5.(補足話)魔物の背後で蠢く者
補足なので短めです。
3人の視点でストーリーを補足します。
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Side ディック
ある日の朝(魔物の襲撃を受ける以前)
朝早くに起きて、森に入る準備をする。
それは修行中の俺に課せられた仕事の1つだ。
毎日の日課で、おかげで親父たちより早くに起きなきゃだけどもう慣れた。
森に入る許可をお親父から貰って早3年。
自分ではもう一人前だと思うんだけど、親父には後2年は一人で森に入るなと言われてる。
今日もいつも通り、誰よりも早くに起きた。
空は明るくなってきてるが、辺りはまだまだ暗い。
この早朝の空気が清々しくて俺は好きだ。
いつも通りに、先ずは外に出て、胸いっぱいに息を吸ってゆっくりと吐き出す。
これが最高に清々しく、気持ちいいのだ。
「そこのアナタ」
その時、俺は背後から誰かに話しかけられた。
誰もいないと思ったんだけど。
でも、こんな朝早くに外の者が来るなんて。
冒険者かな?
この村に冒険者が来る事は珍しくない。
ただ、こんな早朝にはさすがにこない。
依頼を受けて、大森林でしか取れない素材を取りに来る冒険者達は、この村で俺らが仕掛けた罠や大体の採取ポイントや、注意事項を聞きにくる。
なんでも冒険者ギルドの方でそうアドバイスしてるって親父から聞いた。
呼ばれたので振り返ると、18メタ(180cm)はあるんじゃないかという高身長の女性が居た。
ブロンドの髪、紫の瞳を持つ大変美しい女の人だった。
ただし、その表情は友好的じゃなかった
それどころか、なんというか見下されているってよりも、もっと下に見られている感じがした。
まるで俺を虫けらでも見ているかの様に見ていた。
服装もこの辺りでは見ないコートを着て、その他の服装も体型も判らない。
何者だ?、冒険者には見えない。
判るのは、見た瞬間から得体の知れない恐怖に支配されているって事だ。
話せば殺される気がして声が出なかった。
「あら、困ったわねぇ。驚かせ過ぎたかしらん」
その声に驚いた。
顔を見る限りどう見ても女なのに、声は間違いなく男だ。
「あ、あの 冒険者さんですか?」
かろうじて出た言葉が震えているのが自分でも分かった。
冒険者なら、決まったセリフを言うだけだ。
「怖がらなくても食べはしないわん。残念だけどアナタ私の好みじゃないから。クヒヒヒ」
笑う女?男?が怖かった。
愛想笑いを浮かべようにも引き攣って上手く表情をつくってくれない。
足も震えてる。
「冗談も通じないなんてホント嫌ねぇ。要件だけ伝えるから皆に伝えなさい。私はギルドから依頼を受けた冒険者よん。この辺り魔物が出たらしくて調査にきたのよ。精々襲われない様に気を付けなさい。じゃ忠告はしたからねん」
そう言うと"黒い女?"は俺から背を向けて歩き出した。
俺は女が視界から消えるまで、その姿から目を離せなかった。
やっと視界から消えた時、俺は地面にへたりこんでしまった。
正直、<助かった>と思った。
機嫌を損ねたら最後間違いなく殺されていたに違いない。
そう確信できる狂気だったし、恐怖だった。
死神だと言れても納得できる。
はぁーと息を吐くと、ようやく周囲の音が聞こえだした。
冒険者と名乗った黒い女の話を村長のウェルノさんに話した。
大人たちの話し合い末、森に入る際に最新の注意を払うようにして様子を見ることになった。
あれから何日か経ったけど、魔物の気配は無かった。
あのやたら怖かった冒険者の言葉も忘れ掛けた頃、異変があった。
その日親父と鹿を取るために仕掛けた罠を見て回っていた。
それまでずっと空振りで、ここが最後の罠ポイントだ。
