12.ひったくり追放
訳あって追放された四人の冒険者。
彼らは酒の勢いのまま意気投合し、パーティを組んでしまった。
テンプレ追放者のオイハナ、ザコ勇者のユーシ、カス妖精シシャエル、飲んだくれおっさんのコウル、
そんな追放されて当然だったような彼らのろくでもない冒険のお話
前回のあらすじ
ホワイトドラゴンのホワちゃんによりギルドが全壊した。前回だけに。
「やかましいあらすじが帰ってきた」
「いやー、一仕事終えたあとの飯は美味いねぇ、シシャエル」
「お小言ユーシも酒臭おっさんも居ないしヨ」
「にしても大きめの財布とか買わなきゃなー、今んとこ麻の袋に入れてるだけだし、ひったくりに会ったら大変だ」
「どうも、ひったくりデース」
「大変だ」
「ヨーひったくり、あんま名乗らない方が盗りやすいと思うヨ」
「なんでお前はそっち側の目線なんだ、フッ!にしても相手が悪かったね。私は両手でお金を抱えてるんだ、何なら丸まって隠しちゃうもんねー」
「外であんまそういう格好すんなヨ、恥ずかしいから」
「しょうがないデース、ここは引くデース」
「まじで何だったんだヨあいつ」
「はんだっはんだほうへ」
「丸まりすぎだヨ」
「へー、ひったくりを名乗る変な女性が」
「そーなんだよユーシくんー、まー何も盗られてないし?ほっとこうかなって」
「なるほど、そういえばいつも小脇に抱えてるギルドカード兼盾が見当たりませんね」
「いつも小脇に抱えててギルドカードでもあるから私達が冒険者として生活する上で必需品かつ再発行にかなりお金がかかる盾は……無い、なんで」
「……盗られたんじゃねヨ」
「あいつだあいつ!追っかけるぞぉ!」
「もっと早くに気づけやァ」
「デスデスデスw最近噂の追放者ども、こないだのからあげ騒ぎでかなり儲かったと思えばあんなはした金を必死に守るレベルとは思わなかったデース」
「嫌がらせにその辺に置いてあった盾でも盗ってきてやったデースが、なんかあいつらの顔描いててキモイデース」
「おい待てやひったくりぃ!」
「ひったくりじゃなくて置き引きじゃないですか!?」
「どのみち盗っ人だァ!」
「そうだヨ!人の物を盗むのは悪いことだヨ!」
「悪いことだと分かってんならちょくちょく僕の私物くすねるのやめろ?」
「か、借りてるだけだヨ……」
「チッデース!もう追いつかれるとは!まあお前らなんかに捕まる訳ないデース!さらば!」
「デースデースうるせっ!てかもうあんな遠くに」
「ありァ違法飛行魔法だなァ、低空飛行しか出来ねェがくそ速ェって聞いたァ」
「ちなみに何が違法なの?」
「合法じゃねェんだろ」
「なるほど」
「てかそんなこと言ってる場合じゃない!どうやって追いかけるんですか!?あの盾個人情報の塊ですよ!?」
「個人情報が書いてあるものを盾として使ってるのがおかしいんじゃないかヨ?」
「うーんでも私達はもう追いつけないし、あいつが町の外の平原のどこに行くかも分からない。かといってここから追いつける知り合いなんて……」
「おーい!姉御に先輩達!お久しぶりでーッス!」
「我が主カケル、今日の走行距離はいささか短くないか?私はもう少し走っても……」
「居た」
「こいつらは異世界からやってきた少年とトラック、名前はトヨダカケル君とトラック!ひょんなことから私達の弟子となり今はトラック運転手と冒険者の二足のわらじだ!ちなみに少年だけどチートスキルのおかげで免許はあるみたい!そして実は私も異世界からの」
「虚空に向かって話してるヨあいつ」
「誰に向けた説明なんだァ」
「とか言ってる場合じゃない、カケル君!ちょっと今かくかくしかじかで力を貸して欲しい!」
「かくかくしかじかッスね!了解ッス!是非乗ってくださいッス!」
「ありがとデッス!」
「混ざってる混ざってる」
