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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
聖女編
23/138

竜殺しの少年と聖女1~オークション、新たな依頼~

お、折り返し地点…

~貴族区・オークション会場~


「今回のオークション会場は楽しみですな。イウド辺境伯での魔物行進モンパレでの魔物の素材が多く出品されるようですのぉ。」

「ええ。リヒト教会から多くの出品が来ているのは、多くの者に伝わっているようですね。今回は商人の参加者も多い。夜遅くまで行われるのは確実でしょう。」

「老骨の身には応えるわい。まぁ、儂が欲しいのは決めておるから、それを落としてとっとお暇しようかの。」

「そうなのですか?先代公爵が狙われるものが早く出てくるといいですね。」

「そうじゃな。」


 若手貴族の若者と先代公爵の老人は、その後も他愛ない話をしながら、オークションが始まるのを待つ。隣の貴族や商人と話をしている様子がオークション会場の至る所で見られていた。

 今は夕暮れ。オークションが始まるのは日が完全に沈んだ頃となっており、司会者が場に出てくるまでは出てくる飲み物や、軽食を周りのものと楽しむ時間となっていた。

 それもとある一団がやってくることで、騒がしくなる。


「来たぞ。リヒト教会の聖女と聖騎士たちが。聖女は魔物の首領と一対一で戦い撃破したらしい。」

「本当なの?」

「本当らしい。今回は首領の魔石もオークションに出されるとの噂もある。実際に出てきたら、かなり荒れるぞ。」

「それは面白そうね。私たちみたいな騎士伯では絶対手が出ないでしょうけど。」


 ある種の娯楽として楽しむ貴族もいれば、


「今回、出せる予算は?」

「白金貨十枚までです。あれを落とすには足りないかと。それに今回は特待室に王子が来ているとの情報もあります。かなり難しいでしょう。」

「王族が買う可能性を考えると確かに難しいだろう。だが、やれば我が商会の威信を知らしめることができる。かける価値はあるだろう。」

「分かりました。会長の思うがままにやってください。ただ、白金貨十三枚を超えると、様々なところの経営が厳しくなります。それでは本末転倒なので、控えてください。」

「線引きは間違えんさ。」


 物を手に入れるため、様子を窺う商人もいる。

 ナヒーリヤは護たちを連れて歩く。彼女のさらに前を歩く、案内人に導かれ出品者専用待機所へと着いた。ただし、数人は買うこと専門なので、貴族たちの方へと向かっていた。

 待機所はかなり広く、職人から冒険者といった様々な人で賑わっている。しかし、ナヒーリヤたちが来てから静まってしまった。どういった反応をするべきか迷っているのが、態度に出ている。


「彼らからすれば面白くないでしょうね。基本オークションは後半に盛り上がるように大物が最後の方に出るようになっています。それまでは参加を控える人が多くなる傾向があるので、予想していた値段よりも安くなる、といったことも多くなるのです。」

「それなら次の機会に出せばいいんじゃないか?」

「無理ではないでしょうか。まず、それを考えている方はここにはおりません。ここにいる方は安くなることを承知の上で、今すぐお金が欲しいといった人たちだと思われます。」


 彼らの態度に疑問を思っていた護は、メイアの説明に納得がいく。

 ナヒーリヤが参加するというのは戻ってから一日で知れ渡っている。とっくに競合したくない人が降りているのは当然だと思う、護だった。


「快く思ってはいないが、下手にいざこざを起こすと、衛兵に捕まりオークションどころではない。それがああやって態度に出る。一度馬鹿が居てな、それを返り討ちしたこともあって、あれがあいつらの関の山といったところだ。」


 そう言ってナヒーリヤは笑う。護からすれば、喧嘩を売った猛者《馬鹿》がいる方がすごいと思ってしまった。全てを暴力で解決できるナヒーリヤに、喧嘩を吹っ掛けるとは無謀すぎる。


「おい、護。余計なことを考えていないか?」

「ナンデモナイ。」


 ナヒーリヤが勘で問いただしてくるのを、護は無表情で否定する。


「そうか…。これがお前の順番だ。ええと、俺の三つ前になるな。具体的なオークションの方法は実際に見た方がかなり早い。もうそろそろ始まるぞ。」


 まだ訝しむ目を向けるナヒーリヤ。ここでは物理で聞き出せないので、とりあえず予定表に目を通し、護へと渡す。

 護は冷や汗をうっすら浮かべながら受け取り、自分の番号を探す。確かにナヒーリヤの三つ前だ。後、辺境伯の名前も見つける。自分よりも前のようだ。辺りを見渡すが、見つけられなかった。


