第14話 春夏共同前線
花舞櫻、陽虫朝日、蛍丘ひまは夏の邸宅から春の国に向かった。
菜草五朝にきけば菜草あやめの行き先もわかるかもしれないと踏んだからだ。
「それで、その菜草五朝って人、どんな人?」
「えっと…やさしくて、せがたかくて…かっこいいひとです」
「へえ。どういう部類の格好いい?」
「えっと…」
「朝日、もうやめなさい。櫻ちゃんがびっくりしてる」
「はぁい」
「櫻ちゃん櫻ちゃん、あたしのこと…友達だと思ってくれる…?」
「はい。もう、ともだちです」
朝日は櫻に抱きついた。
「櫻ちゃんのこと大好き〜」
「あ、ついた。今日はここに泊まるの」
「ホテル…」
「櫻ちゃんきたことある?」
「ここはないです」
「じゃあ、あたしがいっぱい教えちゃうぞ〜」
「おねがいします!」
「あー、可愛い。ヨシヨシ」
泊まることになったホテルは清楚ながらも楽しい雰囲気だった。朝日の纏う雰囲気をそのままホテルに持ってきたみたいだ。
部屋に入り、夜になったら寝た。
後々、後悔することを朝日と櫻はまだ知らない。
翌日、朝。
「なん…で…。な…んで…」
櫻が起きると朝日の声がした。
「ねえ、嘘っていってよ」
ーなに…?
「ねえ、お願い!起きて」
ーどうしたの…?
「なんで嘘ついたの?」
ーあさひ、さん…?
「ひどいよ、ひま。なんで、なんで」
ーえ…
櫻が見たのは白くなった蛍丘ひまの姿だった。
「ねえ、なんでよ…どうしちゃったの、なんでなの、ねえ、ねえ、」
ーひま…さん…
櫻は昔、白くなった人間を見たことがあった。母が死んだ時だ。
「なんで、ひま、嘘つかないでよ、ねえ、ずっとそばにいてよ…」
ーひま…さん…あさ…ひ…さん…
ひまが死んだとわかった時、朝日は気づいた。
櫻も、自分の従者の行方がわからず、怖くて悲しくて仕方ないはずなのに。
ーあたしばっかり、ひまのこと、悲しんでた…。櫻ちゃんは泣くのも堪えてたはずなのに…
どんなに嘆いても時間は戻せない。
今、朝日にできることを考えなければきっと後悔する。
「櫻ちゃん、私たち、2人だけじゃん…。だからさ、2人で春夏共同前線組もう」
「はるなつきょど…?」
「春夏共同前線。春と夏であやめさんを探すの」
「さくら、あさひさんと、はるなつきょうどうぜんせんくみたいです」
「櫻ちゃん…!あたしが、あたしが絶対見つけてあげるからね」
「ちがうの。きょうどう、でしょ?いっしょにみつけるの、あやめちゃん」
ー嗚呼、この神様は優しすぎる。
まるで、世界の優しさの塊のようだった。
ー見えない神様がいたとしても、あたしは櫻ちゃんのことしか信じれない。
櫻には人を引き寄せる魅力があった。
「春夏共同前線、只今より始動、捜索開始っ!」
朝日の掛け声と共に2人は春の優しい外に出た。
* * *
「ふふっ。よくやったわね」
30歳になっていないくらいの女は20歳くらいの女2人にそう言った。
「これからも姉様の言う通りに」
どうやら彼女たちは姉妹であるようだ。
よく似た20歳くらいの女2人は双子なのかもしれない。
「しかし…姉様、あれがバレれば…」
「誰もあの女のことなんか気にしないわ。あの女はわたくしから旦那を奪った悪女よ」
果たして悪は誰なのだろうか。
もしかしたら世界を創り出した神様なのかもしれない。
「あの女は極悪人。わかるかしら?」
「旦那様は最近、春の神と婚約しているとか…」
「なんですって!?ゆるせない…私という婚約者がいるのに…」
30歳になっていないくらいの女は美しい顔に鬼の形相を出した。
「次の餌食は、春の神よ」




