第12話 あやめの正体
「あさひさん、おひさしぶりです」
春の神・花舞櫻は夏の神・陽虫朝日のもとを訪れていた。
「久しぶりー櫻ちゃん」
「櫻様、こちらにおかけください」
「ありがとうございます」
「それで、今日はどーしたの?」
「あやめ様がいないようですが…」
「そうなんです。あやめちゃんが…ゆうかいされちゃったんです…」
「誘拐!?」
「はい」
「あやめさんって恨み買うような子だっけ?」
「違うと思いますね」
「うらみ…じゃないとおもいます。あやめちゃん、じぶんからなんかいってました。あと、じぶんのこと『星華』って…」
「セ…星華っ!?」
朝日が思わず立ち上がる。
従者・蛍丘ひまもびっくりしていた。
「さくら、あまりわかんなくって…それであさひさんとひまさんのとこにきました」
「ひま、」
「うん…」
夏主従は目と目で話し合っていた。
「なにかわかること、ありますか?」
「分かることっていうか…これはただの推測なんだけど…」
「それでもいいのでおしえてください」
「星華さんなんだよね?」
「はい」
「星華さんってさ、この国の皇女なんだよ」
「こうじょ…っ!?」
「そう。皇女。それでね、皇女様には兄がいてそれが皇子様なんだけど…14年前、皇子様と皇女様、2人ともお城からいなくなったらしいの…」
「14ねんまえ…。さくら、あやめちゃんとあったの…3ねんまえ、だけど…13ねんまえだ…」
「ちょうど一致してる…」
「もしかしたら、あやめ様は星華様なのではありませんか?」
「わかんない…けど…けいい、はらわなかったよ…」
「あたしも…」
「私も友達のように接してしまいました…」
少し間が空いてから、朝日が口を開いた。
「というかさ、金髪金眼って皇家だけの特徴だよね。何で気づかなかったんだろ」
「あの性格ですから…なんで染めなかったんでしょうか」
「それはね、神話に書いてあった。神様の呪いみたいになってて、それで染められないんだって」
「のろい…。あやめちゃん、のろい?」
「本当は呪いじゃないけど、神様の呪いって呼ばれてる。それだけ強固なものだから」
「…っ!ごちょうおにいさまもきんいろだ…」
「五朝さんって春の従者よね?」
「うん」
「五朝さんが…あやめさんのお兄さん…?」
「そうなりますよね」
「あー、もう何が何だかわかんなくなってきたー!」
頭を抱えてソファに持たれる朝日。
「あさひさんとひまさんは…あやめちゃんがだれにゆうかいされたとおもいますか?」
「あたしは秋だと思うな」
「天皇様、だと思います」
「えー、だってこの国の頂点だよ!」
「息子と娘がいなくなれば後継はいないじゃないですか」
「た、たしかに…でも、実の父親だよ!?」
「父親だからこそですよ」
「え…あやめちゃん、おとうさんにさらわれちゃった…?」
「かもしれない」
「心配しないでください、櫻様。可能性がある、というだけなので」
「かのうせい、あるんでしょ?しんぱいしちゃうよ」
「……」
「……」
「おとうさんがさらったなんて、やだよ…!あやめちゃんだって、さくらだってみとめたくないよ…」
櫻とあやめ、2人だけで戦っても何も起こらないだろう。しかし、それでも2人は戦うのだ。勝ち目がなくても自由のために。
(櫻ちゃんとあやめさんは戦うんだ…)
朝日とひまは今まで周りに合わせてばかりだった。抜け出そうなんて考えたことはなかった。ずっと耐えてきた。
(もう、いいんだ…我慢しなくても)
櫻とあやめは戦うことを決めたのだ。
(ずっと、自分は不幸だって思ってた。でも、幸せだったんだ…)
櫻とあやめには味方はいない。
朝日とひまにはある程度味方はいる。
「ひま、あたし、櫻ちゃんを手伝う!あたしもあやめさんを探す!どこに行ったのかさえわかんなくてもあたしも手伝いたい」
「お偉方を敵に回したら…」
「ねえ、ひま。あたし、我儘だよね。本当にごめんね。でも、これだけは手伝って欲しい」
「お偉方を敵に回したらあんたが殺されちゃう!!」
「それでもいいのっ!あたし、誰かのたまに生きてみたい」
「朝日…。殺される、可能性が高くなっちゃう…私の気持ちもわかってよ…」
「……」
(そんなの、わかってるよ。わかってるからこそやりたいの。ここだけは絶対に譲れない)
「ひま、ごめん。あたしはそれでも突き進みたい」
「朝日…」
「だから、お願い。あたし、誰かの"特別"になってみたい」
「朝日…あんたはもう、私の"特別"だよ」
「ひま……」
「朝日、いいよ」
「え…?」
「私が、守ってあげるから。お偉方が味方じゃなくても私はいつまでも味方だから」
「ひま…ひまのことも、あたしが守る!だから、お願いします」
「うん、いい、よ」
2人の顔には笑みが浮かんでいた。




