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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
巫女編
4/138

風呂での出来事と説明回

す、すまない・・・筆者が未熟なばかりに…

 部屋に戻った後、護は気になったことがあったのでメイアに尋ねた。


「そういえば、一時間で俺の服を仕立てられるの?そもそも俺が浸かっている間にするつもりか?」


 その答えは当然ながら、


「はい。その通りでございます。ですので、護様にはのんびり浸かっていただいてもらい、その間にお着替えを仕立てますので。」


 そう言うとメイアは護に近づいてきて、


「失礼します。」


 護の体を触り始めた。その触り方はペタペタという擬音語がよく似合う。

 護は家族以外の女性に、そんな触り方をされることなど日本で体験したことが無かったので思わず身を引いてしまう。

 メイアは困った顔で、


「護様、逃げられると測れないのですが。」

「すまん。でも、それで測れてるのかかなり疑問なんだけど。」

「私としてはこれが普通です。同僚の服もこれで仕立ててました。」

「同僚は女性だよな。男性でも測れるの?」

「もちろん、大丈夫ですよ。王様の仕立てをしたこともあります。ですので逃げないでください。そうでなければ、縄で括り付けてやらなければならなくなりますので。」


 縄で括ると言われて思わず下がった護。背中が壁にあたる。

 その様子を見たメイアは虚空に手を伸ばし、縄を取り出した。ポーカーフェイスで怖い。


(無表情で縄持って近寄られるとか怖すぎる!!)


 護は慌てて手を振って、


「分かった。逃げないから、その縄をしまってくれ。」


 そうメイアに近づく。メイアは縄をしまい、ペタペタと護を触りだした。

 しばらくすると、触るのを止めて、虚空から布と道具を取り出して作業を始めてしまう。慣れた手つきと圧倒的な速さで工程が終わっていく。また、取り組むメイアの顔は真剣で邪魔をするのはためらわれるものだった。

 女性に服のために触られまくるという変な体験で精神が少し疲労してしまった護はガンドルフが言っていた時間にはもう少しかかるのと、メイアが作業に没頭しているので考えに耽り始めた。

 護は改めてステータスオープンを開いた。


(ステータスをあまり詳しく見てなかったな。今の内によく見ておくか。えぇと、年齢はともかく種

族?異世界だから他にも種族ありそうだよなぁ。他にはというと、スキルが三つに分かれてるな。一般スキルと職スキル、エクストラか。違いはなんだ?気になるのはとりあえずエクストラか。)


 エクストラの欄を見つめる護。まず気になったのは『言語理解』。おそらく自分たちが異世界でも話が通じているのはこのスキルのおかげであるのはすぐ理解する。次に『真理眼』。この能力の使い方は頭の中にぼんやりとだがある。最後に残った『完全なる図書館の司書』はこれもぼんやりとして使い方が分かり、これは寝ないと使えないことを悟る。

 早速、今検証できる真理眼から使ってみる。護は『真理眼』と心の中で唱えながらメイアを見る。すると、メイアのステータスが護の目の前に表示される。 


メイア・リンベル (女 19歳 人族) 職 上級暗殺者Lv98

 LP 719  MP 724

 STR 1047  AGI 1295

 TEC 841  END 680

 INT 705

 一般スキル 短剣術Lv8 隠密Lv8 暗器Lv8

       解錠Lv1 家事Lv7 裁縫Lv9 奉仕Lv7

       魔法(火・水・風)Lv5 

 職スキル アイテムボックスLv3 命中補正Lv5

 エクストラ


 メイアのステータスを見て思わず、「うわっ」となるが声に出さないようにこらえる護。


(なんだよこれ。ほぼ同い年なのにLv98って…。それに上級暗殺者ということはメイドじゃなくてアサシン?本業はメイドじゃなくて暗殺なのか?下手に喧嘩したら俺、死ぬの確定だよなぁ。)


 護には今、目の前で繰り出されている地球ではありえない速さで仕立てているのがスキルの恩恵であることがはっきりした。そしてこの世界におけるスキルとステータスの重要性を実感する。

