27話 ”緊急事態”それは突然である
彼はガルトリア帝国の兵士である。彼の勤務先は国境の監視だ。今日も今日とて高台に登る。
しかしこのガルトリア帝国に攻め込むほど愚かな国は今はいない。なので彼の仕事はただ一日中ぼんやりしていてもいい簡単な仕事だ。
しかし今日彼は大変なものを目撃する。大きな砂埃。規律性がある足音。それに大勢の人影。
そう何かがこちらに向かっているのだ。そしてその人間たちは穏やかな様子ではなかった。
ここ国境には大きな防壁が反り立っているが魔法と兵士たちに対してどのくらい耐えられるかはわからない。
そして砂埃がはれ人影の全容が明らかになった。
そしてその姿は鎧を着ている兵士と杖を持っている魔法使いたちの集団だった。そして皆武器を抜いている。
これはアレだ。
戦争である。
そしてこの報が帝都に届いたのはこれから30分後のことだった。
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議会で貴族たちが集まったのはその一時間後だった。今帝国には軍の最高司令官でもある皇帝がいない。
つまり今回の議会で対策が決まるのだ。各貴族が様々な思惑をもとに議会が始まる。
今回の議題は最終防衛ラインの設定やどの軍を派遣するかなどなどを決める。最初に動いたのは軍事派だった。
軍事は代表とも言えるグンジ伯爵が提案をする。
「なあみんな今回は緊急事態だ。今は皇帝陛下もいないしよ?だからここで緊急の布告を出さないか?」
それを宰相派の一人マカロン・シルリアット侯爵が反対する。
「陛下がいない。その時点で布告を出すこと自体も叶わないと思うのだが?」
グンジ伯爵はマカロン侯爵を睨む。軍人が睨むと大抵の貴族は折れるがマカロンは違った。
逆にグンジを睨み返す。
ここで宰相派がマカロンに同調する。こう言うところは脳筋な軍事派が真似できないところだ。
しかし軍事派には切り札があった。
「では我々、軍令部は軍を派遣しません。あそこは宰相の領土です。ご自分の兵士で対応なされては?」
そう皇帝がいないと言うことは軍隊で大将軍を務めるグンジ伯爵に命令権が来るのだ。そして今回相手が攻め込んできた領土はゲル宰相の領土だった。
今回は圧倒的に宰相派が不利なのである。そこをグンジ伯爵は巧みに使ったのだが今回は相手が悪かった。そこでここまで沈黙していた宰相が口を開く。
「では軍令部の皆様は自国の民が危機に陥っている状況でそれを見捨てると言うことですか?」
「グッ、」
グンジ伯爵は言葉に詰まる。そして宰相はさらに畳み掛ける。
「それにあなたに軍の決定権があるはずがないでしょう?」
「どう言うことだ!」
グンジ伯爵は声を荒あげる。ゲル宰相は冷静に話を進める。
「ガルトリア帝国憲法には軍事決定権についてこう書かれています。
『ガルトリア帝国の軍事に関する決定権は皇帝が持つがもし皇帝が危篤の状態もしくはいない時や皇帝が幼い時に皇帝が軍事判断をできない時は議会で多数決によって軍事行動をするかしないかを決めれる。一個人に決定権は無い』
と書かれています。なのでこの場では多数決を取ることが正し対応だと思います。」
そして会場には同調の声。拍手、などが宰相派だけではなく、どの派閥に属していないものも賛成を始めた。
グンジ伯爵は顔をしかめた。
そしてその後多数決により今回のことに関して軍事行動をし対応することが決まった。
そしてそこにはメイドたちが干渉できていなかった。
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メイドたちが隣国から軍が来たことを知るのは国境の兵士が敵軍を認識する直前である。
そしてそこからの対応は迅速だった。
正式な情報が届く二十分前にはもうメイドたちは情報を持っていた。しかしそこからの対応が遅れた。
今回は裏方仕事ができるメイド長たちが皆いないのだ。この場の指揮は運営部のソウエイに全て任される。
もちろんウェルはこう言う仕事はできないしリンは興味が無いエイカはどこにいるのかもわからない。
しかしそんな状況でソウエイはよく頑張った。ソウエイが運営部だと言ってもやる仕事は補佐ばかり。
急に大きな仕事を任されても対応は難しい。しかし彼はなんとかやり切った。
協力者のグンジ伯爵に協力を依頼したりもした。グンジ伯爵は怖そうな見た目だがメイドたちからすれば頼り甲斐のある兄貴分である。
しかしそんか彼が議会では手も足も出なかった。グンジ伯爵の対応は全てメイドたちが知恵を出し合って考えたものだ。
その全てをいなされた。あの宰相に。
なぜ今回メイドたちが軍を出すことを渋ったのか。それはもちろんメイド長たちがいないからだ。
もしこの後さらに緊急事態が起きたら彼女たちには対応できない。なのでこれ以上余計なことを起こしたくなかったのだ。
しかし今回の一件でグンジ伯爵の影響力が少し下がってしまった。
それはただただマイナスだ。
それにグンジ伯爵はどちらかというと国民を見捨てられないような人間だ。
今回のメイドたちの対応には少し困ってしまっただろう。
それとメイドたちには宰相の底知れぬ実力に恐怖心が残るだけだった。




