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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
巫女編
2/138

王城にて

や、やっとできた… 一万字の壁は高い…

 王城の中をオルトの案内で進む護たち。王たち重鎮がいるのが、三階にある謁見の間であり、そこ行くまでの通路には有名な画家が描いた絵が飾ってある。護たちは絵を見ながら進んでいると、時折漫画のようなメイド服を着たメイドさんたちがすれ違うたびお辞儀をする。猛以外がお辞儀を返す。猛は面倒臭そうではあるが、龍志に非難するような目で見られたため、後に続いた。


「勇者様の方が地位としては高いので、メイドといった従者に構わなくてもよろしいのですよ。」

「いえいえ、僕たちとしては礼をされたら答えないわけにも。失礼じゃないですか。」

「このおっさんが言ってるようにしたらどうなんだ。いちいちしてたらきりがないぞ。」


 猛の言葉通り王城に入って五、六回目になる。一回会うたびにしているので、少し時間がかかっていた。

 その言葉に対して、龍志は、


「駄目だよ、松本君。僕たちはこの世界の住人じゃない。だからこそ礼儀はちゃんとしておかないと。」

「龍志、ここは異世界なんだから、日本の基準で考えたらだめだろ。オルトさん、ちゃんとお辞儀等は返したほうがいいですかね?」


 龍志の言動が日本でのことであるのを注意し、護はオルトに確認をする。


「いえ、その必要はありません。むしろしないほうがよいかと。私たちと彼女たちでは身分が違いすぎます。彼女たちからすれば恐縮してしまうことなのです。」

「だ、そうだが。」

「オルトさんの言う通りにしておいたほうが~。郷に入っては郷に従え、っていうのもありますし~。」

「納得はいかないけど、しょうがないね。」


 龍志はいくつかの種類の感情が同時に来た複雑な表情でそういった後、歩きだしたオルトを追いかける。

 そうして三階に上がり綺麗に飾られた門とも見える大きな扉が見える位置に来た時、メイドたちといった従者とは異なった三人組に遭遇する。

 三人のうち二人は四十代の男女で、男は紫色の塗装をした鎧を着ており、女の方は、灰色のローブを着ている。また、もう一人は女のようで、全身を白いローブで包み顔はベールで遠くからは分からない。

 四十代に見える男のほうは護たちを目にした途端目を細め、女の方も少し険しい表情をする。

 なぜ、自分たちを見て険しい顔をするのか疑問を覚えながら護たちは歩くと当然三人組にとすれ違う。

 今回は会釈すら互いになかったが、

 

「また、後で。」


 白いローブの女が護のすぐ横を通り過ぎていくときに、護にだけ聞こえる声でそう言った。護は女の方に目を向けるが、すでに階段へ向かっており声を掛けなおせなかった。ただ、ベールの中の顔は美しく水色の瞳が印象的で、


(なんだったんだろ。また、会うことになるのか?まぁ、綺麗な人だし会えるならまあいいか。)


 と、呑気に思いながら扉につく。ここにも兵士が立っているが、装備は城の入り口の門にいる兵士に対して、機能性重視より見た目重視であることが素人である護たちでも分かる。なぜなら、鎧や兜は金色をしており、所々に鳥といった彫刻が彫られているからだ。意匠が凝っている。明らかに値段が高そうだ。

 

「皆様、しばらくお待ちください。王たちに皆様が到着したのをお伝えしてきます。」

「分かりました。みんな、いよいよだね。」

「う~、緊張しますね~。王様がいい人でありますように~。」

「大丈夫よね、実は違いましたなんて言って何もなしに追い出されたりしないよね。」

 

 龍志は緊張しながらも興奮した様子であるが、女性陣は不安を感じているようだ。るかも言葉を発さっず、体の前で低い位置に深く腕を組んだり、髪をいじったりと落ち着きがない。

 

「おい、そんなことを気にするだけ無駄だぞ。なるようになるだけだ。」

 

 猛は女性陣の様子に苛立ちを感じさせるような口調で言う。しかし、不器用ながらのフォローだろう。実際悩んだところでどうにもならない。だったら、どんと構えておけ、と言わんばかりの態度を猛は貫いている。

 るかと桃花はムスッとしながらもそれである程度気を紛らせることができた。ただ、由奈だけは別で、

 

