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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
巫女編
3/138

教会にて

こ、これでいいのだろうか… 心理描写難しいよぉ…

 いきなり教会について来てと言われて困ってしまう、護。

 護が困っていることに気付いた目の前の少女は、


「すいません。いきなり教会について来て、なんて言ってしまって…。私はセレスティアと言います。セレスと呼んでください。教会で巫女をやっているんです。その…貴方の名前を教えてくれませんか。」


 セレスティアと自己紹介をした少女は少し恥ずかしそうに顔を赤らめて言う。

 護は、そんな様子に微笑みが浮かびながら、


「俺の名前は、明石宮 護。護と呼んでくれ。それでセレスさん、教会に俺を連れて行って何をするんだ?そもそも俺が城から出てくることを知っていたんだ?」

 

 自分の名前を伝えながら、そう聞いた。

 セレスは少し小さな声で、


「えっと、勘といった感じで…。私も特殊な職についているので何となく…」

「勘?それに特殊な職?」

「その巫女っていう職なんですけど…。神様とやり取りできるんです。そのおかげか勘が鋭いときがあって…。」

「そのおかげで俺とまた会いそうだなと思ってここで待っていたわけか。それでなぜ教会に?」


 疑問符がどんどん上がってくる護に対して、目が合うのは平気だったのに話出した途端、恥ずかしそうに顔を赤らめながら答えるセレス。

 門から少し離れたところにいるが、護の制服姿とセレスの純白な服、後その面々に、そしてそのやり取りを物珍しそうに見る人たちが増えてきた。

 そのことに気付いた四十代の男が、


「お嬢、人の目が気になってきたから、移動しようや。えーと、マモルだったけか。教会に行くのはざっくばらんに言ってお前のためだ。」

「ガンドルフ、そんな言い方は無いんじゃないかね。教会には職に関する手続き等をやってるさね。それで、セレスが言う通りにマモルは特殊な職についているならば、詳しいことを知ることができるさね。後は、宿舎の方に空いている部屋があるから泊まっていくといいさ。私の名はエトリアというさね。よろしく、マモル。」


 エトリアはそう言うと、先に歩き出したガンドルフの隣を歩いていく。

 セレスは護の方を見て、


「護さん、私たちも行きましょうか。あの…私のことはセレス、と呼び捨てでいいので、私も…護と呼んでいいですか?」


 と、ベールのように白い肌を真っ赤にしながら聞く。護は頷き、セレスと共にガンドルフたちを追いかける。メイアも後に続く。

 

「後ろの方は?護さんの侍女さんですか?」

「後ろにいるのはメイアさん。王様の計らいで、俺がこの世界で生きていけるようになるまで力を貸してもらえることになった。」

「メイアでございます。今は護様の従者をしております。」

「セレスティアです。よろしくお願いします…」


 メイアがセレスの隣に並ぶように追いつく。しばらくして二人は初対面のはずなのにまるで何年も付き合いがあった親友のようになったように話していった。護は話についていけなかったので、代わりに自分の考えに耽る。


(仲いいな、この二人。さて、教会ねぇ。セレスさんたちを見る限りは悪くなさそうだな。)


 宗教関連はろくでもないのが大半であるというイメージがある護にとっては、今回は例外だと思うのであった。一応何かしら危機が迫ればメイアに頼んで、逃げようと決心する。

 ふと、自分たちの前を歩くガンドルフとエトリアを見ると、二人の目は進行方向を見ておりどういった表情をしているのかは分からない。ただ、歩くスピードはセレスに合わせられているようで、距離がかなり離れることがないように調整しているようだ。護は周りを見渡しながら彼らについて行く。

 それから十分ほど歩いただろうか、護たちは白を基調にした三階建てくらいの高さのある建物とその前には武装した何人かが訓練しているのが見える訓練場らしきものが建物からして右手側に見える所に着いた。左手側には野菜が植わっている菜園らしきものもある。


