拠点にて ~演説、調整~
~拠点近郊・賢者の天幕~
「やっと目覚めたか。」
賢者の声がかかる。護は顔に手を当てながら、「ステータスオープン」と唱えて、画面を見る。
明石宮 護 (男・17歳・半人半精?)職 Lv74
LP 599 MP 617
STR 674 AGI 631
TEC 614 END 644
INT 628
一般スキル 剣術Lv4 短剣術Lv5 体術Lv3 盾術Lv2 槍術Lv5
気配察知Lv5 魔法(火・水・風・土・光・雷)Lv5 不屈Lv5
調合Lv2 料理Lv3 拷問Lv1
職スキル アイテムボックスLv5 浄化Lv3 テイム
エクストラ 完全なる図書館の司書 真理眼 言語理解 合成魔(日)Lv2
(レベルが一気に上がっている…。因子と共に経験値も入ったのか。この上がり方は、不味いかなぁ。)
護は立とうとして、顔から転ぶ。単なる動作でさえ、力が入り過ぎている。
賢者から大丈夫か聞かれて、護は頷きを返す。しばらくは、手を握りしめたり、足を曲げたり伸ばしたりと、力の入り方を確かめていく。
メイアが居れば、問答無用で模擬戦で整えていたはずだ。見習いたちには引かれていたが、戦うと意識が研ぎ澄まされ、短期間で体を掌握できていた。そんな護を衝撃を受けた顔で見られるまでがワンセットだったことを護は思い出しながら、力の入り方を試していく。
とりあえず、生活に問題ない範囲で力の掌握ができたので、周りを改めて見回す。
天幕には、護と賢者、ライラしかいない。ライラは昏睡状態から回復しているものの、まだ、意識は戻っていないようだ。
賢者が、護の様子が変わったことに気づき、尋ねてくる。
「体の方はどうだ?」
「生活には問題ない。ただ、戦闘になると、どこまで動かせるか分からないな。後、エルナおか…あんたの妻に会ったよ。」
「話を聞かせてくれ。」
護はエルナに頼まれたことを話した。
話の終始、顔色を変えなかった賢者は、護をじっと見つめてから、こう言った。
「なんの偶然かは知らないが、エルナの言葉を聞けただけでも十分だ。妻を怪物にした奴のことは気になるが、生きているとは思えない。それだけ長い時間が経ってしまった。真相は既に闇に葬られているだろう。」
「確かにそうかもしれない。」
何百年という時が経った。歴史を追いかけるには当時の記録が残っていることが必須だが、人族との戦争の際、燃えてしまったものが多い。
護は、時空魔法で遡行できないか尋ねたが、賢者は首を横に振った。話によると、自身と物にしか発動できず、当時の変化薬が入っていた容器も失われているため、不可能であるということだった。
顔を顰めてみたが、何か変わる訳でもない。護は、被りを振る。
「う…。ここはどこなの?」
ライラが背伸びをしながら、二人に気づく。
「賢者様ね。私を連れだしてくれて、ありがとうございます?」
「合っている。王の娘、飲むか?」
賢者からコップを受け取り、一気に飲み干した。一息吐くと、顔を暗くする。
「父はどうなりましたか?」
「俺は何もしていない。今も、陣営で指揮を執っているんじゃないか?」
「そうですよね…」
あまりにしおらしい様子に、護は事情を尋ねるべきか迷う。王が関与していることと、ろくでもない事実があることは知っている。聞き出す必要はないかと思うのだった。
ライラは護の方を向くと、驚きの声を上げた。
「へ?あなた、マモル君なの!?」
「ああ。そう言えば、半人半精になったせいで、見た目が変わっているのを言い忘れていたっけ。」
「種族が変わるとかあり得ない。説明を求めるわ。」
賢者と護の二人で事情を話す。
驚愕の連続で、ライラの頭から煙が出ているのが幻視できた。一通りの話を飲み込んだライラは、護の耳を触り始めた。
「幻覚とかじゃないのね。」
「自分でも最初驚いたよ。後、かなり敏感なんだな。」
「そうよ。エルフの耳は、人にもよるけど性感帯。だから、アンちゃんみたいに切られるとかなりの激痛が走る。彼女は本当に大変な思いをしたはず。」
「…」
「それに、エルフの耳は、ある種のチャームポイントね。人族の男が女の子の胸とか、お尻とかに惹かれてしまうように、エルフは耳の形に惹かれてしまうものなの。あなたの耳はハーフにしては長くて、私好み。増々、欲しくなったわ。」
