悪霊討伐決着、そして旅路へ
あ、あっけない…
~屋敷・地下室~
「『障壁』!」
「くっ。この壁、硬いなぁあ!!」
ミアノが張った障壁が少年の悪霊の突撃を防ぐ。罅が少しずつ入っているところを見ると、長く持ちそうにはない。
護、アンを抱えたメイア、ミアノは急いで離脱を図る。地下室を出て二階の部屋に戻ったと同時に障壁が破られた。ミアノが注意しようとする同時に、悪霊が現れる。
「!!」
「惜しい!」
メイアが少年の間一髪で触れようとした手を回避する。瞬間転移を勘だけでメイアは回避していくが、触れそうになった。そこを護がカバーする。
「『シャイン・ウォール』!」
「無駄なことを!!」
ダメージは与えられないが、遮ることはできる。一瞬動きが止まった隙にメイアが窓から飛び出た。
「『ウインド・ステップ』」
風を使って着地を早め、全速力で二人が脱出しようとする。トップギアまで駆け上がったメイアの行く手を少年は待ち構える。
「そのまま、突っ込みなさい。『障壁』」
「合わせろ、メイア!『グランド・ウォール』!」
障壁が少年を囲み、メイアの足に合わせて、段差ができる。メイアが障壁の上を跳躍し、門の外に出た。
護たちも二階から飛び降り、門めがけて走る。あともう少し、というところで、邪魔が入った。
「せめて、お前だけでも!」
「危ない、マモル君!!」
「ミアノさん!」
障壁をぶち破った少年の魔力が護を庇ったミアノに直撃する。吹き飛ぶようなことは無かったものの、ミアノの動きが急に悪くなる。追撃を全て受けるようにミアノが庇う。
護は光魔法で目くらましを仕掛けると同時に、足が止まったミアノの腰を抱きかかえる。全力で門を飛び出た。心臓が早鐘を打っている。
「ちっ。せいぜい苦しむといいよ。」
門の外には出られないのか、少年はそう言い残しかき消えた。
護は慌てて、ミアノを『真理眼』で見る。すると、ステータスの下には、
呪いLv7 (能力低下・極大、体力持続減少、回復不能、意識混濁、スキル使用不可)
かなり酷い呪いが示されていた。ミアノが咳き込むと同時にかなりの量の血を吐く。状況は最悪のようだ。
護はミアノを背負い、急いで教会に戻るのだった。
「おいおい、どうしたんだ!?」
キールスがこちらに気づき、慌てて駆け寄ってくる。訓練場にいた他の騎士たちも集まってきた。
「ミアノさんが呪いを受けた。解呪するには、高レベルの『浄化』と『魔法』がいる。」
「魔法は俺が引き受けてやる。」
「リヤお義姉さま、ありがとう。」
後からやってきたリヤお義姉さまが護に声をかける。そして、もう一人。
「『浄化』は、私が引き受けましょう。伊達に祓魔師ではないので。」
「オリー、助かる。」
「事情は説明してくださいね。」
すぐさま二人の力が、口元を血で染め、荒い息を吐くミアノの身体を包み込む。
かなり強い呪いのせいか、光が一色に混じり合った後も、解除される様子を見せない。
オリーの額から汗が溢れる。かなり集中しているのか、疲労が早い。オリーに交代するよう護は命令しようとしたが、
「ミアノ様にはお世話になりました。まだまだ、これからですよ。」
オリーの呟きと共にミアノを包む光に変化が生じた。白色から黄緑色へと変わったのだ。また、オリーが咳き込み、血を吐いた。
『オリー・ドゥフトに呪いが一部移動。体力持続低下、意識混濁が発生。すぐに対処が必要です。』
「誰か、オリーに回復魔法と、『浄化』を!!」
「分かった。」
「かけ続ければいいのね!」
オリーも光に包み込まれる。こちらの光も黄緑色に変化した。二人を包んだ光は輝きを増していく。
その間、オリーは世界がぐるぐる回っている感覚と周りの音が頭をかき乱すのに耐えながら、ミアノとの繋がりを絶やさないように『浄化』をかけ続ける。
「呪いが解除され始めている。オリー、もう少しだ、頑張れ!!」
オリーに護の言葉は理解できなかったが、周りの音を一瞬だけ取り除く。その瞬間、途切れそうな力の全てを一気に注ぎ込んだ。
カッ!!