「乗ったのはいいんだけどなんで荷台の上?」
「すみません、まだ運搬の仕事中で、荷台の中がそのままなんッスよ。でも下ろしてる暇は無いッスもんね、行きますよ!」
「待って待って、まだ心の準備がうごぁっ」
「ユーシ気絶したんだがァ」
「落としたら死にそうだし小脇に抱えといておっさん、にしてもホワちゃんの暴れっぷりを耐えたってのに情っけないねー」
「そうだヨ!冒険者たるもの絶海の岸壁に地獄の果て、絶望の地の底だって耐えなきゃだヨ!」
「それは私達も死ぬんだよ見栄張んな」
「やっぱりその辺行っとくといいッスか!結構景色も綺麗でしたよ!」
「冒険者歴二ヶ月なのに到底先に行かれてる」
「地獄を百四十キロで飛ばした時は最高でありました!」
「しかも全速力」
「おーい、ひったくり見えて来たヨー」
「ゼェハァ、ここまで来れば奴らは当分追いつけないデース、あとはゆっくりと」
「ブンブンブーン!!!我が巨体の餌食となれぇ!」
「うわなんかヤバいやつ来た、違法魔法発動」
「あまりのショックで語尾忘れてますよあいつ」
「うっせぇトラック!もう少しで轢けるところだったでしょうに!」
「ですってよ我が主」
「なんで俺に言うんスかハンドル離すぞ」
「お前ら!なぜ追いついたデース!私は違法飛行魔法の使い手!そんじょそこらの奴らに追いつかれるわけがありませんデース!まさか近頃噂の転生デースか!」
「はははそうさ、私も君と同じく速度制限を外した違法車なのさぁっ!」
「せめて異世界の特典であってくれない?なんで元からこれなんスか」
「そもそも転生じゃなくて転移で……」
「カケルゥ、酒飲むかァ?」
「飲酒運転だろヨ」
「ちょっ、一旦全員黙ってください、七人も居るから誰が何喋ってるのか分かんないです!」
「トラックは人じゃねーヨ」
「その理屈だと五人か……」
「ヨ?」
「まーまーユーシ君落ち着いて、とりあえずそこのひったくり!私の盾返してもらうよ!」
「いやデース、どうしてもって言うなら止めてみろデース」
「しゃーなし、カケル君轢いていいよ」
「やめろデース」
「てかそれだと盾まで粉々になるんじゃないッスか?」
「たしかに、どうしましょ」
「とりァえず上は取れてんだしなんかぶん投げんぞォ」
「卑怯デース」
「ひったくっておいて卑怯もくそもない!くらえスキル『追放』!」
「まーた歯磨き粉のカス飛ばしてるヨ」
「いつの間にそんなスキルがッス」
「えーと、まあなんか寝て起きたら手に入ってましたよ」
「軽くないッスか?」
「ぐわっ、なんか髪色が白くなったデース」
「やっぱ白くなるだけか、ホワちゃんみたく性格までは変わんないなー」
「人の髪をスキルの実験に使うなデース」
「おォ、ついでに酒色にも染めてやるよ」
「ぐわぁー!酒瓶くそいてぇデース!」
「不法投棄、つーかひったくりも避けたらどうなんだヨ」
「デース?普通に直進しか出来ないデースし、止まるのも結構時間かかるデース。アホ妖精にはそんなのも分かんないデースか?」
「違法ゆえの脆弱性」
「なんか惨めだし煽られても何とも思わんヨ」
「ぐぬぬ、だからお前らのスタミナ切れを狙ってると言うのにデース!」
「全部喋るじゃんさっきから」
「よーしならチマチマ上から攻撃し続けてやるか」
「おるァ」
「ちなみに我が主、私はあと数分で燃料切れとなります」
「だそうッス」
「チャンスデース」
「早っく言えよ!あ、ひったくり地平線の彼方に行った」
「しょうがないじゃないですかー仕事終わりなんッスもん」
「ふぅ……ちなみに燃料切れなのはこのトラックが例のごとく暴走したせいだよねー?」
「は、はいッス」
「そんでもってこのトラックはハンドル握られると性格変わるタイプだったよねー?ならハンドル無い方が平和じゃないかなー?」
