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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
聖女編
27/138

閑話 ~デート2~

う、うーん…

~商区・薬屋~


「できたぞ。」

「いつもありがとうございます、ジェイさん。」

「例はいらない。後ろの嬢ちゃんたちが怖い目で見ていて、『反撃の水薬』を使ってろくでもない戦闘をしたのが分かるからな。命がなんぼあっても足りない戦いをするのは冒険者としては良い傾向じゃないぞ。」

「気をつけます。」

「「「はぁ。」」」


 ジェイ、メイア、セレスが護の答えにため息をつく。護の懲りていない様子を見れば、似たような気持ちになるのだった。

 居心地が悪いので護はメイアとセレスと共に薬屋を出る。今日は彼女つまたちと王都を見て回る約束をしていた。要するにデートである。薬屋は工区へと行く途中でのついでだ。

 デートであるのに関わらず武器や装備、日用雑貨を扱う工区へと向かうには理由がある。装備の整備・新調と、セレスとの婚姻の証である指輪を買うためだ。メイアの時は彼女へのサプライズを含んでいたのだが、セレスは既に知っているので、セレスと二人で選ぶようにした。

 もう三人に絡んでくる蛮勇の男たちは、かなり減った。護が竜を殺した人物であるのはかなり広く知れ渡っている。たまに妬み僻みで挑んでくる者がいるぐらいだ。当然、全員、憲兵につき出した。

 女性が挑んでくることもあったが、メイアかセレスの拒絶で心に傷を負うか実力で排除されるかの二択をとる。護狙いの女性は、メイアが問答無用で力の行使をしていた。正直、軽く引くくらい躊躇いが無かった。

 ようやく、普通と言える状態で街中を歩けるようになったと言える。女性二人を引き連れて歩く時点で、普通ではないのだが、そこは棚の上に置くしかない。

 護は現実逃避気味に平和になったことを思いつつ歩き、到着したのはメイアご用達の鍛冶屋、「火槌」。入ると、シュリアが気付いてこちらに来る。


「いらっしゃい。聞いたよ、主さん。地竜を殺して、オークションにかけたってね。」

「二度としたくないですけどね。実際死にかけてます。メイアとセレスにはかなり怒られました。」

「そりゃあ、当たり前のことさ。ってか、巫女ちゃんにも手を出したのかい?」


 シュリアは護の腕をとっているセレスに驚く。護は何とも言えない表情で頷く。

 

「噂は本当だったのかい。二人とも幸せそうにしているから何も言わないけど、ちゃんとナニは平等にしなよ。他のこともね。」

「余計なことを言わないでください。それより、装備の見繕いをしてほしいのですが。」


 左手で輪っかを作り、右手人差し指でその輪に出入りするジェスチャーをするシュリアを見て、セレスが顔を真っ赤にする。それとは、逆に冷気を纏ったメイアは用件を切り出した。

 少し震えて見せながらもシュリアもふざけた雰囲気から真面目な雰囲気を纏った。


「怖いねぇ。それで何が欲しいのかい?」

「必要な物をリストにまとめました。オーダーメイドで頼む物はありませんから、日を跨がなくて行ける筈です。」

「ふむふむ。投擲用の短剣が百本と、仕込み針が五十本、鋼糸ね。後は、主が使う長さの違う槍が数本っと。これならすでに作っているやつでいけるね。ついてきな。」


 シュリアの案内で槍を置いてある所に向かう。長さの異なる槍がいくつあり、かなりの本数があった。

 護はざっと見まわしていく。そして一本手に取ってみた。穂先から柄まで金属製で少し重く感じる。長さは二メートル半といったところ。店内で素振りする訳にもいかないので、構えだけとる。


「うーん。少し重いな。重心が前による感じがする。」

「これはどうでしょうか。」


 メイアに渡された少し短い槍を受け取り、構えをとる。軽く扱いやすいが、どこか物足りない。


「さっきの方がいいか。引く動作が遅くなりそうだけど、突きの威力と速度は上がりそうだ。これも、キープで。」

「かしこまりました。」


 メイアに二本とも預け、さらに見ていく。そこから更に、自分の身長ぐらいのものと、投擲用に三本と選ぶ。その様子をみて、シュリアは驚いているようだった。


「ここにあるのは、中級職以上向けなんだけどねぇ。前は初心者用を選んでいたはず。もうそこまでレベルが上がったのかい。」

「ええっと。そんなところです。」

「メイアの主が凡人でないのは分かったよ。それで、その代金は金貨二十枚といったところさ。」


 護は金貨二十枚を普通に渡す。シュリアは呆れ気味で受け取った。まける交渉もなく、大金をポンと渡してくるのは流石に、何か言いたくなってくる。

 メイアが求める物も買い、顔を出した「火槌」の主人とミスリル合金の短剣の顛末を話し、今の月光・真打を見せる。霊が嫌がっていたが、主人の迫力の方が強かったので渡す。

 主人は細部まで注視すると、護に短剣を返して言った。


「業物だ。よっぽどの奴が作ったのだろう、メイアに渡した『常闇』以上の性能を秘めている。今のお主でもそれなりに使いこなせるが、鍛錬を欠かさずにやれ。もっと性能を引き出してやらないと武器が泣くぞ。」

