閑話 ~デート1~
閑話だが…
「はぁ!!」
護の繰り出した突きが、的を射抜く。副作用の激痛から解放されて四日が経った。
今日はメイアと短剣及び火の魔法の修練ではなく、ネシーナと槍の鍛錬を中心にしている。
「うーん、グリーンスライムくらいの核なら一撃で貫けそうになってきたね。ただ、払いとか打撃はまだまだねぇ。」
様子を見ていたネシーナがそう呟く。護はその言葉を聞いて、それなりには形になってきているのだと思った。
というのも、グリーンスライムという魔物は、核を潰さない限り不死身な存在である。護は一度討伐依頼を受けて向かったのだが、その時は短剣だけでは核に届かないため倒せず、火である程度小さくしてから倒した。ちなみにグリーンスライムは基本草を好むため、メイア自信作の衣服が溶かされかけたらしい。勿論ホーンラビットより厄介である。
「さて、ひと段落着いたし、お姉さんから質問。セレスちゃんとは上手くやってる?三人でデートするとか聞いたけど。」
「しつこいぞ、って一体どこからそんな話が。」
訓練の終わりの度にネシーナは粘り強くセレスとの関係を聞いてくるので護はため口で話すようになっていた。
護は二人から一緒に一日過ごせる時間が欲しいと言われ、鍛錬以外は休みにして街を見て回る日を用意したのである。どうやらその話が漏れていたらしい。秘密にしている訳ではないのだが、どこか護には恥ずかしい部分がある。
「あら、二人が言っていたわよ。それでメイアさんはともかく、セレスちゃん頑張って、と励ましコールがあったじゃない。」
「昨日の夕食後か…。」
護は昨日の食堂を思い出す。珍しく二人とは別に食事をとったのだが、その二人の周りで修道女たちや数少ない女騎士たちがきゃあきゃあ騒いでいたのを。
「ということで、これ。他の子たちの分も代表してるから。恥をかかせないようにね。」
ネシーナは金貨を一枚渡す。護は投げられたそれを受け取り、『アイテムボックス』に仕舞う。
(下手な結果になったら女性陣に殺されかれないな。)
「ありがとう。使わせてもらうよ。」
「頑張りなさい。あ、そうそうデートで見に行くのよね?」
「何を?」
「勇者一行のお披露目パレード。」
「!!」
護は知らなかったようで、驚いてしまう。
「知らなかったの?あ~、マモル君が寝ている間に急に話が広まったからって、目覚めてから四日経ってるわよ。お祭り騒ぎしているの気づかなかったの?」
「騒がしいとは思っていたが、そうか。まさか、龍志たちが絡んでくるとは思っていなかった。」
「あらら。にしても、勇者ねぇ。魔族に戦争で仕掛けるつもりなのかしら。今の王はそんなことするような人ではないはずなんだけど。」
「そうなのか?」
ネシーナは頷く。直接会ったことのある護からしてもそうだろうなと共感できる。
「王がこの国を統治し始めてから十年以上経つけど、今までこんな話は一度もなかったわ。」
「となると、きな臭いのは俺を追い出した貴族たちか。」
「あー、マモル君追い出されてセレスちゃんが教会に連れてきたんだったけ。きな臭いところにいる勇者たちが心配?」
「いや、存在価値がある限り、そう簡単に切り捨てることは無いと思う。」
護の言葉に、ネシーナはため息をつくと、
「魔族と無理やり戦わされて、死んじゃうかもしれないんだけど。それはどうなの?」
「龍志たちがそこまで馬鹿じゃないと信じているさ。」
ネシーナは言い切った護に呆れた顔を浮かべると、「とにかくセレスちゃんと仲良くやってね」とだけ言い残すと、着替えるためにそれぞれ宿舎に戻るのであった。
~城周辺~
朝食を食べた後、護たち三人は教会を出て、城を目指して歩いていた。周りは護がこの世界に来た頃、見かけなかった出店が多く出店しており、雑貨から武器まで種類も様々売られている。
(龍志たち様様だなあ。いつもより人気が多くて歩きづらいはずなんだが…)
