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異世界で1人別行動   作者: 狩野 猟
聖女編
22/138

後始末2~王都への帰還、製作依頼~

また、場所がころころ変わる…

~辺境伯直轄領~


「またね、聖女様。」

「俺たちも、フォイアー教会に戻る。ナヒーリヤたちが来てくれて助かったぜ。」

「若干不完全燃焼だけどな。ギルド長、グラン、じゃあな。」


 それぞれのトップの握手が終わる。二つの教会騎士はそれぞれの拠点に、ネルムは辺境伯との相談に向かっていく。

 ナヒーリヤはいつでも出立できる状態で待機する仲間の元へ戻ってきた。


「欠員はいないか?」

「全員揃っております。」

「そうか。これから、教会に帰還する!!」

『了解!!』


 街の門へと馬車が進みだす。それと同時に、見送りに来たのか住民たちが道へと出てきた。

 歓声と共に街の中を通り過ぎると、守衛たちが見送るために整列していた。


「聖女様たち、英雄に敬礼!!」


 号令と共に、胸に手を当て、背筋を正す。兜を脱いでおり、それぞれの顔が見える。


「聖女様、この度はありがとうございました!!」

「俺たちはただ、魔物を倒しただけだ。これからはあんたらの仕事だ。」


 今回は先頭に乗っているナヒーリヤが、守衛長と短く言葉を交わす。守衛長は感謝と感激で、涙を流している。ナヒーリヤはその様子に一瞬引いていたが。

 護たちは門を出て、帰路についた。


「護、地竜の魔石はどうするつもりだ?」


 馬車の中に揺られて一時間。今回の護と一緒に乗車しているのは、メイアとナヒーリヤ、セレス、ゴロンゾ、そして御者台にアロッゾが馬車を操っている。

 特に会話もなく、護も肩を寄せて眠っているセレスにつられてうとうとしている中、ナヒーリヤにそう尋ねられて意識がはっきりする。


「どうするか決まってない。どう扱えばいいか、そもそも分からない。」

「そうだろうな。黄ランク以上の魔石の使い方はかなり限られている。オークションに出して金を稼ぐか、魔術師ギルドに出して魔道具に加工してもらうかが、一般的だな。それで、オークションはな…」


 オークション、辺境伯も一つ譲った魔石を出すと言っていた催しだったことを思い出す。ナヒーリヤの説明によると、一か月に一回、商区にあるオークションハウスで行われ、名の通りオークションが行われるようだ。主に参加するのは貴族と商人だそうだが、彼ら相手に自慢の作品を売りに出す者や魔石を売りに出す者も参加する。

 近いうちに行われるらしく、丁度いいタイミングだと、彼女は言う。


「その魔石を売りに出した場合は、白金貨三枚は確実だ。」

「白金貨三枚…」

「希少であると同時に、かなり便利な魔道具が作れるからな。便利な生活をしたいあいつらなら、喉から手が出るほどの品物な訳だ。」


 護は息を呑み、ナヒーリヤはさらっと何でもないように語る。護からすれば大金であり、ナヒーリヤからすれば、強敵を倒す度に出てくる金額であることが二人の反応を分けていた。


「金にするならそんな感じだ。魔術師ギルドに頼む場合はというと…」


 最初に金はかかるが、様々な魔道具を作ってもらえる。空間拡張の天幕となると、もう一つ同級の魔石が必要になってしまうが、対象が念じた温度の水がずっと流れるようにしたり、マジックバックを作成したりといったことはできるらしい。


「マジックバック?」

「ああ。『アイテムボックス』持ちには必要ないものだが、袋の中を異世界化して収納できる量を増やすものだな。妹とか、職が変更できない者のために考案されたものでな、魔石を増やせば増やすほど、拡張できる優れものだ。ただ、魔石一つでは通常の天幕ぐらいのものしか入れられないのが難点と言えるけどな。」

「ナヒーリヤは、セレスに贈り物としてあげたことないのか?」

「一度だけ聖女様が渡したことがある。だが、あれは受け取ってもらえなかったのだ。」

「おい、ゴロンゾ、この話に介入するな。」

「『…戦えない私より、お姉ちゃんが持ってて』とおしゃってな、その時の巫女様はかなり健気だった。私たちからすれば、巫女様が団長を傷つけないようにしているのが分かったのだがな。」