 色々と聞きたい誘惑をこらえて、『真理眼』の検証に再び入る。見えているメイアのステータスの職に意識を集中させていくと、


 上級暗殺者(補正 短剣術Lv+3 暗器Lv+3 解錠Lv+1)


 と出てきた。護はこの補正というものがどういうものか理解しようにも情報が足りないため、考えることを止める。

 人に対して頭の中にぼんやり浮かんできたのはこの二つの能力である。護は職以外も集中したら何か説明書きみたいなものが出てくるのでは、と思いやってみるが失敗に終わる。


(真理眼なんて大層な名前がついているのに、能力自体は微妙だな。)


 護は少し不満を募らせるが、無いよりマシだと自分に言い聞かせて不満を払う。


 

 数分後、足音が近づいてきて、ドアを叩く音がする。


「マモル、俺たちの番だぞ。出てこい。」


 そうガンドルフの声が響く。

 護は、


「分かりました。今行きます。」


と、返事をして椅子から立つ。すると、メイアが作業をしながら、


「護様が出てこられるまでには縫い終われそうです。出来ましたら脱衣所にお着替えを置いておきますので。」

「ありがとう、メイア。」

「恐縮でございます。」


 ソファーには仕立て終わった服があるのを見ながら護は部屋から出る。

 通路にはニヤニヤとしているガンドルフがいた。鎧は食事前から脱いであったのだが、その手には着替えがある。

 護はニヤニヤと笑みを向けている理由を多少察しながらも、


「どうかしましたか?」

「いや、メイアと眠るのかと思ってな。異世界に飛ばされて初日で女と夜を過ごすとはさすがは勇者と共に呼ばれた者だなと感心した。」

「違いますよ。手を出さないとセレスには言ってますし、する気はないですよ。それと、女と一緒に寝るのは異世界とか関係ないじゃないですか。王様の良心でメイアがいてくれることに感謝してます。そんな相手に手を出すのはどうかと思うんです。十中八九、何もなしで追い出されそうでしたから。」

「ふーむ…(王のことだ、男女関係も織り込み済みだと思うのだがな。)」


 ガンドルフは、護の言ったことに満足してないようだ。メイアとリーゼンボルト王の関係を多少なりとも知っているからなのだが…。

 護はというと、ガンドルフの様子がどこかエトリアが護を問い詰めたときに似ていると感じた。

 二人は廊下を歩いていく。沈黙が続くが悪い雰囲気ではなかった。お互い、口がうまいとは言えなかったので沈黙があっても、苦にはしなかったようだ。

 浴場は食堂が宿舎入ってすぐなら、それとは反対に一番遠くにある。それも独立して別棟にある。湯を沸かすために薪を使っているのか、煙突からは煙が出ていた。

 そして内部は入ってすぐに靴脱ぎ場があり、男女に脱衣所が分かれている。

 護はそこで何気なくスルーしていた事実に気付く。


「メイアは脱衣所に着替えを届けると言っていた。ということは男の方の脱衣所に来るんですよね?」

「当然だと思うが。女じゃあ、あるまいし隠す必要ないだろ。」

「それ、セクハラじゃないですか。」

「せくはら?なんだそれは?そんなものがマモルの世界にあるのか」

「あ~、ここ日本じゃないからな~。まあ考えるのはやめにしとくべきか。」


 護は自らの精神安定のために考えることを放棄する。

 ガンドルフは呑気に、


「女に覗かれたらいいもんよ。男が覗いたら怒られるどころですまないが。後、この時間帯は俺たちだけだからな、ある程度ゆっくりできるぞ。」


と、笑いながら言う。


(一応男が覗くのはダメなんだな。それと貸し切り状態に近いのか、ゆっくりできるのは助かる。)