人が多いが、三人はそこまで困ることなく歩けていた。というのも、メイアとセレスが護を挟んで幸せオーラをばら撒いており、水を差そうものならどうなるのか想像がついていたからである。結果、三人が通りかかると前の人が工夫して道を開けてくれるため、礼をたまにしながら歩いている。
「そこのお兄さん、嬢ちゃんたちを二人連れているお兄さん、見ていかないか?」
露天商をしているおっちゃんが護を引き留めようとする。おっちゃんが売っているのは簪といった女性用の小物だった。
三人は歩みを止めて、おっちゃんが売っている者に目を通す。護はユリのような白い花と葉をモチーフにしたブローチと、黄色のコスモスに似た花がついているヘアピンをとる。
「おっちゃん、これいくらですか?」
「その二つなら両方合わせて銀貨一枚だが、お嬢ちゃんたちの可愛さに免じて銅貨80枚だ。」
「買います。」
「おう、毎度。」
護は銅貨を払うと、二人に早速つけることにする。
メイアにヘアピンはすんなり着けられたのだが、セレスの方は胸に手が当たり、護とセレスは顔が真っ赤になりながら着けるのであった。その間、周りはメイアの眼光を浴びて顔を背けていた。
更に幸せムード全開の二人を連れながら護は歩く。嫉妬の視線を向けてくる輩はいない訳ではないが、メイアたちを見て幸せオーラに耐え切れず踵を返すか、周りの人に「早まるんじゃねえ!死にたいのか!」と言われて頭を叩かれて正気に戻される奴らがほとんだ。
(何事もなく無事に終わってくれ。)
護がそう望んだからなのだろうか。嫉妬に塗れた男三人組が人を押しのけながらやってくる。それを見て、メイアはともかくセレスまで不機嫌になっている。
「おい、ガキ。お前みたいなのがな、女侍らせて歩いてんじゃねぇぞ。女置いて失せろ。」
一番頭が爆発している男がそう言い放つ。
(うわっ。フラグ回収した感じか。えぇと、『真理眼』。)
げんなりしながらも護は相手のステータスを見る。
ザル (男・34歳・人族)職:下級戦士Lv19
LP 120 MP 79
STR 145 AGI 93
TEC 131 END 106
INT 81
一般スキル 剣術Lv2 料理Lv3 色欲Lv2 傲慢Lv2 怠惰Lv1
職スキル
エクストラ
他の二人も似たり寄ったりのステータスである。
(これならいけそうかな。)
護は自分の現時点でのステータスと見比べてそう判断した。
明石宮 護 (男・17歳・人族?) 職: Lv21
LP 163 MP 124
STR 186 AGI 196
TEC 153 END 175
INT 125
一般スキル 剣術Lv3 体術Lv3 短剣Lv3 盾術Lv2 槍術Lv2
魔法(火・風・土・水・光)Lv2 (雷)Lv1
料理Lv2 不屈Lv3 調合Lv1
職スキル アイテムボックスLv2 浄化Lv1
エクストラ 完全なる図書館の司書 真理眼 言語理解
ドルケとの闘いの後、新たに雷魔法と、調合のスキルを手に入れている。雷はネシーナから、調合は修道女の少女から習っている。ちなみに、護は調合スキルが職ではなく一般に入ることに驚いたが、作り方さえ覚えれば誰でもできる可能性がある。そういう意味では職に入らないということなんだろうと自分を納得させた。
護は二人に下がってくれと言うと、男たちを見据える。すでに相手は全員武器を構えており、今にもとびかかってきそうだ。
「俺たちのことをバカにしやがって、後悔させてやる!!」
護は相手の挑発を無視して、相手のステータスを探っていた。そのため、相手は気に障ってかなり怒っているようだ。
護はザルの振り下ろしを少ない動きで回避すると、相手の手首をつかみ腕に膝で一撃を加える。関節に入り、骨の折れる嫌な音をしながらザルは剣を落とす。続けて護はみぞおちに一撃を加え、ダウンさせた。
「おらあ!!」
短剣使いとこん棒使いの残り二人が護に迫る。足の速い短剣使いが護の足を止め、こん棒使いの強力な一撃で仕留めるつもりなのだろう。