「たしかにそうッスね」
「待てオイハナ殿、何を考えて」
「とりあえず今この状況で……ハンドル要る?」
「要らないッスね!」
「よっしゃハンドル追放飛んでけぇ!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!やめろぉぉぉ!!!」
「いやハンドルから手を離せば良いだけ……なんか前方に飛んでいきましたね」
「ゼェハァ、ここまで来れば……さっきもこれ言った気がするデース。でも魔法も切って森の中に隠れたしもう見つかるはずが」
「……なんか飛んでき」
「おーい皆!ひったくり居ましたよー!にしてもまさか当たるとは……」
「ふふん、何故ならハンドルは運転手を目的地に導く物、追放されてもその心意気は残ったようだね」
「そこまで考えてたんスね!さすがッス!」
「いやさっき思いついた」
「だろうなァ」
「にしてもひったくりめちゃ気絶してんヨ」
「うわぁ、顔面でモロに食らってますよ可哀想に。それはそれとして盾は返してもらいますね」
「……絵面がぶちのめしてから金品を盗む輩だ」
「思ったけど言わないでください」
「なんか寒そうだし毛布でもかけといてやるねー」
かくしてひったくり騒動は一件落着したのであった。
「ではない!早く私のハンドルを直してくれ!でないと運転されている感覚がなく!私は狂ってしまいそうだぁぁぁぁ!!!!」
「もう一日くらい外しといてやろうかな」
「十分狂ってるだろァ」
「我の絞り汁無きゃもう動けないクセにヨ」
「変速じゃなくて変態ですね」
「「「「「……」」」」」
「なんで僕だけスベったみたいにするんですか」
数時間後。
「おい起きろ、おいおいおいおいおい起きろ。」
「往復ビンタやめるデース……zzz」
「おいおいおいおいおい」
「イデデデデデース」
「……そうデースか、私気絶してたんデースね」
「おいおい、お前の速さに追いついて顔面ぺしゃんこにするとか、追放者どもも結構やるんだなぁおい」
「追放者どもじゃなくてバカでかい鉄の塊だった気がするデース、てか頭打って記憶が飛んでるデース」
「47番、129番は見つかったか」
「おい1番、見つかりましたよ」
「見つけられたデース」
「129番、勝手に奴らと接触するなと言っただろう。それに何だ、髪まで染めて」
「これは奴らにやられたデース、まあこれから潜入任務だし丁度いいデースよ」
「おいおい、そういやそうだったなおい」
「その事はあまり外で口に出すナ、俺たち魔王軍第二部隊は陰に潜む者。それにこの任務が我が魔王様の命運を分けるのだ」
「おいおい口に出してますぜ」
「出してるデース」
「……まあいい、どのみちあの追放者どもとは深い因縁があル」
1番は地平線の彼方に消えた車の光を睨む。
「次会う時は絶望の底に叩き落としてやるぞ、追放者どモ」
「おい、それじゃあ帰りましょうかぁ」
「今はクールに決めたところだったのだが」
「そんなことより!人間に紛れる時の名前考えるデース!私はもうあいつらに名乗ったし『ヒッタクリ』でいくデース!」
「人のことはあまり分からないがそれは蔑称なんじゃないか」
「おいらは『オイラー』で行こうと思いますおい」
「てかこの毛布かけてくれたの誰デースか!ハッ!きっと私の運命の相手デースね!」
「……もう好きにしたらいいんじゃないかな」
「ッ、なんか同じような苦労人の気配が」
「そんなことより毛布あげちゃったから寒いんだけど、夜は冷えるしユーシ君のギャグは寒いしで」
「分かりましたからもうイジらないでください……」
かくして追放者どもと魔王軍の因縁が産まれたのであった。
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