「はい。」

「後、こいつには力の一部が変質した存在が憑いているな。だんまりだが、不快感を感じた。ただおしゃべりをするだけの存在ではない。力の一部ということは引き出せる。よく話し合え。」

「こいつ、なんか嫌い!!」


 霊が少女の身体で現れた。そして嫌悪感丸出しで主人を嫌う。

 セレスが除霊のため杖を掲げようとするのを、霊は慌てて止めた。


「こんな霊、消えてしまえばいいのです。…力だけ護さんに寄こしなさい。」

「謝るから、消すのだけはよして!ごめんなさい!!」

「これが、力の一部ですか?」

「そうだ。」


 指で指しながら訪ねる護に、力強く頷くことで答える主人。

 霊が護に近づいてきた。涙目になっているのは自業自得だ。特に気にせず護は、問いただす。


「おい、どんな力を持っているんだ?」

「聞き方が酷い!!まぁ、いいわ。一言でいうと、力の制御の効率化。あのねぇ、全ての力を事象に活かしきることはできないの。一部は変質せず、無秩序な力の波動で影響を与えずに消えてしまう。その部分を少なくして威力を上げられるの。」

「強力だな。今までしてきたのか?」

「いや、全然。私が主の力に染まりきっていない。効率化するためには短剣が充分に所持者の力に馴染むまで染まりきらないといけないの。主の感覚で言うと手足のように使いこなせるようになるまでは無理ね。」

「なるほど。で、他には?」

「私が詳しく言えるのは効率化だけど、他の機能としては剣として扱えるぐらい。魔力を注ぐことで疑似的に刀身を伸ばせる。主には必要ない機能かもしれないけど。ただ、消費はかなり抑えられるから便利。」

「やってみるか。」


 護は魔力を注ぐ。徐々に光の刃が形成され、九十センチメートルになると伸長が止まった。これ以上は無理なようだ。重さに変わりはなく、間合いだけが変わった感じだ。

 主人が丸太を取り出す。護の前に立て、横へ避ける。

 護は上段に構え、右上から袈裟斬りを放つ。素振りをしたようにほとんど手ごたえなく木がずれ落ちる。

切った護自身が目を見張るぐらいの切れ味だ。


「お見事。私にかかればこんなもんよ!どう手ごたえは?」

「はっきり言って、制御に困る。勢い余って床まで切りそうだ。しばらくは練習しないといけない。」

「あ、そう。」

 

 どこか霊の琴線に触れたのか、顔を膨らませてありありと不満を示す。


「まだまだ伸びる余地があるということだ。励め若人わこうどよ。」

「はい。」

「む、無視ぃ。…グスッ。」


 霊は涙を流して引っ込んでしまった。暫くすれば元通りになるので心は痛まない。

 主人たちに挨拶をして、三人は店を後にした。空高く上がった太陽が昼であることを知らせる。


「もう昼か。装飾店は離れにあるから、昼食にしよう。メイア、近くにお店ないかな?」

「そうですね…。調理器具店兼料理屋が確かあったはずです。道も覚えていますので、いかがでしょうか。」

「任せる。」

「かしこまりました。では、案内いたします。」


 メイアが護の前に立つ形で歩き始める。数分後、人だかりができている店の隣の店にやってきた。窓際には見本用の調理器具が並んでおり、看板が無くても一応どんな店か分かるようになっていた。