一際光った後、オリーが倒れる。護は抱えると、解呪されたミアノと同じようにポーションを飲ませ、担架に乗せた。二人とも回復専門の修道女の下で、過ごすことになる。
見送ったところで、騎士たちの視線が護に集まる。護は騎士たちに事情を説明した。拠点予定の館に悪霊がついていること、植物が魔物化していたことなどを話した。そして、終始何も言わず無言で聞く、リヤお義姉さまに護は殴られることを覚悟する。
「大体、把握した。不動産屋の管理不届きは一つお灸を据えてやらないといけないな。護、撤退したことは間違いじゃないぞ。今までが異常だからな。格上との戦いにお前は慣れ過ぎだし、命知らずな面があった。でも、勝てないと思って今回は逃げてきたんだろ。それで上出来だ。」
「怒らないんだな。」
「怒ってほしいのか?確かに、最後で抜かった事実は変わらないが、全員生き残れている。いいか、護、旅に出るなら、妹たちを生かすために油断せずに逃げきれ。今回は俺たちがいるが、旅の間はいないぞ。助けたくても助けられない。」
「肝に銘じておく。」
「それでいい。あのエルフ侍女を見に行ってやれ。そこの半耳エルフがそわそわしているぞ。」
護はメイアとアンを連れて、二人が休む部屋に向かう。扉を叩くと、二つ返事が返ってきた。
オリーもミアノも顔色が少し悪いが、問題なさそうだった。アンがオリーに抱きつき、オリーがアンの頭を優しく撫でた。
「マモル君、謝る必要はないからね。」
「ご主人様、私に事情を説明してください。」
謝ろうとする護をミアノが制し、オリーがそう尋ねてくる。護は再び説明し、二人にお礼を言った。
「どういたしまして。マモル君、リベンジしないとね。セレスちゃんがいれば勝てるよね?」
「今度は私もご一緒します。私も住む屋敷を確認したいので。後、その悪霊を自ら祓いたいです。アンに手を出す輩はどんな存在でも万死に値します。」
「お、おう。…今度は勝ちに行く。と言っても、俺の力じゃないのが、悔しいが。」
「私たちの力は…護さんのための力です。…私は護さんの役に立てて嬉しいです。」
いつの間にか、セレスが入って来て護は驚く。セレスは護の驚いた顔を見れて少しご機嫌だ。真剣な顔に戻ると、闘志が瞳に宿る。
「それに、前回は護さんのお荷物だったので…、今回は成仏させてみせます。」
「三人いれば、絶対にできるわ。頑張りましょう、オリーちゃん、セレスちゃん!」
「「はい。」」
「あのねぇ、一応、けが人何だから大人しくして頂戴。そうしなければ、リベンジなんてさせないよ。」
「ごめんなさい。」
世話役に怒られ、ミアノがシュンとなる。どこか締まらないと思う護は苦笑いを浮かべるのだった。
~翌日・屋敷~
「やってやるわ。」
張り切るミアノを先頭に、護たちは再び屋敷にやってきた。昨日のメンバーにオリーとセレスを加えた、男一人に女五人という、視線集まるパーティーだ。道中での周りの様子は、想像の通り。若干、気まずく感じた護だが、門に入る頃には、意識を切り替える。
屋敷に入ると同時に現れた悪霊はくすくすと笑いながら、その指を鳴らした。昨日は無かったはずの燭台に火が灯っていく。
「わざわざご苦労様。御馳走の数を増やしてくれるなんて。昨日のことが懲りてないの?」
「懲りてないわ。貴方をちゃんとあの世に送ってあげる。」
「出来るならね!!」
昨日と同じように呪いが込められた魔力弾が護たちを襲う。しかし、ミアノの『障壁』に全て阻まれ、跡形もなく霧散した。
セレスが『トゥ・ヘブン』を、オリーが『浄化』を悪霊に向かって放つ。しかし、消えるようにして躱されてしまう。
「逃げ足が速いわね。先に捕まえないといけないわ。」
「『気配探知』だと二階の右手側にいる。」
「分かったわ、マモル君。」
追いかける形で、階段を上る。たどり着く頃には、『気配探知』には再び一階に反応があった。
「ちょうど正反対の位置に反応が。完全に逃げられているな。完全に振り回すつもりだな。」
「消耗させて判断を誤らさせるつもりのようですね。これでは埒があきません。」
「ミアノ、『障壁』を置くことはできるのか?」
