↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/22

第7話【校長忘れ物】

 校長の来訪から翌日。

 ふたりは校長が置いていった箱に気が付いた。

 校長はさりげなく置き去りにしていった箱。特に会話で触れることはなく少しお話して仕事に戻って行った校長。


「こ、これ……な、なんでしょう」

「なんだろうねぇ……」


 藍良に悪魔の角と尻尾が生える。

 藍良、小悪魔モード。


「ちょっと覗いてみようか!」

「だ、ダメじゃないですか!?」


 思わず大きい声が出た灯里。藍良と会話するようになってから初の大声。

 その声に驚いて目を見開いたのち、思わず笑ってしまう藍良。


「私が責任取ります」


 仕切りなおして、キリッと告げる。そういう問題じゃないが~、と実力行使で留めに行く勇気がない灯里はあわあわと動くのみ。

 その箱に入っていたのは古い教科書や、使い古されたノートがぎっしり積まされていた。ひときわ目立ったのが、先にかわいらしい人形がついた差し棒。

 「おぉ」と声を出しながら藍良はノートを一冊手に取る。


「ちょ、め、妻鳥さんっ」


 ノートを開くと、そこには細かく文字や図で授業の計画書のような内容が書かれていた。教える内容はもちろんのこと、どうしたら伝わる内容になるのか、生徒に興味を持たせるにはどうしたらいいか。

 ここでこういう例え話をするだとか、校長が教えていた当時の時事ネタまで描き込まれていた。


「おやぁ、人の物勝手にいじるとは悪い子たちだねえ……」


 いつの間にかやってきていた校長が低いトーンで声をかける。

 半泣きで戸惑う灯里に対し、


「私が犯人です」


 ときっぱり自白した藍良。


「まったく、悪びれもなしに…。もうやるんじゃないよ」


 と言って校長は箱から一冊別のノートを取り出した。


「……これはね、まだ私が校長ではなかった頃、若くて熱心な教師をやっていたころに作っていたノートだよ。何十年も前の話さ。生徒の情報が載っているのは一番下にしておいて正解だったよ」


 あ、と気づいた様子の藍良。


「個人情報……」

「そう、人のものには見られちゃまずいものもある。わかったら反省」

「はい……」


 やってしまったとしょんぼりとする藍良。

 その様子にため息をひとつついて、


「私はね、この仕事に就いて教えるということに向き合った。何度も教えて直して教えてを繰り返した。人ってのはそう簡単に思い通りにはいかないものさ」


 ノートを箱に戻し、藍良が手に取っていたノートも回収した。

 そして人形のついた差し棒を持ち、


「時には間違ったし、大きな間違いを起こされたこともある。それでも、挑戦して成功した時の喜びは格別なものさ。生徒から教えて欲しいと頼りにされた時には、ノートに書き残したほどさ」


 ピッ、ピッと笛の音が聞こえてきそうなほどメリハリのついた動きで灯里と藍良を差した。引き締まった動きなのに一瞬止まった時の人形が可愛らしい。


「存分に間違えよ、若人よ。若いうちに転び方と起き上がり方を覚えな。いっぱい挑戦していっぱい失敗して」


 校長は微笑んだ。


「いっぱい成功しなさい」

「はいっ!」

「は、はいっ……」


 元気よく返事をする藍良に、釣られるように返事をする灯里。

 それを見て、満足そうにうなずく校長。


「……ババアの説教だと思って話半分に聞いときなよ。歳を取ると説教臭くなっちまう」


 と勝手に自虐的になる。「それと」と付け足して、差し棒の人形で灯里と藍良を突く。


「これはお仕置きだよ」

「体罰です!」

「あんたみたいな悪ガキはお仕置きのひとつやふたつなきゃ反省しないだろ」


 小悪魔と魔女のにらみ合い。その瞳の間には電流が走っているような緊張感があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。