第16話【鏡よ鏡よ鏡さん】
あの後、灯里は藍良から「嫌ならもうこの教室に来ない」と告げられたが、それを聞いた灯里は首を横に振る。
嫌じゃないという意思表示であった。
むしろ、いつも通りの藍良でいて欲しいと伝えた。
だったらと藍良は少し元気を取り戻したようで、近くに寄って灯里の手を引く。
向かった先は教室に置かれている姿見。布をかぶせられた状態で教室に置かれていて、どうしてここに保管されているのか謎の存在だった。
ペロっと布をめくって、鏡をあらわにする。
その姿見に写し出されるのは、灯里とその後ろに藍良。
身長としては灯里の方が小さく、少しだけ藍良が上に飛び出ているぐらいの差だった。
サングラスに手をかける藍良。
灯里は抵抗しなくなっていた。ただ藍良がサングラスを取る手を見つめて受け入れていた。だけど、藍良の顔は見られない。
灯里はすぐ俯き、鏡に写る自分の足元に視線が向けられる。
「例えば、直接は見れなくても鏡越しならどうかな~って」
「……」
灯里の肩に手を当て、顔をぐっと近づける藍良。
ぴったりとくっついた状態で藍良の目は鏡越しに灯里の顔を見ていた。
灯里は下を見ているため、それに気づけない。
「や、やや、やっぱ無理ですぅ……」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでも~」
セクハラおじさんさながら肩をさすりながら灯里に顔を上げさせようとする藍良。
藍良の手は肩から離れて、灯里を抱きしめるように前へと移動する。
「怖くないよ~。ね~灯里ちゃん」
「あぅ……」
目を瞑ってしまう灯里。
これ以上は無理だなと判断した藍良は鏡に写るべったりくっついた自分たちを見て、「そうだ」とスマホを取り出した。
「記念に一枚っ」
「わっ」
藍良がスマホを掲げて自撮りをすると灯里は思わずカメラの方を見上げてしまう。
カメラの方を見ようとしたわけではない。避けようとしたのだ。
撮った写真を確認する藍良。
「おぉ」
「……?」
そこに写っているのはサングラスを外し、カメラ目線の灯里だった。
「綺麗に写ってるね」
と灯里の方を振り向くと、灯里はすでにサングラスを装着しなおしていた。
「消す?」
「ぅうんん……」
首を勢いよく縦に振った。
藍良は「そっか」とあっさりと消す。一緒に撮る機会はまた来るだろう。
そんな気持ちだった。