ライラはうっとりした表情で、護の耳を触り続ける。
護の目にはライラが現実逃避をしているように映り、しばらく彼女の好きにさせるのであった。
ライラが護を解放したところで、賢者が尋ねてくる。
「俺は、拠点の様子を見てくるが、お前たちはどうする。」
「私はパス。王に見つかったら殺されるわ。」
「ついて行く。メイアたちが心配だ。」
護はアンのログを確認していた。今は安定しているようだが、護が眠っている間に不安定になっていたログが残っていた。放っておくのは危ない気がする。
賢者は護の肩に手を置き、『ワープ』を発動させる。拠点に着いた途端、メイアに抱きしめられる。
「護様、一体どこに行かれていたのですか?それに、そのお姿は?」
「アンたちにも説明したいから、案内してくれ。」
「畏まりました。…殺さずに済んだようですね。」
ボソッとメイアが呟いたような気がしたが、周りの喧騒に掻き消される。賢者の眉がピクッと動いたのは気のせいだろう。
メイアの案内で本部にまで、辿り着いた。重鎮たちが集まり、全員顔が険しい。その隅にいるガンドルフたちも同様だ。丁度真ん中には『晶公』が拘束されて座っており、顔には汗が滲んでいるのが見える。
護たちの登場にどよめきすら起こらない。『晶公』に集中しているようだった。
アンだけが三人に気づき、ホッとした表情を浮かべる。見た目が変わっているはずなのに、アンも護だと
分かったらしい。
「将軍、やっぱり『晶公』の言っていることは本当だと思うよ。彼は殺していない。」
「だが、そうであれば、だれが殺したというのだ。純血派で動けるものは多くない。人前に姿を見ていないのは、こいつだけだったではないか。」
(誰を殺したんだ?…まさか。)
メイアに確認をとると、まさにその通りだった。王が暗殺され、犯人を捜したところ、一番怪しいのは『晶公』だったらしい。しかし、本人は犯行を否認しているようだ。
それなりの付き合いがあり、『晶公』の言葉を信じるアザレアと、犯人であると曲げない将軍の言い合いは、かれこれ一時間以上続いているという。統率にも影響が出ており、ストレスが溜まった一部の兵が純血派に暴行を加え、騒ぎになった。
幹部たちの顔色が悪いのは、この場に拘束されているからなのだろうかと護は思う。
「アザレア、王は死んだのか。」
「え、賢者様!?そのと…。はい。そうです。」
賢者の存在が場を凍らせる。賢者に気づかなかったのが、不味いと思ったらしい。
アザレアの肯定を受けても、賢者の表情は変わらない。将軍ですら、顔を青くして、自分たちの対応は不味いと思い始めたようだ。
「そう固くなるな。一人呼んでくる。」
賢者は消えると、ライラを連れてきた。
連れてこられたライラは視線を一斉に受けて、賢者に助けを求める。
「王が死んだ。」
「はい?父が死んだのですか。」
「そのようだ。アザレア。」
「は、はい。王女様、王が暗殺されました。『晶公』が被疑者なんだけど、彼はしてないの一点張りだし、信じてもよいかと思います。」
「アザレア、無茶苦茶な言葉遣いになっているわ。後、客観的に話せてないわよ。…そう父がねぇ。」
ライラの顔は歪んでいた。それは悲しみからではなく、喜びで。
「『晶公』であろうとも、そうじゃなくても、その者は無罪。」
「しょ、正気なのですか!?王殺しは重罪です。死刑でなければ、示しがつきません!!」
「厄災を起こした真犯人が王でも?」
「?」
「私の実の母を殺した男よ。死んでせいせいするわ。」
「!!」
将軍たちが混乱する。あのライラと賢者は本物なのかと疑うほどに。
ライラは話し始めた。一部は賢者が補足しながら話した事実に、一同唖然する。
聞き終わった将軍は、
「そんな。王が狂っていたなどと、私は信じたくありません。」
と、言うのが精一杯だった。
しんとした本部に一人、伝令が走ってくる。
「伝令!伝令!」
「何事だ。」
「西からの早馬で、多くの魔物に襲われているとのこと。結界を超える魔物が出始めており、被害が甚大です。教会が食い止めておりますが、数体漏れてしまい、侯爵たちの領土で被害が出ているとのこと。対処を求めます!!」
ざわっ!!