「なんだこれ」
思わず声を上げてしまった。
こんな事は初めてだった。
鹿は掛かっていたのだと思う。
だけど鹿は無残な事になっている。
何かに食われて、その残骸が散らかっていたのだ。
「親父……これって魔物が」
「慌てるな。前にもこんな事があった」
親父は、ごく稀に本来森の奥にいるマッドベアが餌を求めて森の外れにやって来ることがあると言った。
「マッドベアを放置するのもマズイんじゃ。急ぎ戻ろうよ」
「ああ、だが慎重にだ。近くにいるかもしれん。マッドベアは狡猾だからな」
それから2人で村とは違う方向でマッドベアの痕跡がない方に向かって注意深く進んでから、尾行られていないと確認してから村に戻った。
その日の夜に大人たちで話し合いして、翌朝より村総出でマッドベア討伐を行うことになった。
冒険者に依頼しては、と意見を言ってみたけど皆に反対された。
報酬を用意出来なないし、マッドベアなら自分達で狩れるとイルギスさんが言った事からだった。
だけど、1週間捜索してもマッドベアは見つからなかったので本来の縄張りに戻っていったのだろう、との結論になった。
そんな事があった翌月、いつもの宴会が行われた。
俺はなんとなくそんな気になれなくて、早めに寝た。
それが良かったのか、悪かったのか判らない。
でも、少なくともそのおかげで俺は死なずに済んだ。
それは突然だった。
突然感じた恐怖。
家にいて安全なのに、あの時のあの黒い女から感じた恐怖、あれよりももっと、もっと禍々しい恐怖を感じた。
同時に悲鳴が聞こえた。
魔物だと思った。
あの黒コートの女の忠告が現実になってしまったのだ。
そして悲鳴を聞いた瞬間、俺は逃げていた。
窓から飛び出し、何も考えず只々走った。
何処をどう逃げたのか分からない。
何度も転び、その度に追いつかれたんじゃないかと恐怖し、振り返りもしないで再び走り出した。
振り返るのは怖かった。
周囲が明るくなった頃、気がつけば、俺は村からかなり離れた草原の道を歩いていた。
◆◆◆◆◆
Side カーライル
コバ村の前にて(メアルと魔物討伐の約束して)
<居るな、村の中央か>
俺は、村を襲った魔物を討つ為に村までやって来ていた。
魔物の行方を知る手がかりを探す為だったが、その手間が省けたようだ。
しかし、となればまだ村人を食っているのだろう。
考え様によっては、死をもって魔物をここに釘付けにしてくれているとも考えられる。
せめてもの弔いに、さっさと片付けさせて貰うか。
我ながら奇特な事をしているな、と思う。
出会って間もない少女に肩入れし、隠れ家を教えたばかりか、色々教えて魔道具もくれちまった。
今また、彼女の為に魔物を討とうとしている。
メアルか、【初めの聖女】のエインヘイヤルと同じ【白銀のルアメトゥーナ】を顕現できる少女。
それは、彼女が初めの聖女であった事を示している。
何故だろう、メアルに……あの髪と瞳に惹かれる。
俺は決して幼女趣味ではないが、彼女の事が気にって、助けたくなる。
初めて会った時、転生者であることは直ぐに分かった。
彼女の内部からから感じる力は7才の女の子のものではなかったからだ。
尤も彼女の場合は、厄介なものまでセットになっていたが。
俺も彼女も転生を繰り返している。
俺と同じなら、容姿はいつも変わらないだろう。
しかし、彼女と会った記憶はない。
会ったことは無い筈の彼女の表情に懐かしさを感じた。
だからか、メアルにあの指輪を渡してしまった。
そして、あの指輪にあの空間に入る鍵の役割を与えたのは、あの空間を作った前世での事だったが、なぜそんな事をしたのかその時は自分でもわからなかった。
気まぐれだったのだが、今にして思えばメアルに渡す為だったのかも知れない。