と護は思いながら、二人は脱衣所に入った。そして衣服を脱ぎ始める。

 脱衣所は、換気のために魔石で動く換気扇が回っている。そのせいか衣服無しでは寒く感じるが湯から上がった後は気持ちよさそうだなと思う護である。

 護が脱衣所と浴場を隔てる扉を開けると一気に湯気が脱衣所に流れこんできた。そのおかげで湯気で見通しが悪かったところも見え、全体を把握することができた。

 一言で表すなら、広いである。一度に二十人は入れそうな大きさの浴槽と、明らかに魔石が置かれており地球とは使い勝手が変わっているシャワーが十五台ある。ただ、天井が高い割には女風呂と隔てている壁は低かった。

 後ろからガンドルフが、

 

「マモル、手ぬぐい持っていくの忘れてるぞ。」


 と、手ぬぐいを渡す。護が渡されたタオルは、麻でできているようで手触りは特有のシャリ感がある。

 

「ありがとうございます。」

「早速、入ろうぜ。時間も限られているしな。」


 ガンドルフは、シャワーの方へ歩いていく。護もそれに続いた。

 護はシャワーの使い方が分からないので、ガンドルフの方を見る。ガンドルフが魔石に手を触れると、シャワーからお湯が出だした。護も真似て手を触れてみる。すると、一瞬魔石が光り護が使っているシャワーからもお湯が出だす。

 シャワーの手前に置いてある二つのガラスの容器に入っているシャンプーとボディーソープ、さっき渡された手ぬぐいを使い体を洗った二人はお湯に浸かった。

 温度は少し熱く感じるぐらいでちょうどよくなっている。

 その温もりに護は、異世界に来てからの緊張と疲れがある程度抜けていくのを感じる。


「あぁ~。」

「気に入ってくれて何よりだ。この浴槽のお湯は基本魔石で一定の温度を保っている。だが、微調整は利かなくてな、だから薪をくべて調節している。」

「そうなんですか。あの魔石についてよく分からないのですが。」

「魔石というのは、魔物の心臓部の近くにある石のことだ。魔物の強さによって大きさと魔力量が変わってくる。俺たちはこの魔石に術式を刻むことで魔法を発動させることができる。」

「なるほど。魔石は使い捨てですか?」


 ガンドルフは護の質問に間を少し置き、少し呆れた様子をみせる。


「気になるところはそこなのか。まあいい。答えはイエスでもありノーである。大きい魔石には術式を複数書き込むことができる。その中に、周りに漂う魔力をかき集めるものがある。ちなみに、そこのシャワーは使い捨てで使い切ると砕ける。だから、入る前だけに使うことになっている。この浴槽のお湯を沸かすのに使われているのは魔力自然回復術式を組み込んだ大きな魔石だ。」


 護は説明に納得しながらも神妙な顔になって、

 

「あのシャワーの使用の仕方について事前に説明が無かったような…」

「大丈夫だ。実際に最初に使っただけだし、使おうとしたら止めていたからな。」

「そうですか。一つ気になったんですけど、天井に対して男女の浴槽を隔てる壁低くないですか?」


 ガンドルフは笑いながら、

 

「はっはっは。それはこの浴場を作る際の大工たちが、『覗きは男のロマンだろ。』と言ってあえて低くしたらしい。若いころは覗きに挑戦して、よくエトリアたちの魔法弾を喰らって吹き飛んだもんだ。ここだけの話だが、今は神官騎士を辞めて奥さんと暮らしている知り合いがいるんだが、そいつは奥さんが覗いたときにたまたま風呂に浸かっていて、目がバッチリあったらしい。それから恋仲になって結婚して幸せな暮らしをしている。」

「へ~。」


 どうやら男達だけではなく女も覗きをするらしい。そのことにある種の戦慄を覚える護であった。

 護とガンドルフはその話が終わった後、浴場に来るまでのように再び黙り込む。しばらくして、体が大分のぼせてきたので護は風呂を出ることをガンドルフに告げようとすると、


「マモル、異世界に来て早々ステータスが低かったり、王城から追い出されたりして大変だと思う。でも、お前のその能天気なところを見ていると、心配するだけ無駄だと思ってきたぞ。どんな選択をすることになったとしても俺たちは味方だ。存分に頼ってくれ。」


 ガンドルフの言葉に護は笑う。護は悪びれもせずに言った。

 