 店内に入ると気怠そうな三十代の黒髪の男が店番をしていた。


「いらっしゃい。おや、珍しい客が来たもんだ。」

「お久しぶりですね。売れ行きはいいのですか?」

「ぼちぼちだ。お前さんのような一流が減って厄介なもんよ。あぁ、お前さんの同期は相変わらずだ。」

「そうですか。」

「んで、今日はその用じゃないんだろ。飯か?」

「はい。三人ですが空いてますよね?」

「空いているぞ。…おーい!お前に客だぞ!!」


 店奥から「はーい!!」と女性の大きな返事が。熱気と共に現れたのは赤毛の元気溌剌な女性。二十代といった所だろうか。その後ろには妹のような歳の少女もいる。

 二人がメイアに気づくと、勢いよくメイアに抱き着いた。メイアはよろけずに受け止め、抱きしめ返す。


「元気だった?風の噂には聞いていたけど、契ったのは本当だったのね。おめでとう。」

「お姉ちゃん、おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」


 抱擁を解くと、「こちらです、お客様」と店奥に案内される。奥に行くにつれて部屋の温度が上がっている。汗が額を流れた。

 複数ある部屋の一室に案内される。扉を開けるとひんやりとした空気が流れてくる。中には長机と長椅子が設置されていた。ひんやりとした冷気は机の上に置かれてある、箱の中から来ている。おそらく魔石を加工した魔道具と護は予測した。


「今は貴方たちだけですので、ここで待たせてもらってもよろしいでしょうか?お邪魔になるようでしたら、すぐに出ていきますので。」

「この場にいてくれて構わない。それに聞きたいことが。」

「どうなさいましたか?」

「貴方たちとメイアの関係を教えてくれ。」

「それは…」

「護様とセレスさんは信頼に足る人です。説明しても大丈夫でしょう。」


 メイアの了承で二人は説明し始めた。


「メニューを見ながらでもお聞きください。そうですね、一言でいえば情報屋でしょうか。私たちは王族、貴族、裏社会とつながっており、様々な情報を扱っております。例えば、今回のブルスタイン家の騒動も勿論把握済みです。護様が異世界から召喚され、貴族に見限られ、そしてメイアさんと共に教会にお世話になっていることもです。それら情報を必要に応じて売るのが私たちの本業です。逆に守るのもしかり。依頼者にとって利益になるように立ち回るのが私たちの生業なのです。メイアさんとは何度かいい取引をしていました。」

「…。ちなみに、俺に関する情報を求めてきた奴はいるのか?」

「答えられませんね。」

「いくらで買える?」

「メイアさんだけではなく、セレスティア様とも契ったのは本当かどうかの真偽を教えてくだされば、教えます。」

「本当だ。」

「言葉だけでは信じられませんね。」


 護はセレスを抱きしめ、唇を重ね合わせる。そして舌を入れる。セレスはまだぎこちないがそれに応じ、クチュクチュと淫らな音が鳴る。


「充分です。」


 解放されたセレスは顔を真っ赤にし、その恥ずかしさで顔を隠す。その横では、メイアが護の顔をホールドし、自分の顔を重ねる。より激しく淫らな口づけをし合う。その様子を見ていた、情報屋の妹が顔を真っ赤にし、茹蛸状態になった。


「メイアさん、娘が目を回しているので、止めてください。」

「すみません。私もしたくなってしまったので、つい、してしまいました。」

「夜、しっかりしなさい。確認もとれたので教えます。今のところはいません。ただ、かなり目立っているのは事実です。二人の美少女を連れまわすどころか、聖女に気に入られ、竜殺しという偉業を成した。目立たない理由がある方がおかしいです。」


 呆れた様子で言ってくる。護としては、成り行きで巻き込まれるように戦った結果、そうなっただけだ。これからも成り行きのままに動くだろう。ただ、苦笑だけを返す。


「はぁ。勇者一行も派手にやっているようですし、異世界人って、こんな人たちばかりのようです。」

「それは違うと思うぞ。…龍志たちも何かしたのか?」

「注文を出していただければ、答えましょう。昼が過ぎてしまいますよ。」

「ああ。」


 注文を出し、情報屋の母娘は下がっていった。料理が出る間に護は情報屋の二人が姉妹ではなく、母娘であることを確認する。ただの聞き間違いではなかったらしい。メイアには、


「私たちは老いが遅いので、私のような歳で高レベルであり、子を作れば、あのように姉妹にしか見えないことがあるのです。母親の血がはっきり出ている場合は顕著ですね。」


 とのこと。将来、二人と子供ができれば、あのような感じになるのだろうか。自分とセレスのレベルはまだその領域に達していないが、到達する、いやさせるだろうと護は思うのだった。


