03話 ”男爵”それは不審人物である
「なんか怪しいと思うの」
私は執務室(メイド長室)でネイルにつぶやいた。
「なにがですか?」
ネイルは掃除の手を止めて私の方を見る。その目はこいつ何言ってるんだ、と言いたそうな目をしていた。
私は少し気まずくなりながらも話を続ける。
「あの男爵だよ!お前は怪しいと思わなかったのか?」
ネイルは少し呆れたように口をひらく。
「そうですか?私から見たらただ酔っ払っているようにしか思いませんでしたけど。お酒の匂いもしましたし」
私は予想していた通りの答えが来たので少し調子に乗った声を上げる。
「チッチッチッ」
ネイルは少し驚いたような顔した。
「酒の匂いに惑わされたらダメなんだよ。あの男爵は明らかに強い意志によって行動していた。」
「後宮に行くのが命と同じくらい価値があるのですか?もしそうなら男爵は天性の変態ですよ」
ネイルは吐き捨てるようにいう。
「違う違う。あの男爵は何かに怯えていたんだと思う。つまり何者かに後宮に入るように指示されたんだ。多分。しかもその指示した人物は貴族でさえも断るのが厳しい相手。さらに皇帝までも敵に回にまわすほどの、、、」
「なるほど。調査の必要があるようですね」
ネイルが納得をしたような表情を見せた。それに申し訳なさそうな顔も。
「すみませんでした、メイ様。メイ様を疑うような真似をして」
「いや、全然大丈夫。少し説明もしたかったし」
「では諜報部に連絡しますか?」
「ああ、よろしく。それならエイカに直接言っといてくれない?」
ネイルは少し困ったような顔をして、私の顔を覗き込む
「わかりましたが、、、あの方はどこにいるのか見当もつきません」
「そうだった」
私は目を腕で覆う。
エイカとはメイド長の一人で、二つ名は 放浪。主に諜報関係の任務をしている。
しかしエイカは放浪癖が激しく世界のどこかにいるのかわからない。そのため諜報部とは連携をしにくいのだ。
私は自分が命令した事を考え直した。
「・・・やっぱり諜報部のメイドたちに報告しといてくれ」
「かしこまりました」
そうしてネイルは一礼し部屋を出た。私は窓の外を眺める。
こんなにのどかな昼時なのに考えていることはとても疲れるようなものばかりだ。
「はあ」
私は小さくため息を吐き、また仕事に戻った。
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それは私がネイルに男爵の調査をお願いして三日後の朝だった。私は自室のベットで休眠をとっていた。ノックが聞こえる。
だが私は今日は仕事をしたくない為そのノックを無視する。
「メイ様〜聞こえてますよね?男爵についての調査報告が上がっています。」
ネイルの声が聞こえるが無視する。
「メイ様?」
クールな声だ。しかし私は返事をしない。
「失礼します」
うお!こいつ!ついに部屋に入ってきた。。超えてはならない一線をこいつは簡単に超えた。
私はベットの上に起き上がる。
「やはり起きていましたか」
「わ、私は今日は有給を取る!」
私は高らかに宣言した。誰にでも休みは必要なのだ。もちろん私にも。ということで有給を所望する。
「ダメです。今日は他のメイド長の皆様も有給を取られているのでメイ様には働いてもらいます。今度代休を取ってください。」
「ヤダヤダヤダ」
私は駄々っ子のように足と手をバタバタさせていう。そしたらネイルが胸元から何かを取り出した。
「そ、それは、、、」
私はその書物に見覚えがあった、、、ネイルが恐ろしい笑みを浮かべてその書物の名前を言う。
「空蝉の書」
私の体にその言葉がのし掛かった。私はなんとか声を出した。
「ネイル、なぜそれをあなたが、、、」
私は口調を丁寧にし、ネイルを刺激しないようにいう。
「ベットの下に隠されるように置いてありました」
それは隠していたからね!!そしてネイルが最初のページを読み上げる。
『我が他の人間と違うと言うことに気づいたのは14歳の頃だった。きっかけは私の左腕に何かが封印されることに気づいたことだ。以来私はある組織に、』
「やめろ〜!」
私は少し涙目になりながらネイルからその書物を奪い返そうとする。そしてネイルは少し喜んでいた。
この空蝉の書は私が14歳の時、気の迷いにより書いたものだ。
あの時の私はどうかしていたと思う。しかし書かずにはいられなかった。
簡単に言うと思春期の悲しき産物である。
なぜなのだろう。今では過去の自分の行動に疑問を感じる。
そして処分することも恥ずかしくて出来ずに隠していたと言うのに、、、
「ネイル!今すぐその本返せ〜!」
私は大きな声を出しながら部屋で逃げ回るネイルの背中を追う。
しかし私は運動神経が壊滅的な為もちろん取り返すことができなかった。
私は空蝉の書を内緒にしてもらう代わりに、今日も執務室に足を運んだ、、、
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男爵のことについてだが、もう結構怪しい。
まずあの男爵は養子だったのだ。
しかも当時のニリミアン家には当主と正室の実子である男子もいたのにずわざわざ養子を入れその養子を当主にするなど、怪しいと言わざるもえない。
しかしその実子に問題があったのかもしれない、と言うことでその実子の事について調べたが、もう”死亡”していた。
ちょうど養子の現当主が当主になったのと同じタイミングで、、、
これは何かある。もう少し諜報部には情報を集めてもらいたい。
「ネイル、引き続き調査をお願いして」
「わかりました」
そしてその男爵の処遇を決める会議を三日後に控えていた、、、
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痛い。苦しい。やめて。ああ、この世界に神様はいないんだ。だってもし神様がいたら、こんな私を見捨てるはずがない。
私は見知らぬ男に殴られ続ける。何人も私を見るが助けようともしない。見て見ぬふりをして通り過ぎる。
だがそんな事はわかっていた。こんな小汚く利用価値がない少女のことなど誰も助けようとするはずがない。
そのはずだった。私は1人の女性に助けられた。
そしてその人は王宮勤めのメイドの制服を着ていた。
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そしてメイは目覚める。そして悟った。自分は自身の過去を夢の中で見ていたことに。