「つまり…」

「今も俺が持っている。ほら、これだ。」


 ナヒーリヤは一つかなり無骨な鞄を取り出した。かなりの魔力を放っており、存在感がかなりする。

 男である護が見ても、幼い女の子に渡すようなものでないのがすぐに理解できた。


「文句があるなら、言ってみろ。今は殴らないから。」

「幼いセレスに渡すようなものではないと思う。」

「護、お前もか。俺がデザインした、このかっこ可愛い鞄が何故、理解できない!洗練されたフォルムに、盗人がためらうような威圧感。そして、そこはかとなく出てくる愛嬌。どうして、皆揃ってそう言う!!」

「正直言って怖かったです。」

「そんなぁ、いもうとぉ。」


 大声で目覚めたセレスが容赦なく言葉の刃でナヒーリヤを突き刺す。ナヒーリヤも涙目のようだ。


「女の子への送り物とは思えませんね。」

「侍女の言う通りだ。」

「…姉さんの感性はおかしいです。…物に関しては特にです。」


 ナヒーリヤの精神が限界に達したようだ。魂が抜けて、ピクピクしている。戦闘に関しては超人だが、こういったことには弱いらしい。護は、得も言われぬ気持ちになる。共感が一番合う言葉かもしれない。


「護さん、お願いが…」

「お願い?」

「その…マジックバックを作ってもらえませんか?今回は私がいない間に…地竜と戦って護さんはお怪我をしましたし、物がないから離れるなんてしたくないんです。」

「でも、今回は…」


 セレスがいなくてよかった。と、護は続けられなかった。彼女の瞳を見れば、そんなのは関係ないと、思わせる強さが感じられる。彼女が告白してきたときと、同じ瞳。これを否定することは護にはできない。


「分かった。地竜の魔石を使ってセレスのマジックバックを作ろう。」

「ありがとうございます。」


 セレスが抱き着いてくる。かなり慣れてきたとはいえ、ドキッとするのに変わりはない。メイアも対抗して腕を絡めてくる。ゴロンゾの生暖かい視線が護には恥ずかしい。

 ナヒーリヤが再起して、


「ちっ。護が妹の頼みを聞くのは複雑な気分だ。で、費用はどうするつもりだ。」

「それは…」


 魔道具の製作依頼費は護とセレスが半々、それで足りなかった場合はメイアが貸してくれることになった。地竜の素材等をオークションにかけるかどうかの話合いも進む。

 大体の方針が立ったところで、野営地点に到着した。魔物の殲滅に追われた行きとは違い、今のところ遭遇すらしていない。

 護の『気配探知』に魔物が引っ掛かることもなかった。


「こんなもんかな。」

(行きは魔物に襲われたからなぁ。)

「…そうですね。これだけあれば…充分だと思います。」


 薪拾いを再びしていた二人。すんなり集まった落ち葉や枝を『アイテムボックス』に仕舞う。

 森はひっそりとしており、夜が近いため鳥の鳴き声も少ない。二人はそんな中を魔法で光を灯し、拠点へと戻る最中、セレスが立ち止まる。彼女の身体は震えていた。


「護さん…見えましたか?」

「何を?」

「ほら、あそこです…」


 セレスが指でさした先には、影そのものがあった。護もその不気味さに短剣に手が伸びる。


「『真理眼』」


クラウド・シャドウ Lv43

 LP 78  MP 549

  STR 0  AGI 0

  TEC 454  END 0

  INT 546

一般スキル 隠密Lv6 

特殊 憑依 融合 怨嗟 認識阻害Lv3 非実体


「うへぇ、かなり不味そうな相手だ。」


 護は異様なステータスを見てしまう。特に『憑依』や『怨嗟』はかなり厄介だと直感でも分かる。

 そんな厄介な影がこちらへと近づいてくる。その動きは遅いが、徐々に詳細が見えてきて、セレスの悲鳴が上がる。

 様々な魔物の顔が浮かびあがり、苦悶の表情をしては消える。時には山賊風な人まで出てきて、二人の精神を削ろうとする。すでにセレスは怯え切っている。魔法も途絶え、薄暗くなった。


(結局こうなるのか!!)


 護はセレスの手を引いて走る。どう動いているのかは謎だが、動きは遅い。これなら振り切れるだろうと思い、離れようとした時だった。


オオッ

「な!?」


 影は進行を塞ぐように二人の目の前に立っていた。そして、影は人型になり護に触れようとする。


「はぁ!!」

(ちょ、主!!この気持ち悪いのに使わないで!)