「ごめんなさい。私には無理だわ。光魔法ならできないことは無いけど。」
体力など関係ない悪霊と、有限な護たち。追いかけっこなどすれば、圧倒的に不利になる。
それは勘弁だと思った護は、とある方法を実行する。
「いっそのこと諦めるか。」
「ちょ、マモル君、本気?」
「他にも物件はあるし、ここでないといけない理由もない。」
「じゃあ、何でここに来たのよ。」
「倒せたら、よし。倒せなかったら、諦めてとっと退散する。命と天秤をかけたら、それが最適だ。」
「護様の言う通りです。私やアンは狙われる身。リスクが増すのであれば、屋敷など諦めた方がいいでしょう。」
「え~。」
いつもの年上のお姉さんから、子供のように駄々をこねるミアノに、微妙な視線を向けながらも護は何も言わない。ただ、屋敷を出るように歩を進める。
『気配探知』への反応が消えている。間違いなくこちらに向かっていると護は確信していた。建物から出ようとした時に、悪霊は現れる。
「メイア!」
アンのすぐ後ろに現れた悪霊が手を伸ばすと同時に、メイアが砲弾のような速さでアンを攫う。
ミアノが『障壁』を消えるように離脱する悪霊に向けて放ち、今度は閉じ込めることに成功した。
一気に、『浄化』と『トゥ・ヘブン』をかけられ、苦しそうに全力で抵抗する悪霊に、護も『浄化』をかけながら呟く。
「上手くいったか。『強欲』が無い分、慎重に様子を見てくるかと思っていたが、そう来なかったな。」
「くぅ。二回も逃がすわけにはいかないじゃないか。こんな壁すぐに壊してやる。」
悪霊は叩き続ける。しかし、前回は壊せた『障壁』はビクともしない。それどころか、増々削られていく体力に焦りを覚える悪霊。『障壁』を維持しているミアノがにっこり笑う。
「へ~。職スキルと魔法を組み合わせるとこんなに強力になるんだ。その分、体から魔力とか無茶苦茶出て、疲れるけど、こいつごとき一時間は閉じ込められるわね。」
「呪体ならば、二つの組み合わせがよく効くな。」
「くそがっ。ふざけんな!こんなにあっけなく消えたくない!!僕はまだ、楽しみたいんだ!」
最後に断末魔を上げながら、悪霊は消えていった。消耗が酷いセレスとオリーに、護は飲み物を渡す。
「どうですか、護さん。…やりましたよ。」
「よくやったなセレス。オリー、大丈夫か?」
「問題ありません。昨日に比べれば、生易しいです。後、レベルが上がりました。わがままを承知でお願いしたいのですが、Lv49になれば、上位職にチェンジできるので、旅の出発までに手伝ってもらえませんか?」
「分かった。俺も久しぶりに依頼を受けないとな。」
「ねぇねぇ、私には労いの言葉ないの?」
「助かりました。」
「む~。」
ミアノの変わりように扱いが軽くなる護。ミアノはミアノで、セレスは頭を優しく撫でられ茹蛸状態にされていたり、オリーも飲み物が手渡されていたりと、扱いが、一人だけ除け者扱いされているのに不満を持っていた。
ここにメイアからの口撃が加わった。
「ミアノ様とセレスさん、オリーさんの扱いが同等になることはありませんよ。護様にとって、私たちの方が優先です。他の女よりも嫁や身内を大事にするのが私たちの夫なのですから。」
「そうかもしれないけど。でも、私も優しくしてもらいたいわ。」
「諦めてください。」
「……。分かったわ。」
護の目が若干死んでいるのを見て、ミアノは護へのおねだりを諦める。これ以上、女性関係で苦労してほしくないと思うミアノだった。
十分な休息をとった後、護たちは屋敷の地下一階に来ていた。階段からの黒ずんだ血を全て浄化し、綺麗にしていく。悪霊の演出だったのか、血の匂いはなく、そのおかげでセレスも顔色を多少悪くする程度で済んでいた。
護は、商人の息子の成れの果てを見下ろす。
「もう既に商人はこの国にいませんから、この亡骸は共同墓地に屠るのが最適でしょう。」
「そうなのか。」
「はい。回収だけして、憲兵に渡せば、処理してもらえますよ。」
メイアの助言により、護は何の感慨も持たずに、『アイテムボックス』へと仕舞う。その他錆びた拷問道具も回収し、後で処分することになった。
