてーなぁーって顔をしたトラックが居る」
「ああ!主の先輩の頼みなら聞くしかあるまい!いざゆこう!」
「あーもう僕は知りません寝ます、着いたら起こしてください」
その後、町中をトラックが走り回り大混乱を起こしたが、奇跡的に怪我人は居なかったらしい。
あと何人か異世界に追放されたらしい。
一ヶ月後
「ただいま帰りました」
「おーおかえり、てかおはよー朝早いねー」
「もう昼なんですが」
あれから一ヶ月、比較的良心的な価格の宿を一ヶ月取り続け、僕は冒険の準備を整えていた。
そう、僕は。
「てかあんたらそろそろ動いたらどうですか!エースゴブリンの件でお金があったからって毎日ダラケすぎですよ!」
「でもー、もうちょいしたら動くからヨぉ」
「毎晩遊び呆ける妖精と酒を飲み続ける人のせいでお金は底を尽きかけています、僕が少しづつ稼いでなかったら今頃野垂れ死んでますよ」
「いつもありがとなァ、モンスター退治だともっと金貰えるぜェ」
「僕がモンスターなんて倒せるわけないでしょふざけないでください」
「わかったわかった!動こう動こう!と、とりあえず明日から⋯⋯」
「はー、こんなんじゃカケル君にも顔向け出来ませんね、彼、A級冒険者になったらしいですよ?」
「は、なんでなんで?彼はカスの私たちの弟子、今頃なんかしら追放されてるはずじゃ」
「弟子の不幸を望むなカス。何やら配送中に出くわした大型モンスターを猛スピードで轢いて木っ端微塵、その功績が耳に入った都市のギルドに誘われ冒険者に、今は適度にモンスターを討伐しつつ配送業の宣伝もしてかなり有名みたいですよ、ほら新聞」
「ほんとだ、てかトントン拍子に進みすぎている!なろう系の主人公かよ!」
「おうそれ一応アンタですよ」
「てかあのトラックのスピード狂いが人に向かなくて良かったヨ」
「ちくしょう!同類だと思ってたのに普通に努力して成功してるいい子じゃんか!こうなったらもうカケル君なんて弟子追放だね!」
「僻みで最低の方向に行ってる」
「アネゴ!先輩ー!A級冒険者になったお祝いでお酒たくさん買ってきたんスけど⋯⋯あ、スみませんお取り込み中でしたねドアバタン」
「ドアガチャリ、カケル君!君はもう立派な冒険者だ!弟子を追放して免許皆伝!これからは共に肩を並べる仲間だよ!」
「そうなんスねアネゴ!やったぁ!」
「バカみてーな方向転換して乗り切ってるヨ、ああはなりたくないヨ」
「じゃあ働け」
「タダ酒貰えたし働くかァ」
その後A級おめでとう飲み会 (カケルはジュース)を終えた追放者どもは今度こそ働く決意をしたのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
異世界トラック編これにて終了です。




