二日目 午前の部
くっ… 話がなかなか進まないよぉ…
異世界に飛ばされてから二日目の朝になった。
護は、目を覚ます。部屋の中は、まだ日差しが弱いせいで少し薄暗い。部屋を見渡すと、隣にメイアの姿はないどころか、部屋にすら居ないようだ。
護は、「点灯」と言って部屋の明かりを点ける。それと同時に扉が開く。
「おはようございます、護様。昨夜は失礼しました。」
「おはよう。できれば、下着姿以外で寝てくれ。」
「かしこまりました。」
部屋に入ってきたメイアは、メイド服を着ていた。下着姿でははっきり強調していた胸と腰のくびれも隠れて分からなくなっている。
昨夜のことを護は釘をさしながらも不問にする。男としてはラッキーなのだろうが、如何せん状況が悪い。流石に昨日ようなアプローチは勘弁してほしかった。
他愛ないことをメイアと会話をしていると護に、外から掛け声や怒鳴る声が聞こえてくる。
「外で何をしてるんだ?というより、メイアは今までどこにいたんだ?」
メイアは顔色一つ変えずに答える。
「ガンドルフ様達は朝の鍛練をしている途中でございます。私は、身支度を整えた後、食堂のお手伝いをしておりました。ケレス様から、『人手が少なくて手伝ってくれたら助かる。』と言われましたので。護様のお傍を離れるので、不味かったでしょうか。」
最後の一言は、やや気まずかったのか、少し声音が沈んでいた。
(一日中、後ろに控えられるのは困る。人助けより俺のことを優先させられるのも何だかなあ。)
護はメイアに近づく。護はどう話すか言葉を選びながら、
「メイア、別に責めるつもりはない。ケレスさんたちはメイアが手伝って困った訳じゃないだろ。俺は寝てたんだし、手伝うことはいいことなんじゃないかな。」
「ですが、今は護様の身の回りのお世話が最優先です。手伝うことも護様が起きられるまでにこなしていなければなりませんでした。」
その言葉に対して護は、苦笑を浮かべる。変なところで頑固だ、と思いながら、
「気にしてないと言ったでしょ。メイアに頼ってばかりじゃダメな人間になりそうだ。それに、メイアが正しいと思ってやったことを責めるなんて主でもある俺でもないよ。王様は違ったの?」
「いえ、責められることは一度もありませんでした。勝手なことをしても王様はいつも笑って『助かる』と。」
「それでいいんじゃないか。にしてもメイア、勝手なことって、何をしたんだ?」
護はメイアに向かって、さっきまで浮かべていた穏やかな笑みを意地悪な笑みに変えてそう言った。
メイアは、ニコリと笑って、
「秘密でございます。そろそろ朝食の時間でございますので、参りましょうか。」
メイアと共に護が食堂に行くとそこにはセレスとエトリア、その他の修道女が先に座って食べていた。
二人は『おすすめ!朝にはこれ!』となっている定食を頼む。出された定食を持ち、護はどこに座るか見渡すと、セレスが護たちを手招きし呼んでいる。護はセレスの隣に、その横にメイアが座る。ちなみに、エトリアはセレスの向かい側である。
「よーし、飯にするか。」
護たちが座るのとほぼ同時に、ガンドルフがそう言って騎士たちを連れて食堂に入ってくる。
ガンドルフたちは汗を流してきたようで、一部を除いては特に変わったことはない。一部は、息を乱しており汗だくだ。おまけに服装も鍛錬してすぐ来たかのように土埃がついている。
汗だくな集団に気付いたケレスが食堂からそいつらを、「食堂を汚すんじゃないよ!とっとと出直してきな!」と叫びながら追い出した。
護がそのやり取りを見ているうちに、ガンドルフがエトリアの隣に座り、他の騎士たちも食事を取り出している。
「あれは、いつものことだから気にするだけ無駄だぞ。」
ガンドルフがそう言ったので、護も食事に手を出す。パンとスープをメインとし、サラダと見たことないスティック型の食べ物がある。
護はスティック型の食べ物に『真理眼』を使用すると、
教会特製ソイスティック (栄養豊富 味はそこそこ スープに浸けて食べると美味しくなる)
となっていた。
(へー、『真理眼』って食べ方も出るんだな。)
と護は思いつつ、スティックをスープに浸けて食べる。パサパサとしたスティックがスープでしんなりとし、味もスープがしみ込んでいて美味しくなっていた。