「失礼します。ご料理ができましたので、お持ちしました。」

「わぁ、美味しそうです。」


 セレスが言う通り、匂いからして、かなり美味しそうな感じがする料理だ。一口、口に運ぶ。


「美味い。」

「お口に合われたようで、何よりです。お食事がひと段落なされたら、話しましょう。」


 無我夢中で料理を食べた結果、すぐに食べ終わってしまった。癖になる味だ。また、来たいと思う護。

 そんな様子を嬉しそうに見守っていた娘の方から、勇者一行の動向が告げられる。


「彼らがしたことは、元人間の魔物討伐です。どういった経緯で発生したのかは不明ですが、人間が魔物になり、いくつもの村を滅ぼしました。そして、町の方に、そいつが女性を贄に増やした眷属と襲撃したのです。騎士団の対応とリヒト教会支部のおかげで、被害は抑えられましたが、数人、女性が攫われました。そして、その奪還及び、魔物討伐を受けたのが、アサノ様たちです。結果を伝えますと、アサノ様たちは魔物討伐に成功しましたが、攫われた数人の女性の内、何とか間に合った女性以外は死亡、目の前で贄の女性から眷属が出てくる様を見て、賢者様や剣士の体調が優れていないようです。」

「……」


 死にかけることが多い護とはいえ、死を目にしたのは魔物行進モンパレ戦が初めてだった。後始末のさい、魔物の処理と同時に戦死者への別れが行われていた。燃え上がる炎の近くで泣いている者たちが印象的だった。

 そんな護とは異なり、目の前で無惨な死を見た同級生たちの心へのダメージは計り知れないだろう。


「アサノ様はかなり悔やんでいるようです。貴方も身をもって知っているとは思いますが、力がなければ大事なものを失います。守りたければ強くなってください。そして、どう振るうのかが肝心です。こんなこと言われなくても分かっておられるようですが、念のため言っておきます。」

「勿論、分かっている。自分が死にかけるのはいいが、メイアやセレスを失うのは絶対に嫌だからな。」


 メイアは護に軽く手刀で、セレスは不満気に護を咎める。


「…護さんはもっと自分を大切にするべきです。」

「今回は特に危なかったですよ。私たちで強くなるのです。護様はそこ間違えないでください。」

「は、はい。」

「ラブラブね。まぁ、愛想つかれないように頑張りなさい。」


 情報屋母から発破をかけられる護であった。娘は熱に当てられたように顔を赤くし、虚ろに護たちを見ている。そんな様子を見た母がニヤつき始めたのを護が気付き、面倒な問答を避けるようにさっさと代金を払い店を後にする。相変わらず隣の店の人だかりはまだ続いていた。

 護は装飾店へと歩きながら、メイアに大繁盛していた店のことを尋ねた。


「あの隣のお店ではスライムを借りられるのです。」

「スライム?」

「はい。汚物処理から性的な嗜好まで、餌と環境次第で変化するスライムを育成、貸出、調教師への変更を扱っています。基本は調教師が調教テイムしたスライムを借り、使役するのですが、人によっては調教師に職を変更し、彼ら独自の魔物を調教する場合もありますね。ただ、滅多に変更できる人がおりませんので、見かけないです。」

「スライムは、あのリヤお義姉さまでも…利用しているぐらい便利です。」

「へー。」

(『テイム』かぁ。『アイテムボックス』のように習得できないかな。)


 今度寄ってみるかと思う護だった。様々な作品を読んでいるため、この世界ではどうなんだろうか、興味があった。

 スライムのことはさておき、三人は装飾店に入る。前に会った店主が気付き、声をかけてくれた。


「お、店の救世主。あれ以来、助かったぜ。」

「売れているようですね。指輪を見たいのですが、いいものありますか?」

「また、指輪?…あぁ、そういうことか。前の指輪に負けないぐらいいいものがある。こっちだ。」


 護の両隣にいる女性二人を見て、納得したようで、店を案内される。そこにはいくつか魔石を埋め込み魔道具である指輪が展示されていた。


「綺麗です。…護さん、これはどうでしょうか。」


 セレスは一つの指輪を入れ物ごととって、護に見せる。そこには深紅の魔石が埋め込まれた指輪が入っていた。幅広な腕にまで呪言が彫られており、かなり手の込んだ代物であることはすぐに分かった。

 護は『真理眼』を発動し、その指輪を見る。


紅玉 (自動調整・魔力を注ぐと熱系増幅。ブレネンフックス(獄炎狐)の魔石の欠片を使い、熱を上げる能力を持った指輪。)


「そいつは、緑ランクの獄炎狐を使った奴だな。そいつが生息する場所は基本、火山だから流通が少なくてな、珍しい代物ではあるぞ。効果は熱の温度を上げられるみたいだぞ。」


 熱ということは火魔法だけではなく、光魔法にも効果があるようだ。自分たちの攻撃力を上げるには丁度いい。また、全体的に白をイメージさせるセレスに深紅の指輪は似合っていた。


