第6話【校長来訪】
いつものように灯里と藍良は秘密の教室に足を運んでいた。
藍良が会話を振り、灯里がどうにか言葉を返す。
少しずつだが灯里の緊張は解けているようにも思えた。
それでも藍良の顔を見ることは出来ていない。
そこに乱入してきた人物があった。
そう、この学校の校長先生である。
初老の女性でありながらも見た目は若く、他校の校長から校長と思われなかったエピソードがあるほどだった。
神出鬼没。関わりがほとんどない生徒たちからは「魔女」とすら呼ばれている。
突然現れては、事情を把握しており問題ごとなら解決して去っていく。
それは魔法のようであった。
そんな彼女は忙しいながらも合間に生徒と関わることが好きな先生だった。普段の仕事で生徒と会えない時間の方が多く、生徒から見るとたまにしか現れないのは当然と言えば当然である。
「邪魔するよ」
少し荒々しい物言いで扉から入ってくる校長。
扉と言ってもいつも灯里たちが出入りしている外扉ではない。教室の壁側にあるどこに繋がっているかもわからない扉から出てきたのだ。
当然灯里は焦るしビビる。ちょっと悲鳴に似た奇声を上げるほど。
「あ、校長先生。お疲れ様で~す」
「うん、元気でよろしい。蛇ノ目さんはカタくならなくていいよ。私も休憩しに来ただけだからね」
「ぇぁ……は、はい……」
校長はそのまま抱えていた箱を机の空いているスペースに置くと、灯里たちの近くの椅子に腰かけた。
灯里は校長とは転校の際に数回顔合わせをしており、灯里の前の学校での出来後含め、事情をおおよそ大体全部聞いている。
サングラス着用の許可も校長の鶴の一声で決定した。
「……こ、ここ、って入って、入ってもいいとこ、ところなんですか?」
ふとした疑問を灯里は投げかける。
その質問に面白いと言わんばかりに笑って答えた。
「ここは私の秘密基地さね。別に構わんよ。」
「秘密基地なんですか?」
「そー、元々はそっち側の廊下に繋がる教室だったんだけどね。何を間違ったか壁にしちまったらしくて、使えなくなったってわけ」
外扉のある方の逆側、一面壁になっている方を指差した。
「あとから外階段と扉を付けて、秘密基地に改造したのさ。まー、こんな裏側の怪しい扉開ける生徒なんて数いないけどね」
くく、と楽しそうに笑う校長。
藍良が持ってきていたお菓子を手に取り、食べる。もちろんいつもの奇妙な味のお菓子だが、校長は平然と食していた。
「妻鳥たちみたいな生徒と関わり持てる秘密基地としては上出来だけどね」
少し話したのち、校長は立ち上がり去っていく。
「お菓子ごちそう様、授業サボるとかでなければ好きに使いな」
話した時間にして数分程度だったが、休憩だったのだろうか。灯里はただ校長の話を聞くだけで終わった。
校長が扉から出ていく際にこちらを見ている気がしたが、ふたりに向けられたものだろうと灯里は判断した。表情を確認できた藍良だけは灯里を見て微笑んだことを知っている。