対して護は魔法を唱える。
「『ショック』」
光魔法につぐ速さの攻撃が短剣使いを襲う。一撃ではダウンさせられないが、足を止めさせるには充分だった。護は『アイテムボックス』から槍を取り出すと、短剣使いの止まった足を薙ぎ払う。転んだところに石突きをし、気絶させる。
こん棒使いがやっと護を間合いに捉えるが、すぐさま護が距離を離し、一方的に攻撃できる位置に立つ。そして、護はそのまま槍で突きを連続して放つ。こん棒使いは防御していたが、緩急をつけられた連撃に対処できず、足を切られ動けなくなってしまう。勝負あり、といったところだろう。
護に周りで観戦していた奴らから称賛の言葉が飛び交う。かなり盛り上がっていた。
「何事だ!!」
しばらくして、憲兵が五人ほどやってきて護たちに問いかける。
三人は事情を話すと、詳しい話を聞きたいから部署のところまで来てもらえないだろうかと言われる。
「お断りします。先ほど話したことが全てですので。」
メイアがそう言い放つ。
「とは言ってもな。パレードがある日にこんな騒ぎを起こされたら、はいそうですかとは言えない。」
憲兵の一人は頭を悩ませる。すると、ベテランの憲兵が近寄ってきて、
「連れて行かなくても大丈夫だろうよ。そこの二人は『冷血』と、巫女様だろ。ある程度人なりは知っているし、悪意を働かせるような人たちじゃないことは確かだ。戦ったそこの奴は、巫女様と同じ教会の人間だ。いきなり暴れるような性質はしてないさ。」
「しかし…」
「無理に連れていくことはできないぞ。正直、『冷血』は俺たちよりも強いからな。暴れられたら適わない。まあ、デートの途中のようだし、邪魔する方が怖そうだ。」
前半は後輩に向けて、後半は護たちに向けてそう話す。
憲兵たちは男たちを叩き起こして、連れていくのであった。
「流石にあの程度の怠慢な輩に安定して戦えるようになりましたね。」
「護さん、かっこよかったです…」
「…ありがとう。パレードが始まるみたいだし行こうか。」
護が照れ隠しにそそくさと歩こうとするのを二人は笑みを浮かべながらついて行くのであった。
王城周辺は人だかりで壁のようになっており、重鎧を着こんだ兵士たちがパレード用の通路を並んで確保している。三人は観衆のあまりの多さに驚きながらも、見えそうな場所を探す。しかし、地上にそのような場所はなかった。
そのため、メイアの提案で屋根の上で見ることにした護たち。メイアが二人を順番にお姫様抱っこして運ぶ。屋根の上には護たちの他にも屋根上で観覧しようとした者たちと、黒装束に身を包んだ、いかにも暗殺、諜報の人間がいる。
その一人が近寄ってきて「お久しぶり!」とメイアに声をかけてきた。どうやら同期らしい。メイアは護やセレスを紹介すると、屋根の上で観覧しても問題ないかと尋ねる。「大丈夫よ!」と二つ返事が返ってきた。
その後の話によると彼女たちの仕事は身元確認をその身でし、安全を確保することらしい。目立つ黒装束を着ているのは敢えてしているとのこと。既に何人かバレないと思っている自信家が、OHANASHIの対象になったようだった。
「開門!!開門!!」
兵士の叫び声と共に城前の門が開き、中から天井がない馬車が次々と出てくる。龍志と由奈、桃花たちが乗るのは二番目の馬車で、猛とるかが三番目の馬車に乗っているようだった。一番目はリーゼンボルト王と王妃が乗っている。その後ろは楽器を各々持った演奏団だ。派手なトランペットに似た音が鳴り出すと同時に、歓声も盛大に鳴り響く。
護は龍志たちの様子を観察する。龍志は別れた時のような蒼白な顔色ではなく、元気を取り戻した顔で笑いながら歓声に応えて手を振っている。由奈は龍志の隣で興奮のあまり手を振りながらはしゃいでいるようだ。桃花が余裕ある態度のため、かなり対照的で目立つ。