 咄嗟に切り払う。本体と切り離れた方は霧散し、本体は慟哭を上げる。集中がかき乱れ、護は魔法を上手く構成できない。気を失ったセレスをお姫様抱っこし、距離を取る。


「あいつどうやって、瞬間移動したんだ!?」

(簡単だよ。あいつには実体がない。実体がないから、存在としては薄い代わりに、どこでも現れるよ。)

「悪霊の類ということか。本当に厄介な奴に目をつけられてしまった。」


 一定の距離が離れれば転移してくるらしく、転移しない範囲で距離を取る。セレスが目覚めない以上、短剣は使えないし、さっきの慟哭が頭にしつこく残って、イメージも練れない。はっきり言って膠着状態だった。


「このまま、野営地のところまで引っ張っていくか…。そうしよう。」

(気をつけて。触れられると憑依されるから。)


 護は駆け足で移動し始める。当然、目の前に現れ、立ちふさがるが横に避けて無視。目の前に出てくるなら、駆け足で回避するには苦もない。相手が立ちふさがるたび、影の慟哭で頭がおかしくなりそうになるのを堪え、光が見える場所へとひたむきに走る。


「はぁはぁ、もうすぐだ。あそこまで行けば何とかなる。」

(油断大敵だよ!!後ろから来てる!!)

「!!」


 影が一部を伸ばし、護に触れようとする。それをしゃがみ避ける。次々と襲い掛かる触手を短剣からの指示で回避していく。三本同時に来た時はスレスレでひやりとする護だったが、野営地までたどり着けた。


「お?どうした?」

「セレスを頼みます!!」

「おっと。…怨霊の類が出たぞ!!」


 護に気づいた騎士にセレスをパスし、触れそうになった触手を短剣で切り裂く。瞬間、影が消えたかと思えば護の背後に。慟哭が護を襲う。度重なる揺さぶりと拠点についた安堵が護の頭の中を真っ白にし、立ち止まってしまう。そして、その隙に影が触れようとする。


「『浄化』」

オオッオオッ!!


 少し触れたところでミアノの『浄化』が決まる。影は消えた。


「大丈夫、マモル君?」


 動きが止まっている護にミアノは駆け寄る。杖を構えて。

 護の生気を失った瞳が向いた瞬間、ミアノは容赦なく魔法を放った。


「『トゥ・ヘブン』!!」

「がぁぁぁ!!」

「……さて、出て行ったかしら。」


 影が消え去り、気を失い倒れる護を抱え駄目押しと言わんばかりに『浄化』を掛けていく。影の反応がないところを見てほっと溜息をつく。

 騒ぎを聞いて駆けつけてきたメイアにミアノは護を渡し、彼女は自分の天幕へと戻っていくのだった。


~翌日~


「昨日はありがとうございました。」

「どういたしまして、マモル君。憑りつかれた影響は出てない?」

「少し倦怠感があるだけです。」

「無理はしないで。何かあったらお姉さんに言うのよ。」

「こういうのはミアノが得意だからな。護、頼っておけ。」


 馬車に揺られながらそんな会話が発生する。副団長であるゴロンゾに代わり、ミアノが乗っていた。主に短時間憑りつかれた護を看るためである。護は憑依によって、少しの間影の元になった怨嗟やそれを生んだ記憶を影から受けており、気分はともかく、体調にも悪影響が出ていた。


(救いなのは、凌辱された女の子の記憶がないことだけど。殺される直前の記憶にそう言った類が無くて良かった。)


 ああいった影もとい、霊系が出るのは多くの死が発生する戦場の近く。例外として長年死や怨嗟、悲鳴が満ちた賊のアジトなんかでも出るようだ。特に、攫った娘が凌辱され、それが満ちた場所で生まれた霊に憑依されると、女はともかく、男でも耐えられないらしい。

 何度かそんなことがあり、賊が壊滅、周辺の村に現れて被害が出たという話を護はメイアから聞いた。良くて廃人なのだから笑えないと思う護だった。


「ごめんなさい。私が容赦なく魔法で消していれば…護さんが憑りつかれなかったのに…。」

「それを言ったら、俺も一緒だ。セレスだけが悪くない。」

「でも…」


 これで何度目かになる会話だ。セレスはかなり自分のせいだと背負いこんでおり、護にずっと謝り続けている。護には解決する方法が一つだけあるが言う勇気はない。


「護様をいつまで困らせるつもりですか?反省して次に活かすぐらいしてもらわないと、護様の隣にいる権利はないです。」

「メイアさん…。」


 メイアが咎める口調で言い放つ。セレスの心に容赦なく刺さり、涙目になるが、頭でメイアが言いたいことも理解できたようだ。


(容赦ないなぁ。でも、これで完全に折れるほどセレスは軟じゃないのは知っている。まぁ、それが魅力として写るんだよなぁ。)


