第15話 運命と⬛︎⬛︎
「とは言ったものの、どこにいるのかなー」
花舞櫻と陽虫朝日は勢いでホテルから出てきたわけだが、どこにいるかなんて見当もつかない。
「うーん、皇女様だったとしても場所までは特定できないからなあ…」
「あやめちゃん、しんじゃってたらどうしよう…」
こういう時は年長者が慰めないといけない。
「大丈夫!強いもん、あやめさん!」
「でも、いっぱい、おっきいおとこのひとがあいてだったとき…こっせつしちゃってた…よ」
「……」
普段一緒にいないからか話が合わない。
櫻はひまに雰囲気すら似てないし、朝日だってあやめに雰囲気すら似てない。普段の主従2人だけの時間とは格段に違った。
(どうしたものか)
* * *
「星華、お前は後々後継ぎになるのだ。勉強の時間を増やしておいたからきちんと勉強しろ」
「はい」
「金色も一層輝いている…神はお前を選んだようだ。朕の見立てはあっていた…!」
誰も思いもしないだろう。
この国の長が悪人なんて。
* * *
「次の餌食は春の神よ…!」
「「はい」」
「春の神を、殺してきなさい。私の夕月様を捕る者は決して許さない…!」
民間人は思うだろう。
こんな悪女が秋を守れるのか、と。
秋は、こんなにも腐った者しかいないのか、と。
悪の形は様々で、姉はその中でも恋によって作られた悪だ。
そんな人間、この世にごまんといるはずなのに、秋の護衛官だけはゆるされない。
それは、時に民が言う理不尽ではないか。
それは果たして、民が言う⬛︎⬛︎なのだろうか。
悪いのは姉だけなのだろうか。
立場で物事が決まるなんておかしい。
普通の人間が不倫したら伴侶や家族にちょっと言われるくらいなのに、政治家が不倫したらニュースになる。
普通の人間が勝手に結婚しても何も言われないのに、アイドルが勝手に結婚すると世間から叩かれる。
それと同じだ。
それは本当に⬛︎⬛︎なのだろうか。
そもそも⬛︎⬛︎、とは何なのだろうか。
産まれた家だけで全てが決まるのはおかしいではないか。
世間はなぜそれを良しとするのだろうか。
世界の中には残酷ばかり味わう人間もいれば快感ばかり味わう人間もいる。比率は人間によって違う。
なぜ、神様は皆を⬛︎⬛︎にしなかったのだろう。
神に祈れるならまだいい。
空に祈れるならまだいい。
でも、祈れない人だっている。
祈らないのではない。祈れない。祈りたくても祈れない。
祈れる日がある人間はまだ幸運だ。
なぜ、人間は皆⬛︎⬛︎ではないのか。
⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎、ってみんな言う。
⬛︎⬛︎なんて存在しないではないか。人々が存在させていない。
嗚呼、地獄の始まりだ。
地獄は皆、⬛︎⬛︎におこった方がいいのに。
神様はそうさせなかった。
⬛︎⬛︎とはなんなのだろうか。
⬛︎⬛︎について口うるさく言う者はどうなのだろうか。⬛︎⬛︎なんてないのに。
世界が太陽に呑まれても訪れない。
⬛︎⬛︎について説明できる者はどれだけいるだろう。
皆、もう少し姉にも⬛︎⬛︎に接して欲しい。
30歳になってないくらいの女の妹は思った。
その時、夜に美しく咲く桜の枝が折れる音がした。