「一番のカインさん、どうぞこちらへ。」


 どうやら始まったようだ。オークション会場の様子が見られるよう、大きな映像が映し出される。そこには司会者と、先ほど呼ばれたカインという槍使いが立っていた。


「さぁ、一番槍は槍使い兼職人で有名なカイン!!今回のオークションで何を見せてくれるのか!!どうぞお願いします!!」


 カインは『アイテムボックス』から、魔物の皮を取り出す。光に対して色が変わり、様々な色彩を見せていた。それを見て、観客から叫び声が上がる。


「さぁ、最初からレアなものが出ました!!緑ランク、討伐推奨パーティ、遭遇確率がかなり低く、お目にかかるのは様々な物を見てきた私でも三回目、その名も、レーゲン・カメレオン!戦闘による傷もほぼ無く、かなり品質が良いものと私は判断します!!」


 さらに、歓声が強くなる。女性に受けがいいようで、飛び掛かる勢いと言っても過言ではない。


「早速、始めていきましょう。始めの値は金貨五枚!!…はい、そこの御婦人!!」

「七枚よ!!」

「八枚!!」


 どんどん値段が吊り上がり、最終的には四倍の二十枚で終わった。メイアによると相場は金貨八枚とのことで、かなり高い。だが、これでもまだ安い方らしい。

 カイン当人は顔色を変えていないので、どう思っているか分からないが、競り落としたご婦人はかなりご機嫌だった。他のオークション職員に連れられて、カインとそのご婦人は取引会場へと移動していった。


「基本、司会者が全部やってくれるからな。立ってて置くだけでいい。まだ時間もある。楽しめよ。」


 ナヒーリヤは護の傍から離れる。どうやら、出されている料理を食べに行ったようだ。

 護は適当に時間を過ごし、ついに護の番になる。案内人に連れられ、会場へと向かった。

 会場はスポットライトで照らされ、思わず眩しさに目を細める。後、客席の方から「あいつは…」という声が聞こえる。

 そんなことは無視で司会者の声が響く。


「先ほどのイウド辺境伯代理が持ち寄った魔石で、お察しかもしれませんが、ここからはリヒト教会のターンとなります。まず、最初は若いながら、黄ランクを討伐したマモル!!持ち寄るのは地竜の骨を始めとする地竜の素材です!!」


 護は『アイテムボックス』から地竜の全身骨格、鱗、そして、氷漬けされた瞳を取り出した。

 会場が静まる。戦いに通じる人間はそうでもないが、貴族や商人にとっては護が出した素材は圧倒的な存在感を示していた。


「これは本物ですね!!骨も鱗も、目も全て!!それに量も多い!!事前の登録によると、部位ごとに競りをしたいとのことです。では、鱗から始めましょう!三人のお客様に十枚ずつとのことです。金貨七枚でスタートです。」

「金貨十枚!!」

「十五だ!!」

「十七!!」


 鱗は最終的に、金貨二十五枚、二十三、二十枚で競り落とされる。これで、すでにマジックバックの元が取れた。始まりとしては好スタートだ。


「さて、お次は素材として希少価値の高い目です。片方は戦闘で失ったということですが、この場の目はご覧の通り、氷漬けで保存され、状態も良い!!まずは、金貨十枚でどうでしょう。」

『……』

「おや、誰かおりませんか?では、九枚でどうでしょう?」


 ここで一人の商人が手を挙げる。貴族は引き気味で、手を挙げた商人以外は興味がなさそうだった。


「扱うのが難しい上級の素材ですからねぇ。職人を抱えこんでいないと使い道がないといったところでしょうか。それでも一人、手を挙げるとは流石は、ブラウ商会の若き会長!!」

「次だ!!次に移ってくれ!!」

「失礼しました。では最後ですね。地竜の全身骨格です。あまりの大きさに迫力満点ですね。爪や牙もついてくるとのことで、騎士を強化したいお方には引けない物となるでしょう。金貨五十枚からスタートです!!」