最初の人生で何故か持ってた、あの古ぼけた指輪。
俺は謎の空間に物を収納のする力を持っていて、その中に仕舞ったものは次の人生に引き継ぐ事が出来る。
最初の人生でその力に目覚めた時、最初から持っていた物の中にあの指輪と、メアルに渡した魔道具があった。
指輪はサイズ的に女性用だったし、あの魔道具も俺の物では無い気がしていた。
もし、あれらの物が本当はメアルの物だったなら。
繰り返す転生の前、最古の記憶の以前にメアルに会っていたのなら。
この出会いで彼女に魔道具を渡したことで、変わらない転生に変化を起こせるかもしれない。
それにしても、メアルのエインヘイヤル。
美しい女性騎士だった。
白銀の騎士鎧に装甲付のスカート。
顔出しのヘルムに付けられた額飾りの両側は翼の飾りが付いていた。
そしてヘルムから覗かした顔は女性の顔の仮面を付けている。
その仮面はヘルムの額飾りの影になって鼻筋と口しか判らないが美しい女性だった。
また、ヘルムの後頭部からメアルと同じ水色がかった銀髪が出ていた。
髪は編んでいて腰まで長い。
両の手にそれぞれ、剣が握られていた。
体全体に白銀の光を纏い、それは神々しくも美しい姿だった。
エインヘリアル(大騎士)は過去の英雄の姿をそのまま巨大化したものでは無く、黒い影が鎧を着込んだ感じのものだ。
髪やヒゲを生やした大騎士もいるが、基本のベース体は影だ。
そしてフルフェイスのヘルムのスリットや面あてから目の光りだけが漏れる。
恐らく鎧は生前の英雄霊達が愛用したものだろうか。
とにかく、大騎士が顕現した姿は、ダンジョンの中を徘徊しているという、ダンジョンモンスター【リビングアーマー】が巨大化したイメージだ。
それに比べて、ルアメトゥーナに亡者のような印象は沸かない。仮面をとれば、女性の顔が出て来るのではと思ってしまう。
神々しい白銀のオーラを纏う姿に、戦乙女とはこの様な者なのだろうと素直に思ってしまった程だ。
白銀のルアメトゥーナの別名が"白銀の戦乙女"というのも頷けた。
さて今は、魔物に集中しよう。
しかしだ、この村には神の加護があった筈だが、何故魔物が入り込んでいる?
と思ったが、今この村から何の加護も感じない。
誰かが、加護を打ち消したか、加護が失われた、そんなところか。
なんにせよ、惨劇は起こってしまった。
村の中に入っていくと、標的が居た。
マッドベア型の魔物としては最大級に大きくなっている。
気配を探る限りでは、生きているのは魔物一匹だけ。
魔物は食事中だった。
あらかた食べ終わっているようだ、周囲は血で黒くなった地面と。食べかすが散らかっている。
酷い匂いだった。
もう暫くすれば、スタの警護隊が来るだろう。
それまでに終わらせ、浄化するか
「さて、俺は狩る者で、お前は狩られる側だ。弁えろよ」
俺は愛刀を出現させる。
同時に、魔物がこちらを向いた。
今頃俺に気付くとは。
鈍感に過ぎるな。
ふむ、目が潰されているか。
メアルの魔法か?
魔物は匂いで判るのか、一直線に俺に向かてくる。
威圧感は大したものだが、だがそれだけだ。
実際に魔物の動きは遅い。
魔熊は間合いに入ると、右前足を横薙に振るってきた。
だから躱して右肩からその前足を切断してやった。
「グオオオオオーン」
そうか、斬られて嬉しいか。
それは良かった。
もう一方も切り落として欲しいのか、今度は左前足で薙払おうとしてきたので即座に切り落とす。
躱すのも面倒だ。
両の前足を失っても、噛み付いてくるだろう事は最初からわかっていた。
だから、左前足を斬り飛ばした直後の返す刀で左後ろ足も斬り飛ばした。
バランスを崩して倒れるかと思った熊公は片足でバランスを保っていた。
そのまま倒れ込んで俺に食い掛かるつもりか。