運よく巡回してきた憲兵に事情を伝えて亡骸を預け、不動産屋から正式に屋敷所有の権利を獲得、工区へと行き、家具の作成依頼をすることで一日が過ぎていく。一息がつけたのは、宿舎の自室に戻って来てからだった。
アンと共にハイドロのひんやりボディを堪能していると、扉を叩く音がした。メイアが扉を開けると、チュリが立っている。
「夜分遅くに失礼します。」
「どうかしたのか?」
「貴方にお話ししたいことがあるのです。」
チュリが部屋に入ってくる。表情からして、あまり良くない話のようだ。
「本国の方で、動きがあったようです。純血派が暴動を起こしたらしく、頭である第一王子が王を負傷させ、第二王妃を人質にとっているとのこと。それと同時に辺境伯でも起こり、現在国境は純血派が抑えているようです。」
「つまり、内乱が起きて、入国できない訳か。」
「それだけならばいいのですが、私に嫌疑がかかっているようです。」
「嫌疑?」
「人族にエルフの奴隷を斡旋している容疑だそうです。引き渡しを求める書簡が王都に届いたようで、事情を確認するために憲兵が来ました。」
「よく捕まらなかったな。」
「どうやら、教会に出入りしていたのを目撃していたようで、貴方たちが屋敷に出向いている頃に、聖女の力を借りました。」
「なるほど。」
「ただ、厄介なことに懲罰部隊がこちらに向かっているらしく、三日後には王都まで来るようです。私を引き渡さない場合は、王国の敵対行為として国境断絶も考えると書簡には書かれているようです。」
チュリは頭を抱える。純血派がまさか、ここまでのことをするとは思っていなかったのだ。それもかなり強引な状況を展開し始めている。自分一人が去ることで終わらせたいが、迷惑をかけてしまうかもしれないという思いもあった。謝罪の気持ちが口から出そうになる。
対する護は、動じることは無かった。異世界に来てから死にかける戦闘続きで、今回の一件も確かな動乱の気配を感じるだけだ。申し訳なさそうにするチュリに、護は静かに笑った。
「大体、分かった。それで、チュリは大人しく捕まるのか?かなり酷そうな部隊だと想像がつくぞ。」
「そうするしかないでしょう。多少の暴力は甘んじて受けます。それで丸く収まるのなら。」
「却下だな。旅の出発日を明後日にしよう。懲罰部隊には空回りしてもらう。とりあえず、チュリが仕える王には平穏を取り戻してもらわないとな。」
「正気ですか?敵地に飛び込むようなものですよ?」
「そうだとしても、このまま居続けるのはなしだ。部隊に余計なことはさせない。王国内をずっと逃げ続けるのもありだが、部隊はともかく、この国の貴族は信用できない奴らがいるしな。それに案内役がいなくなっては困る。」
「どうして…?」
チュリの問いに答えたのはメイア。彼女は、護の腕を組む。
「護様は見捨てられないのですよ。優しすぎるのです。そこが、私が一番好きなところですが。」
「私も一緒。護は損な性格している。でも、そのおかげで私は信じられる。」
「……」
護はアンの評価に苦笑いだ。女性陣を引き連れている護にチュリはもやっとした気持ちを抱いていたが、少しだけ晴れる。
「不思議なお方です。ただの女好きかと思っていました。」
「そう護は女好きの侍女好き。夜の方も多分恥ずかしい要求して楽しむ。」
「アン?喧嘩を売っているのか。」
「ごめんなさい。調子に乗りました。だから許して。」
チュリが少しだけ笑う。護はアンにアイアンクロ―を決めながら、チュリの様子を見て、安堵するのだった。
なお、オリーにはレベル上げが後になるかもしれないと謝る護と、気にしていない本人とのやりとりがあったらしい。
~早朝~
「マモル君、これは?」
「明日には発つので、メイアに屋敷に必要なものをリスト化してもらいました。」
護は、羊皮紙の束を渡す。昨日チュリが部屋を出て行った後、メイアやオリーと共に屋敷の必需品のリストを作成した。自分たちが居ない間、ミアノたちに集めて管理してもらおうという算段である。
「うわ~。かなりの量があるね。昨日も歩き回ったけど、まだあるとはね…。」