「ついたぞ。ここがリヒト教会だ。マモル、早速だが職について確認してみるか?それとも、先に宿舎の部屋の方に案内できるがどうする?」


 ガンドルフがそう護に尋ねる。護は迷わず、


「先に、職についての確認についての方でお願いします。」

「分かったさね。セレスとメイアはどうするかね?」

「私もついて行きます。……護さんのことがもっと…知りたいので。」

「私《わたくし》も主を離れて行動する訳にもいきませんし、主の能力把握をしておきたいのでついて行きます。」


 セレスは顔を赤らめながら、メイアは顔色を一つも変えずに言った。

 すると、エトリアは呆れた顔で、


「メイア、あんたは変わっていないねぇ。全くリーゼンボルト王以外の男には冷たいのかい?」

「いえ、そんなことは無いと思いますが。」


 その返答を聞いたエトリアは護を引き寄せ耳元で、


「あんたも苦労しそうだねぇ。悪い子ではないんだけど、気難しいところがあるさね。よく何考えてるのか分からないだろ?」

「はい。」

「苦労しそうだねぇ…。まあ、距離を詰めてしっかり奉仕してもらいなよ。」

 

 メイアの方からゾッとする気配がし、二人はメイアを見る。


「全部聞こえていますよ。…エトリアは誤解するような言い方をしないでください。」

「はい。」

「主様、後で少しお話をしましょう。…思わず、殺気を出してしまいました。怖がらせて申し訳ありません。」


 護は体が震えていることに言われて気付く。メイアを怒らせるとどうなるか悟ってしまった。


(下手なことを言うと、命がないかもしれない。気をつけよう…)

 

「とりあえず…確認しませんか。」


 少し冷たくなった場を仕切り直すようにセレスがそう言ったことで、教会の中に入った護たち。中はキリスト教会のように祭壇に続くまでの身廊があり、その両側に長椅子が八つずつ設けられている。ただ、異なるのは、祭壇の横に宙に浮くクリスタルがあることだ。

 ガンドルフはそのクリスタルを指さして、


「あれが職変えの水晶だ。あの水晶に触れれば、自分の職の位階、今選択できる派生先が見れる。後、職変更もできるぞ。ちなみに、手に触れた人間にしか見れないから覗き見はできないが。」


 護は、そのクリスタルに近づく。目の前で見たクリスタルは二、三メートルは高さがあり、横幅も、一メートル位はある。

 そっと手で触れると、ステータスと同じようなものが護の目の前に現れた。

 その内容はこう書かれていた。


   明石宮 護

 職     (下級?) 

 派生先  なし

 職変更  制限により変更不可

 備考  なし


 護は内心(はぁ?)となった。

 まず、職が無いのは分かっていたのだが、位階を示すものにクエスチョンマークがついている。次に派生先はないことだが、これは現段階なものらしいので派生先はあるかもしれない。しかし、変更の欄が可能性を潰していた。つまり変更不可となっていることはもしあったとしても変更できないことを意味する。最後に備考って何の意味があるのか謎を呼ぶものだった。

 結論としては、職を変えることで強くなるという正統な強くなり方では、弱いままの可能性が高いということを護は悟ってしまうことになる。

 

「どうだったかい、マモル?」

 

 エトリアが護が確認を終えた頃を計らってそう声を掛ける。

 護は力の抜けた笑みを浮かべながら結果を教えた。教会に来るまでに自分のステータスのことはスキルを除いて伝えてある。

 セレスたちはかわいそうにといった同情の顔になる。メイアだけは別で、護の顔をじっと見つめたまま動きを止めてしまった。目も当然合っていたので視線に耐え切れず、護の方から逸らしてしまう。

 ガンドルフは頭の後ろを掻きながら、


「マモル、ステータスに関しては運が無かったんだ、きっと。戦いに関わらない生き方もあるだろうし、多分どうにかなる。」

「ガンドルフの言う通りさね。悩んでも仕方ないことだからねぇ。とりあえず、宿舎に行こうさね。」

「そうします。」


 少し気まずい空気になりつつも、面々は宿舎に向かうのであった。

 宿舎は教会の裏側にある、二階建てで、白色の建物だ。

 ガンドルフを先頭に入り口を入ると、受付に五十代の女性が立っていた。その女性はガンドルフたちに気付くと、


「おや、お帰り。まあまあ、遅かったじゃないか。そこにいる見慣れない服を着ているのが、セレスのお客さんかね。ずいぶんと若いね。うーん、気は弱そうだけど中身はしっかりしてそうだね。セレス、いい男を拾ったじゃないか。」