「護さん、よくスティックをスープに…浸けて食べると美味しくなるって…気づきましたね。」
「教会発の食べ物は一手間加えないと、癖があって食べずらいものが多いのですが…。護様、迷わずその方法をとりましたね。一目で見抜いたのなら流石です。」
両隣にいる女性二人が護の何の迷いもなくスティックをスープに浸けて食べていることに気付きそう声を護にかけた。
護は目を左右に泳がすがメイアとセレス、両方と目が合い、前を向くと、ガンドルフとエトリアが何かあったのかという疑問符を浮かべて護のことを見ていた。護は視線の逃げ場がなくなったので、思わず天井を仰ぐ。
「「どうかしたか(さね)?」」
「護様が自然な動作でスティックをスープに浸けて召し上がっているので、セレス様と二人で気になったものですから。」
メイアの言葉で、ガンドルフたちからの視線も女性二人の視線に加わる。
護は、素直に『真理眼』のことを言うべきか一瞬だけ迷ったが、
「実はステータスがかなり低い代わりに、鑑定系のスキルがあるんです。」
と、ぼかし気味に言う。しかし、
「護様。普通の鑑定スキルでは、物を対象にしたときは名前しか出ませんよ。生物やゴーレムといった魔物の名称とステータスが見れるぐらいです。そのステータスの表示もスキルは見れません。例外として奴隷商が仮契約しているときに見られるといった具合です。」
メイアが鑑定スキルをそう説明する。メイアが出した結論は、
「ですので、護様の鑑定スキルは少なくとも一般とは異なります。召喚された影響だろうと思われます。」
「どうなんですか…?」
護は嘘をつくのは得意ではないし、かなりこの異世界の常識が頭にない。ここは内心白旗を振りながら、
「メイアが言っていることは正しいと思う。俺が持っているスキルの名前は『真理眼』と言うんだ。聞いたことは?」
護の問いに、四人は首を振る。エトリアが護に向き直ると次のように聞いた。
「マモル、そのスキルはどの部類に入っているさね?」
護は、少し間を空けてから答える。
「エクストラです。」
「なるほど、マモルの個人スキルということだな。……エクストラは基本個人スキルと呼ばれていることが多い。習得条件が職だけではなく個人に依存している場合がほとんどだ。おまけに同じスキルでも習得したタイミングが異なる、といったこともあるスキルだな。」
護が「個人スキル」という単語に反応したのをガンドルフは見て、そう説明した。
「でも…、今回は…何が条件なのでしょうか?」
「おそらく、メイアが言ったみたいに異世界から来たことが一つの条件だと思っています。初めてステータスを見たときからありましたから。」
「それに加えて、職がないこともありそうさね。」
各々が護の『真理眼』の取得条件を考察する間も、手を休めずに食べていく。
「食べ終わったわけだが、マモルたちはこれからどうするんだ?」
一通り考えられる条件と一同食べ終わったため、今日の予定をガンドルフは護とメイアに聞く。
「セレス、時間があるなら神様と話してみたいんだ。どうして召喚されたのか知っているかもしれないから。」
「私は時間があるので……。大丈夫です。」
「俺たちはお嬢の護衛だから、当然ついていくぜ。他には何かあるのか。」
ガンドルフはそう続けて聞いた。それに対して護は、
「そうですね、できれば薬屋に行きたいです。」
「ほう、どうしてかさね?」
「これも、スキルで分かったことなんです。詳しくないのですが、ステータスを上げる薬があるらしいので作成してもらおうかと思いましたから。」
「マモルが持っているエクストラは『真理眼』だけではなさそうだな。それにしても、ステータスを一時的に上げる水薬なら聞いたことはあるが、それとは違うのか?」
「違います。レベルが上がるときのステータスに上昇補正がかかるらしいです。」
護の言葉を聞いたエトリアがやや早口になりつつ、
「マモル、そんな話聞いたことないさね。もしあれば、流行ってもおかしくないさね。」
護は、頬を人差し指で掻く。エトリアはその様子から流行らない理由があると感じる。
「確か下級職以外には使えないのがおそらく広まってない理由だと思います。」
「制限が…あるのですか?」