猛は冷めた目で自分たちに歓声を送る民衆を見ていた。何人かがその目で見られて腰をくねらせている。また、るかは冷めた態度をしている猛を怒っているようだった。しばらくして説得を諦めたのか龍志のような応え方をしていた。少し顔を引きつらせながらだが。
(全員、大丈夫そうだな。さて、ステータスの方は…)
護は『真理眼』を発動させる。龍志たちのステータス画面が表示された。
朝野 龍志 (男・17歳・人族)職:勇者Lv12
LP 231 MP 208
STR 236 AGI 229
TEC 240 END 227
INT 203
一般スキル 剣術Lv3 魔法(火・水・風・光・闇)Lv2
栽培Lv1 裁縫Lv1 集中Lv3 指揮Lv1 不屈Lv1
職スキル 瞬転Lv2 限界突破Lv1
エクストラ 言語理解
近藤 由奈 (女・17歳・人族)職:賢者Lv8
LP 87 MP 145
STR 91 AGI 113
TEC 109 END 86
INT 143
一般スキル 魔法(火・水・風・土・雷・光・闇)Lv1
裁縫Lv1 集中Lv2
職スキル 広範囲補正 詠唱破棄Lv3 MP自然回復力向上
エクストラ 言語理解
佐藤 桃花 (女・16歳・人族)職:聖母Lv9
LP 137 MP 167
STR 142 AGI 133
TEC 140 END 121
INT 175
一般スキル 戦棍術Lv2 杖術Lv2 盾術Lv1 魔法(光・風)Lv3
料理Lv3 裁縫Lv2 不屈Lv2
職スキル 祈りLv1 浄化Lv3
エクストラ 言語理解
松本 猛 (男・16歳・人族)職:上級拳闘士Lv10
LP 169 MP 99
STR 173 AGI 170
TEC 111 END 105
INT 93
一般スキル 体術Lv3 身体強化Lv2 魔法(火・水)Lv1
釣りLv1 不屈Lv2
職スキル 気功術Lv2
エクストラ 言語理解
杉波 るか (女・17歳・人族)職:侍Lv9
LP 131 MP 81
STR 140 AGI 152
TEC 148 END 97
INT 87
一般スキル 刀剣術Lv2 体術Lv2 身体強化Lv1
裁縫Lv2 栽培Lv1 料理Lv2
職スキル 居合Lv1
エクストラ 言語理解
(レベルは低くても流石は勇者か。もうステータスは抜かれているみたいだし。)
龍志のステータスを見て護は、職システムの補正が如何に成長の速度を左右するか分かってしまう。他の面々も自分と同じレベルになっている頃には、自分を追い越しているはずだ。
レベルの上がり具合も、護ほどではないがそこそこ早い。異世界人共通でレベルが上がりやすいのかもしれない。
「護様、勇者様たちのステータスをご覧になったのですか?」
メイアが護が顔を少し顰めているのに気づいてそう聞いた。
「ああ。龍志、勇者にはもう抜かれている。他の面々はまだだけど、今の自分と同じになるころには抜かれているだろうさ。」
「そうですか。確かに勇者が誰なのか一目で分かるほどにはずば抜けていますね。しかし、他は…」
「レベルも低いみたいだし、これからだと思うよ。」
三人は目の前を通り過ぎていく勇者一行を静かに見つめる。すると、一番目の馬車に乗っている王がちらりと視線をこちらに寄こし、そして安堵を示す。無事を確認できて一安心しているようだった。
それに気づいた龍志が護たちを見て、嬉しそうに笑う。桃花は釣られて気づいたが、由奈は大衆の方ばかり見ていて、龍志の様子と護たちに気づかなかった。
猛も護に気づいたようで、舌打ちをする。しかし、表情そのものはどこか安心しているようだった。
やや呆れた後、護はいつぞやの別れを思い出しながら、口を動かす。「忘れるなよ。」と。
龍志も「もちろん。」と返し、観衆に手を振るのに戻っていった。
「仲が…良いんですね。」
「ああ。」
護は短く返事をすると、空を見上げる。そして、二人に「どこかで食べようか。」と告げて屋根を降りて行った。
~教会~
