01話 ”メイド”それはこの国の最高権力者たちである
王宮にあるメイド長の一室で私はカーテンから漏れる光を見つめ書類に目を移しため息を吐いた。
私の名前は”メイ”この名詞が苗字でもあり名前でもある。
私はガルトリア帝国の王宮に勤務しているメイドだ。
そしてそのメイドたちの中でも高い地位のメイド長なのだ。本来ならこれで私の自己紹介は終わり。
しかしこの国の王宮勤めのメイドには大きな秘密があった。
それは私たちメイドがこの国を運営していると言うこと。
文字通りこの帝国は私たちが支配していると言っても過言ではない。
しかし私たちメイドは表立って国を支配しているわけではない。裏で支配しているのだ。
そしてそのことは私たちか私たちの協力者しか知らない。もし支配しているのが表面化されれば国は間違いなく混乱するだろう。
なのでこの秘密は隠し通さなければならない。だが実権があるのはメイドの中でもメイド長だけだ。
つまり私たちだけどね。
私たちメイド長は得意なことで役割を分担している。
そして私の役割は簡単に言うと机仕事である。書類に目を通したり人員の分担、はたまた外交、などなど。
とにかく忙しい日々を送っている。だがそれと同時にやりがいも感じている。
ちなみに私たちメイド長は、皆それぞれの個性に合わせて二つ名を持っている。私の二つ名は”智謀”。
智謀のメイ。なんか、カッコいい、、、
と、自分の二つ名にひたるのも良いが、そんなことよりも今重要なことはこの書類の内容だ。
この法案を提案したヤツは、ふざけているのだろうか?
その書類に書かれている内容は驚くべきものだった。
なんと帝国に住んでいる平民の税金をさらに上げると言う事だった。
しかし今でも帝国は平民の税金が他国と比べると高い。なんと稼ぎの6割も持ってかれるのである。
ちなみに貴族は税金免除。
これ以上平民の税金をあげたら暴動が起きるだろう。却下だ却下。
私は書類つまり法案にある皇帝の判子を押すところに何もせずこの書類を議会に送り返すことにした。
ちなみに議会は最近まで名ばかりの組織であった。
私は机の上にあるベルを鳴らす。そして部屋にメイドが一名入室した。
私は部屋に入ったメイドに書類を封筒に入れ渡す。
「これを法務大臣、議会に送り返して。」
もちろんこの書類の差出人は皇帝の名前にしている。
メイドは何も喋らず封筒を受け取り、一礼した後に部屋を出た。
そして私は自分の本当の仕事場に戻る。それは、、、
もちろん王宮の掃除である。表向き私は王宮勤めのメイド長だ。表の業務もちゃんと務めなくてはならない。
メイドの一人が私に近寄ってくる。何かの報告だろうか?
「メイさま。宰相どのが王宮に参殿なされました。」
そして呟くように私に報告をする。
なるほど。と、その前になぜこんな事を私にいちいち報告するのか。
それは国の権力者たちの王宮での案内は基本私たちメイド長の仕事である。
しかし絶対数はメイドより少ないため、裏の仕事と合わせると結構激務なのだ。
「わかった。すぐ向かう。」
返事をし私は駆け出した。そしたら壁にぶつかる。
「ふぎゃ!」
私はだらしない声をあげ床に倒れ込む。いつものことだ。
私はステータス(もちろんステータスなどないが)知力に全振りなため運動神経が壊滅的である。
私は身だしなみを急いで整え、駆け足で宰相の元へ向かった。
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「お待たせして申し訳ありません」
私は一礼し宰相に近づく。裏ではどんなに権力を持っていようと王宮勤めのメイドなど無力だ。
私は怒りを買わないように丁寧に対応している。
しかし私が怒りを買うことはほぼないだろう。なぜ言い切れるのか?それはこの私の美貌を見れば一目瞭然である。
私は目を瞑った時見えるような漆黒の黒髪とそれに少し光が灯ったような黒眼で遠目に見ても「あの人は美人だ!」とわかるような容姿をしている。
それに私は結構若い。今年で15歳だ。
ほとんどの貴族は私に鼻の下を伸ばしながら近づいてくる。
そのような者たちを意のままに動かすなど簡単なことだ。
私がこの技術を身に付けたのは四年前、、、思い出したくもない過去だ。
私はそこで考えを止める。
「こちらにお越しください。皇帝陛下が謁見の間でお待ちです。」
私は丁寧にいい、宰相を謁見の間に案内する。謁見の間とは皇帝が臣下と話し合いをするための部屋である。
ちなみにこの宰相にだけはいまだに私の色仕掛けが通用していない。
だが焦る必要はない。
そのうちにこの男も私の意のままだろう、そんなことを思いながら私は宰相を案内する。
宰相は茶髪で他の貴族とは違い締まった体と顔をしている。結構強そうだ。
他の貴族はほとんどが肥えた豚みたいな格好をしている。
そして私は皇帝がいるとされている謁見の間に案内する。
ちなみに皇帝の顔は御簾によって見えないようになっている。
今、皇帝は謁見の間で宰相を待っている。普通に考えれば臣下が皇帝を待たせるなど場合によっては罪にもなる。
しかしこの男は罪に問われない。それほどこの男は圧倒的な権力を持っているのだ。
今のところは恭順しているフリをしているがいつどこで反旗を翻すかわからない。
私たちの中では一応超重要人物である。私は宰相を部屋に案内し部屋を出た。
そして裏の仕事に戻る。ちなみにこの国に本物の皇帝はいない。つまり宰相がこれから会う皇帝は偽物である。
その偽物はメイド長の一人である。その名は、
「メイさま、緊急でございます」
一人のメイドが私に駆け寄ってきた。
「わかりました」
私はすぐに反応し頷いた。
そして私はそのメイドの後を追った。
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かつてこのヨルグラシア大陸は一つの国家によって統治されていた。その国の名前はガルド帝国。
しかし時が経つにつれ帝国の統治は乱れていった。
そして各地で反乱が発生する。そしてその勢力たちが帝国から独立しそれぞれ国を作った。
そしてガルド帝国は皇帝の親戚が皇帝に禅譲を迫り滅亡した。
そしてその瞬間、現在まで続くガルトリア帝国が誕生したのだ。
しかしその皇家も長くは続かなかった。跡継ぎが生まれず血筋が途絶えてしまったのである。
そしてガルトリア帝国で本当の最後の皇帝”ヨルム・ガルトリア”は帝国が荒れないようにある者たちに国を治める使命を託した。
それが王宮勤めのメイドたちである。
彼女たちはヨルムの願いを守ることを固く誓い言う通りにその後も偽の皇帝をメイドの中から擁立し、国が混乱することを防いだ。
それから100年。彼女たちはヨルムのもう一つの願いである大陸の統一のために今日も暗躍している。