「でも、よくあるじゃない。こういうのって大抵一人か二人、勇者か勇者の仲間にふさわしくないとかどうとかで出ていけ、みたいな話が。」

「うーん、あれはそういう風にできてる物語だから必ずしも起こるとは限らないとしか言えない。でも、もしそうなっても、僕は見捨てたりしないし、みんなもそう思うでしょ?」

 

 龍志はそう言って由奈の頭をなでながら、他の面々に確認をする。

 その問いに答えるように頷く。由奈のほうも落ち着いてきたようだ。すると桃花がにやにやと笑顔を浮かべる。

 

「由奈~、朝野君になでられて~、嬉しいですか~?」

「ちょっ、なに言ってんのよ。そんなわけないじゃない。不安じゃなくなっただけよ。決して嬉しいわけじゃないから。」

 

 由奈は顔を赤くしている。桃花はそんな由奈に抱きつく。

 

「本当ですか~。顔が赤いですよ~。」

「ふぐっ!桃花ぁ、くっつくなぁっ!!。朝野助けてよっ。」

「王様に今から会うんだし、ほどほどにしてあげてね。緊張しすぎるのも良くないけど、緩みすぎるのも良くないからね。」

「は~い。」

 

 さっきまでの不安はどこに行ったのかといった様子で普段から見られる光景を展開する由奈と桃花。そのため、緊張といった空気が緩む一同。そんな雰囲気を感じて龍志は注意を促す。

 それから五分もしないうちにオルトが扉から出てきて、

 「皆様準備が整ったようです。参りましょう。」

 オルトがそう言って謁見の間に入っていく。護たちも続く。

 謁見の間は四階との吹き抜けであり、天井にあるシャンデリアには魔法の光が灯っている。床には赤の絨毯が敷かれ、三段ほど高くなっている所に金色を基調とした玉座がある。その肘掛けに五十代の男が頬をつきながら座っており、その男を中心に華美な装飾をした男女がそれぞれ二十人ほど半円になるように並んでいる。おそらく偉い貴族なのだろう。

 オルトは五十代の男の横に空いている場所へ行き、男と護たちが両方視界が入るように立つ。

 

「勇者様方をお連れしました。この玉座に座られておられる方が、アスタイト王国を治められております第三十九代の王リーゼンボルト・アスタイト様でおられます。勇者様方、跪つき頭を垂れなさい。」

 

 護たちは横一列で並びオルトの言われた通りにする。するとリーゼンボルト王は、


「勇者方、ひれ伏す必要はない。私たちは貴方方に頼む立場なのだから。改めて名乗ろう、私の名はリーゼンボルト・アスタイト。この国を治める王である。さあ、面をあげてくれ。」

 

 と威厳のある声が謁見の間内に響く。すると、王の言葉に男女の何人かが顔色を変えるが、すぐさまポーカーフェイスに戻る。

 

「ありがとうございます。私は朝野 龍志です。失礼だと思いますが、色々と王に聞きたいことがあるのですが。」


 龍志たちは顔をあげる。そして龍志はグループの代表として発言する。またもや、さっき顔色を変えた何人かが龍志の発言に顔色を変える。王のときは驚きが強かったようだが、龍志のときは怒りの感情が見て取れる。


「なんと、恥知らずな!王よ、本当にこの者たちが勇者一行なのですか!」


 顔色を変えた男の一人が声を荒げる。それに対しリーゼンボルト王が、

「よせ、アルダ卿。この者たちは今日異世界から来た身。何もかも分からないはずだ。それに我々は頼む身でもある。勇者が知りたいことがあると言っているのだ、答えるのが道理であろう。」


 アルダと呼ばれる男は渋々引き下がる。相手が王でなければ引き下がることはなかったのではないかと、思うぐらい顔が歪んでいる。護たちは空気が少し重くなったのを感じながらも、


「お聞きしたいのはまず、私たちは本当に勇者一行なのかどうかです。」

「はっはっは、面白いことから聞くな。オルト、お前勇者たちにステータスのことを教えてやらなかったな。まあいい。龍志殿よ、自分の内側に意識を向けて、ステータスオープンといってみるがよい。」