追い打ちをかけるような報告に、将軍が気絶した。慌てて、部下が支えて椅子に座らせる。
宰相が口を開き、場を沈める。
「静かに。この場は、第三王女、ライラ・ン・ポルン様を臨時の女王とし、彼女に率いてもらう。」
「さ、宰相殿はあの話を信じられるというのか。」
「この場にいる王族は彼女しかおらぬ。兵を落ち着かせるには王族の力が必要なのだ。王族という旗印はまだ使える。」
「それはそうだが…」
「時間が無いわ。すぐに動くわよ。」
あまりの畳みかけに、不満を持っていた幹部が黙り込む。王が望まなかった王女。王を信奉していたが故に、彼女が話したことは荒唐無稽で信じられなかったが、状況は差し迫っている。将軍がダウンしている中、彼女に頼るしかなかった。
ライラは宰相と共に天幕の外に出ると、風魔法で声を拡張する。光魔法で、拠点全体に彼女の顔が見えるようにもする。兵たちの視線がその映像に向いた。
「私は、第三王女、ライラ・ン・ポルン。狂刃によって倒れた父王、ジベレ・ン・ポルンに代わり、今この場にいる兵士たちにお願いがあります。厄災は賢者様によって祓われ、純血派の降伏で事態は治まるはずでした。しかし、西で魔物の大群による襲撃が起こり、同族たちに多くの犠牲が出始めています。」
多くの兵はざわざわと騒ぎ出した。ライラの存在はかなり薄く、そんな王女が居たのかと思う兵と、市井で彼女を見かけ、まさか王女だったとは、と思う兵たちが居るようだ。
「私は、今まで王族としての責務をほとんど放棄して、各地を回っていました。様々な民に出会い、話を聞き、自分の目で見てきました。かつて平穏だった頃の幸せに満ちた表情した民たちとの交流は今でも鮮明に覚えています。」
ライラは息を思い切り吸い、大声で続けた。
「ですが、その平穏は崩れ去った!純血派の反乱に、厄災という脅威が私たちに襲い掛かった!賢者様や名誉公爵たちの活躍が無ければ、多くの犠牲が出たでしょう。そして、今度は多く魔物が私たちが守るべき民を襲い掛かっています!」
兵士の目がライラに釘付けになっていた。彼女の一言一句に耳を傾ける。
「魔物の数は多く、既に様々な場所に広がり始めています。私たちは協力せねば、被害は増していくばかりでしょう。今ここにいる兵士よ、聞きなさい!」
ライラは宰相から剣を受け取ると、掲げ、宣言する。
「私と共に、魔物を屠る者は剣を掲げなさい!どんな脅威が立ち塞がろうとも、切り開き進み続ける覚悟と力を、私に貸せ!!」
『オオッ!!!』
剣を掲げ怒号が鳴り響く。ライラの映像が切れた後も、その余韻は続くのであった。
「宰相、後は頼むわ。」
「御意。」
ライラは『アイテムボックス』から手ぬぐいを取り出すと、汗を拭う。そして、護の元へと行くと、彼にしな垂れかかった。
「あーあ、やっちゃった。しばらく、甘えてもいいぐらい、私頑張ったよね?」
「…できれば離れてほしい。」
護へと殺気を向ける三人がいる。姿を消している間に、ライラを誑し込んだと思われているようだ。
誤解はますます広がっていく。本部へと始めて入って、二人の様子を見た兵士たちは顔を赤らめて、天幕を出ていく。確実にこの話は広まっていくだろう。