 護は隣でまだ充血させた目をしている少女を見る。メイアの喝は彼女を傷つけるのと同時に、活力剤となったのを直感で察する。それと同時に愛おしく思ってしまう自分がいることにも気づく。


「護様、セレスさんに妬けてしまいそうです。しっかり私のことも見てくださいね。」

「はい…。」


 ポーカーフェイスを崩し笑うメイアに護はそう言うことしかできない。彼女の目が笑ってない。


(どこぞの自称神様も言っていたし、気をつけないとなぁ。)


 護はげらげら笑うナヒーリヤに水魔法を発動するべく、意識を魔法に向けるのであった。


~数日後~


「今日はいよいよオークションの日だ。お前ら身なりに気をつけろよ。」

「『了解』!」

 

 教会に戻り、日常になった朝の走り込みの後、ナヒーリヤは護を含めた部下の前で言った。全員が参加する訳ではないのだが、日ごろの癖で関係ない面子も返事をする。

 解散の言葉で各々動き出す。護はナヒーリヤに朝食に行こうとするのを止められた。


「護、昼間は俺と一緒に行動だ。セレスも一緒にな。魔術師ギルドに行くのと、お前の服装をどうにかしに行くぞ。朝食の後に、教会に来い。」

「了解。」


 護は汗を落とし、食堂でいつもの四人と朝食をとった後、ナヒーリヤに言われた通りセレスと、必ずついてくるメイアと共に教会へと入る。ガンドルフたちはナヒーリヤがいる間、護衛から外れてもいいらしく、休むとのこと。

 そこにはナヒーリヤが彼女のセンスとは思えない女性らしい服を着て待っていた。一度目を閉じて幻覚と疑うが、どうやらそうではないらしい。


「私もやればできるんだよ。」

「護さん、違いますよ。…私が選んだ服ですよ、あれ。」


 セレスがナヒーリヤの言葉を速攻で否定し、護もなるほどと思う。

 ナヒーリヤは護が意外そうにしていたのに満足で笑っている。護は生暖かい目で彼女を見た。行動が残念すぎる。


「護、殴るぞ。…さて、行くか。場所は知っているようだから、とっと済ませるぞ。」


 青筋が立つのを落ち着かせ、ナヒーリヤは教会の外に出る。護たちも後に続いた。


(まぁ、こうなるよなぁ。)


 教会を出てからかなり視線が自分たちに集中している。聖女として有名なナヒーリヤが前を歩き、両隣にはセレスとメイア。有名人に美人と目立つ要素があるのだ、当然注目を受ける。前回冒険者ギルドに行った時よりも多くこちらを見ていた。

 マシと言えるのは、流石に絡んでくる奴らや、今回は妬みを向ける輩が出てこないこと。武の頂点に入る聖女の機嫌を損ねるようなバカはいないらしい。

 特に何もないまま、魔術師ギルドについた。早速中に入る。


「ようこそ。…おや、珍しいお客様ですね。お久しぶりです、聖女様。それと、一月ぶりですね、侍女をつれた青年。」

「久しいな。お前のところの子供も確か五歳になるのだったな。元気にしているか?」

「ええ、あれ以来、ずっと変わらず元気ですよ。実は私、二人目を授かりまして、今お腹の中にいるんです。」

「それは本当か?おめでとう。」

「ありがとうございます。それで、今日はどうした御用でしょうか?」

「ああ、今日はな…」


 ナヒーリヤがマジックバック作成の依頼の件を話す。それを聞いた受付嬢は護たちに視線を移した。


「魔石を見せてもらってもよろしいでしょうか?」


 護が魔石を取り出し、受付嬢に渡した。彼女は魔石をじっと見つめた後、呼び鈴を鳴らす。すると、異界と繋がる門が開いた。

 そして、その門から現れたのは五十代に見えるおっさんだった。


「仕事か?今実験がいいところで、直ぐに戻りたいんだけどな。」

「そう言わないでください。マジックバックの作成依頼ですよ。魔石はこの通り。」

「黄ランクは間違いないな。…巫女ちゃんのために作るのか?前に作ったと思うんだが。」


 どうやら、ナヒーリヤが依頼した職人と同一人物のようだ。かなりいぶかしんでいる。それもナヒーリヤを見ると納得がいったように手を打つ。


「なるほどな。聖女様、結局受け取ってもらえなかったのか。あの時、あのデザインで作るのは止めるように言ったにも関わらず、作っちまったものだもんなぁ。」

「その話はもういい。今回は俺じゃなくて、護と妹が依頼者だ。」

「巫女ちゃんと…ほう、面白いな。この魔石の持ち主を殺した坊主か。こいつに残っている残滓と、坊主に今ある魔力の質が違うな。…一時的にステータスを伸ばしたのか。」

「……」

(凄いなぁ。残滓?俺が倒したときの魔力が残り香として残っている?そんなの分かるのか?)

