一日目 早帰り
校門を出て少しして、人がいなくなった道。
「今日はどこ行くの?」
と陽香はルンルン気分で歩きながら聞いてきた。そういう俺も早帰りという学生にとって素晴らしい事象に心を踊らせている。
「秘密だ。」
「えー、教えてよ。」
「まぁ、お前が嫌いなものじゃないから安心しとけ。」
「それならいいけど…、そういえば、同じクラスでよかったね!」
「話変わったな。まぁ、でもよかったな。」
「やっぱり。秀が寂しそうにしてたから先生が一緒にしてくれてたんだろーね。」
「それはお前だろ。というか、あのクラスお前の友達ばっかだろ。なんかやったとしか思えないレベルだわ。」
「そんなことしてませーん。ただの運でーす。」
陽香の友達、なんかちょっと睨んでくるから怖いんだよなあ。
「まぁ、そんなことはともかく。秀も仲良くしてね。」
そんなことを話していると、十字路が見えてくる。
「じゃ、自転車であそこ集合な。その後、勉強教えるから覚悟しとけよ。」
陽香は見るからに嫌な顔をする。
そして、「またね。」と言ってトボトボと歩いていく。 そういう俺もどうせすぐ会うのに「またな。」と言ってしまった。
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黒っぽい適当な長袖の服に着替えて、自転車に乗る。
もう12:00にはなってしまったが、店はここから15分くらいで着くのでちょうどいいぐらいだ。
自転車の走らせていると、すぐに十字路に着いてしまった。だが、まだ陽香は着いていない。
少し待っていると陽香が来るのが見えた。自転車に乗りにくそうな長めのスカートを着ている。おそらくそれで遅くなったのだろうと思っていると、「待った?」と言ってくる。
今は12:10、
「いや、それよりここから15分くらいかかるが大丈夫か?早く食べたいならファミレスとかでいいぞ。」
「ううん、大丈夫、行こ。」
そういえば陽香と自転車に乗るのもずいぶん久しぶりだ。冬は寒すぎて自転車に陽香が乗れず、家で遊んだり、勉強を教えたりしていた。
「陽香ー」
「なーにー」
自転車に乗っているので少し距離が空き、少し大きな声で話す。
「そんなにオシャレしても、寄り道しないからなー」
ギクッとそんな音がしたような気がした。
「べ、別にしないですー、オシャレなんてしてませーん。」
「私服のお前見たのホント久しぶりだからなー、最近ずっとパジャマか制服だったぞー」
「気分転換でーーす。」
そんな感じに言い争いをしていると目的の店へと着いた。
カフェ「rester」、そこが目的地だった。
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店に入り、テーブル席へと案内され、座ると陽香は目をキラキラさせ、まるで……いや普通にアホ面で店内を見回していた。正直、シンプルすぎて例えられないが、例えるとしたら田舎の子供が都会に来た時だろう。
店内を一周見回した陽香がこっちを見て言う。
「こんな店あったんだね!」
「できたのは冬の初めだぞ。お前が外に出なくなるぐらいの時だ。」
「言ってくれれば行ったのに。」
「冬は外出ないから諦めてたんだよ。」
陽香は分が悪くなるのを悟ったのか。メニューを取り出し、「何がおいしい?」と聞いてきた。
「まだ2回ぐらいしか来てないからあんま分かってないが、カレーが美味しかったぞ。正直、専門店でもやっていけると思うぐらいだ。言うてカフェだからな。デザート系も美味しかった。」
陽香はうーんと頭を悩ませている。
「何が食べたいんだ?」
「全部おいしそうだけど、カレーとエビドリアどっちかかなー。」
「ちょうどいいな。俺もエビドリア食べたかったんだ。半分しよう。」
「いいの!」
ということで名前がよくわからないチリーンってするやつを押して店員さんを呼ぶ。
「カレー1つとエビドリア1つお…」
「あとミルクアイスとチーズケーキを」
「!!お願いします。」
「そんなお腹減ったのか?」