 リーゼンボルト王は龍志の質問に笑った後、少し非難の目をオルトに向けつつもそう言った。

 護たちは自分を意識しつつ、


「「「「「「ステータスオープン」」」」」」


 と唱える。すると、

「これは……」

「わっわっ、なんか出てきましたよ~。」

「………」


 それぞれの目で自分のステータスが見える。


 朝野あさの 龍志りゅうし (男 17歳 人族) 職 勇者 Lv1

 LP (生命値) 19       MP (魔力量)17

 STR (筋力) 17       AGI (俊敏) 16

 TEC (技巧) 20       END (持久) 15

 INT (知力) 15

  一般スキル 剣術Lv2 料理Lv1 裁縫Lv1 栽培Lv1 集中Lv2 指揮Lv1

  職スキル  瞬転Lv1  限界突破Lv1

エクストラ 言語理解



 松本まつもと たける (男 16歳 人族) 職 上級拳闘士 Lv1

 LP  17   MP  9

 STR  16      AGI  15

 TEC  11      END  12

 INT   9

  一般スキル 体術Lv2 不屈Lv1 釣りLv1

  職スキル 気功術 Lv1

  エクストラ 言語理解



 近藤こんどう 由奈ゆな (女 17歳 人族) 職 賢者 Lv1

 LP 13  MP 19

 STR  12    AGI  13

 TEC  14    END  12

 INT  20

  一般スキル  裁縫Lv1

  職スキル 広範囲補正 詠唱破棄Lv1 MP自然回復力向上

  エクストラ 言語理解


 佐藤さとう 桃花ももか (女 16歳 人族) 職 聖母 Lv1

 LP  15  MP 18

 STR  14   AGI  14

 TEC  16   END  13

 INT  18

  一般スキル 料理Lv3 不屈Lv2 裁縫Lv1

  職スキル 祈りLv1 浄化Lv1

  エクストラ 言語理解


 杉波すぎなみ るか (女 17歳 人族) 職 侍 Lv1

 LP  16 MP 9

 STR  14   AGI  17

 TEC  15   END  10

 INT  9

  一般スキル 剣刀術Lv2 体術Lv1 栽培Lv1 裁縫Lv1

  職スキル  居合Lv1

  エクストラ 言語理解

 

「本当に勇者になってるね…」  

「こっちは上級拳闘士だ。」

「私、賢者になってる……。そんな柄じゃないのに。」

「ほぇ~。聖母になっていますね~。私、子供いないのに~。」

「子供がいるのかは関係ないんじゃないかしら。私は侍ね。サムライガールかしら?」


 それぞれが自分のステータスを確認でき、どんな職についているかを言い合う。女性陣は自分たちの職について少し困惑しているようだが。

 ここで、龍志は護がただ何も言わず口を噤んでいる姿が気になる。その顔はやっちまったと言わん限りな状態になっており、今にも魂が出ていきそうだ。

 その様子に他の面々が気づき、護に目線が集中する。そのことに気づいた護はどうなっているかを説明しようとするが、


「どういうことだ!王よ、そのものは職がありません。それにステータスも下級職と比べて低い。村人よりも低いぞ!」


 そう言って声をあげるのはさっき護たちを非難したアルダ卿だ。アルダ卿は鑑定スキルを持ち、それを行使したようだ。周りの貴族たちも騒がしくなる。


「騒がしい。静かにせよ。」


 リーゼンボルト王が低く重圧のある声で周りを黙らせる。


「そなたよ、職が無いとは真なのか。」

「どうなんだ、護?」


 リーゼンボルト王と龍志の問いに護は顔色を変えずに、


「本当です、王様。私には職がありません。ただ、ステータスが低いのかは分かりかねます。」

 護はそう答える。護のステータスはこうなっていた。


 明石宮あかしみや まもる (男 17歳 人族) 職   Lv17

 LP 39  MP 25

 STR 28   AGI 40

 TEC 37   END 21

 INT 25

  一般スキル 剣術Lv2 体術Lv1 料理Lv2 不屈Lv3

  職スキル

  エクストラ 完全図書館パーフェクトライブラリーズ司書ライブラリアン 心理眼 言語理解

 

 リーゼンボルト王の目つきが少し厳しくなる。他の貴族たちも同様だ。護以外の面々も驚きの表情で固まり、龍志に至っては顔色が青くなっている。

 そんな中、アルダ卿は胸を張って、


「ステータスが低いのか分からないだと?いいだろう教えてやる。お前と同じLv17でも下級である村人のステータスは最低でどの値も50以上あるのだ。お前は最低値は25、最高の値でも40ではあまりにも低すぎるのだ。」