顔が青ざめた護は本気で引き剥がしにかかるが、彼女はしな垂れかかるどころか、抱き着いてくる。力が入り過ぎ、ライラが痛みで声を上げた時には、周囲の視線が集まった。かなり険しい視線が向けられたので、護は両腕を上げ、彼女の好きにさせるしかなかった。
「ライラ様、おふざけが過ぎます。」
目から光を消したメイアの言葉でようやくライラは護を解放した。ライラは謝るが、ご機嫌な様子を隠せておらず、メイアたちの顔が曇っていく。
その場へと怖れを抱かずに現れたのは、店主だった。
「ライラ王女様、王の代行としての作業があるので、こちらに。」
「今、直ぐに行きます。マモル君、後でね。」
ライラは護の頬へと軽く口づけをすると、店主と去っていった。
護はメイアたちに連れ込まれて、ライラとの関係でお小言を貰ってしまうのであった。
~一日後~
護たちは、歩いて移動していた。空は雲が覆い、今にでも雨が降りそうな様子だ。
ライラを据えた上層部の動きは迅速で、少ない情報を頼りに隊編成をこなし、すぐさま各地へと送り出していた。護たちにも指示が来ており、その指示に従って動いていた。
途中、村で夜を過ごし、西の砦を目指す。
村を出発してから一刻、護の『気配探知』に多数の魔物が引っ掛かる。
「数は十四。こちらに向かってきているのが、三、後はばらばらに動いているみたいだ。」
「私が離れたものを倒します。護様、方向は?」
方角をいくつか示すとメイアは消えた。
護たちの方に、三体、魔物が見える。イタチ型、蝶型、カナブン型だ。どれも二、三メートルはある大きさで、それなりの速さで迫ってくる。
(Lv45、Lv56、Lv44か。いけるな。)
「ガンドルフさん、初撃は俺が。」
「了解。ぶちかませ、マモル!!」
護は先頭に立ち、手を翳す。イメージし、発現させる。
「『シャイン・レイ』」
イタチ型が躱し損ね、左部分を削っていく。左後ろ脚が満足に動かせなくなり、減速する。
また、勢いを失わない光線は後ろの木に穴を空けて、減衰し、消失した。
「『ウィンド・ランス・ツイン』『エレクトロ・エンチャント』」
その結果を見て、二本の風の槍を作り出し、雷を纏わせる。狙いを定め放った。
蝶型は直撃し、風の一撃で風穴が空き、羽は焼け焦げた。カナブン型は外骨格が風の槍から守るが、雷が焼いていく。煙を上げながらも向かってくるところに、セレスの雷の矢が刺さった。轟音と共に、動きが止まる。
イタチ型もエトリアが仕留め終わっている。
「どうだ、マモル?」
「悪くない。肉体と違って、そこまで誤差が無いな。」
相手を倒すだけなら、ほとんど制御する必要はない。イメージ通りの軌道へと放てたとは言い難いが、及第点だろう。
音を聞きつけて、やって来た魔物も全て、魔法で倒す。その過程で合成魔である日魔法だけが、勝手が違うことに気づく。イメージよりも効果が及ぼす範囲が広い。かなり絞って放ったが、近くの幹が焦げ付いていて、護は水魔法で消火していた。
(魔法の効果範囲はイメージ通りになるはず。集束するイメージが足りなかったのか?)
