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第12話【早業】

 放課後の秘密の教室。

 藍良は灯里のサングラスの汚れに気づいた。


「レンズ汚れてないかな?」

「あ」


 灯里は外すことなく、視線だけで汚れを確認する。

 藍良はサングラスを取るのかと思ったが、そんなことはなく、そのままカバンを漁りはじめた。

 灯里がメガネ拭きを取ろうとしていることを察する藍良。にょきにょき。

 小悪魔藍良再登場。


 藍良は思った。


 サングラスを拭いているときに瞳を拝めるのではないか?


 藍良は思いついたのち、様子を窺った。

 しかし、時すでに遅く、灯里は座りなおしていた。


「サングラスは拭かなくていいの?」

「え、お、終わりましたが……」


 ピタリと止まる藍良。

 衝撃が走る。


「いつの間に!?」

「い、今です……」


 藍良が気づかないほどの早業。いや、藍良の意識の隙間でサッと拭いたのかもしれない。

 「えぇ……」と声を漏らしながら灯里に近づく。

 サングラスの汚れを確認するように顔を近づける藍良。


 灯里と藍良の顔が目と鼻の先、紙一重。すごく近くなり、灯里はすごく慌てていた。

 それに気づかないほどサングラスに注目している藍良。

 しかし、藍良の思惑とは裏腹にしっかりとサングラスは綺麗に拭かれていた。


「はっ、早くない? 蛇ノ目さん」

「あ、ぇと……まぁ……」


 顔を近づけたまま声をかける藍良にサングラスの隙間から瞳が見えないように藍良の方に顔を向ける灯里。

 サングラスを拭くのは今回が初ではない。

 人の目をかいくぐってはレンズを綺麗にしている。そうでなければ見えにくくて危ないからだ。

 と言っても学校で拭くときはひとりの場所を選ぶのだが、灯里も藍良に対して警戒心が薄まってきていた。


 そっとサングラスに手をかける藍良。

 バッとその藍良の手を止める灯里。


「な、なんで、サングラス、外そうと……」

「……」


 藍良はパッと手を離して、


「ごめん。出来心で」


 と謝った。

 別に灯里も怒ってはいないし、藍良に対して恐怖を感じてもいなかった。


「ちょっとだけ」

「ああ、あき、諦めてない!」


 藍良は諦めきれなかった。

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