「それを言ったら僕のステータスは最高でも20しかありませんよ。なぜ、護のステータスが低いと言えるのです?」


 護は黙っているが、アルダ卿の言い分がなぜ目の前にいる王や貴族が納得しているのか分かり兼ねた龍志が冷たい声音で問う。猛たちも、アルダ卿が言っていることが正論なのか疑問を覚える。猛たちのステータスも護と比べたら、各段に低いからだ。


「龍志殿よ、この世界のレベルが上がった時のステータスの上がる値は職の位階で決まっておる。村人は、下級の中でもステータスの上がる値が一番低いのだ。護殿は、Lv17にも関わらず、同じレベルでも村人よりも低い。つまり、護殿のレベルが一つ上がるたびに上がるステータスの値は村人よりも低いと考えられる。また、これはそこら辺にいる者たちよりも低いとも言える。下手な魔物にも負ける可能性すらあるのだ。それで龍志殿もLv17で低いのか?」

「いえ、Lv1ですけど…」

「勇者は超級である職であるし、他の者たちもおそらくだが、上級は確実にある。そして、レベルが二、三上がれば、確実に護殿を追い越してしまうだろう。そして、その差はどんどん広がる。」

「そんな……。でもそれが何の問題になるのですか?」


 そんなことでと、納得のいかない龍志はそう尋ねる。答えたのはリーゼンボルト王ではなく、王の言動に顔色を変えていた一人の女だった。


「当然、問題になるわ。龍志といったかしら、貴方とそこの男では価値が違うのよ。貴方は勇者でLv1だから今この世界にいる誰よりも強くなれるわ。でも、その男は別。村人よりも低いステータスでも、まだLv1なら成長の幅に期待できたのだけど、その見込みはおそらくないわ。私たちは役に立たない人なんていらないのよ。」

「アーバンスト伯爵、そんな言い方良くないぞ。訂正しろ。」

「あら、王様のお気を悪くなさらないで。でも、必要なことではないのですの?勇者に支えるのに万全を期すには資源を極力無駄なく注がなくてはならないのでは?」


 リーゼンボルト王はあまりにも酷い言い方をするアーバンスト伯爵を諫めるが、当の本人は反省の「は」の字もないような答えを返す。


「一体、護はどうなるのですか?」

 龍志がそう聞く。

 リーゼンボルト王は答えようとして、

「私としては…「王よ、アーバンスト伯爵の言うことは理に適っております。そのことをお考えの上で答えを。」


 リーゼンボルト王を遮りながら、オルトとは反対に立つ男が言う。この男もどうやらアーバンスト伯爵に賛成のようだ。

 リーゼンボルト王は話を遮った男の方を鋭い目で睨む。その男は王の目を真っすぐ見返した。そしてお互い空気が重くなるような重圧プレッシャーを放つ。その重圧に当てられて貴族、護たち共々黙りこんだ。由奈の目には涙が浮かんでいる。

 そんな一触即発の重圧を解いたのはリーゼンボルト王の方だった。リーゼンボルト王は護たちの方を見て一瞬きをすると、


「龍志殿、すまぬが護殿を国の方で援助することはできない。よって、王城から出てもらうことになる。」


 冷たい声音でそう告げる。それを聞いた龍志は青を通り越して白色になった顔になりながら王の顔を見るが、王は決定を覆さないという意思を感じさせるように固く口を結んでいた。

 龍志はその青白くなった顔を護に向けて、


「いいのかよ、護。このままじゃぁ、追い出されるんだよ。嫌だろそんなの。」


 声を震わせながらそう言った。声だけではなく体も震えている。今にも崩れ落ちてしまいそうな状態だった。


「さっきからずっと黙ってお前は何か言うことはないのか明石宮。」

 猛は、護が自分の命が懸かっているというのに沈黙を貫いていることが気になり問う。

「そうよ、松本の言う通りよ。あんたが言わなきゃ。あいつらの言いなりにならないって。」

「明石宮さん~。私たちは~仲間ですよ~。見捨てたりできません~。」

「明石宮、あなた、追い出されることに納得でもしているの?自殺行為よ。」


 リーゼンボルト王たちや召喚された仲間の目線が護に再び集中する。当の護は、仲間を一瞥した後、リーゼンボルト王の方に向き、


「出ていくことは出来ません。確かに仲間について行くことができなくなるかもしれない。でも、必要としてくれる仲間がいるのに応えない訳にもいかない。戦う力が無くても私は友人たちに別のことで力になることもできるでしょうから。」


