エピローグ
エ、エピローグ!?
~リヒト教会・宿舎~
「おはようございます、護様。目が覚められて良かった。」
護が目を覚ますと、覗き込むようにしてメイアが自分と目を合わせてきていた。
驚いて思わず動こうとすると全身に激痛が走り、呼吸までままならない状態になる。これは、「反撃の薬」の副作用であり、後遺症は残らないが反動として激痛に耐えなければならなくなる。
「護様!」
護の様子に気づいたメイアは、『アイテムボックス』から護に事前に渡されていた鎮痛剤を取り出し、水と一緒に口に含むと護の口を開いて直接流し込む。
少し水がこぼれながらも鎮痛剤を護は飲むことに成功する。痛みが引くまでの間、二人の間に沈黙が降りる。相手の感情を瞳から探るように見つめあった。護はメイアの瞳から安堵に近いものを感じる。
「俺はどれくらい寝ていたんだ?」
「倉庫で眠りになられてから三日経ちます。その間の出来事を申し上げたいと思います。」
「頼む。」
喋れるほどに回復した護はメイアから眠っていた間の出来事を聞いていく。
まず、セレスは精神的疲労が戻った当初あったようだがトラウマ等はなく、今日も祈りの後、冒険者ギルドに向かったらしい。ガンドルフとエトリアもついて行ったようだ。
次に、フレメレーヴェン傭兵団についてだが、ジャック団長と妻子は教会で無事再会できたとのこと。ジャックが妻子と抱き合い泣いていたのを、ケレスとガンドルフが酒の肴にしているようだ。かなり珍しいのとイメージにそぐわないため印象に残っているようである。ちなみに、ジャック自身はどうとも思ってないようで、喧嘩は起こらなかったそうである。
傭兵団全体としては、迷惑をかけたお詫びとして教会が戦力を必要としているときに対価なしで一度、駆けつけることと、迷惑料として金貨50枚を教会の方に支払ったようだ。
今回の主犯であるドルケは護の一撃で森の中に吹き飛ばされた後、行方不明。獣に殺された跡はなくおそらく逃亡したものと思われている。インワドは巫女さらいを依頼した主を知らないようで、ほとんど情報がないまま憲兵に誘拐の実行犯として突き出している。おそらく犯罪奴隷になるだろう。
護はその事の顛末を聞いて顔をしかめる。ドルケは姿をくらまし、セレスを狙った依頼主は不明。万事解決とはいかなかったことが口惜しい。
メイアは予備動作なしで顔を顰めている護を抱きしめた。
「護様、死ぬかもしれなかった事実を忘れてはいけません。セレスさんを助けられたことだけでも充分ではないでしょうか。」
「気にするだけ無駄なんだが、最善があったかもしれないと思うとな。セレスを助けられた達成感も生きて帰ってこれた喜びも確かにあるんだがどうしても…」
「実力をつければその内最善を尽くせるようになります。今は素直に喜びになられた方がいいでしょう。」
護はくよくよした気持ちを飲み込むと、メイアを抱きしめ返す。メイアのポーカーフェイスが崩れ、朱に染まる。護も顔に血が上るが、しっかりメイアと向き合う。メイアの顔はどこか幸せそうだ。
二人の顔が近づいて唇が重なり舌を絡めようとした時、部屋の扉が開く。そこには呆然として二人の逢瀬を見ているセレスがいた。
セレスは顔を真っ赤にし、目に涙をためて廊下を走りだす。護とメイアが離れる間もなく気配が遠くなってしまった。
「「・・・。」」
二人も気まずくなり黙り込んでしまう。気持ちも冷め、今から続きをする気も起きなかった。
「メイア、セレスに見られてしまったな…」
「そうですね。」
「てっきりメイアの話でセレスは狩りに行ったと思っていたんだが…」
「私もでございます。」
「「・・・。」」
(恥ずかしいというよりも後ろめたさを感じる。セレスとは特別な関係というわけでもないのになあ。)
護からすれば、メイアはともかくセレスとは特に関係を持っていない。しかし、セレスが泣きながら走り去ってしまったことにはどうしても罪悪感がするのだ。
本人は飛び出してしまったため、カバーする暇もない。どうしようもなく、二人は昼食をとることにした。護が起きたのは昼前だったからである。
「おう、起きたのか。お嬢が教会に籠って出てこないんだが、何か知らないか?」
食堂に入ってすぐ、二人に気づいたガンドルフがそう声をかける。ガンドルフが続けて詳細を話した。セレスが教会に入ってすぐ、その場にいた全員がいつの間にか外に転送されたそうだ。そして、教会はセレスがお祈りをするときに張られている結界で入れなくなっている。いつもとは違うことで大騒ぎになりかけたのをエトリアとケレスが一喝して鎮めているらしい。
「セレスが護の様子を見に行った後、すぐ閉じこもってしまったからな。護たちは何か知らないか?」
ガンドルフが改めて問い直した。
「実は…」
護は事情を説明する。それを聞いたガンドルフ、ではなくすぐ側で聞き耳を立てていたネシーナが「あちゃー」と反応した。
三人の目がネシーナに向く。あまりにその動きがあっていて怖かったネシーナは悲鳴を小さくあげながら言った。
「セレスちゃん、マモル君のことが好きだったのではないかと。倉庫から教会に戻る途中、手を握って眠っていたようですし、好きなんだ、って揶揄ったら顔赤くして頷いてくるし…」
「それはつり橋こ…」
ドスッ!