セレスがたどたどしく護に確認する。護はセレスに対して簡潔に言った。
「下級職以外が服用すると死ぬらしい。」
「えっ!?」
セレスは護が言ったことの内容が物騒だったので、呆けてしまう。
エトリアは納得がいったようで、
「それじゃあ、廃れるさね。条件を満たしたら、階級を上げていくのが常識になっているからねぇ。私たちにはもう関係ない話さね。」
「おまけに下級職を辞めると、効果無くなりますから。」
「護様、それは中級職になったら補正が無くなり、普通の状態と同じになるということでしょうか?」
「そういうことだと思う。」
護の言い方が曖昧だったのでメイアがそう質問して、護は確かではないが頷く。
「まあ、気になることはいくつかあるが、時間は貴重だし動くか。とりあえず教会の祭壇に行くとしよう。」
ガンドルフがそう言う。
食堂に残っているのは護たちだけだった。加えて、食器類を手元に置いたまま話していたので、食器を洗っている人のまだなのかという視線が刺さってくる。メイアやガンドルフは気づいていたが護の言い出したことが気になったので、あえて無視していた。その結果無視できないぐらいきつくなったが。
一向は食器洗い担当に謝りながら渡した後、教会の方に向かう。
ガンドルフ、エトリアは入り口の前で止まる。身体を傾けて護へ向く。
「今は降神の時間だから、本来入れるのはセレスだけだ。今回はおそらく護も入れるとは思うが…。」
「普段は結界があってこんな風に弾かれるのさね。」
エトリアはそう言って扉に触れようとするが、扉の五センチ前で止まってしまう。
護はエトリアのように扉に手を触れようとすると、その手は空中で止まらず触れることができた。
隣で、メイアも同様のことをしていたが、エトリアと同じ状態になっていた。
「護さん、行きましょうか…」
そう言ってセレスは護の手を握る。
セレスの顔の赤さと手の熱さに護はセレスがどう思っているか察する。無理をしなくてもいいとは思うのだが、彼女なりの護への歩み寄りなのだろう。
セレスと共に教会に入った護は、昨日入った時とは空気そのものが違うことを肌で感じる。そこはかとなく教会に光が満ち、日差しが出ている外よりも明るくなっているようだ。
セレスは護の手を離すと、祭壇の前に立ち手を合わせて祈りだした。一つ光の粒子がセレスに届くのと同時に光の洪水で護は咄嗟に目を閉じる。光が収まりセレスを見てみると、いつもはたどたどしい雰囲気をしていたセレスが今はうっとりとした表情で護を見つめていた。
「改めてようこそ、明石宮 護さん。私は光の神。セレスティアの体を借りて、今あなたと話すためにここにいるわ。」
そう言って、自称光の神は護に礼をする。
「初めまして。明石宮 護だ。あなたには色々聞きたいことがある。」
護は体をこわばらせて言う。セレスの中にいる存在の力の一端が護にそうさせていた。
「そう緊張なさらないで。私が知っていることならなんなりとお聞きになって。まぁ、時間の許す限りですけど。」
自称光の神はニコニコしながら言う。ちょっと腹が立つ言い方だが無視し、護は早速疑問に思っていたことをぶつける。
「何故、俺たちはこの世界に呼ばれたんだ?」
自称光の神は顎に人差し指を当てながら天井を見上げた後、笑顔で、
「ごめんね。管轄じゃないから、どうして呼ばれたかなんて分からないわ。」
「分からない?」
護は予想外の答えに思わず、聞き返した。
自称光の神は頷く。そしてしゃべりだした。
「そう、私の管轄は光に関すること。だからどうして召喚されたのかなんて不明よ。でも、これだけは言えるわ。私たちは様々なシステムが意思を持ったようなものなの。つまり、私たちは命令されて初めて力が発揮される。例えば光の場合は魔石灯があるでしょ。あれの光は私が一応管理していることになっているの。これと同じように召喚に関しても管轄の神様がいるのよ。」
「命令した何かがいるのか。召喚に関してはどの神が管轄しているんだ?」
「そういうこと。管轄は時空の神だったかしら。ちなみに、神の知識の共通事項があってそれには答えられるわ。」
「例えば?」
「そうねぇ。あなたたちはもう戻れないとか。」
自称光の神が言ったことに護は息を呑む。
(何気なく、とんでもないことを言い出したぞ、この神!)
