4.ダンジョン追放
訳あって追放された四人の冒険者。
彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。
テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、
そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話
前回のあらすじ
ようやくダンジョン攻略に向かうオイハナ一行、しかし長話に痺れを切らした飲んだくれのコウルは一人で先に行ってしまっていたのであった。
「ようやくダンジョンに入れましたね⋯⋯」
「暗くて何にも見えないヨ」
「整備されてない洞窟ですからね、今明かりつけます、『ホーリー・シャイン』」
周囲を仄かな光がつつみ始める。
「おお、強そうな名前の割に優しめの光だね」
「魔を焼き焦がす聖界の光らしいですけど、僕が使うと丁度いいくらいの明かりになるんですよね」
「ザコなのを有効活用できててえらい」
「いや普通の光魔法でいい気がするヨ⋯⋯てかなんかその光に当たると肌ピリピリするんだヨ」
「やっぱてめえモンスターかなんかだろ」
「まあまあ、それより早くコウルさんに追いつきますよ?もう外は日も落ちてますし、このままじゃ野宿になってしまいます」
「野宿かあ、案外悪くないんだよね」
「雑草のベッド割と寝心地いいんだヨな」
「最悪だ、野宿に快適性を見出し始めてる、ほら行きますよ!」
「「はーい」」
それから少し進むと前方に男の人影が見えてくる。
「あ、おっさん居たヨ、よくも置いてったんだヨ!おりゃ!」
「今までぜんぜんモンスター湧いてなかったけどおっさんが片付けてくれたの?ありがとね⋯⋯と見せかけてからのパンチ!ってなんかいつもより華奢?」
「おわぁ!何すんねんキミら!?」
「いきなり駆け出してどうしたんですか⋯⋯って誰ですかその人は?」
ユーシが近寄り光で照らすと、そこに居たのはコウルではなく細身の男だった。
「ホンマなんやねん、いきなり背後から殴るとか人違いだからとかじゃなくそもそもダメやろ⋯⋯」
「本っ当にすみません、この人達には強く言い聞かせますので⋯⋯ほら二人も謝る」
「すまなかったヨ、でも暗い洞窟で明かりも点けずに突っ立ってる方も問題はあるんだヨ」
「ごめんなさい、そんでなんで明かりも点けずに一人でダンジョンに?」
「こいつら流れるように言い訳と雑談を」
「それがなーウチこないだ追放されたねん。昨今話題の追放ブームとかいうやつで、そんで一攫千金狙って一人でダンジョン潜ったら迷って途中で魔力も切れて散々、って訳やねん」
「それは気の毒ですね、実は僕達も先日追放されたばかりで、これも何かのご縁ですし出口まで案内しますよ」
「へー、追放者どものパーティっちゅう訳か、面白いなあ、そんでもって親切に気遣ってくれたとこ悪いんやけどウチにはここを進まなアカン理由があんねん」
「理由?まさかこの先に何かあったり?」
「よく聞いてくれたわ、何を隠そうこのダンジョンには何百年も前に隠されたお宝が眠っとるねん。そのお宝は、盗賊あらためトレジャーハンターのこのウチ、ゴッツ・オーキニが絶対見つけたる!てな訳で手伝ってくれへん?分け前はしっかり渡すさかい!」
「まじ!?お宝なんてロマンの塊じゃん!よーし、リーダー特権だ、手伝うよ二人とも!」
「拒否権ねーのかヨ⋯⋯」
「まあどのみち先に行ったおっさん回収しなきゃだしね」
「ちなみにそのお宝ってどういうものなんです?」
「よく聞いてくれたわ、この先ダンジョンの最奥にはな⋯⋯」
「魔王が好み、飲む者全てを狂わせると言われとる『廻魔酒』が眠っとるんや」
「あ」
「最悪」
「終わったヨ」
「⋯⋯へ?」
「一応コウルさんがダンジョンを迷ってる可能性に賭けて最奥まで来ましたが⋯⋯」
「道中のアンデッドやらゴブリン達が無惨な肉片になって転がってたヨ⋯⋯」
「明かりも無いのに酒の匂いだけでここまで突き進むとはやはりバケモンか」
「初心者向けの地帯やから入口が見つからんように隠されとったのに、酒の匂いだけで見つけるとは末恐ろしいわ⋯⋯」
「ここがボス部屋か、開けるよ!みんな気を付けてね!」
「気を付ける対象が仲間じゃなかったらもう少しアツかったんだろうヨ」
扉を開けると、モンスターの一匹もおらず、ボスが居たであろう玉座にはコウルが座っていた。
「遅かったかー」
「ま、まだ飲んだとは決まってませんから⋯⋯ コウルさん?気分はどうですかー?」
「おうてめェら、遅かったじゃねェか、ぶっ飛ばすぞ?」
「なんだ、いつもの酒カスおっさんかヨ」
「いや、今はいィ、それよりお前らもこの酒飲もうぜェ?飲んでから気分がいいんだよォ!」
「終わった」
「手に持ってるあの酒!あれが『廻魔酒』や!あのオッサンも飲んで狂うてもうたんやな⋯⋯」
「あいつはもともと狂ってんだヨ!」
「言ってる場合じゃない!逃げるよ!?って扉開かねぇ!」
「ボス部屋入ってもうたからな、ボス倒さんと開かんわ!」