「夢のないこと言わないであげて。セレスちゃんは本気よ。」
護が否定しようとしたところをネシーナが早業で石突きして黙らせる。護が悶絶どころか吐血していたのでメイアが水薬を飲ませた。
ネシーナはため息をつくと、
「あんな健気な子をほっといて侍女といちゃいちゃするのはどうなんですかね、私の弟子さん?」
「一つお言葉なのですが、私と護様は侍女と主であり、妻と夫です。夫婦の営みとして護様と逢瀬を楽しんではいけないのでしょうか?」
ここで護の代わりに答えたのはメイアである。護は先ほどのダメージからまだ復帰できていない。
「えっ?聞き間違えかな、夫婦?」
「その通りでございます。」
「……。」
メイアの肯定にネシーナは黙り込んでしまった。そして一人でに混乱し始めた。
(ちょっと待ってよ!この二人、早すぎない!!一週間で即結婚とか馬鹿じゃないのぉ!ねぇ、嘘とか冗談とか言ってよ!)
ネシーナはまだ腹を抑えて蹲っている護の肩を揺さぶりながら、大きな声で、
「正気なの、マモル君?この人、『冷血』っていう二つ名が付くくらいヤバイ人なんだよ?一人で淡々とターゲットを殺していく姿と…ひいっ!」
「余計なことを教えないで下さい。『冷血』と呼ばれたのは王の侍女として勤める前の話ですので、あの頃に比べたら今の私は普通だと思いますよ。今回は見逃しますが、二度はないかもしれません。」
メイアの本気の殺気を受けたネシーナは慌てて護を放し、壊れたように頷く。
(普通とは言い難いよなあ、これは。)
痛みを堪えながら、護は心の中でそう思った。
「どうかされましたか、護様?」
「イエ、ナンデモナイデス。」
微笑んでくるメイアがそう聞いてきたので棒読みになりながら護はそう答えるしかない。
「おい、マモルとメイアができていたことは驚いたが、お嬢のことはどうするんだ。あの様子だと流石に一日もすれば出てくるだろうが、放っておくわけにもいかないないだろうよ。」
ガンドルフの言葉ではっ、となるネシーナ。話が脱線していたことに気づいたようだ。残りの二人はさっきまでの話が無かったかのようにどうするか考えている。
「ガンドルフさんに確認なのですが、教会の結界は前に俺が入れたものと同じですよね?」
「おそらくだがな。」
護が自称光の神とやり取りしたときも結界が張ってあったことを思い出しながらガンドルフにそう聞いた。
「だとすれば、俺は中に入れる可能性が高いと思います。」
「そうかもしれませんけど、マモル君が原因でああなったので入れないと思うわ。」
「試してみないことには何とも言えませんね。」
ネシーナに意見を速攻否定したメイアに、ネシーナは頬を膨らませてご機嫌斜めになる。
「飯を食べて、マモルが教会に入れるか試してみるのが一番だろう。ネシーナ、お前もいい年なんだからそんな真似はするな。」
「おじいちゃんにいい年とか言われたくないですね。戦いを取った身ですけど、確実に結婚しますから見ていてください。」
「行き遅れを拾ってくれる小僧がいるといいな。年上お姉さんで通じる年齢を超えてきていると俺は思うがな。」
「何を…」
ガンドルフがネシーナを揶揄い、それにネシーナが噛みつき始めたのをよそに護たち二人は昼食を取り始めるのだった。
~教会~
「マモル、目覚めたのかね。」
「おや、ナイト様のお目覚めか。ガンドルフから大体のことは聞いているかい?」
教会の扉の前で待機していたエトリアとケレスに護は声をかけられる。護は二人に昼前の出来事を話す。
二人とも頭に手を当てて首を振った。そして、ネシーナが言ってきたことの説教版を護にした。途中、メイアが割込みかつ更なる夫婦宣言で火に油を注ぎこんでしまったため、燃え上がってしまう。エトリアから光弾が数発現れた時は、ガンドルフが仲裁兼宥めることで事なきを得る。
護は説教を喰らったダメージで内心疲れながら、結界に触れる。弾かれず中に入れるようだ。やり取り次第では後でメイアに一刺し貰うかもしれないと苦笑しながら扉を開け中に入った。
祭壇の前にセレス、否、光の神が護をじっと見つめながら立っていた。セレスがさんざん泣いたのか頬には涙が流れた後がある。
