05話 ”目覚め”それは始まりである
何か唇に柔らかい感触がする。何だろう。少し温かい、、、
そして私は目を覚ました。その目の前にはネイルの唇があった。まさか。ネイルがニッと笑い喋る。
「どうでした?目覚めのキスは?」
「オロロロロ」
私はすぐ洗面台に行き、吐く。
「お前何やってるんだ!」
私はキッとネイルを睨む。ネイルは言い訳を続ける。
「よく言うじゃないですか。姫が目覚めるには王子の目覚めのキスが必要だと」
「お前は王子じゃないだろ!」
私は至極当たり前のツッコミをする。そして吐き続ける。そしたらネイルが衝撃の一言を発する。
「まあメイ様、私の初めてに免じて許してください。」
「オロロロロ」
もっと勢いがました。いらん情報でトドメを刺すな!
ガチでオロロロ。く、うまく頭が回らない、、、
そして私はまた気絶した。また暗闇の中で音が聞こえる。
「メイ様起きませ・・・」
メイドの話し声が聞こえる。そしてネイルの声も。
「では私がまた目覚めのキスで、、、」
ネイルがそう言いかけた途端、私はベットから飛び起き、そして魂から叫んだ
「やめろ!!」
ネイルが少し驚いた様な顔をした。一回落ち着こう。まず私の状況を、はっ!賊は?
「ネイル!私を刺したあの黒装束の男はなんだ。」
「あの後私たちも裏から追いましたが途中で見失いました。」
「そうか、、、私の傷は?」
「それはリンさまが治癒魔法で治癒しました。それとあの男が使っていた凶器には少量の毒成分が塗られていたと思われます。」
「毒、、、」
普通毒を使う時は特定のものを暗殺するときに使う。そして今回は毒が使われていた。それはつまり
「あの暗殺者、私を狙っていたのか?」
「その可能性が高いと思います。」
ネイルが頷く。それより私が驚いたのは
「てか、リンが私を治したの?」
「はい」
ネイルが単刀直入に答えた。
「あの”魔術数学”オタクでよく仕事もしない引きこもりが!?」
「ひどい言いようですね、、、」
リンとはメイド長の一人で圧倒的な魔力そして類を見ない魔法の才能がある。つまり天才である。
ちなみに二つ名は魔導。魔導のリン。うん、やつにピッタリだ。
しかし引きこもりでメイドの仕事を少しもしないリンは簡単に言うとニートである。
そして魔法を使う時以外は部屋もとい研究室から出ない。
自分勝手なやつだ。
ちなみに魔術数学とは何なのか。私も詳しくは知らないがまずこの世界で魔法は魔力を使い、起こすいわば事象そのものを指す。
そして魔術はその魔法という事象を引き出す前の過程らしい。らしい。
そして魔術について研究や、時にはその魔術について解明したりなどをする科目が魔術数学なのだ、という。
私が知っているのはそこまでだ。何でも普通の数学とは少し違うらしい、その程度の認識だ。
ちなみに私には何が違うのかさっぱりだ。私は頭がいいが魔法方面についてはさっぱりだ。
まあリンには助けられたし後でお礼を言おう。それより
「私を刺したこと後悔させてやる」
私は少し声に怒りを滲ませながら言う。
「そうですね。メイ様を刺すなんて、アイツは腹ワタを引きずり出して辱めるしかないですね。」
もっと怒っている奴がいた。
「いや、そこまでしなくていいよ?」
私は少し引きながら言う。やはりネイルは少し、いや、極端に過激思想だ。うん、ネイルを怒らせるのはやめよう。
「今はまずあの黒装束の男の所在を追うぞ」
「わかりました。では諜報部と連携しあいつを探します。」
そしてネイルが部屋を出る前に振り返り少し心配そうな顔をする。
「さっきの、あの暗殺者は明確にメイ様を狙ってたんですよね?」
「そうだな」
「それってつまり相手にとってメイ様は重要人物という事ではないですか」
「そうだな。つまり」
「”私の裏の顔”が相手にバレている可能性がある」
私は少し重い表情で言う。
「わかりました。失礼します。」
ネイルは部屋を出た。部屋には少し重い空気だけが残った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから三日が経った。私はあの暗殺者のことを少し気にしながら仕事を続けている。
貴族たちも私に少し気を遣っているのか、いつもみたいに威張り散らしていない。これはこれで良いか。
それより私は体を治してもらったお礼をする為にリンの部屋もとい研究室に足を運んでいる。
まあ一応命の恩人だし、この王都で一番有名な英雄”ヨル・グランド”が経営している店”ヨヨルポート”で売られている高級のケーキを渡しに行こう。
よし、あの部屋だ。
ちなみにリンの研究室は王宮ではなく後宮にある。
私は研究室に入る。うわ汚な!
少し見ない間にこの散らかり様である。色々計算式が書かれている紙とかが地面に散乱している。
それに単純に埃っぽい。
そしてベットに横たわっている一つの人影があった。
少し長く濃いめの茶髪は乱れていて太陽の光のように透き通るような白い眼。
顔を整えさせれば美人だと思うがこの状態だと、少し変人に見える。
「リン。私、メイが来たよ!」
私が声をかけるが目覚めない。
「おーい」
無反応だ。私はリンに近づきリンの体を揺らす。
最初は優しく。それでも起きなかったらもう少し強める。
”それでも”起きなかったら頬を優しく叩く。
「う、なに?」
リンが白い瞳で私を見る。私はその目に見惚れる。は!違う違う。
「あの、これ前回助けてもらったお礼。おりがと。」
私はお礼を言いながらケーキを渡す。
「ああ、あの事ね。良いよ別に。私も新しい魔法試したかったし。」
無気力な声だ。まるで喋る気がない。
「ケーキは、テーブルの上に、置いといて」
「めっちゃ散らかってますけど、、、」
テーブルの上は見ていられないような状況だ。ペンと紙が散乱している。
私はテーブルの上だけでも片付けケーキを置いた。
「ケーキ置いといたから、後で食べといてよ?」
「んー」
適当な返事をしリンはまた眠りについた。
私もリンが眠りについた後、部屋で散らかっている紙を踏まないように歩き部屋を出た。
いつも読んでくれる読者の皆様ありがとうございます。私が活動を続けられるのも読者の皆様のおかげです。少しでも「面白い」「続きが気になる」と思って下さったなら、ページ下の[ブックマーク]や[星の評価]で応援よろしくお願いします。