「驚いたか?まぁ、これが俺の『魔力追跡エクストラ』の副産物さ。加工に必要かどうかと言われるといらないスキルなんだが、あると便利なんだ。」


 感心しながら聞く護。彼は要らないと言っていたスキルでも、活用しているのだからかなり便利なんだろうと推測する。


「デザインは決めてあるのか?」

「これです…。」


 数日掛けてセレスが用意した鞄のイメージ図を職人に渡す。薄黄のワントーンに、護があげてからずっと彼女の胸で輝くブローチのような花の飾りがついている。戦闘で邪魔にならないよう肩にかけられるタイプだ。

 護の感性で、よく見かけるような鞄という第一印象になる。

 図を受け取った職人は質問を続ける。


「素材はどうする。」

「これで…どうでしょうか?」


 護は『アイテムボックス』から魔物行進中に手に入れた素材と、一部冒険者ギルドで売りに出した資金を元手に、買った素材を出す。

 職人はそれらを手に取って材料足り得るのか、確かめている。全てを確かめ終わると、魔石以外の素材を『アイテムボックス』に仕舞った。


「問題ない。それでだ、代金は鞄を渡す時に払ってもらえばいい。白金貨一枚、いや、半額の金貨五十枚でいいぞ。」

「珍しいな。俺の時は白金貨二枚請求してきて、値下げ交渉なんて、受け付けなかったのにな。」


 ナヒーリヤの嫌味たっぷりの小言を無視し、職人は続ける。


「聖女様との収入の違いは考慮している。ただ、坊主が全額支払うのが条件だ。魔石こいつの持ち主からの素材を売れば、手に入る金額だ。きっちり巫女ちゃんにプレゼントしてやれ。」

「はい。」

「よし、商談成立だな。三日、時間をくれ。三日後の夕頃にはできていると思うから、取りに来い。代金は忘れるなよ。」

「お願いします。」


 職人は魔石を持って異界に戻り、護たちは次の目的を達成するため、「ブティックローゼ」に向かう。


~ブティックローゼ~


「お久しぶり。中々~豪華な顔ぶれになるのかしら~」


 そう言って「ブティックローゼ」の店主、ユリスは挨拶する。そして、護、メイア、そしてセレスをそれぞれ見回した後、満足気に彼女は微笑む。


「いい感じで進んでいるのね~」

「余計な話はせずにさっさと用件を済ませましょう。護様の礼服を作成したいので、貴方も手伝ってください。」


 メイアはユリスがそれ以上余計なことを言い出す前に用件を告げる。ユリスは微笑みを崩さず、「はいはい。」と答えると、採寸の確認とばかりに護をペタペタ触り、店の奥へと入っていった。


「それでは護様、しばらくの間、お傍を離れます。セレスさんたちに案内してもらって、靴をお買いになってください。」

「頼む。」

「承知しました。全力で作りますね。」


 メイアは一礼すると、ユリスの後へと続く。護たちも靴などを買いに、動くのだった。

 一時間ほどして戻ってみると、メイアとユリスが待っていた。


「できたわ。着れるかどうか確かめましょうね~」


 ユリスとメイアに連れられ店の奥の着替えのスペースで、二人に礼服を着せられる。紺を基調とし、細部に赤の線が走っている。胸ポケットには盾と剣が重なったマークが縫われている。

 また、きつくもなく、ぶかぶかでもない、それでいて動きを制限しない絶妙なバランスがとれており、かなりの一品だ。


「これで大丈夫ね。代金はメイアちゃんが支払ってくれるそうよ~」

「そうなのか。ありがとう、メイア。」

「恐縮です。それに、護様とは約束をしておりますので、それが楽しみです。」

「ほどほどに頼むよ。」

「祈っておいてください。……ユリス、顔が気持ち悪いですよ。」


 先ほどからずっとニコニコしているユリスをメイアが蹴りつける。彼女は悲鳴を上げながらも、避けた。流石に非戦闘職の友人?にはメイアも加減するらしい。


「ごめんなさいね。前に会ったときよりも仲が進んでいるから、つい~」

「ここですることは終わりました。すぐに出ていきましょう。」

「お、おう。」

「またね、メイアちゃんとご主人様~」


 メイアに押され、護はセレスたちの元へと戻る。そのまま、教会へといったん戻り、夜までオークションへ出す物品の確認をするのであった。

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