驚きを隠せず、少し早口で護は聞く。
「俺たちは元の世界に戻れない?どうしてなんだ?」
自称光の神は護に近づいて、人差し指でセレスの唇をなぞりながら、
「因果律をいじる関係で不可逆らしいのよ。私はよくわからないけどね。向こうの世界ではあなたたちは生まれてないことになっているみたいよ。」
「…」
(元の世界に戻るという希望は早く捨てなければならないことに喜ぶべきか、悲しむべきか。両親の顔をもう見ることは出来ないんだな。)
「大丈夫かしら。人はこういう時頭の中が一杯になるって聞いたんだけど。」
自称光の神が護の顔を覗き込むように見ていることに護は声で気づき、下がっていた顔を上げる。目の前には、少し手を伸ばしただけで触れられる距離に、神がいた。その顔は相変わらずニコニコして、護は呆れるしかなかったが。
「俺のステータスについては?」
「ごめん、これも管轄外だから不明。答えられるとしたら、生命神かな。」
護の質問と自称光の神の応答が続く。それに伴い時間も過ぎていった。
「役に立たないな…」
「役に立たない神様から一つだけ助言を送るわ。強くなりたいなら、『真理眼』で職変えの水晶を調べなさい。さて、時間も近づいてきたし、最後に。この世界ではハーレムを作れるわ。そのときはちゃんとセレスティアも入れてあげてね。」
自称光の神が言い出したことに、護はジト目を返す。その目は実に何言ってんだこいつ?となっていた。助言に対して聞くのは後回しである。
自称光の神は、ニコニコから苦笑いに変わって、護に告げる。
「あれ?ハーレムって男のロマンじゃないの?セレスティアから聞いた話だとそうだったんだけど…。護君はハーレム嫌い?それとも男の子同士の愛ってやつ?」
「この世界にもいるのか、漢女。ともかく、神様、俺は異性愛者だ。何故最後にそんな蛇足を突っ込んだ?」
自称光の神はニコニコした笑顔に戻って、
「私はね、こうやって降臨してるときはセレスティアの感情が伝わってくるの。それでね、この子には今までなかった感情が芽生え始めてるの。どうなっていくか楽しみでしょうがないのよ。余計なお節介を焼きたくなるぐらいにはね。」
護にはニコニコした笑顔にどこか慈愛を感じる。それはずっと子供を見てきた親が成長を祝うような雰囲気を醸し出していた。
自称光の神は手を一拍打ち、
「時間が来たわ。忘れてたけど、あなたが使おうとしている薬をこの子に飲ませないでね。死んじゃうから。」
とだけ言い残し、セレスの体から神聖な気配が抜ける。同時に倒れかけているセレスの体を護は急いで支える。教会は元の雰囲気に戻っていた。
「うぅ…」
セレスがうめき声を発しながら目を覚ます。支えている護と目があってしまうと、顔が一気に真っ赤に染まり、目を回し始める。
「護様、終わりま…」
扉を開きかけたメイアは目を回しているセレスをそのまま支えている護に目がいき、途中で言うのを止め扉を閉じる。一瞬見えたその顔はいたずらを思いついた少女のものだ。
すると今度はエトリアが血相を変えて、扉を乱暴に開けて入ってくる。
「大丈夫さね、セレス?護に変なことされてないかね?」
入ってきて早々、大声でそう言った。
護は、エトリアがメイアの行動を勘違いして突入してきたことを察する。エトリアの後ろから入ってきたメイアが口元を緩めているのを護は見て確信する。ガンドルフはと言うと、やれやれといったところだろうか。
エトリアは護の腕の中でいつものように目を回しているセレスを見て、落ち着きを取り戻し、すまなさそうな顔をして、護に謝る。