大した食への執念だ。
俺は熊公の右に抜けると、右足も切り捨てた。
四肢を失い今度こそ地に這う熊公。
のたうち回わられると血があらこちらに飛び散って浄化が面倒なので、倒れた瞬間に首も跳ねた。
これで、死なないのだから大した生命力だ。
だが、こうなればもう襲うことも出来ないし、放っておけばやがて勝手に死ぬ。
魔物から少し離れて、状況を確認する。
魔物は首だけになっても必死に俺に噛み付こうとしている。
哀れな光景だ。
血は付いていないが、敢えて空を斬りってから刀を仕舞った。
この行為は俺の癖だが、万が一の保険でもあった。
次に俺は魔を浄化する為、松明と浄化の札を収納空間より取り出した。
その瞬間、そのタイミングを狙ったかの様に前方から拍手が聞こえてきた。
何者かがいる。
残念ながら全く気付かなかった。
背中に冷や汗が流れた。
油断していたようだ。
突如、高い黒いコートで身を包む背の高い美女が姿を表した。
「アナタ、強いわねん。それにその不思議な力も便利だわぁ」
うえ、声は野太い、ゴリゴリのおっさん声だ。
「突然姿を現したあんたの方が不思議だが?」
「じゃ、不思議はお互い様ってことでどうかしらん」
「で、何か用か?」
「クヒッ、ノリが悪いわねぇ。魔物を退治してくれたお礼を言いてくてー。だって魔物でしょお。私、もうそれはそれは怖かったのよー。抱きついていいかしらん」
「丁重にお断りする。礼はいいから帰ってくれ」
何者は判らないが、ヤバい奴には違いない。
とりあえず、松明と札を収納空間にしまう。
「いいえぇ、どうしてもお礼に素敵なプレゼントをあげたいのよん」
ギイーーン
「死神の鎌か?刺激の強いプレゼントだが、要らん」
何時の間にか、黒い男女の右手は長柄の鎌を持っていて、俺の首を背後から斬り落とそうとしてきていた。
俺は左手で刀を取り出し、首をガードした。
鎌の刃と刀の刃がぶつかり、硬質な金属音を鳴らす。
次の瞬間、男女の手から死神の鎌は消えて、男は両手を上げた。
「あら失敗ねん。アナタとっても素敵ねぇ。気に言ったわん。だから楽しみは取っておくことにしたわぁ。お名前聞いていいかしらん」
「デートの申し込みの為ならお断りだ、名前は勝手に呼べ」
「連れないわねえ。まあいいわぁ。アナタとは運命感じちゃうからどうせ会うことになるわん。じゃ、ね。」
そう言うと、男女は現れた時と同じく忽然と姿を消した。
転移なのか姿を消したのかは判らなかった。
暫く油断無く気配を探っていたが、気配は感じられない。
完全に去ったようだ。
ふう、ため息を着くと右腕から血が流れて来た。
あの男女め、俺と同じ収納の力を持っているのか、鎌を隠していただけなのかは判らないが、右手の鎌で首を落としそうとしながら、左手で魔法を放って来るとは。
<風属性魔法《風の刃》か>
触れた瞬間に接触抵抗し、皮一枚の最小限のダメージに抑えるのが精一杯だった。
ま、いいさ。
今頃は、俺の土産を喜んでくれている頃だ。
癖でかけていた保険が役立った。
この保険で何度か救われている。
ま、向こうも皮一枚といったところか。
只、美しい顔に傷をつけてしまう結果になったのは心苦しいがね。
さて、警護隊の斥候が来る頃だな。
さっさと浄化してしまうか。
◆◆◆◆◆
Side 謎の女?
大森林にて(ディックと話した数時間後)
いやねえ。
師の命令とは言え、なんでこんな秘境にむっさい男達と来なければならないのかしらん。
しかもこれから暫く一緒に暮らすだなんて屈辱だわん。
師の直属だから殺すと後で師が煩いし、あー憂鬱。
こんな事なら殺してもいい部下も連れてるんだったわねぇ。
ため息をついても仕方がないわん。
師の命令は絶対。
でもねぇ、はぁ憂鬱。
コバ村だっけ?