 護をじぃーと見た後、セレスに向かって、にやっとした笑みを浮かべてそう言った。

 セレスは顔を真っ赤にし、女性を睨むが、その体はエトリアの後ろでしがみついており怒りよりも恥ずかしさが勝ったといったところ。

 護はというと、何この人?不思議そうな顔を女性に向けた。

 女性は改めて護に向き直ると、


「私はケレスさ。この宿舎の管理人をしている。あんたの部屋はセレスに言われて二階の一番奥の左手側に準備してあるよ。セレスにお礼を言っておくんだね。」


 護はそう言われて、まだ顔の赤いセレスに向く。

「セレス、ありがとう。」

 

 礼を言われたセレスは、茹蛸状態になる。ぼふっ!と音がしてもおかしくない顔で、

「あぅ…。」

 うめき声と目を回し始めてしまった。

 大丈夫なのかと心配になったが、


「はっはっはっは、心配はいらないよ。セレスはこういうのに慣れてないだけさ。普段はあまり男付き合いが無い子だからね。あんたみたいなあって間もない奴に抗体が無いだけさ。」


 とりあえず安心する護。

 人見知りで初心なところがあるセレスが回復するまで、その場一同ほほえましく見守った後、それぞれが自分の部屋に向かおうとしたところで、


「あの、私の部屋は無いですよね?」


 メイアがケレスにそう聞く。

 ケレスはあっ、と声をあげて額に手を置く。


「すまないね、え~と、メイアだったかい。セレスに言われて用意した部屋は一つなんだよ。う~ん、余ってる部屋がもうないんだよ。今から宿を探してもらうのも、大変だしどうしようかね。」


 セレスは複数人の場合を考えていなかったため、護が泊まれる部屋があってもメイアまでのは頼んでいなかったのだ。

 メイアは解決策を提案する。


「余ってないのでしたら、主様と一緒に休みますので。」

「あの…メイアさん、男女二人で一緒に過ごすのは…。それにベッドも一つですし…。」

「問題ありません。どんな場所でも寝られるよう寝袋等はありますから。」

「それは、罪悪感があるのだけど。」

「お気になさらず、主様。私はあなたの従者でございます。気にかけてくれるだけでも光栄です。」


 護からすれば命の保証の観点から同衾は勘弁してほしいところ。

 セレスは護とメイアが一緒の部屋で泊まることに対して、


「良かったら…。私の部屋で寝ませんか?」


 と、代替案を出す。メイアは頭を下げながら、


「セレスさん、申し訳ないのですが、私は主と休みます。主のすぐそばにいるのが私の務めですので。」


と言って引かないメイア。


「護さん、一人でいいですよね。今日会ったばかりの女の人と同じ部屋で眠るなんて落ち着かないですよね?」


 一歩も引かないメイアを置いといてセレスは当の本人に聞く。セレスは、さっきまでのたどたどしい言い方はどこに行ったのかはっきりとした口調だ。心なしか目が据わってきた。

 そんなセレスから護は身を引きながら少し早口で、


「メイアさんの気持ちは嬉しいけど、さすがにセレスの言う通りだと思う。俺としては一人の時間が欲しい。今日は大人しく、セレスと寝てくれないか?」


 そう言うと、メイアは自分の顔を護の顔に寄せてきて、


「私では満足されませんか?」

「ちょっと待ってくれ、どういう意味なんだ?」

「つまり、私を抱かないのですか?ということです。」


 とんでもないことを言い出した、メイア(メイド)に護は頭が痛くなってくる。いきなり饒舌になったので驚いていたのが、吹き飛ぶ。

 

「俺がメイアさんを抱く?」

「その通りでございます。もし、セレスさんのお部屋で寝ていてはご奉仕できません。ですので、せめて主様の部屋で休ませていただけませんか。」


(急にどうしたんだ?メイアさんのご奉仕スイッチでも入れたのか?…本人の了承があるとはいえ、王の侍女だもんなあ。)


 混乱する護。メイアがどうしてこんなに積極的なのか、よく分からない。

 王の侍女というエリートなメイアであるが、その分僻みも多かった。その中に、『男を知らない万年置き去り女』というのがあった。過去といった様々な要因から結婚なんて、そもそも抱くような男なんて現れないだろうと陰口で言われていたのだ。