護はエトリアの謝罪を受け入れた。後、内心でメイアに文句の一つ二つを言おうとも。
護一人では支えることしかできなかったが、ガンドルフがセレスを椅子に移動させる。セレスが回復するまで、護は光の神との会話をメイアたちに説明するのであった。
「なるほど、マモルたちは帰ろうにも元の世界に帰れないのか。」
「そうなります。」
「護様、あまり悲しそうではありませんね。ご両親にはお会いしたくないのでしょうか。」
メイアがそんなことを言うので、護は顔を顰めて、
「会いたいさ。でも実質不可能なことを望んでも、現実に失望するだけだ。切り替えて生き残ることに集中しないと。死んだら俺を生んで育ててくれた両親に顔向けできないだろ。」
メイアは畏まった様子で、
「失礼いたしました。ご主人様が大丈夫なのか心配でしたので。」
「主人を試す侍女って、どうなんです?」
護はガンドルフとエトリアにそう聞く。聞かれた二人は顔を見合わせて、
「「居ないな(さね)。」」
声をそろえて言うのであった。
「あの…護さん、さっきはありがとうございました…」
セレスの声で護たちはセレスが復帰したことを認識する。護は「どういたしまして。」と返した。
「もう昼だし、飯にするか。」
「ちょっと待ってください。」
セレスが復帰したのと、昼であることでお腹が空いたため昼食を食べようというガンドルフの提案に待ったをかける護。
薬屋にも用があるので、今日再びここに来る時間が取れるか分からない。そのため、自称光の神の助言を試してみるタイミングだと護は判断した。
「『真理眼』」
職変えの水晶を両目で見ながら呟く。メイアたちは護がエクストラを使用していることをそのつぶやきから理解する。
護の目には魔力灯と同じような解説欄が出ていた。
職変えの水晶 (職変更 (対象が条件を満たしている場合可能) 水晶自体、一定の大きさが必要 大きさが満たされない場合、違う効果に変化)
解説欄を見て驚く護。護としては職変えの水晶が割れるとは思っていなかったのだ。
「この水晶、割れるんだ…」
護の再び呟いた内容に、セレス達は護同様に驚いた。どうやら似たような認識だったらしい。
「そうなのですか、護さん。」
セレスが聞いてきたので、護は頷くことで肯定する。
「護様、どうなされるのでしょうか。」
「光の神様が言ってたことだし、多分割れということなんだろうな。」
メイアに護はそう答えた。
何十年もここに仕えているガンドルフとエトリアは、護の水晶を割ろうという提案に顔を顰めるが、護の生存率が上がるのであれば、やってみる価値はあると思い直す。
護が二人の顔を見て、
「怒られると思っていたんですけど、怒らないんですね。」
「神様の助言なんだろ。少し抵抗感はあるんだがな。俺たちはこの水晶を詳しく調べたことがなかったし、ましてや割ったことなんて無い。正直どうなるか分からん。だが、割ることで護の助けになるのならやってみるしかないだろ。」
「そうさね。」
二人の言葉を聞いて、護は割ることを決めた。
「メイア、手伝ってくれ。」
「かしこまりました。」
護とメイアは二人で水晶に近づくと、メイアは護にアイテムボックスからナイフを取り出して渡そうとする。しかし、護がナイフを受け取ろうとするとナイフに弾かれてしまった。護は弾かれた指の痛さに顔を顰める。
「申し訳ありません。つい、私がいつも愛用しているナイフをお渡ししそうになりました。護様のステータスではご使用できないものです。」