「頼りにしてますよ、ガンドルフさんも皆さんも。王城から追い出されたといってもメイアと共にですし、それに今ここで過ごせていることは本当に運が良かった。ステータスが低いのもどうにかなるでしょう。ならなかったらそれはそれで別の方法を見つけますよ。」


 すると、ガンドルフは穏やかな顔で、

 

「そうか。そろそろ時間だし、のぼせてきたから出ようぜ、マモル。」

「はい。」


 二人は風呂から上がる。体は浴場で拭き、手ぬぐいは脱衣所側の扉のすぐ横にある回収のための籠に置く。

 脱衣所に置いておいた護の衣服は無くなっており、代わりにメイアが作成した下着と衣服が置いてあった。

 護は早速、下着を穿いてみる。サイズはぴったりである。履き心地も悪くなく、ただ体をくまなく触っただけでできる質ではなかった。

 そのことに護は驚いていると、ガンドルフが着替えを済ませて現れる。


「マモル、着替え終わったか?一応最後にしてもらったとはいえ、長居もできん。清掃班が待っているからな。」


 護はその声で慌てて着替えを済ます。上着は何の色もない無地の状態だ。変な模様も無いので変な目でみらえることはなさそうなことに一息をついた後、ガンドルフと合流する。

 脱衣所から出ると、そこには二十代から四十代の男が七人おり、額に手ぬぐいを巻いてガンドルフたちは待っていた。

 

「ご苦労さん、バーンズ。」


 ガンドルフが、四十代の男に向かってそう言った。

 四十代の男、改めバーンズは、

 

「これが俺たちの仕事だからな。それで隣にいる坊主が新入りか。確か異世界から来たんだって?何か困ったらそこにいるガンドルフ爺さんとエトリア姐さん、もしくはケレス姐さんを頼るといい。」 

「ガンドルフ爺さん?」


 護はバーンズが、四十代にしか見えないガンドルフを同じ年齢にしか見えないバーンズが爺さんを付けて言ったことに疑問を覚える。

 バーンズはガンドルフを見ながら、

 

「坊主、ガンドルフはこう見えても、六十七歳だぞ。レベルが高いと、歳を取りにくくなるからな。まぁ、人間以外の種族はそうでなくとも寿命が長いんだが。」

「そうなんですか?じゃあ、エトリアさんも?」

「合っているぞ、マモル。バーンズの言う通り俺は六十七だし、エトリアは三歳下だ。このことを本人に言うと間違いなく怒られるから、言うなよ。」


 ガンドルフは顔をしかめながらそう言った。護はこの問題が、ガンドルフにとって苦い記憶になっていることを感じ、話を打ち切る。

 この世界でも女性に対して年齢を聞くことはタブーなのである。


 護は一階でガンドルフと別れ、自室に戻る。部屋には誰もいない。メイアは浴場に行っており、まだ戻ってくるまでには時間がある。護はベッドに転がり込んだ。そして物思いに集中する。

 実は、別れる前に護は『真理眼』を使用し、ガンドルフのステータスを把握していた。

 これがガンドルフのステータスである。


 ガンドルフ・アクスドーラ (男 67歳 人族) 職 聖騎士Lv91

 LP 1058  MP 794

  STR 987  AGI 801

  TEC 785  END 723

  INT 834

 一般スキル 剣術Lv6 大剣術Lv5 盾術Lv5 戦棍術Lv3

       体術Lv4 魔法(火・水)Lv2 (光)Lv6

       威圧Lv5

 職スキル アイテムボックスLv2 浄化Lv1 守護Lv5  

 エクストラ


(ガンドルフさんのステータスもメイア並みに高いなぁ。レベルはこの世界特有のものだから、謎が多い。それに19歳の若さでガンドルフさんを抜くステータスをもつメイアは一体今まで何をしてきたんだ?職も上級暗殺者だったし。)


 話してみてメイアが男女関係である意味真剣な問題に過去が関係していると聞いていたが、確かに気になる護。おそらく長い付き合いになる人物のことだ、知っておいても損ではない気がするのだ。