「店主、二つでいくらになりますか?」

「そこに書かれてある通りだ。金貨三十枚。まぁ、かなり売り上げが伸びたからな、救世主とその奥さんは半額で構わねぇよ。」

「「ありがとうございます。」」


 護は金貨十五枚を払うと、指輪を受け取り、セレスの左手薬指にはめる。今度はセレスが護に指輪をはめた。護の薬指には緑の指輪が、中指には深紅の指輪が並ぶ。

 セレスは嬉しそうに自分に嵌められた指輪をなぞる。


(喜んでくれたみたいだ。…指輪を二つもはめる日が来るとは…。)


 護は二つの指輪を眺めた後、二人を連れて店を後にした。


~夕方~


「楽しんできたみたいだなぁ、護。」

「リヤお義姉さま。」


 珍しく、夕食後食堂で脱力している護の隣にリヤが座る。

 そのリヤの顔は笑っているのだが、声は低い。怒っているというよりは不機嫌といったところだろう。

 護は装飾店の後、商区で二人と様々歩き、買い物に付き合った。はっきり言って護には幸せ兼忍耐が必要な時間になった。まだ、精神的な疲労が残っている。


「微妙な反応だ。」

「それを言いに来ただけか?」

「つれないな。まぁ、護が俺のことを嫌う理由はいくらでもあるもんな。」

「ええ。リヤお義姉さまのおかげで、何度痛いめにあったか。本当にトラウマになっていないだけマシだと思ってくれ。目の前で吐かれるのは嫌だろ?」

「当然。それでだな、…もう妹を抱いたのか?」

「答える必要がない。」

「必要がない?妹の貞操だぞ、姉として確認しておきたいじゃないか。妹の様子ではまだと思うがな。」

「…」

「当たりのようだ。ひとつ言っておくが、一応お前を認めている。」

「え?」


 護の信じられないという顔に「あぁ?」と怒りの混じった威嚇をするリヤ。

 リヤは面倒そうに話し始める。


「あのなぁ、まだまだだが、竜殺しをしたんだぞ。任せられる最低限は満たした訳だ。素直に受け取れ。」

「信じていいのか、迷う。」

「そこは信じろ。で、お前が妹を抱くことも、一応俺の公認になる。認めてなかったら、死んでいるぞ。妹は巫女だ。血筋を残す必要がある。良かったな、護。お前はあの可愛い妹を抱ける夫だ。しっかり励んでもらうぞ。」

「もう少しマシな言い方ないのか…。」

「なんだ、嬉しくないのか?」

「そこまで直線的に言われたら、普通に怖気づく。」


 本人の同意があっても、親が認めなかったら殺されると言われたら、怖気づくのが普通じゃないのかと思う護。それもリヤは本気でしそうな人だから余計に性質が悪い。

 リヤは冗談ではなく護が本心からそう言っていることに気づく。自覚している分、しょうがないと思うリヤ。


「言っただろう、認めていると。実際に抱くまで本当かどうか信じられないかもしれないかもな。とにかく、妹を頼んだぞ。」

「はい。」


 そう言い残して、リヤは宿舎を出ていく。彼女は現在、宿に宿泊していた。人員増加で部屋数が足りず、増改築の話があるぐらいだ。ペルティとルナも宿で寝泊まりしていた。

 護が入浴を済ませ、部屋に戻るとパジャマ姿のメイアがベッドに腰を掛けて待っていた。


「聖女様と話し込んでおられたようですが、何を話されていたのですか?」

「一応、セレスと俺の仲はリヤお義姉さま公認らしい。後、セレスを抱いたのか聞かれた。」

「む、相変わらずデリカシーのない聖女様ですね。」


 メイアは眉をひそめてそう言った。護も同感だ。

 護はベッドに腰をかけると、メイアに求められるままに唇を重ね、舌を絡める。唇を話すといやらしく唾液の橋が築かれた。


「まずは、私との関係を聞くべきです。」

「そこなのか。メイア、そのどう思う?ええっと、子供が欲しい?」

「急にどうしたのですか?子供はいたらいいなと思いますが、無理して作るものでもないでしょう。護様の気が向いたらすればよいですし、私も護様がおられるので、満たされています。」

「結局、俺次第か…。」

「はい。抱きたくなったら抱いてください。私は貴方の侍女です。好きに汚してくださいね。」


 耳元でそう囁かれ、胸元をはだけて見せてくるメイアに護は目を回し、頭の中が真っ白になる。

 護は茹蛸状態になってまま、ベッドに横になり眠りにつくのであった。

次は勇者編です。少し話が出てきましたが、そこを中心に書こうと思います。

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