「資金はこの袋に。足りなかったら、戻ってきた時に管理費と共に支払います。」
「管理費はいいわ。私も住まわせてもらうことになるし。私の他にネシーナともう一人住みたいのだけど、部屋は余っていたよね?」
「ええ。後、俺たちが使う予定の部屋の間取りはこうなっています。」
護は羊皮紙から一枚の屋敷の見取り図をだす。一階の旧応接間が護たちの寝室に変更しており、向かい及び隣は護の女性陣の個室になるようだ。護の部屋の広さに思わず、ミアノがツッコミを入れる。
「屋敷の主だから部屋が大きいのは分かるけど、応接間よりも大きいってどういうことなの?もしかして、昨日頼んだ、四人が横に寝れるベッドを入れるつもり?」
「…」
護は疲れた顔で頷く。メイアに任せたベッドの大きさが、その大きさだったのだ。今決まっている嫁方と全員一緒に眠れるように配慮したらしい。正直、護は当たり前のように言ってきたメイアに引いた。護の予定では、二人で眠れるサイズでいいだろうと思っていたからだ。流石に、女性三人と一夜、褥を交わす体力はないはずだと、護は思うのだが…。
ミアノが呆れた表情で護を見ている。完全に、そういうつもりなのだと誤解されてしまったようだ。
「私たちは二階の部屋で眠ればいいのね。」
「そうなります。」
話題を変えたミアノに護は心の中で感謝の言葉を告げるのだった。
急遽、出発を早めたことにより準備を急ピッチで進めることになる護たち。食料関連から装備の類まで、アイテムボックスの許容限界まで入れていく。なお、セレスはバックがあるので問題ないが、アンの物に関しては、オリーと分担していれることになった。特に、ひと悶着が起こらなかった分、護の心は安寧を維持している。
教会に一旦戻ったところで、護はリヤお義姉さまに捕まった。
「護、お前に渡したいものがある。」
「…おっと。これは?」
「リヒト教会所属を示す、記章だ。使われることがほぼなくて、忘れられているかもしれないが、あった方がいいだろ。」
リヤお義姉さまの説明にジト目を向ける護。効果があるかどうか、分からない物を渡されても、扱いに困るだけだ。チュリに確かめる必要があるだろう。
「一応、例を言っておく。助かる。」
「エリクサーがあれば、そっちを渡すんだが、流石に在庫切れだ。もうそろそろ、金を請求した方がよさそうだしな。そうだ、護。もし、エルフ共が来たら笑ってやる。手を出して来たらこっちの独壇場だ。」
「被害が出ないようにしろよ。」
「当たり前のことをわざわざ忠告するなよ。やるなら、教会内にしておいてやる。」
リヤお義姉さまが高笑いをしている。護は苦笑いを浮かべながらも、内心では心強いと思うのだった。
セレスに呼ばれ、足の確保に向かった後、旅の仲間との明日の日程を確認し、その日は休むことになる。
(二か月か。色々あったが、この部屋が家のようになっていたな。メイアと二人で過ごした日々を懐かしく思う日が来るのだろうか。)
「どうかしましたか?護様。」
「いや、この部屋ともお別れかと思うと、少し寂しく感じただけだ。」
アンとオリーが入浴中のため、二人でいる部屋を広く感じる護。メイアも護につられる様に部屋を見渡す。
「そうですね。護様に仕えることになってから半年も経ちませんが、護様のおかげで、かなり濃い出来事を経験してます。それでも、ここにいると和みますので、私も物惜しい気持ちがしますね。」
「二人で一つのベッドに眠るのも、習慣になってしまったな。」
「それはどこへ行こうとも変わりません。私はいつまでも隣にいますよ。」
「ああ。ありがとうな、メイア。」
「これからもよろしくお願いします、護様。」
二人の影が重なった。その間、月明りが二人を明るく照らしたのだった。なお、アンとオリーが丁度二人が離れるタイミングが戻って来てしまった。そして、唾液の橋ができているのを見ると、アンがせがみ始める。珍しく、余韻が吹き飛んだことに苛立ったメイアが殺気を立てて、アンに雷を落とすのであった。
しばらくなんちゃってQ&Aはお休みにします。
やること、多すぎるだろ…。