 本人に聞くのは流石に現時点では難しそうだが。

 次に天井で光り輝いている魔石を使った明かりを見ながら、入浴中に聞いた魔石の話を思い浮かべる。天井にあるものは、シャワー用の魔石よりも二回りほど大きい。なんとなくだが、このぐらいの大きさの魔石で、ガンドルフが言っていた魔力自然回復術式が刻めることを察する。

 そして、護は『真理眼』を使用して魔石灯を見てみる。


魔石灯 光(並) 魔力自然回復 術式発動条件(対象内に人の活動が見られる場合 消灯の合図で待機状態に移行 点灯の合図で発動)


 魔石にどんな術式が描かれているのかが表示される。表示から、この魔石には発動条件が細かく設定されていることが判明する。

 護はシャワーの時にはこの条件が手で触れたときに発動になっていたのであろうと思う。それに加え、部屋に入った時に自動で明かりがついたことにも納得する。

 

(すごいなぁ。大きさで書き込める術式の量が決まっているとはいっても、かなり便利なんじゃないか、魔石。値段が気になるところだけど…。そういや、王様から貰った金貨を確認してない。えぇと、ベッドの下に置いたんだっけ。)


 渡された部屋の鍵は一つしかなかったため、あえて鍵で閉めなかった護。メイアのアイテムボックスで護の金貨を保管しようという提案が出たのだが、平和ボケしている護は断ってベッドの下に隠していたのだ。メイアはそんな護に呆れていたが。

 そんな杜撰な状態ではあったが、盗み等はなくベッドの下から金貨が入った袋が出てきた。護はさっそく金貨の枚数を数えてみる。

 護がメイアから聞いた話だと、白金貨一枚が金貨百枚、金貨一枚が銀貨百枚、銀貨一枚が銅貨百枚と、百枚ごとになっているらしい。そのため銅貨を一円とした場合、白金貨一枚は百万円に相当する。

 数えた結果、金貨は五十枚入っていた。換算してみると五十万円になる。こちらの相場が分からないとはいえ結構な大金を渡されている。護はそのことを知り、メイアに預かってもらったほうが良かったことに気付くのであった。

 お金の管理の甘さに反省していると扉が開いて、

 

「消灯」

 

 という声と共にメイアが入ってきた。

 魔石灯の明かりの代わりに、今のところ一つある月の光が部屋をぼんやりと満たす。

 護はメイアの方を向いて固まっていた。なぜなら、現れたメイアは下着しか着ておらず、お風呂上り特有の赤みがかかった肌と下着の隙間から見える大きくもなく小さくもない程よい大きさの胸に釘付けになったからだ。

 メイアは赤みがかかった頬で笑みを作りながら、

 

「護様、夜も遅くなりましたのでご一緒に眠りませんか?」

 

その一言で護は再起動を果たす。女性らしさを強調する胸と腰のくびれから目を背けながらも、こんな状態で護の前に戻ってきたのか問いただす。

 

「メイア、どうして下着しか着てないんだ?そもそもどうやってこの部屋にまでその状態で来られたんだ?」


 護がそう言うと、メイアは笑みを崩さずに必死に目を背ける護に近づきながら、

 

「隠密というスキルでございます。私の場合、レベルが高いので捕捉されることは、ほぼありません。下着姿なのは、いつもこの姿で眠っているからですが…護様、顔が真っ赤ですよ。」

 

 珍しくポーカーフェイスの淡々口調ではなく、どこか揶揄いが混じっている声音でメイアがそう告げる。

 メイアが言っていることが、嘘か本当かはともかく、童貞な護からすればメイアの下着姿を直視するにはハードルが高すぎて見ることができないまま顔を背けている。更に、近づいてきたメイアからは石鹸のにおいまでしてきてくらくらし始めてしまう。

 そんな状態の護に近づいたメイアは、護の腕を取り自分の胸の谷間で挟む。そして穏やかながらも揶揄い混じりで、

 