 メイアは最初気にしなかったのだが、同僚が結婚し、家庭を築くにつれてコンプレックスとなってしまったのである。

 ということで、護という自分の過去を知らない男なら自分を襲ってくれるのでは、と積極的な訳である。護からすればはた迷惑としか言いようがないが。

 護とメイアのやり取りを聞いてセレスは顔を真っ赤にして、


「はうっ……。護さんがメイアさんを…。」


 目を再び回し始めてしまった。

 護は、セレスが再び目を回してふらつき始めてしまったのでとりあえずメイアと共に休むか、どうするかを置いといて、セレスを部屋に送る方向に話を持っていくことにした。こういう時は他のことに逃げるのが一番と言わんばかりの後回しである。


「セレスがまた目を回してふらついているから、部屋に送ろう。すみません、ケレスさん、セレスの部屋はどちらにあるのですか?」


 三人のやり取りをニヤニヤしながら聞いていたケレスに護は聞く。


「あんたの部屋の隣さ。鍵はここにあるよ。侍女に手を出すかはあんた次第だ。まあ、刺されないように頑張りな。」

(刺されないようにって・・・。この場合何が正しいんだ!?)


 厄介ごとを押し付けられた感じを覚えながらも護はセレスと自分の部屋の鍵を受け取ると、セレスの手を握って連れ出した。

 セレスは目が回っている状態から復帰したのだが、異性に手を握られていることに茹で上がってしまい、引っ張られるままについて行く。

 その後ろを進んでいくメイアはさっきまでとは一転しポーカーフェイスで後に続いた。

 ちなみに、ガンドルフたちはすでに自分たちの部屋に行ってしまったようだ。

 セレスは顔を真っ赤にしたまま部屋に逃げこむように入っていき、護たちは、用意された部屋に入る。

 部屋は一人用の机と椅子、ソファーがあり、ベッドはシングル用だった。二人で過ごすには少し狭いが可能な広さだ。

 護は椅子に、メイアは立ったままで向き合う。


「それでどうなさいますか?」


 メイアの問いに少し稼いだ時間で出した答えを言った。


「セレスには申し訳ないのだけれど、一緒に休むよ。ただし、俺はメイアに手を出さないから。誤解が無いように言っておくけど、メイアに魅力が無い訳じゃない。ただ、今はステータスのこともあるし余裕が無い。もしも子供ができたりしたら厄介だ。」


「分かりました。その…主様を困らせるようなことを申し上げてすみませんでした。」


 護の決定に頭を下げ従う意思を示したメイア。

 その様子に思わず、居心地が悪くなった護は、


「メイアさん、とりあえず頭を上げてくれ。お話をしよう。そう言ったのメイアさんでしょ?」

「そうでしたね。」

 

 護は少し笑みを浮かべながらそう言った。まず最初に、


「メイアさん、一応俺が主だし、メイアと呼び捨てで呼んだ方がいいか?」

「主様、呼び捨てで構いません。」

「じゃあ、俺のことは護で。確認だけど、王には報告とかはあるのか?」

「経過報告をしなければならいと思いますが、特に指示は無いので絶対ではないと思われます。」

「そうか。じゃあ、次に…」

 

 会話の途中、護は気になったことを聞く。

 

「メイアはなんであんなに急いでいた?男に抱かれるために一緒に眠るなんて、狂気に満ちていると思った。」

「それは…」

 

 メイアは理由を説明する。時折、苦悩が混じったように詰まりながらも言い切った。

 護は静かにそれを全て聞き終えた後、息を吐く。


「メイアなら、すぐにいい男を見つけられそうだけど。」

「王様を基準にしてしまうとどうしても、違うと思ってしまうのです。ですから、今、主である護様に抱いてもらえれば、納得できるような気がして、つい…。」

 

 メイアが赤くなって俯く。拒絶の言葉が来てもおかしくないわがままであることは重々承知していた。


「なるほど。でも今は無理だ。さっきも言ったけど余裕がない。それに気持ちの整理が追い付いてない。分からないことも多いし、やらなければならないことがたくさんある。」

 