 ここからは目の時とは違い、大盛り上がりとなった。金額がどんどん吊り上がり、白金貨一枚を超える。

そして、白金貨二枚を越したところで競りの勝負は残り二人となった。


「白金貨二、金貨七十」

「白金貨三じゃ」

「白金貨三、金貨四十」

「白金貨四でどうじゃ!!」

「…」

「白金貨四枚!!先代公爵、ヤーロン様が競り勝ちました!!黄ランククラスの素材でこれほど高い値段がつくのは、久しぶりですね!!他の方の素材も楽しみとなるスタートです!!」


 護と競り落とした客は職員に連れられて、取引会場へと移動する。鱗と引き換えに合計金貨六十八枚をまず交換した。次に、目の取引に移る。金貨九枚と同時に、名刺を渡され、「本店は商区の教会から北へ十分歩いたところにある。ぜひとも来てほしい。」と言われた。ここまでは順調、しかし、最後の骨の取引が問題となった。


「すまんのう、今白金貨四枚ないのじゃ。おまけに骨全てを持ち帰る術を今持っておらん。」

「お客様、会場以外での取引は禁止とされおります。どうなさるつもりですか?」

「どうにかならんかね?例えば、お主が儂たちとついて来て、取引がちゃんとなされたことを確認するというのはダメかのぅ。」

「本来ならば駄目ですよ、お客様。」


 今まで見ていた女性の代わり答えたのは四十代の男性。それもかなり武勇に優れているようだ。


「お主が居ったのか。昔のよしみでどうじゃ?」

「言ったでしょう、本来ならば駄目だと。ですが、私が居れば別ですね。カサンドラ、もうそろそろ、次の取引が始まる。そっちに向かえ。これは俺が最後まで見ておく。」

「承知しました。」


 カサンドラと呼ばれた先ほどまでの女性が離れていく。


「アカシミヤ君だったかな。一旦聖女様に連絡してほしい。彼女の部下を勝手に連れまわすのは良くないからね。後、侍女を連れてきてもいいよ。もしもの時に『冷血』の力があれば安心だからね。」


 護は返事を返し、待機所に戻る。そこで、ナヒーリヤとメイアを探し二人に事情を話す。


「支配人って、あいつか…。いいぞ、行ってこい。」

「畏まりました。」


 ナヒーリヤは渋々、メイアは即答だった。そして、メイアを連れて戻ると、二人が待っていた。


「お久しぶりですね、『冷血』。」

「その名で呼ばないでください。『鋼拳の義賊』、シロン。」


 支配人ことシロンは笑顔で、メイアは微妙にポーカーフェイスを崩し嫌そうに言った。


「あの時は助かりました。今は、子守りですか?」

「貴方こそ変に似合う燕尾服を着て、慈善事業を?」

「いいではないですか、手取り金なしのオークションを開いても。職員にはちゃんと給金をしておりますし、犯罪には手を染めてませんよ?」

「貴方以外は、という前置きがつきますね。」

「いやぁ、お厳しい。まぁ、法に従わない人間は私一人で充分です。契約・・も一応私個人に適応されるはずだったので、尚更ですね。」

「お主たちや。もうそろそろ行かないかのぅ。」

「これは失礼しました。先代公爵様のお屋敷に向かいましょう。」


 シロンが笑うのを止め、出口へと案内する。それから、ニ十分ほど歩いたところに先代公爵が住まう屋敷があった。周りのものと比べると、一回り小さい。また、門番と彼の執事らしき人が門に立っていた。どうやら先代公爵の帰りを待っていたらしい。


「お帰りなさいませ、ヤーロン様。そちらの方は…かなりの手練れを連れてきましたね。」

「知っておるじゃろ。『冷血』と『鋼拳の義賊』、そして竜殺しの少年じゃ。竜の骨を競り落としたのはいいものの、金額を吊り上げすぎてな、この通り屋敷で渡そうと思ったのじゃ。金庫から白金貨四枚用意してくれるかのぅ?」

「畏まりました。用意しておきます。お付きのドルトライン様は?」

「まだ、オークション会場じゃな。あやつは聖女の競りが終わるまで帰って来んじゃろう。」

「そうですか。では、私は金庫の方へと向かいます。代わりの者を寄こしますので、お待ちください。」

「ご苦労じゃ。門番ものぅ。」

「ありがとうございます、ヤーロン様。」


 執事が鳴らしたベルで、一人の侍女が現れる。その後ろにもう一人、護と同年代の女の子がついて来ていた。ブロンドの髪に、緑の瞳、かなり整った顔立ち。メイアとセレスに引けを取らない美人だ。