試行錯誤する暇もなく、近場の魔物は一掃してしまった。別行動をとっていたメイアが合流する。
護たちは、それから間もなく再び魔物の反応を捉える。
「今度は七。全部一塊に集まった状態だ。」
次の魔物は見覚えがある敵、オークだった。武器は木でできたこん棒を装備しており、緑色の血が付着している所を見ると、昆虫系の魔物と戦ったようだ。傷だらけの一体以外は、そこまで負傷している様子ではない。
「今度は、接近戦を試してみたい。一体だけ残してくれ。」
「分かったさね。」
セレスとエトリアの光魔法が、数体のオークの脳天を貫く。こちらに気づきやってくる頃には、オークはあの傷だらけしか残っていなかった。
護は短剣を構え、『真理眼』を発動させる。ステータスを見た護は気を引き締めた。
「ふぅ…!」
護は走り出した。徐々に速度を上げていき、オークのこん棒の圏内へと突っ込んだ。
横振りが迫る。護は上半身を前に倒して横振りを躱し、横をすり抜ける。オークの太ももから鮮血が飛び散った。
「オオォォッ!!」
オークの怒りが伝わる。地面を削りながら、方向転換をはかった護へと、風の砲弾が飛来する。
「おっと!」
風の結界を展開、弾いた。突進してくるオークへと自ら近づいていく。
こん棒の振り下ろしを避けようとする護。避けることはできた。しかし、攻撃に繋がらない距離へと離れてしまった。レベルが低い時と同じ感覚で飛んだだけで、この差に護は、驚きを隠せない。
迫りくる二撃目を短剣で受け止めた。少し宙へと浮いた後、地面を削り、木へと背中をぶつけて止まる。
(この程度は問題ないな。)
短剣を握る手に痺れを覚えたが、落とすほどではない。心配そうに見てくるセレスを見て、護はとっと倒すことを決める。
風魔法の乱舞が襲い掛かってくる。魔力を込め伸ばした刃で切り裂き、突破、こん棒を右斜めに振り下ろしてくるタイミングで、護は技を発動させる。
「『クロススラッシュ』」
こん棒を跳ね上げ、オークの小太りした腹を切り裂く。
「!!」
強引に振り下ろしてきたこん棒を躱し、背後から跳んでの一撃。首へ突き立っており、骨を砕いていた。
前のめりに倒れ、LPが無くなったところで、護は魔力の刃を解き、血を払う。
護は『アイテムボックス』へとオークを仕舞うと、メイアたちに戻った。
「大丈夫ですか、護さん。」
「LPは全快しているし、痛みもないから問題ない。」
「一応、魔法をかけておきます。『ライト・ヒール』」
セレスに光魔法をかけてもらう間、ずれの修正がまだ終わっていないと思う護だった。
いくつかの近接戦闘をこなし、護の肉体と精神のずれが治った頃、護の『気配探知』に多くの反応が引っ掛かる。同時に戦闘音と怒号が聞こえた。
「聞こえたさね。」
「急いだ方が良さそうだな。」
ガンドルフを先頭に向かうと、そこは阿鼻叫喚の地獄だった。
エルフと魔物の死体が気付かれており、血に塗れていない存在はいない。
魔物行進戦と重なって見える、その戦場に護たちは参戦した。
「護さん、私を守ってください!!」
「分かった!」
セレスはマジックバックから一枚の羊皮紙を取り出した。一辺が六十センチメートルはある正方形の紙には、血で描かれた魔法陣があった。
彼女は空へと翳して、魔力を流す。
「『エリア・リジェネレイト』」
セレスの魔力を吸い、頭上に現れた魔法陣がどんどん大きくなっていく。
魔法陣から照らす光は傷つき倒れているエルフを癒していく。それと同時に、魔物の視線がセレスに集まっていくのが護には見えた。
「『グランド・ウォール』」
護は、セレスを守る即席の壁を作り、彼女を囲む。続けて、魔法唱える。
「『グランド・スパイク』」
行く手を阻む土の棘が壁の周りをさらに囲った。
護は魔力回復薬を飲み干し、魔法を行使する準備を整えた。槍を構え、迫りくる魔物どもへと穂先を向ける。
「『エンチャント・ウィンド』『トリプルスラスト』」
暴風を纏った三連突きは、目の前のネコ型を貫き、後ろの魔物を三体ほど追加で、穴を空けた。