 護はメイアに近づき、手を握る。ビクッと震えるメイアに「大丈夫。」と告げる。そして、続きを再開するのであった。

 しばらくすると、足音がして、


「護さん、夕食の準備ができたので、下に降りてくるようにとケレスさんが。」


 扉をドンドンと叩く音とセレスの声が護たちに聞こえる。


「分かった、今すぐ行くよ。」


 護たちは部屋から出た。目の前にいるセレスは白い服はそのままで、ベールは脱いでいた。水色の瞳のほかに服と変わらない色した肌、そして長い銀髪が護の目に入る。

 セレスはというと、護の後ろから出てきたメイアが気になるようだ。

 

「あの…。護さんとメイアさんはやっぱり一緒に眠られるのですか?」

 

 顔を赤らめながらそう聞く。

 護は頷きながら、


「一緒の部屋で過ごすよ。でも、メイアに手を出したりはしないから。」


 セレスは護とメイアの顔を交互に見る。そして、

「でも…、仲良くなってませんか?」

 二人が打ち解けあったのを勘と様子で悟ったセレス。

 護はメイアと顔を見合わせて、


「そうかもしれない。そもそも主と侍女が仲が悪いというのもおかしいだろ。」

「護様、仲が悪い場合もありますよ。どちらかが屑の類だった場合は。」

「屑は言い過ぎじゃないか?」

「いえ、やり直しすらできない奴らがほとんどなので。屑といっても過言ではないかと。」


 そんなやり取りをしだした二人をセレスは羨ましそうに見ていた。同時にメイアにどこか負けた自分がいるのを感じ、悔しくなった。



 数分も経たずに護たちはセレスの案内で食堂に着いた。食堂には既に五十人ほどがすでに席についている。手を振って護たちを呼ぶのはガンドルフだ。

 ちょうど護たちが席に着くと、ケレスがキッチンが出てきて、


「おーし、始めるかリヒト教会関係者諸君。」


 そう言うと、ケレスは護に近づいてきて、そして立たせた。

 ケレスは大声で、


「紹介するよ。セレスが連れてきた新人だ。異世界から来た新しいメンバーさ。今日は歓迎のために料理人全員で腕を振るった。全員楽しんで食べな!!

 さあ、音頭をとるのはあんただ、マモル!!」


 護は一斉に視線が自分に集まるの感じた。自分の手が汗ばむのを感じながらも、グラスのコップを掲げる。周りもそれに倣う。

 護は深呼吸をして、


「紹介にあった、明石宮 護と言います。異世界から来たので全くこの世界のことが分かりません。ですが、セレスたちに出会えたこと、そしてここにいることは運命であり幸運なことだと信じています。今ここにいられること、そして出会いに感謝して乾杯!!」

『乾杯!!』


 あちらこちらで、グラスがぶつかる音が鳴るのだった。それと同時に料理が出回り、喧騒に包まれる。

 護たちがいる席では、


「やるな、マモル。」

「上出来さね。」


 ガンドルフとエトリアから護は褒められていた。

 護はその言葉でホッとする。急なことであったし、作法なんか知らないし、緊張が襲い掛かってきたがなんとか乗り切れたことに達成感も覚える。


「すごく良かったです、護さん。」

「貴族相手では通じそうになりませんね。」


 メイアだけは護を褒めないが、


「それはそうだろう。人前で話すのは苦手だからこれ以上はごめん被《こうむ》る。貴族なんてなおさらだ。」

「でも、即刻で考えた割には良かったですよ。今度、貴族たち相手でも通じる話し方を教えてあげますので。」

「また今度で。」

「かしこまりました。」


 護たちのやり取りを見て動きを止めたエトリア。ガンドルフも驚いている。


「なんか急に仲良くなっていないかさね。マモル、どんな手品を使ったんだい?」


 護は手を横に振って、


「手品なんか使ってませんよ。ただ、話をしただけです。」

「本当にかい?」


 念を押してくるエトリアに護は苦笑しながらも、


「信じてください。俺は話をして、メイアのことを少し知っただけですから。」


 エトリアは納得はいかないまでも、護が嘘をついている訳でもないので言及することを止めた。そして気難しいメイアと親しくできるということは少なくとも護は普通という枠組みに当てはまらない可能性が高いと、心の内でしみじみと感じる。

