第17話【男装の藍良】
灯里がいつものように秘密の教室にやってくると、そこにいたのは男装をした藍良だった。制服は机に畳まれて置かれており、誰かの服を着たのだと一目でわかるほどぶかぶかな格好であった。
「それは……?」
「翠希に借りたの~えへー」
藍良は先日のうちに翠希に連絡を取って、服を借りて来た。
それはもちろん。
「男がダメなら、男装した私と目を合わせてみればいい」
とのことだった。
仮に以前立証しようとしたように瞳にそんな力がなかったとしても、男子と目を合わせようとするのはリスクがある。
だから自分が男の格好をして目を合わせるというのはどうだろう。
それが藍良の考えだった。
しかし、この計画には穴がある。
男装をした藍良であったが、もちろんメイクなどはそれ用のものはしていないし、髪を男っぽく見えるようにまとめているわけでもない。
単純に彼氏の服を着たかわいい女の子にしかなっていないのだ。
灯里はそれを指摘は出来ない。
自分のために準備してきたという彼女の努力?を無駄には出来ない。
自然と灯里と藍良は向かい合うように座った。
灯里はサングラス越しなら普通に藍良の顔を見られる。
藍良とならすぐそこまで来ていた。
座って数秒。数十秒。一向にサングラスを外さない灯里。
固まって動こうともしない。
「灯里ちゃん?」
「!」
ビクッと身体を震わせ、目をそらした。
わざと外さなかったのだ。
それを見抜かれてしまう。
「逃げられるとでも思っている?」
「ご、ごごごめ、ごめんなさいっ!」
「ふふ、冗談だよ」
藍良はスッと立ち上がり、サングラスに手をかける。
パシッと猫パンチがさく裂したかのような速さでサングラスを取り戻す灯里。
「……」
「……」
サングラスをかけなおした灯里と目が合う。
互いに時が止まったかのように数秒目を合わせた。
「サングラス越しなら目を合わせられるね」
と微笑んだ瞬間、サッとサングラスを奪い取る藍良。
「わーーーーーっ!!」
と思わず声を張り上げた灯里。その声にびっくりする藍良。
その声は外まで漏れているんじゃないかと思うほどの大きさがあった。
「何やってんだいあんたら!」
隣の扉から出てきた校長が怒鳴りつけた。
騒ぎすぎとのことで校長から注意を受けたふたりだった。