あの村は滅ぼしちゃうけど、逆にそれだけしか楽しみの無い鬱な任務だわん。
基地についたら活きのいい部下を送って貰おうかしらねえ。
餌に良し、暇つぶしに殺すに良し。
名目は、土木作業員不足とかで。
「で、アナタ達。こんな大森林の中にまで連れ回して嘘だったら分かってるわよねえ」
「は、先に発見した上で、ご足労頂いております」
「なら、いいけどね」
怖がっちゃってまあ。
師の管轄下のあんたらを殺しもしないし、手も出さないっちゅーの。
「ところでウェクアズ様、あの村には何か御用があったのでしょうか?」
「あなたーあー、えーと、名前なんだっけ?」
「は、副官を任じられましたオドリックです」
「めんどーだからオドで」
「はは」
「オド、アナタ馬鹿ねぇ。師の計画覚えてないのねん」
「申し訳ありません。滅ぼす予定という以外は」
「ちゃんと分かってるんじゃん。では魔物が湧きやすいこの大森林であの村が襲われてこなかったのは何故かしらん?」
「何らかの加護があるからでしょうか?」
「そう、ギークの加護だったわん」
「なる程、加護を知っておけば実験の際、加護を破るのも簡単ですね」
「あらー、もう細工済よん。わたしー面倒なことは先にやっておくタイプなのよん」
「もうそこまで、流石ウェクアズ様でございます」
「褒めても何もでないわぁ。ここは大森林。魔物の1匹や10匹湧いても不思議じゃないわねぇ」
流石に師の直轄だわん。
おべっか慣れしてるわ。
あー、お礼にグシャグシャの肉塊にしてあげたいわー。
出来ないけど。
◇◇◇◇◇
よくまあ、こんな所を発見したものだわねぇ。
呆れる以外の感情が沸かないわん。
「我が師ながら、よくこんな所の文献探し出したわねぇ」
「は、全くもって同感です」
何この巨大洞窟。
神話の時代の巨人族を閉じ込めた牢屋なんじゃないのコレ?
まさか大森林の中にこんな物が在るなんてねえ。
まぁいいわん。
これからここで、愛しのわが子ちゃん達を造ればいいのねえ。
「オド、ここはもういいわん。とりあえず結界張らないと何もできないしぃ」
「は、今日中には作業が完了します。それではウェクアズ様の宿舎にご案内します」
ま、こんな大森林の中に宿舎建てるなんて、何人死んだか知らないけど師も無茶させるわねん。
下っ端が何人死のうがどうでもいいけどー。
でもそのおかげで、ベッドで寝れるのだから、下っ端の命に感謝よん。
「あ、そうだ。マッドベアを数匹捕獲しておいてねん」
◇◇◇◇◇
「ウェクアズ様!」
んん?オドが青ざめて慌てているわぁ。
折角新しい玩具を見つけて上機嫌なのにねぇ。
どうしたのかしらん。
「その、お怪我大丈夫でしょうか」
ん?けがぁ?わたしがぁ?
仕方がないので渡された手鏡を覗き込む。
「ぎゃ!」
手鏡に写ったアタシの美しい顔に傷が!
額がパックリ裂けてるー!
あ! 血が垂れてきた。
「ウェクアズ様、直ぐ治療師をお呼びします」
何をしたのかわからないけど、あの小僧の仕業ねぇ。
この美しいアタシの顔に傷をつけた事、たっぷりとじっくりと後悔させてあげるわん。
ふう、良かったわん。
流石の私も回復魔法は使えないものねぇ。
もし、傷跡が少しでも残ったら、ここに居るヤツ全員皆殺しにする所だったわぁ。
良かったわねぇ、アタシが寛大でぇ。
跡が全く残って無いから、勘弁してあげるわぁ。
でも、私の傷を見た オドと治療師は別だけどねぇ。
どう殺したら楽しいかしらん。
師への言い訳も考えないとー。
ま、じっくり考えましょ、今すぐ殺るのは不便だしぃ。
「あ、そうそう。オド。師に今回は失敗と報告しておいてちょーだいねん」
「はは、しかし、失敗だった様にはみえませんでしたが」
この男、おべっかはまぁまぁだけど、少しオツムが残念ねぇ。
「知能は確かに少し上がったわん。だけどそのせいで痛みを感じる様にもなってしまったのよん。デメリットの解消は半端なのにメリットは完全に消してしまったわぁ」
「た、確かに」
知能だけを引き上げる方法を考えないと、師の欲する無敵の軍隊なんて夢のまた夢よねぇ。
「失敗作もいいところ。始末はやってもらったからいいけどぉ。報告書と一緒に魔道士の増援も頼んでねん。じゃ暫くはここ宜しくねえ」
「はは。で、どちらに」
「野暮な事聞くのねぇ。ひと仕事終わったんだから休暇よ。きゅ・う・か。」
あのお邪魔虫ボーヤとはどうせまた会う気がするからいいとして、とりあえず温泉よん。
あ、そーいえば、結構前に作った狼の魔物はどうなったのかしらん。
被害の話も聞かないし。
まさか、あのお邪魔虫ボーヤの仕業じゃないわよねぇ。
続く