 そう力強く答える。龍志たちは安堵した顔を向ける。また、リーゼンボルト王は感心したような顔を一瞬するが、再び険しくなる。口を開きかけたその時だった。


「無礼であるぞ!王が決めたことは絶対だ。目に余る言い草よ。兵よ、この不届き者を捕らえよ!!」


 アルダ卿が大声で言い放つ。そして聞いて駆けつけてきた四人の兵士が護たちに近づいた。護を取り囲むようにして守ろうとする龍志たち。兵士たちが取り押さえられる間合いに入った時、威圧が玉座の間を支配する。その威圧によって兵士たちは立ち止まり発信源を恐れを含んだ目で見る。威圧の発信源はリーゼンボルト王だった。リーゼンボルト王は今度は惜しいものを見たような残念な表情をして、


「すまぬが、護殿よ。龍志たちと一緒に行動することは許されん。無礼だ、でないの話ではないのだ。私たちが求めているのは戦う力だ。戦うこと以外は私たちがすることだ。護殿に例え能力があったとしても、私たちがせねば、面目が立たない。」

「それは貴方たちの都合だ!そんなこと僕たちには関係ない。だったら僕はそんな面子で護を追い出そうとしている国の力にはならない!!」


 リーゼンボルト王の言うことに腹を立て怒る龍志。怒りのあまり顔が赤くなっている。それに感化され、他のメンバーも護がいなければ力にならないといったことを大きく宣言する。しかし、


「あら、勇者様たち、綺麗な友情ね。でも、それは邪魔よ。………『アスリープ』」


 アーバンスト伯爵がそう口にした途端、護以外が崩れ落ちるように倒れる。兵士たちが慌てて支えたので、顔面から床に激突することは無かったようだ。ただ一人残された護は、元凶を睨む。睨まれたアーバンスト伯爵は飄々とした態度で、


「そんなに睨まないで頂戴。仕方ないことなのよ。貴方が何も言わずに出て行ってくれたら楽だったのに、力も無いのに勇者様に手を貸すなんて貴方が言ったのが悪いのよ。王様が言う通りに私たちの王国の面子にかけて勇者様たちには強くなってもらうし支援もするわ。でも、貴方は邪魔なの。強さの象徴である勇者様の隣に弱い貴方の姿はいらないし、居させない。そうですよね、アルダ侯爵?」

「その通りだ。貴様の居場所はここにはない。今すぐ立ち去るがいい。」


 アルダ卿がアーバンスト伯爵に同意する。

 護が、貴族たちを見渡すと、大半がその通りと言わんばかりの態度であり、ゴミを見るような目線をした奴もいた。オルトは顔色変えずリーゼンボルト王の斜め後ろに立っており、最後に王に顔を向けると目が合う。王は険しい表情を崩すと、


「王国としては護殿は出ていってもらわねばならぬし、助けることができん。」

 リーゼンボルト王はそう告げる。護は顔を下に向けた。

「だが、私個人からは餞別を送ることはできる。」

 その言葉に下に向けた顔を再びリーゼンボルト王に向けた護。王の顔には小さな笑みが浮かんでいた。


「メイアよ。ここにおるか。」

「はい、王様。」


 リーゼンボルト王は玉座の後ろに声をかける。そこから現れたのは、二十歳前後であろう女。髪は茶髪でストレートにしており、瞳は赤色。服はメイド服を着ている。すれ違った女とは異なったタイプで綺麗な女性だった。


「メイア、お主に休暇兼仕事がある。ここにいる護殿と共に行動してほしい。」


 そう言って、王は虚空に手を伸ばす。手の部分が、空間が揺れているところに入り、そこから、二つの袋を取り出した。そして、一つをメイアと呼ばれた女性に、もう一つを護の方に投げ渡す。

 護は慌てて落とさないように受け取った。金属同士が擦れる音と、かなりの重さに驚く。

 驚いていたのはメイアのほうも同じようで、


「王様、なぜ私にも金貨を?いつもの報酬を受け取って生活しておりますが。」

「これから、しばらくは護殿について行ってもらうからな。その前払いといったところだ。少なくとも護殿がこの世界で一人で生きていく能力を身に着けるまでは一緒に行動してもらう。また、休暇といっただろう、お主は最近勤めすぎだ。息抜きにもなる。」


