06話 "過去”それは苦痛である
「暗殺者のことについて少なからず判明したことを報告します」
ネイルが朝一番私の部屋に入りそう告げた。そして私はその時に驚きと少なからず喜びの感情があった。
私は嬉々としてネイルに話の続きを促す。
「まず、あの黒装束の男について。ここ数ヶ月での王都の暗殺事件について情報を洗い流した時にこの男の目撃情報が騎士団に多く寄せられていました。なのでこの男はここ数ヶ月の間に王都で活動を続けていたと推測できます。そしてその標的の多くがメイ様と多少なりとも接点のあった者たちです。しかしこの接点はメイ様が声をかけた、メイ様と会話したなど小さいことでした。」
なるほど。つまりあの黒装束の男はここ数ヶ月この私の周りを調べていたわけだ。変態か!
冗談はさておき、これで一つ確定したことがある。私は少し小さめの声を部屋に響かせた。
「つまりアイツは私を狙っていたわけだ。」
ネイルは何も隠さず頷く。つまりあの黒装束の男は表では何の利用価値もない私のことを殺そうとしていた。
”表では”だけどね。つまり敵は私に利用価値があると踏んでいる。
それも殺して得る価値を。
私は一瞬2年前の嫌の記憶を思い出したがすぐに忘れようと頭を激しく振る。
とにかく今回で判明したことは、あの暗殺者は私を狙っていたと言うこと。
相手は私の正体に気づいていると言うこと。そして相手のことを私たちはよく知らないと言うこと。
最後は相手がとても強いと言うこと。
これが今回判明した事実だ。まず最後の相手がとても強いと言うことに関してはそう言いざるをえない。
まず私たちメイドの戦闘能力は末端でもこの世界のトップクラスだ。
表では皆一流と言われるぐらいの力を持つだろう。もちろん私みたいな例外もいる。
そして私とは真反対の例外もいる。その意味は圧倒的な強者だと言うことだ。
そしてネイルはこの組織でも10本の指に入る実力者なのだ。
そのネイルがあの暗殺者には遅れをとった。
なので私の中でのあの黒装束の男の査定は結構強い方だ。
しかし一番不可解なのが相手が私の正体を知っている可能性だ。
だがそれはありえないと思いたい。
これまでもメイドたちの正体を表に出さそうとしてきた協力者もいるがその全てを阻止してきた。
しかし今回は、、、
よしまずあの暗殺者から見つけなければ。そこで私は罠を仕掛ける。その罠の内容とは、、、
もちろんいつも通り過ごす事。
なぜかって?まずあの暗殺者の心中を予想しよう。簡単に説明すると
『やったー依頼をこなしたぞー=あれ?あのメイドまで生きてる=もう一回殺そー』
こんな感じだ。
簡単すぎるけど暗殺者にとって仕事を完遂できなければ次の仕事は入ってこない。
つまり自分や家族の生活、はたまた所属する組織の信頼などなど、色々なものを失いかねない。
なのであの暗殺者が私がいつも通りだと聞くと最低でも様子は見にくるだろう。そこを狙う!
「ネイル。明日王宮と後宮の周りにメイドたちを潜伏させなさい。そして獲物がかかったら捕縛すること」
私は優雅に紅茶を啜っていたネイルに命令を下す。
「わかりました」
といいネイルは部屋を出た。
この作戦が上手くいくかどうかで私たちの今後の立ち回りが変わる。
慎重にことを進めなければ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺の家は貧乏だ。父親は長男の俺が生まれた頃戦争に行っており戦場で戦死した。
そして母は数年前肺炎で亡くなった。
本来なら死ぬような病ではないが貧乏なため薬や医者に見せることはできない。
貧乏な平民の家庭なんてそんなもんだ。しかし俺は世界を憎んだ。
親がいないでどうやってこの世界を生きていけというのか?
俺はゴミ箱を荒らし、カビたパンにしゃぶりつき、もちろん泥水も啜った。
そして家は少し大きめのフニャけたダンボール箱。何度死にたいと思っただろう。
しかしいつでもこの苦痛より死への恐怖が勝った。俺は一歩踏み出せなかった。
そんな惨めな生活から俺を救ってくれた”あの方”には感謝しても仕切れない。
そして”¥#$&”には私と同じ境遇の子がたくさんいた。
お互いの傷を慰め合い仲良くなるには時間はいらなかった。
そしてその組織で俺は”がんばった”。”がんばった”。”がんばった”。
そして人を殺した。
最初の頃は殺した頃に吐き気がしたが今では少しの動揺もしない。
そして同期の中で残ったのは俺を含め数名だった。
仲が良かった、あの子も、あの子も皆、顔と名前が思い出せない。
記憶が黒く塗りつぶされている。いや塗りつぶされている記憶はそれだけではない。
母の記憶もあの方も組織の名前もそして”今も”。
すべて思い出せない。まるで長い夢でも見ているようだ。
そして野原で俺は母と同期の友達と走っていた。しかしそこに”あの方”は、いなかった。
そうかまだこちら側にいないんだ。でもこれでいい。
俺は思い出せない”今の”記憶の中で黒髪黒目のメイド服を着た女の子と話した。
そこには銀髪のショートカットの女の子もいた。
彼女らは俺のことや組織について知りたいようだった。
しかし、なぜ俺は捕まっているのだろうか?
だがこれが心地いい。
何かから解放されるようだ。
そして俺は川を渡った。
そこで彼の意識は途絶えた。しかし彼は幸せだった。