「それってコウルさんがボス判定のような」
扉を開けようともがく一行の背後からコウルの剛腕が襲いかかるーー。
その拳が当たる寸前、大量のゴブリン達がコウルに群がったことにより勢いを失い止まった。
「焦るなヨお前ら、よく見たら部屋の隅の柱にゴブリン達がたくさん居るんだヨ!多分おっさんにビビって出てきてないだけでボスもその辺に居るヨ!」
「ボスの威厳とは」
「でもなんでゴブリン達がおっさんに群がっとるんや!」
「それはこの妖精がモンスター使役してるだけだよ」
「それモンスター側のスキルやないけ」
「うるさいヨ!そもそもこいつらがおっさんに敵意向けてるから操りやすいだけだヨ!決して我がモンスターだからではないんだヨ!」
「そのまま押さえ込んでおいてください!僕も魔を滅す晴天斬りでコウルさんから酒の成分を弱めます!」
「ちょっとユーシ、その技我の近くに寄せないで、肌がピリピリするヨ」
「やっぱモンスターやないか!」
「うるせぇヨ!ゴブリンを肉盾にしてかませ!ユーシ!」
「はい!シシャエル、援護頼みます!」
「おお!ゴブリンAが右手の振り下ろしを二回耐えて!」
「ゴブリンBは左手のチョップを三回も耐えよった!」
「そしてユーシくんが足で小突かれて吹っ飛んだぁ!」
「ゴブリン以下だヨ」
「詰みだね、じゃ、死のうか」
「諦めるのはまだ早いで!あれを見てみい!」
砂煙から一回り大きく目つきの鋭いゴブリンが現れた。
「ユーシくん、あんな醜い姿になっちゃって⋯⋯」
「ちゃうわ、あれがここのボス、しかも滅多に現れないとされるエースゴブリンや!あいつなら勝ち目あるかもしれん!」
「シシャエル、あいつも操れる?」
「ムリだヨ、でもどうやら部下のゴブリンがやられた怒りでおっさんに立ち向かうつもりみたいだヨ」
「部下をおっさんに向かわせたんはアンタやけどな、てかなんでそんな気持ちが分かるん?」
「うーん、なんだか共鳴するみたいな気がするヨ」
「やっぱお前モンスターやんけ、ま、今更ええけどな」
「エースゴブリン!これを使って!」
オイハナがエースゴブリンに託したのはユーシの剣と、盾にするには少し小さい気もする板、もといギルドカードだった。
「なんてもの託してんだヨ」
「晴天斬りのスキル付いてるからちょっとピリピリするかもー!」
「そっちじゃねえヨ!?」
「でもなんか剣と盾を構えてると⋯⋯」
「「勇者みたいだな!」」
「エースとはいえゴブリンなんやけど」
「僕を放っておいてよくそんなこと言えますね」
「あ、お前らユーシくん起きたで、って聞いちゃいないやん」
「ゴブリンがぁ!防いでぇ!ゴブリンがぁ!ダンジョン端ぃ!」
「ゴブリンがぁ!近づいてぇ!ゴブリンがぁ決めたヨぉー!!!」
「ぐわァァァァ!!!!」
「ほなエースゴブリンも標的がこっち向く前に倒させて貰うで」
「「エースゴブリィィィィィン!!!!!!!」」
コウルとエースゴブリンが共に床に倒れ込み、狂った戦いは終わりを告げた。
「あァ?なんだ俺寝てたのかァ?まだひと瓶も飲みきってなかった気がすんだけどよォ」
「あ、おっさん起きた、殴るぞ」
「了解だヨ!」
「なんだ寝覚めにてめェら、おらァ!」
「「ぐえっ返り討ち」」
「これは背後から殴られるのも納得やわ」
一行はコウルとエースゴブリンを討ち取った後、気絶しているコウルと素材を回収するとダンジョンの防衛システムにより外に打ち上げられたのだった。
「さすが『廻魔酒』が封じられとったダンジョン、警備が厳重やね」
「まあコウルのおっさんがほとんどぶち壊したんだろうけどね」
「さてはこのおっさんかなり強いんだヨ?」
「ダンジョンから打ち上げられる、ダンジョン追放⋯⋯」
「なんか言ったか?」
「いえほんとに何も言ってないです本当に」
「と、いうわけでアンタは酒の魔力に取り憑かれて暴れとったわけや、まああの酒の魔力に見せられるのはしゃあない、気を落とさんことや」
「こいつは本能のままに酒を飲んだだけなんだよなぁ」
「おうそうだァ」
「そうなんや」
「まあでも、『廻魔酒』が一本限りやなくて良かったわ、おっさんとの別で一本くすねてこれたんやし」
「ちゃっかりしてますね」
「ああもちろん報酬は山分けでええわ、ウチはお宝が実在するか見たかったってのもあるからな」
「じゃあそれ飲むかァ」
「なんも聞いてねえよな酒カス、まあこっちも依頼のゴブリンの肉と皮手に入れたから大丈夫、エースゴブリンのだけど」
「依頼内容今初めて聞いたんですが」
「言ってなかったっけ?まあ無事解決したのでOK!」
「ほな⋯⋯ギルド行こか?てかなんか眠っ」
「というか⋯⋯めちゃくちゃ朝焼け綺麗ですね」
「うん、そっか⋯⋯そんなに時間経ってたん⋯⋯だね」
「よし、みんな寝るヨ」
ギルドへはたっぷり寝た後に向かったのであった。
「いや俺さっき寝てたから眠くねェんだが」
「黙って寝かせろ酒カスゥ!」
追放者ども初のダンジョンは関西弁追放者とゴブリンと共に、パーティーメンバーをぶっ飛ばして無事に完了!
いやなんだこれ