昼食を取った後、とある件からメイアが途中離脱したり、その間セレスと二人で服を見て回ったりするうちにあっという間に時が過ぎ、夕方となった。
護たち三人が食堂に入ると、女性陣を中心にざわめき立つ。その中からネシーナが近づいてきて、
「お帰りなさい。マモル君、セレス借りるわね。」
ネシーナはセレスの手を引くと姦しく騒いでいく女性陣のところに連れていく。
質問攻めにあっているセレスをそのままにして、護はメイアと一緒に食事をする。時々キャーという叫びがセレスの方から聞こえるが、二人を取り巻く空気は静かだった。
「なあ、あの二人何かあったのか?」
「俺が知るかよ。喧嘩とかしたんじゃねえか。」
「それはないだろ。険悪だったら今頃マモルの奴生きているとは思えないぞ。」
「うーん、気になるが話しかけていいような雰囲気じゃないな。」
男性陣が二人の様子を見て、ひそひそと会話する。そして、誰か「勇者」となってどうしてか、と理由を聞く奴はいないかと少し騒ぎ始めた。
二人は、喧騒をスルーしながらとっとと食事を終わらせると、食堂を後にする。騎士が「あっ」と気付いた頃には既にいなくなっていた。残念そうな声が食堂を満たす。
部屋に戻った二人は、お互いベッドに腰かけていた。
「護様にお渡ししたいものがあります。」
「俺もだ。」
「では、同時に出しましょうか。」
護とメイアは阿吽の呼吸で『アイテムボックス』から物を取り出す。護は緑色の宝石がついた指輪を、メイアは黒を基調として所々に黄色のラインが入ったコートだった。
「これは?」
メイアが指輪を指してそう尋ねてくる。
「えーと、結婚指輪かな。元いた世界で夫婦になった男女が結婚している証として身に付けるんだ。俺の左手にもお揃いでつけてある。」
護は左手を見せる。薬指にはメイアのものと同じ大きさの緑の宝石が付いた指輪をしていた。これは、前日メイアが護の傍から離れているときに用意したものである。もちろん、ただの装飾品ではなく、グリーンドラゴンの若い個体から採れた魔石の一部であり、それに精密な魔法陣が内部に描かれている。魔力を込めると、風の結界が張れるようになっている。INT依存で結界の強度が決まるためメイアみたいな高レベル帯でも使えるように護はこれを選んだ。
ちなみに、金額は一つ金貨30枚が相場なのだが、護は金貨10枚、つまり20枚でこれを手に入れていた。金額が高く諦めようとした護に店主が気づき、護から事情を聴くと赤字覚悟で値引いてくれたのだ。「ロマンチックじゃねえか。いい話を聞かせてもらったよ。坊主、奥さん幸せにしろよ。」とのこと。後に貴族辺りから指輪といった装飾品をお揃いでつけるブームが流行り、店主が儲けるのは別の話である。
「メイアが手に持っているのは俺の?」
「そうでございます。魔物から採れる素材を生かした特製のコートです。護様を守ってくれますようかなり励みました。」
護は『真理眼』を発動する。
夜見纏い (メイア特製 デススパイダーの糸、シャドウクロウの尾羽、ナイトワームの黒糸などの素材を使った力作。耐久性は勿論、隠密に補正効果や闇魔法の威力向上、自動修復までついている。何より護専用装備になるよう特殊な製法を用いており、他者が利用できない上、低レベル帯からでも使用できるようになっている。)
「凄いな。まあ、隠密や闇魔法は覚えないといけないが。」
「お気に召さなかったでしょうか。」
「いや。俺専用の防具みたいだし、メイアが本気で作ってくれた装備なんだ。大切にするよ。」
護はメイアの左手の薬指に指輪を通すと、コートを着る。動きずらいこともなく護好みの一品と言えるものだった。メイアは手に嵌められた指輪をまじまじと眺めた後、頬を染めて微笑む。
二人はそのまま互いの顔を見つめると、唇を合わせる。そして、護の中の男の部分が反応しだしたところで扉の叩く音が聞こえる。
「護さん、今いいですか?」