「どうですか、護様。大きくはありませんが私もこれぐらいはできるのですよ。」

「……」

「護様?」


 メイアは護の反応が無いため、腕を絡めたまま護の顔を覗く。すると、護は顔を真っ赤にしてセレスのように目を回していた。おまけに意識も手放しているみたいだ。

 護は女性特有の感触にのぼせてしまったらしい。護からすれば、メイアの肌と下着の感触がした瞬間、心臓が一跳ねしたかと思うと、意識が闇に沈んでしまった。

 セレスの手を引いて行ったときとは真反対の状態にメイアは一瞬キョトンとしたが、穏やかな笑みを浮かべて、


「本当に、手を出さらないのですね。まさかこうなるとは思いませんでしたが…」


 メイアは護をベッドに寝かせた後、護のベッドの空いたところに背中合わせになるように一緒に眠り始めた。

 護はベッドに寝かされた後、しばらくして目が覚めた。背中に温かく、呼吸に合わせて動くメイアがいることに驚く。

 

(メイアが背中合わせで寝ている…。動悸はまだ残っているけれど、さっきみたいなことにはならなさそうだな。自分の息子が反応しないし、事故が起こらないだけ幸いか。…というか、これちゃんと必要な時は反応してくれるよな?)


 今回の一件で不能になった場合何かしら対策が必要だなと、ぼんやり考える護。隣で会って一日目の女性が寝ているという現実からの逃避も兼ねていた。

 落ち着いてきたのと同時に、眠気が襲い掛かってきた護は、『完全なる図書館の司書』を使用するイメージを思い浮かべながら眠りに落ちていくのだった。



 護の目には真っ白で何もない世界が映る。


「これが『完全なる図書館の司書』のスキル効果か…。真っ白で何もないな。」


 そう口に出した途端、ピコン!と音がして目の前に、


『ようこそ。完全なる図書館へ。司書様、どの書物をお探しですか?』


 と書かれたステータスのようなウィンドウが表示される。

 コンソールのようなものは出なかったので、護は音声入力だろうと思って、


「職に関するもの 及び「  」についてで頼む。」

『かしこまりました。検索いたします。』


 そうウィンドウが表示されたあと、ゴゴゴ…と音と共に本はともかくレポートのようなものまで管理された本棚が一気に並び始めた。

 音が止むと再びウィンドウが現れて、


『司書様、職に関する本、15738冊と研究等の記録204576個を表示します。なお、「  」においては記述されたものがなかったため、この中には含んでおりません。』


 と表示される。

 護は、尋常じゃない量が現れたことに驚きながらも、自分の職に関することは一切ないことに肩を落とす。ないものはしょうがないので、更に検索範囲を絞ることにする。


「条件追加で、ここ数年で書かれたもの、学者に書かれたもの、多くの人に読まれているもののいずれかに該当するもの絞ってくれ。」

『条件の追加を確認しました。精査し、条件に該当するものを表示します。………精査完了。該当する者は本が10冊、記録が58個です。』

「かなり絞れたが、10冊を読むのはしんどいな…。一冊だけにするか。あとはステータスに関することも読みたいし…。」

 

 そう言って一冊の本を取る。題名は『職に関する考察』。著者はムーンナイト・トルメイマとなっている。本は全部で百ページ程と短めだ。

 護は早速読み始めた。時間の流れが不明なのでどこまで読めるか不安なところではあったが読み切る。

 内容は要約するとこんな感じである。


  ・職には階級があり、下級が底辺である。なお、魔物にも存在し、魔物の場合は雑魚からである。

  ・職により、伸びやすい能力が決まっている。

  ・上の階級になるほど、ステータスに表示されているレベル以上の技が発動しやすくなる。

  ・生産職はどの階級からも変更が可能。ただし、生産職には職レベルが存在しない。そのためレベルが上がらない。

  ・戦闘職においては下の階級に戻ることは不可。ステータスが条件を満たしていれば同じ階級で変更が可能な場合が確認されている。


 護のこの中で一番気になった内容は三番目のことである。なぜなら、職を『真理眼』で見たときに表示された、『補正』というのはおそらくこのことを示していると考えたからだ。