「うん。おいしそうだったし。」
アイスとチーズケーキ食べなければエビドリアとカレーどっちも食べられそうだが、言わないでおく。
平日の昼すぎということでお客さんもあまりおらず、結構すぐにカレーとエビドリアが来た。デザートは食べた後となっている。
料理が来ると、陽香はまた目をキラキラさせ、口がパッカーンと開いたアホ面を晒している。
だが、それを指摘したら口を聞いてくれなくなりそうなのでツッコまず冷静に
「すみません、小皿ありますが?」と店員さんに聞く。すると、「はい。少々お待ちください」と言った後すぐに3つの小皿が用意された。
そして、小皿にエビドリアを移していく。
この幸せそうな顔を続けさせてあげたいのでエビを多めに盛り付ける。陽香もカレーを移し終わったっぽい。
盛り付けが終わり、いよいよ食べる時となった。
「じゃ、食べるか。いただきます。」
「いただきます。」
まずエビドリアを食べる。美味い。カレーもパンもレベルが高かった店だ。当然美味しい。エビの香りも埋もれることなくちゃんと感じる、というかエビすぎる。目の前では陽香がカレーを食べているが、顔から分かる。美味しいのだろう。喋る暇なく、食べ進めている。
ドリアを食べ終わり、次はカレーだ。やはり、美味い。俺は甘党だが、この少し辛い感じがクセになる。水も飲まず、一気に食べてしまった。陽香の方を見ると、陽香はもう食べ終わり、こっちを見ていた。
「なんだよ。」
「いや、なんでもなーい。」
陽香はそっぽを向くと、チリーンと鳴らす。
すると、店員さんがアイスとチーズケーキを持ってきた。
またキラキラと目を輝かせている。
陽香はこっちを見て「食べる?」と聞くが、俺はそんな無粋なことはしない。
「満腹だから大丈夫だ。」
すると、陽香はアイスを食べ始める。
「ん~~おいしい!秀食べてみな!」スプーンを差し出された。こういう時は遠慮なくいただいておく。
「美味っ。」
ミルクアイスだ。ホントにミルクアイスなんだ。ミルクアイスのイデアと言っても過言じゃないくらいミルクアイスだ。そんなことを思っていると、陽香はアイスを食べ終わり、チーズケーキに手をつけ始める。
「…!…!…!」
顔がゆがんでいる。
「どうした?」
すると、陽香はチーズケーキをすくい取り、こっちに差し出してくる。食べてみろということだろう。
ちょっと怖いが食べてみる。
「………!…!…!」
美味い。………いや美味い。ホントに美味い。マジで美味い。美味すぎる。次に来たときのデザートはこれで決まりだな。
もちろん陽香はもう食べ終わっている。
少し休んで会計に行こうとすると陽香がグーの手を出してくる。
「大丈夫だ。」
その手の中はお金だろう。奢ってと言うが、いざとなったら怖くなる。それが陽香クオリティなのだ。
「じゃ、カレーは奢るから、デザート分だけでいい。」首を振っている。なんか奢られるのが怖いというのは共感できる。だが、これに関わるとめんどくさいので、無視して会計に向かう。
会計後、そこにはお金を握らせようとする陽香かいた。断固として断ったが。
満腹感のせいか、家に帰るまで「美味しかったねー「そうだねー」ぐらいの適当な会話をして帰っていると、十字路に着いた。
「またねー」
「いやいや、勉強、するんだろ。」
そう言って、陽香の家までやって来た。
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家の外に出る。外は少し暗くなっていた。
「またね。」
「またな。」
陽香は家の中に入っていき、俺は家に向かう。
「やっちまったなー」
迂闊だった。途中疲れたなんていい始めたからちょっとゲームに付き合ってやったら思ったより熱くなってしまった。
「まぁ、いいか。」
楽しかったし。
そう現実逃避をして、明日は何を話そうか考えた。
次回、テスト返しの日には
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