 護は自分の席に並べられている料理を見てみる。鶏っぽい鳥の腿が焼かれたものに、野菜が入ったスープとサラダ、後はパンがある。見た目だけなら地球の食べ物と変わらない。さっき掲げたグラスには赤紫色の液体が入っていた。これは音頭を取った後に何か確認済みで普通に葡萄を絞ったものらしい。

 一口、パンを食べてみる。固くもなく、おいしい。日本で食べられるパンと変わらない。


「美味しいですね。」


 その一言を聞いたガンドルフが笑って、


「おう、そうだろ。そのパンの作り方は百年前にエルフの研究者が菌?の研究をした時に見つけたらしい。それ以来、カチカチの黒パンは廃れてな。旅に出る時も、アイテムボックスには必ず外せない必需品になっているぞ。そこの肉は、キングコッコという鳥の肉でな、ここにいるやつらだと問題なく狩れるが、冒険者の初心者卒業にも使われるぐらいには強い。その分味と歯ごたえは抜群で男なら嵌らずにはいられないうまさだ。」

「その分、硬いから女にはきついさね。後、訓練用として飼育されてるけどコストが掛かるから高いさね。これだけの人数分の肉は贅沢をやったもんだね。」

「私は…好きです…この肉は。」

「私は普通ですね。美味しいですが、エトリアさんの言うことももっともですので。」


 と各々意見を述べる。

 護はがっつり齧り付いて食べているガンドルフを真似て、キングコッコの肉に齧り付いた。

 確かに硬いが、噛むたびに出てくる肉汁が溢れ口の中に広がる。加えて、胡椒っぽいものがしっかりと効いており、辛さが食欲を引き立て肉そのものの味と上手く調和がとれている。これは癖になる味だった。

 肉にがっついたり、サラダもそこまでかけ離れたものではなく食べやすかったのが幸いしてあっという間に食事の時間は終わってしまった。

 美味しそうに食べている護に何人かが話しかけようとしたが、ガンドルフが手を払ったのを見て、話しかけるのを止めて自室に戻っていった。

 護も食べ終わったので自室に戻ろうとすると、 


「マモル、後で呼びに行くからな。」

「どうしてですか?」

「風呂に入るからだよ。マモルの世界に風呂とかは無かったのか?」

「ありました。」

「そうか、そうか。なら、説明は要らないな。とりあえず、時間になったら呼びに行く。メイアはお嬢が時間を知らせてくれるからな。」

「分かりました。」

「かしこまりました。あの、護様と私の入浴する時間は同じでしょうか?私、一人分の衣服が縫える分だけの生地と裁縫スキルが高いのでお時間があれば護様の衣服を縫ってしまおうかと。」

「そうさね…、時間は同じだけど、ずらすことは可能さね。ケレスに掛け合ってみるから少し待つさね。」

 

 そう言って、ケレスに掛け合いに行ったエトリアが戻ってきた。返事は良いとのこと。一時間ずらしてもらえることになった。

 

「ありがとうございます。」

「どういたしましてさね。」

「じゃあ、また後でな。」


 各々はそれぞれ自分の部屋に戻っていった。

 

A:なんちゃってQ&Aを始めるぞ~。

Q:お~。なんか元気ないですね。

A:リアルで風邪をひいた。一応、熱に浮かされながらこの話を書いたわけではないからな。

Q:作者のリアル話は置いといて、セレスが出てきましたね。性格、というより口調がまた癖があるというか。

A:最初の構想ではこんな感じのキャラじゃなかったんだけどな。メイアを加えたらこうなった。

Q:そういや、最初の段階で一人で追い出されるのが初期に考えていたことで、書いている途中で王の性格を考えたときに、これぐらいはしそうだという考えのもとで加えたんですよね。

A:そうなる。セレスは普通に喋るキャラだったのに、書いている途中で変わったキャラになった。

Q:今回は微妙な終わり方ですね。

A:経験上これ以上長くなると読むのがしんどいし、確認しづらくなるという理由でここまでだな。

Q:(妥当なのかな?)

 と言った感じです~。もう少し更新頻度が上げられないか模索中。

大体、一万字前後を目標に一話を構成していきたいな思っています。

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