 護は正直やってられないと思う。間違いなく護自身にこの『補正』はなく、ステータスを覗くことができるとはいえ、把握しているスキルレベルよりも高いことを、土壇場でされる可能性を入れながら戦うなんて、護には想像できなかった。

 気持ちが負の面に傾いているので護は、普通はステータスすら見れないことを思い出し、まだ警戒できるだけ運があると考え直したが。

 

「起死回生が起こりやすい世界なんだな。油断しないようにしないと。」

 ふぅ、と一息ついて、

 

「この検索条件は保存可能か?」

『可能です。保存いたしますか?』

「保存してくれ。次にスキルとステータス、そして薬で検索してくれ。」

『保存しました。条件に該当する書物及び資料を提示します。』


 今ある本棚がなくなり、そして再び本棚が登場した。しかし、本棚にある本は一冊であり、研究等の記録もかなり少ない。

 

『司書様、条件に該当する本、1冊、記録等の資料を50個を表示します。』

「かなり少なくなったな。『薬』をキーワードに入れたのが原因か。」


 そう言いつつ、1冊に手を出す。本の題名は、『スキルとステータスの現状~薬による改変は可能か~』。著者はさっきと同じ、ムーンナイト・トルメイマ。こちらはもっとページ数が少なく、30ページ程しかない。それに最初に手を取った本よりかなり古い感じを護は覚える。

 こちらはそこまで時間をかけることなく、読み終えた。

 書いていた内容は、


  ・スキルは一般スキルが多い。基本努力さえすれば誰でも手に入る。職スキルはその職に就くと基本自動で手に入る。これは努力しても絶対に得ることは無い。エクストラスキルは条件が不明だ。そのかわり、強力なものが多く、特殊なものがある。

  ・ステータスは値が大きいほど、筋力等の能力が上がる。職に依存している。

  ・薬による改変はおそらく可能である。異なるが鍛錬でステータスの値が上昇したとのことがある。ただし微々なものだったようだ。


 この三つが主な話だが、本の最後に護は目がいく。

  ・職レベル上昇時に上がるステータスを改変する研究を進めている。


 護は、これだ!と思い研究結果ないか探し始める。なかなか見つからなかったがついに見つけた。


「あった。これだな。……成功はしているみたいだけど、下級職でないと、物理的か精神的に死ぬことになっているな。レシピもあるみたいだし、どうにかして覚えられないか。」

『脳に直接データをコピーしますか。』


 覚えようにも忘れそうだと思って悩み始めた護にウィンドウが現れる。

 護はその内容を見て、驚きながらも、

 

「そんなこと可能なのか?できたらしてほしい。」

『かしこまりました。早速コピーします。』


 そのウィンドウが出ると同時に、護の頭の奥にチリチリとした痛みが走る。激痛ではないが、不快にはなるほどには痛い。

 しばらくして痛みが治まると、レシピをそのまんま思い出すことができた。

 

「こんなこともできるんだな。」


 感心していると、色が赤のウィンドウが急に表示される。内容は、

 

『司書様、スキル発動限界時間が迫っております。』

(このスキル、制限時間あるんだ。)


 護はあまり気にしないまま、

 

「解除してくれ。」

『かしこまりました。良い睡眠を。』


 こうして再び意識は闇の中に沈んでいくのであった。


A:なんちゃってQ&Aをはじめるぞ!!

Q:お~。あの、男の風呂回って誰得?

A:しょうがない。流れ的にそうなったのである。

Q:それでいいんですかね?メイアとのシーンも微妙な気がしますが。

A:正直に言うとメイアのキャラ像がはっきりしない。

Q:大丈夫なんですか、それ。

A:た、多分大丈夫であろう。

Q:……。(ほんとかな?Q&Aですら怪しい状態なんだけど)

 メイアを登場させたのはいいですが、はっきりとしたキャラ像を持てていないのが現状です。

キャラが一人歩きしそうな予感がひしひしとする…(自分で書いているはずなのに…)

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