薙ぎ払いが、四方八方の敵を吹き飛ばす。
重く硬い敵が残った。護は魔法を切り替える。
「『属性付与・日』」
護の周りに、橙色をした光の球が浮かんだ。そして敵に接近し、甲殻を踏み台にして背中を通り過ぎた。槍で突いたところに光の球を置いて。
断末魔と共に、固い甲殻に穴が空いた。膨大な熱が甲殻を溶かし、内部を焼き払ったのだ。
護はセレスへと近づく敵を一掃していく。
時折、襲い掛かる尾や爪が掠る度、意識が冷え込んでいった。対照的に身体は熱くなっていく。
右から来る魔法を躱し、セレスの方へと飛ぶ風魔法を、水魔法で妨害。爪は服の上を滑らせ、噛みついてくる相手は、槍で貫く。
「!!」
三本目の魔力回復薬を飲み干す。汗が止まらない。橙の球の数はいつの間にか無くなってしまう。
息を吐き、冷静に展開し直し、魔物を貫き続けた。
不意に護の頬から血が流れる。岩の散弾の一部が風の結界を突破したのだ。すぐさまその脅威を全力に近い威力の魔法で消し飛ばし、傷はセレスの魔法が癒す。肉体の疲労も彼女の魔法がある限り、癒され続けている。
自分に注意を引くように護は気迫の声を上げて、槍を振るい続けていった。
~数時間後~
「お、終わったのか。」
生き残ったエルフの呟きが、戦場の有様を示していた。
近隣の魔物は全て討伐され、血や泥で汚れようとも、座りこんでいる者がほとんどだ。
戦闘が終わり、脱力して寝てしまいたい気持ちを抑え、戦後処理を行っていく。同僚の木でできたタグが見つかる度に、心が折れそうになる。亡骸は運が良ければあるが、ぐちゃぐちゃになってしまっているものがほとんどで、タグだけが、唯一生きた証となっていた。
疲れ果てたエルフを片隅に、元気に動く少女がいる。
「護さん、大丈夫ですか?傷を見せてください!」
セレスは折れた槍を仕舞っている護の元へと走ってそう言った。
護の顔は血だらけで、返り血なのか、攻撃を受けてできた傷からの血なのかよく分からない状況だった。
「『浄化』」
護は体についた血汚れを落とし、無傷であることを示した。ズボンなど切り裂かれてできた傷も、治っていることを見せる。
セレスに護は感謝の言葉を告げる。彼女の魔法があったおかげで、ずっと戦い続けることができた。魔力回復薬を十四本ほど飲み干し、槍を三本駄目にしただけで、自身の五体満足と彼女に傷一つないのが、護にとっては幸いだった。
「よかった…。」
ホッと息をつくセレス。彼女は、傷をまだ負っているエルフの治療と、ガンドルフたちを探してくると告げ、走り出した。
彼女の背中を見送った護は、魔物を収納していく。その片手間でステータスを確認する。
明石宮 護 (男・17歳・半人半精?)職 Lv74
LP 599 MP 143/617
STR 674 AGI 631
TEC 614 END 644
INT 628
一般スキル 剣術Lv4 短剣術Lv5 体術Lv4 盾術Lv2 槍術Lv6
気配察知Lv5 魔法(土・風)Lv6(火・水・光・雷)Lv5
不屈Lv5 調合Lv2 料理Lv3 拷問Lv1
職スキル アイテムボックスLv6 浄化Lv3 テイム
エクストラ 完全なる図書館の司書 真理眼 言語理解 合成魔(日)Lv4
(さっきの戦闘でよく使ったやつが伸びている感じか。アイテムボックスが地味に伸びているのはいいな。)
積み重なった魔物の死体を片付けていくうちに、護は木のタグを発見した。周りを見渡すが、死体は残っていない。無言のまま、『アイテムボックス』に仕舞うと作業を続ける。その動きは機械的に作業しているように見えた。
その日の夜は、戦場となった場所から下がったところで、臨時拠点を設置し、休むこととなる。
護はタグをエルフを渡した際、弔いの唄を聞いた。どこか儚くも、綺麗な旋律をしていた。ぼんやりとその音を聞いた後、天幕に戻る。
セレスは既に眠りについており、メイアは武器の点検、修復をしている。
メイアと武器、消耗品の現状を話し合った後、護も眠りにつくのであった。
なんちゃってQ&Aはお休みとします。