 その女の子を見て、先代公爵の顔がほころぶ。逆に、女の子の方は不機嫌そうだ。


「おじい様、オークションでかなり高いお買い物をされたみたいですわね。おじい様が使えるお金はかぎられておりますの。無駄な出費はほどほどにと、申したはずですわ。」

「無駄なんかではないわい。お主に会わせたい人物を見つけてきたのじゃ。そのために、わざわざお金で機会を買った訳での。こうやって連れてきたのじゃ。」

「わざわざ、競り落とすまですることないでしょう。終わった後に、頼めばいいのではよくて?白金貨四枚を支払うなんて、馬鹿げていますわ。今度は止めるように、ドルトライン卿に言っておかなければ…。すみませんわ、お客様方。祖父の頼みでこのような場所まで来ていただいて。」


 彼女は優雅に一礼すると、客間へと侍女を連れて歩き出した。涙を流している先代公爵と共に彼女たちについて行く。

 客間につくまでの間に彼女にも祖父が何を買ったのか、説明する。それを聞き、彼女はため息をついた。


「地竜の骨…。置き場に困るものを買いましたわね…。しばらくは『アイテムボックス』の肥やしにしておくしかありませんわね。アカシミヤさん、後で渡してもらえませんの?ここでは狭いですから。」

「分かりました。では、受け渡しは後で、ですね。」

「お願いしますわ。お茶ができたようですので、どうぞ。」


 彼女は先に口にし、微笑む。思わず護の胸が高鳴り、見とれてしまう。彼女の所作は研ぎ澄まされており、美しさと貴族であることを意識させたのだ。

 そのせいで、後ろに控えるメイアの視線が少し厳しくなる。護に向いているあたり、しっかりしてほしいのはご主人様()の方らしい。


「おじい様、アカシミヤさん達を連れてきた理由をもっと詳しく話してください。」

「それはのう、お主の嫁ぎ先として、この少年はどうじゃ?と聞きたかったからじゃ。」

「「「は?」」」


 先代公爵が言ったことに、純粋な疑問符を浮かべる護と、女の子。絶対零度を纏わせて尋ねるメイアの声が重なる。シロンは声を出さず、笑っていた。

 女の子は顔を赤くして、まくしたてる。


「何を言っておりますの?私まだ、結婚しないと申しておりますわよ。そもそも、適当に流して適齢期を過ぎるまでやり過ごそうと思っておりますわ。私にはやりたいことがありますの。夫がいて、子供ができたら、できなくなりますわ。」

「儂としてはひ孫が見たいんじゃがのぅ。…お主が言いたいことも分かっておる。じゃが、どうするのじゃ?お主の婚約者の性格はさんざん知っておるのだろう。最近は強行手段を取ろうという噂もある。お前の父親がその結婚に賛成しておる以上、何をしてきても、あやつは目を瞑るつもりじゃぞ。」

「そんなこと分かっていますわ。でも、私は!!」


 彼女は部屋を思い切り飛び出してしまった。先代公爵は嘆息する。歳以上に皺が深く刻まれている印象を護は受けてしまう。


「すまんな。儂も焦り過ぎた。先ほどの話は忘れてくれ。さて、白金貨を先に渡そうかの。」

「面白そうな、お話ですね。聞かせてくださいませんか?」


 シロンが席を立とうとする先代公爵を止め、自身も座る。

 護もメイアを呼び、隣に座らせた。二人の男が一瞬驚いた後、納得したように頷く。


「儂の提案は断られて当然のようじゃな。」

「ええ、そうみたいですね。これも面白そうですが別の時にしましょう。婚約者であるお方の名前は?」

「ロイ・プレ・アスタイト。」

「「!!」」


 シロンとメイアが目を見開く。


「なるほど、大公爵家の一家が絡んでくるのですか…。これは『冷血』の方が詳しそうですけどね。」

「流石に、三男までは把握しておりません。ですが、かなり厄介な案件ですね。先代公爵様、どこまで話が進んでおられるのですか?」

「婚約という話で止まっておる。あの様子じゃからな。あの小僧は契りを交わすことに、儂の息子は婚礼の発表までもっていくことに苦心しておる。それこそ、力に任せて無理矢理でも実行するという話になるほどにのぅ。」

「プレ・アスタイト家当主様とは?」

「あやつは、今回の一件に関わるつもりがないと言っとたわい。あくまでも小僧の案件であり、公爵と繋がりができても良い、失敗しても責任をとらせ粛清するため問題ない、だそうじゃ。」