「やっと来たね。私が最初に会ったときの言葉覚えてる?」
「ああ。」
護は、気を引き締める。
「だったら私の言いたいことも分かるでしょ?」
自称光の神が正に光の速さともいえる速さで護に近づく。目が据わっているので、口調は前と変わらないが威圧的な感じだ。
「その答えは今は無理としか言えない。親友だとは思うが、恋愛感情は持っていないぞ。」
護は堂々と答える。誠実であるが故にセレスの思いには答えられないと。
「本当に?私には辛そうなあなたが見えるわ。」
(俺が辛そうにしている?確かにセレスに罪悪感を覚えることはあるが…)
「俺が罪悪感を覚えているのは認めるが、それは関係ないだろ。俺がセレスのことを好きなどうかが問題だと思うが。」
自称光の神が護の両手を自身の手で包み、強い意志を持った目で言う。
「そうかもしれないわね。でも、セレスの気持ちにはどうするの?応えられないというのは簡単よ。理由もあるわね。メイアがいるから、と。」
声を出そうとする護を制し、そして目の前の神は続ける。
「それにあなたはこれからも罪悪感を覚えるでしょうね。まあ、拭うのも簡単だけどね。セレスの気持ちに応えてあげれば自然と消えるわ。」
護は無言で自称光の神を見つめる。その瞳は様々な感情から揺らいでいた。
「急ぐ必要はないわよ。ただ、罪悪感から逃れたいならば覚悟を決めて二人とも愛しなさい。」
自称光の神はそう言い放った後、先ほどの強さが失せ、最初に会ったお転婆な雰囲気を纏う。
「あと、メイアちゃんに刺されるかどうかはあなたとセレスちゃん次第ね。関係を上手く築けなかったらそうなるから頑張りなさい。さて、伝えたいことは告げたし私は戻るわ。ああ、そうそう、セレスちゃんに想い続けたら護君は応えてくれると伝えてあげたから。」
「ちょっと待て。何故、勝手に」
決めてんだと言い終わる前に、最後にウインクだけを残してセレスから神の気が消え倒れこむ。護は抱えると、長椅子にセレスを横にする。前ならばエトリアたちがすぐに入ってきたが、今入ってくる気配はない。
セレスが目を覚ます。護が隣で座っているのを見て、頬を赤くして慌てて座り直した。
「「・・・」」
二人の間に沈黙が降りる。お互い目は合うのだがその度に目をそらすばかりで時だけが過ぎていく。
(嵐のごとく去っていきやがった。神らしいこともできるんだな。さて、セレスが俺のことを好きなのは確定なんだろうなぁ。とは言え、気持ちが追い付いてない訳で。どうしよ…)
護は考えをまとめる。そして、どうするのか決めた。
「俺は、セレスのことは親友だと思っているんだ。好きとか愛してるっていう感情は今は持っていない。」
護が喋りだしたのを、セレスは静かに聞く。そしてその顔色は良くない。
「でも今は、だ。」
「・・・!」
護が選んだのは事実上先送り。セレスを突き放したり、受け入れるのではなく時が来れば選択しようという、セレスに希望を残す形にしたのである。今決める必要はないという逃げの一手ではある。しかし、護はこれで得られる時間が二人にとって必要なものだと考えたのだ。
「護さん、ありがとう。」
そう言ってセレスが護を強く抱きしめる。抱きしめる力は護が抜け出せないものだった。そして、
「好きです。…護さんが応えてくれるまで…ずっと言い続けますから…覚悟してくださいね。」
「お手柔らかに頼むよ。」
護はセレスの温もりが気持ち良く感じられる。陥落する日はそう遠くないだろう。
メイアたちが入れるようになるまで、二人はそのままだった。扉が開いた瞬間、セレスが顔を赤くしながらパッと離れてのはご愛敬である。
~食堂~
「二人とも、そんなにくっつかれると食べられないのだが。」
護たちは食堂での宴に参加していた。垂れ幕には「セレスティア救出とマモルの回復、おめでとう!!」となっており、それを最初に見た護とセレスはどこか恥ずかしく、護は目を背けて、セレスは顔が赤く染まってしまった。
料理人が腕をかけて作った料理がバイキング式で並んでおり、教会関係者が料理や飲み物を取ってはそれぞれの同僚や恋人といった人たちと楽しい時間を過ごしている。護たちがその横を通るたびに、声をかけられる。それも護がセレスを助けたことを称賛したり、良く死なずに戻ってきたという声だったため、素直に喜べるものだった。