護が扉を開けると、少し疲れている様子をしたセレスが立っていた。どうやら女性陣から避難してきたようだった。
メイアが頷くのを見て、セレスを部屋に招く護。セレスは護の衣装とメイアの左手で輝く指輪に気づくと、
「護さん、私の荷物預けてもらっていましたよね?」
そうはっきり言う。
護は少し驚きながら、昼の間に預かっていた衣服を取り出した。
「着替えるので…後ろ向いてください。」
「は、はい。」
護は言われた通りにセレスに背を向ける。布が擦れる音がしだしたので、護は邪心を払うためにセレスのステータスを思い出す。
セレスティア (女・17歳・人族)職:巫女Lv49
LP 375 MP 319
STR 345 AGI 304
TEC 336 END 296
INT 794
一般スキル 杖術Lv4 戦棍術Lv2 体術Lv1 魔法(火・水・風・光)Lv7
料理Lv4 裁縫Lv3
職スキル 神託Lv5(MAX)
エクストラ
セレスの職である「巫女」は血統職と呼ばれるものであり、血筋が関係するとのこと。また変更ができず、伸び幅が護のように変動することがない。
構成はINT《知力》に極振りであり、えげつない火力を叩きだせる分、他の部分はやや頼りないといった所だろう。それから巫女の特有の補正として、魔力を込めた魔法陣を描き、発動する儀式型魔法がある。この形で発動すると威力が三割増すのだ。しかし、セレスの職変更が不可である以上、『アイテムボックス』の獲得もできないため、ストックができない。
即効で発動できるよう鍛錬しているのだが、実質普通に発動する方が使い勝手がいいのであまり使わないようだ。
ちなみに「変化薬」が飲めないのは、「巫女」は中級職に位置しているためで、初級職にしか使えない「変化薬」は効果がないどころか毒である。
「護さん、終わりました。」
振り返ると、セレスは昼間に見つけた衣服でお気に入りの黄色を基調にしたものを着ていた。月明りで白に近い輝きを放っている。
「戦いには向きませんが、かなり良い生地を使っているようですね。それに、なかなかあざといものを選びましたね。」
メイアは一目見てそう評価する。その目線はセレスの胸元に釘付けである。強調されている訳ではないがしっかり主張されており、メイアからすれば面白くないだろう。
「あうう・・・。」
セレスは赤くなって、胸を両手を隠す。そして、護へと視線が向かう。
視線を向けられた護は苦笑いだ。護が試着の時恥じらうセレスを見て、全額負担で即刻買った衣服の一つである。一応、無理はしなくてもと伝えたのだが、セレスは護さんが選んでくれたから、と恥じらいながらも喜んでくれていた。加えて、護の好みを象徴しているとも言える。
メイアは護を見た後、そのまま視線を自分に向ける。
「護様は、胸が大きな方が好きなのですね。私では満足できないのでしょうか。」
「そんなことはない。俺はセレスに似合っているから選んだのであって…」
メイアが冗談ではなく本気で言い始めたので、護は慌てて否定するが、メイアの目はジト目になっている。
セレスは更に真っ赤になって目を回し始めたようだ。そのまま寄りかかってきたので、護は受け止める。胸が当たって、思わず顔に出てしまう。
「ひっ」
メイアから本気の殺気が出てきたので、セレスを部屋に寝かせてくるという、撤退を選び護は避難するのであった。そして、浴場へ直接向かう護であった。
眠る前にメイアから上半身裸で迫られて、要求に応えている最中に気を失うというイベント以外は平穏に終わる一日。……翌日少し不満な顔をしたメイアにボコボコにされる護がいたとか。
なんちゃってQ&Aはお休みです。
さて、勇者サイド+αの閑話を書くことにします。
え、護が最後気絶したのはなぜかって? メイアの攻めに驚いたんじゃないでしょうか。実際に見て触るのは初めてみたいですし…。
セレス用の指輪を選ぶのは当分先です。(先にベッドの拡張が必要だ…)