(それは評判が思いっきり落ちないのか、当主。どう考えても身内の錆は影響するだろうに。)

「あの大公爵家だからこその振舞い方ですね。あの家はご子息たちに対してそこまで親が関わることがありません。ですが、家訓だけはしっかり覚えさせるようです。その家訓とは…」

「「『お前が何を為しても自由だ。ただし、心せよ。為した全てがお前の身に返る。』」」


 先代公爵とメイアの声が重なる。どうやら、貴族の世界ではかなり有名のようだ。


「護様、この言葉の通り、プレ・アスタイト大公爵家では、自由が与えられるのです。最低限貴族としての教育はなされるそうですが、それ以外は自由。彼らに何人かの部下とお小遣いが渡されて放任する。その結果でしょうか、跡取りとして有力な長男の趣味が、露店経営という話もあるぐらいです。」

「……」

「竜殺しの少年も声が出ないかのぅ。儂としては息子の手綱ぐらい持ってほしいと思うわい。」

「貴方も人のこと、言えないのでは?」

「ほっほっ!耳が痛いわい。」


 メイアが咳払いをして、話の流れを戻す。


「先代公爵様はどうなされるつもりですか?このまま何もなく嵐が過ぎ去るとは、お思いになっていないのでしょう?」

「そうじゃ。確実に騒動が起こる。それで、お主たちに孫の護衛を頼みたいのじゃ。後で冒険者ギルドに正式な依頼を出し、報酬も用意しておく。受けてはくれんかのぅ?」

「私はパスですね。義賊として調べてみたいので。」


 シロンが依頼を断る。先代公爵はその返答に「そうかのぅ。」とだけ答える。


「お主たちはどうじゃ?」


 その問いに護はメイアの顔を見る。それに対しメイアは、


「護様の思う通りに。」

(それが一番困るんだよなぁ。さて、どうするのがいいかなぁ。)


 二人で受ける依頼としては心もとない。せめて、セレスたちと引き受けることができればと思う護であった。


「俺たち二人で引き受けなければならないでしょうか?」

「そんなことはないわい。少年が信頼できる仲間が居るのじゃったら、頼んでみたらええわい。」

「話してみて、共に引き受けてくれることになったら、正式に引き受けたいと思います。」

「検討してくれるのか!!決まり次第、明日来てくれ。もし引き受けてくれるのなら、儂の方からも直々に頼みたいのじゃ。」

「分かりました。では今日は…」

「助かるのじゃ。…おおっと、地竜の骨を忘れておったな。」


 先代公爵が笑う。その後は、地竜の骨と白金貨四枚を交換し、二人は教会への帰路へとつく。オークションはとっくに終了している時間帯だ。

 教会に戻ると、ナヒーリヤが門で待っていた。


「やっと戻ってきたか。その顔を見る限り、貴族のいざこざに巻き込まれたみたいだな。あまり首を突っ込むのは勧めないが、今回は特別だ。」

「どういうことなんだ?」

「俺が直々に協力してやる。護衛を頼まれたんだろう?なぜ知っているかは、別口の方から話があったとだけしか教えないが、ちょっとした恩を返すためにな。ということで、命令だ。その護衛依頼は必ず受けろ。俺がいるからな、妹たちを誘うのは禁ずる。どんな悪漢がいるか分からない危険なところに連れていきたくない。」

「拒否権は?」

「ない。団長命令だ。ちなみに魔物行進戦でお前は正式に入団していることになっている。断ったら罰もあるから、余計に断れないだろ?」

「最悪だ…。分かった、その話で引き受ける。」

「話が早くていいぞ、護。明日、いつも通り鍛錬するからしっかり寝ろよ。じゃぁな、お休み。」


 ナヒーリヤはあくびを一つすると、手を振りながら宿舎の方に戻っていく。

 護はため息を吐く。護衛に関しては悪くないと思っていた。ああいう話を聞かされた以上、どこか引きたくない自分がいるのは、事実だった。ただ、ナヒーリヤのように退路を断たれるのは好きではない。


(まぁ、ナヒーリヤもいるし、どうにかなるかぁ。)

「メイア、俺たちも部屋に戻ろう。」

「……。そうですね。今日は私も疲れてしまいました。」


 護はメイアと共に歩き出す。この夜は二人とも早く眠りにつくのだった。


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