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13話 ”人質”それは交渉材料である

ネイルは作戦の翌日のメイド長会議である案を強烈に訴えていた。


「メイ様を今すぐにでも奪還するべきです!幸いなことに敵は人質についての交渉日を指定してきました。その時に奴を討ちメイ様を奪還しましょう!」


メイド長たちはいつもクールなネイルがここまで取り乱していることにとても驚いている。しかし動揺するのも無理がない。メイド長の一人が攫われたのだ。たとえ交渉が罠だと分かっていても救出しなければならない。ネイルはそう言う認識だった。しかしメイド長たちは違った。ウェルとフレアはすぐにでも救出するべきだと言った。


「仲間は見捨てねーよ!」


「そうです。こう言う時こそ団結力を見せる時ではないでしょうか?」


ウェルとフレアの意見はもっともである。しかしエイカ、リンそしてもう一人のメイド長の意見は違った。まずエイカの代役のメイドが手に持っている紙に書かれている文を読み上げる。


「エイカ様のお意見を申し上げます。『メイが攫われたことについてはとても残念だ。しかし一人のために私たち他のメイドたちの命を危険に晒す事はできない。なので今回は私は救出作戦には参加できない。しかし情報は提供しよう。』と申されております」


ネイルは唇を噛む。そしてリンも意見を出す。


「メイの事は 非常に残念。 でも皆、死ぬことになったとしても 覚悟は 決めている。 なので今回は しょうがない」


その瞬間ネイルは叫ぶ


「あなた方はなんでそんなに落ち着いてるのですか!仲間だからこそ助けるべきではないのでしょうか!?」


ネイルが机を強く叩きそう叫んだ瞬間その場にいたもう一人のメイの側近であるソウエイが言う。


「ネイル。落ち着け。」


言葉数は少ないが彼の言葉には説得力があった。ネイルは我にかえる。


「すいません」


ネイルは心を落ち着かせいつも通りのクールな雰囲気で答える。まるで人が変わったようだった。しかし彼女の心は全く穏やかではなかった。そしてソウエイが意見を出す。


「自分としてもメイ様を救出したいとは思っています。」


彼は淡々と話す。それに対してウェルが反応した。


「じゃあ今すぐいくか?」


普段大抵のことはよく考えずに行動するウェルが考えて行動しようとしている。その事実に他のメイド長たちは少し感動をした。しかしソウエイはウェルの案を却下し違う案を出す。


「リン様の転移魔法は使えませんか?」


”おおぉ”と声が上がる。


確かにリンの転移魔法を使えば簡単にメイを取り返すことができるだろう。部屋の中にいる、皆がそう思った。


リン以外は。


「それは無理。 転移魔法の対象を選ぶには制限がある。 まず一つは私の 索敵魔法に 引っ掛かる範囲まで。 そしてもう一つは魔力生命体のみ。 最初の条件は多分 達成できる。 でももう一つの条件は 達成できない。 なぜならメイ本人に 魔力がないから。」


魔力がないことはこの世界でも珍しくない。魔力が使えない人間は、利き手が左手の人と同じくらいの数いる。本来ならそれほど悔やむようなことではないが今回は魔力が使えないことがとても悔やまれる。


会議室には静寂が満ちていた。この案を提案したソウエイは少し悔しそうな顔をしていた。その静寂を切り拓いたのはネイルだった。


「やはり正面から迎え撃つしかないかと思います。」


誰も反論はできなかった。最初、異論を唱えていたリンやエイカの代理のメイドも異論は唱えなかった。そしてもう一人のメイド長の代理も何も言わなかった。


それはネイルの案に賛成すると言うことだった。モニカやウェル、ソウエイの3人は満足そうな顔をしていた。


そしてネイルは覚悟を決めている顔だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


私は目を覚ました。そこは古びた教会のような場所だった。少し埃っぽいかった。気絶する前の記憶を思い出そうとする。そして私が思い出す前に声が聞こえた。


「よぉ。やっと起きたか」


私はこの男について思い出した。屈強な顔立ちに金髪でロン毛。黒いロングコートを着けていてもわかるような頑丈な筋肉。


こいつは私を気絶させた男だ。


私は恐怖を理性で抑え込み男と対話しようとする。


「初めまして。ここはどこですか?」


私はまず単純な質問をする。正直、答えを得られるとは思っていない。そこまで敵も馬鹿ではない。私は敵を落ち着かせるために質問をしている。


「ま、そこまで警戒するな。予定が少し変わったんだ。殺しはしねえよ。」


と言っているがもちろん信用できない。


まずまず、こんな組織にいる時点で信用できるような人間ではない。私にできることは


「なぜですか?」


と会話を続けることだった。しかし下手に刺激しないように言葉は選ぶようにしている。敬語過ぎると逆に警戒されてしまうので私は少しだけ丁寧に質問する。


「はっはっはっ!そんなんこと言えるわけないだろう!?あ、でもあの方が関わっているってことだけは教えてやるよ。」


思わぬ成果を得た。今回の作戦に”あの方”と言うやつが関わっているらしい。もしかしたら私たちはもう”あの方”の手の中で踊らされているのかもしれない。私はそんな不安を感じたが今の自分では何も出来ないためそれ以上考えることはやめた。


そしてこいつは結構馬鹿だと言うことがわかった。

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