護がいざ食べようとすると、メイアが右腕を、セレスが左腕を組んでしまい、皿一枚すら持てなくなってしまったのである。流石にこうなると、邪魔に感じてしまう。
「護様、私がお取りします。」
護の機微に気づいたメイアがそう言うと左腕を少しだけ緩め、護の右手に皿を渡す。そして、護が何を、と言うまでもなく料理をいくつか皿に早業で盛り付けてしまった。
それらの料理は護が興味があったものばかりである。どうやらメイアは護がどの皿をどれくらい見ていたのかで、判断したようだ。ちなみに、セレスはそれを見て邪魔になっていることに気づき自分の料理を取りに行ってしまった。
護はメイアの分も自由になった左手で持って席に座る。その隣にメイア、セレスも護を挟む形で座る。
食べようかというタイミングで、給仕をしてくれている修道女から飲み物をもらう。そしてケレスがしたり顔で現れる。どうやらこの時を待っていたらしい。
「さて、お前ら注目!」
その一声で静まり返り、周りの目がケレス、そして立たされた護に集まる。
「さあ、ナイト様、一言。」
ニヤニヤした顔でケレスは護に振る。護は内心、苦笑しながらどう話すか悩む。
「この世界に来てから、一週間と少しが経ちました。まさか、仲間を失うかどうか、死ぬか生きるかの戦いに身をこんなに早く投じることになるなんて思っていませんでした。でも、皆さんとの鍛錬のおかげで生き残ることができたし、守ることができました。戦いに生き残れたことに感謝を、そしてこれからもよろしくお願いします。乾杯!」
『乾杯!!』
グラスがあちらこちらでぶつかり合う音が鳴り響き、護の言葉を聞いていた時の静寂が嘘のように盛り上がる。
緊張から解放された護が腰を下ろす。グラスに注がれたいつぞやのジュースを飲んだ。
「お疲れさまでした。護様、明日からはもっと激しく指導させていただきますね。」
メイアがそう言いながら、護用の皿からスプーンで料理を掬うと護の顔に近づける。
「勘弁してくれ。メイアのは今のでも激しいから。……うん、うまい。」
そう言いつつ、食べていく護。料理の方は苦みを除いたもので構成されており、あっという間に食べ終えてしまう。
メイアは給仕できたことに満足気になりながら、自分の分を食べ始めた。
セレスは、というと、特に変わった様子もなく食事をしている。しかし、時折護たちへ羨望の視線を向けている。
(セレスの視線が痛い。メイアがご機嫌だし、損ねる方が怖いな。)
護は心労が溜まるのを感じながら、メイアからのご奉仕を受けるのであった。
~夜~
いつもなら騎士達で一杯の時間帯の風呂を独り占めした後、護は自室に戻ってきていた。メイアは今部屋にいない。
護は痛みが戻ってきたので机に置いてある鎮痛剤を飲み寝転がる。天井を見ながら、ドルケとの闘いを思いだしていた。
(二倍差ぐらいなら、ボロボロになりながらも勝てると思っていた方が楽だけど…。)
これは勿論切り札込みでの話。また、ドルケのスキルが少なく、油断もあったことが勝利要因としてあったと護は思っていた。
「まだまだだな。」
独り言が部屋の中で小さく響いた。そして、悩んでもしょうがないとばかりに硬貨を『アイテムボックス』からひっぱりだして数え始める。ギルドで依頼を受け、報酬をもらっているとはいえ、ほとんどが消えてしまう。
(うーん、そんなに買ってないはずなんだけどなあ。)
教会の収入は聖騎士たちの魔物討伐及び寄付金等で成り立っており、またその量が尋常でないため宿泊費などは基本無料である。
護が主に使っていたのは、水薬費と食費代、そして装備(衣服も含む)だった。食費はどうしても街の外で食べる必要が出てくるときもあるため出費は避けられない。また、装備は下手をすると命にかかわるため、ためらわずに買う必要がある。
水薬なのだが、ボコボコにされなくなるのが一番早く削減できるだろうと護は思うのだった。
(結構初心者冒険者はかつかつなんだな。)
宿なら宿泊費がかかるし、食費などですぐに底がつきるような報酬だと護は思ってしまう。