 そうリーゼンボルト王が告げる。その声にはメイアを心配していることが護にも分かるものだった。

 メイアのほうは頭を下げて、


「かしこまりました。王様のご命令、僭越ながらメイアが勤めさせていただきます。」

「うむ、頼んだぞ。護殿、私の方からはこれぐらいのことしかできない。護殿たちの世界とは勝手が違い苦労することや命が危険に晒されることもあるだろう。だが、強く生きてほしい。」


 護と、いつの間にかその隣に来ていたメイアにリーゼンボルト王は優しい声を掛けた。

 護はその言葉に頷く。すると、リーゼンボルト王は、


「もちろん、龍志殿たちのことは我々が責任をもって支援する。それでなんだが、龍志殿たちに伝言とかはないだろうか?もしかしたら、このまま一生会えないかもしれんからな。それなのにこんな別れ方をするのでは護殿も龍志殿たちも強くなることに集中できないだろう。のぅ、アーバンスト伯爵?」


 と、こんなことを言い出した。胡乱げな目はアーバンスト伯爵にいっている。

 話を振られたアーバンスト伯爵は、一瞬舌打ちをしそうになったのを抑え込みながら笑顔を取り繕いで言った。


「ええ、そうかもしれませんわ。どうせ、また会うことも一生無いでしょうから。伝言ぐらいは聞いてやってもいいのではないかしら。」

「そうかそうか。では、護殿何かしら伝言はないかな?」


 護はしたを向き顎に手を当てて考えた後、顔をリーゼンボルト王に向けて、

「では………」

 言ったことに場に静寂が訪れた。リーゼンボルト王から、


「ふっ、あっはっはっは!そうか、その言葉を残すか。ならば…。また、いつか会おうぞ。」


 盛大に笑った王とは反対にそんなに笑うことなのかという貴族たち。メイアはポーカーフェイスを保っていた。


「さあ、行くがいい護殿。メイア、お主のことを信頼している。護殿のこと頼んだぞ。」


 護は一礼、メイアは改めて「かしこまりました。」と言いつつ一礼する。

 そして護たちは謁見の間から出ていった。


 王城の廊下を歩く二人。護がすまなさそうに、


「いいのか?俺のためについてきて?」


 メイアは無表情で淡々とした声で答える。


「王のご命令ですので。」


 対して護は、


(淡々としてるなあ。俺の世話なんかより、王様の世話をする方がいいよな。)

 

 内心罪悪感で一杯だった。おまけにポーカーフェイスなので何を考えているのか分からない。それが拍車をかける。


「どうかなされましたか?顔色がわるいようですけど。」

「いや、何でもない。」


 そう答えるので一杯な護。上手くやっていけるのか不安になる。

 お互い沈黙のままに一階に着いたとき、メイアが尋ねる。


「主様、これから、どうなさるのですか?どこか行く当てでも?」

 

 護は頬を掻きながら、

「行く当てはないんだけど…。でも、多分迎えが来てくれるんじゃないかな。」

「迎えですか?」

「そう、迎え。」

 

 メイアが疑問に思いながら、門のところまできた二人。兵士たちが困惑の表情で見つめている先にはさっきの三人組がいた。

 三人組は護たちに気付いたようだ。そして護に声を掛けた女性が手を振る。護はその女性に近づき、メイアも続く。三人の内二人の顔が分かる位置に近づくと、メイアの顔が驚愕に染まるが、すぐ元に戻る。向こうの男女も同じようだ。護は気づかなかったが。

 護は水色の瞳を持つ女を見る。大人の女性というよりは自分と同じ高校生といった感じで、その少女と目が合う。


「お待ちしておりました。では、教会の方に。」


 とその少女は笑顔でそう護に言うのであった。


 

A:それじゃあ、張り切って今回からなんちゃってQ&Aを始めるぞ。

Q:やるんだ…。で、今回長いですね、本編。

A:純粋に二倍近くあるからな。展開の切りのいいところまで進めるとこんな感じになった。

Q:へー。序盤、護ほとんど空気になってません?

A:ああ、それは護という人物を捉える上で役に立つ情報とだけ、としか言えないなぁ。

Q:性格なんですね。それでアーバンスト伯爵、色々酷くないですか?

A:それは否定できないな。ただ、ああいう奴らが、王国の上位陣にいると分かればその後の展開は…

Q:そこまで話が持っていけるといいですね。(出てこない可能性の方が高いな…)

 とここまでですね。いやー、時間を忘れてしまいますね、打っていると。

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