メイアはそのナイフをしまい、代わりに金づちと金属製の杭を取り出す。護はその二つを受け取る。
「さっきなんで弾かれたんだ?ステータスが関係しているみたいだけど。」
メイアは頷くと、
「私の愛用しているナイフの名は『常闇』。魔力を流すことで猛毒を発生させることができます。条件として素材に使われている魔物の階級が高いので使い手を選ぶのです。その際にステータスとスキルが一定の値、レベルが必要になります。」
「なるほど、ステータスが足りないとかレベルが足りないのか。それで弾かれた訳か。こういうことってよくあるのか?」
「弾かれるのは上位の装備がほとんどです。中位や下位でもステータスが足りないと弾かれはしないものの、お持ちになれません。」
護はメイアの説明を聞いて、今持っている二つは護でも持て、水晶を割るには十分な道具なのだろうと理解する。
護は杭を水晶の下の方の細くなっているところに当てる。そして金づちで杭を打つ。
水晶に罅が入るがそれ以上に護の手が痺れる。まだまだ割れるような状態ではないので、護は時間がかなりかかりそうだと思いながら再び構える。
すると護の後ろからメイアが護の手ごと杭と金づちを握る。護は自分たちの後ろから感心の混じった視線を受けるが、メイアの胸が背中に押しつけられていることと、耳に息がかかっていることに身体が反応クラクラし始めてそこまで気にしなかった。
「護様、私も手伝います。二人ならば割れるでしょう。」
護の状況に気付いてないのか、そのままメイアは護越しに杭を金づちで打つ。その速さと力強さに護が気を取り直したのと同時に、水晶が完全に割れる。
床に落ちた水晶は透明から白く濁った色に変わる。
護は、メイアに金づちと杭を返すと、その白水晶を拾う。すぐさま『真理眼』を使用した。
レベルリセッター・クリスタル (レベルのリセット 下級職はレベル1、中級職以降はその職になったレベルにまでリセットする。)
二人はガンドルフたちのところに戻る。
護は、白水晶の効果を四人に説明した。帰ってきた反応はかなり微妙だ。
「マモル、それは役に立つのか?普通に考えるなら役に立たない効果だが。」
「でも、レベル上昇時の補正ポーションがあれば話は別です。」
ガンドルフの言葉に護はそう返す。そして、クリスタルを手に持った時から護の目の前に表示されている『レベルをリセットしますか? はい/いいえ』の『はい』に手を触れた。
『はい』を押した途端、体中から力が抜けていくのを護は感じる。意識もぼんやりし始める。
「護様!?」
ふらつき始めた護の体をメイアが咄嗟に支える。ガンドルフたちも護の様子がおかしくなったことに慌てる。
周りの声はぼんやりと聞こえるだけで、メイアの腕の中で護の意識は闇に呑まれていくのであった。
A:今回もなんちゃってQ&Aを始めるぞ。
Q:おー。『真理眼』、ガンドルフたちに明かしてますけど進行に問題ないの?
A:どこかで結局ばれるだろうから問題ないぞ。後、護は嘘つくのが苦手という設定だ。
Q:あと、光の神の前に「自称」が付いているんですけど。
A:あぁ、これは護の認識が反映されていると考えてくれ。護からすれば神なんて胡散臭いということなんだろう。
Q:そういうことですか。(神様の性格、最近読んでた、なろうのヒロインの影響受けたんだな…)
こんな感じでしょうか。正直、今回の話で二日目を一気に進めるつもりだったんですが、予想以上に前半部が増えたので、一回区切りを入れました。