実際そうなのだが、救済処置がギルドにはある。雑魚寝、自己責任の下、タダで寝られるスペースがあるし、食費については一食分援助、装備に関しては支給もある。もちろん、新しいのを用意して返す必要はあるが。
護の場合、王のお小遣い、メイア、教会という強力な引きをしたためそんな生活をしていないだけである。ただ、胡坐を組めるような現状でないため、護も必死に足掻いている最中なのは同じなのかもしれない。
珍しくメイアが遅いなと思いながら寝ようとすると、ドアが叩かれる。メイアはドアを叩くことなく入ってくるため違う人物が来たようだ。護は扉を少し開ける。そこにはセレスが立っていた。
「お邪魔しても…いいですか?」
「お、おう。」
セレスは入った途端、光を消す。ドア近くは暗いため二人はお互いが月明かりで照らされるベッドに腰を掛ける。
「どうしたんだ、セレス?こんなに遅い時間に。」
「メイアさんに…許可を貰ってきました。」
「許可?」
護は首をかしげながら、セレスに尋ねる。
目の前の少女は頬を赤らめながら、何の許可なのか告げる。
「その…奥さんになる許可を…」
「はい?…すまないもう一度言ってくれないか。」
セレスはもう一度言う。それを聞いた護は言葉を失ってしまう。
(ちょっと待ってくれ、俺の返事はまだ出していないはず。どうしてこうなっているんだ。)
「護さんの気持ちが…追いついてないのは分かっています。でも…護さんがいいというならメイアさんは私も護さんと…その、夫婦になってもいいそうです。」
そう言って、セレスは護に体を寄せる。頬が真っ赤に染まっているが、意識をしっかり持っていた。そして、困惑する護を見つめて、
「奥さんが二人でも…愛してくださいね。」
そう言うと恥ずかしさの沸点に達したのかセレスは護が何か言う前に部屋を出て行ってしまった。その代わりにメイアが入ってくる。
(嵐のように去っていった…。しょうがないメイアに聞いてみるしかないか。)
「メイア、どういうことなんだ?」
「言葉の通りですが、護様。」
思い切り頭痛がする護。メイアがおそらく遅かったのは、セレスがメイアを説得していたからだろうと思われる。そして、説得されたようだと。
「説得されたようだと思われているようなので、それは勘違いです。護様の取り合いで護様に害があっては本末転倒です。ですので、醜い争いが起こらないようにしました。…本当は、私だけを特別にお思いになってほしいのですが。」
少し間が空いたところは護の耳には届かなかった。
「それに、護様がセレスさんを助けにいった時点でこうなることも存じ上げておりました。セレスさんが食事の時にこちらを見ていたことも分かっております。護様もこうなる可能性を把握なされていたのでは?」
「………」
護としては沈黙を貫くしかない。否定したいところだが、あり得ることとして想像ができなかったわけではないのだ。メイアとの関係がなければ素直に嬉しく思えていたのかもしれないが、今となっては複雑だ。
自身がハーレムルートを選ばされかけていることに戸惑ってしまう。
「少し時間をとってお決めになられてください。セレスさんが私たちの隣に立っても私は良いと思っております。それに、何が起こっても私はずっと隣におりますので。」
メイアは護を抱きしめる。そして、眠りに入ってしまった。
(最後の言葉だけ重さが違った気がする。異様に重かった。)
護も後に続くように寝転がる。答えは出さなければならないが、セレスは待っていてくれている。メイアに刺される心配はおそらくないだろう。(多分。)
(二人に応えられるだろうか…。やらなきゃ刺されるルートが見える…)
ため息を一息つくと、脱力感に任せて寝てしまうのであった。
A:なんちゃってQ&Aを始めるよ
Q:じゃあ、早速。エピローグですよね?
A:エピローグだと思うが、何か変か?
Q:夜で終わるスタイルは崩れないんだなあと。それに、終わりは…。
A:始まりだからこれぐらいでいいのだよ。
Q:本当にですかぁ?(大幅修正がないといいですね)
一章エピローグになります。次回は閑話を載せていこうと思います。




