5.激突テリアvsクドナル
★★★★★
side:テリア王国将軍イエット
戦場の地にて
開戦の日が来た。
巨兵の起動は既に済み、騎士達の同化を開始している。
それも直に終わるだろう。
天幕の外から聞こえる喧騒を聞きながら、この度の戦いに思いを馳せる。
今回はかなり分の悪い戦いになる。
バークイの野郎の馬鹿息子が馬鹿な事を糞親父に報告したせいで、こちらの巨兵の強みである重装甲を軽装甲に替えさせられてしまったのだ。
その為の準備や装甲の換装に時間が取られ、調整も最低限しか出来ず、充分とは言えない。
整備の指揮を執る整備兵長のドワーフには随分と食ってかかられた。
正直、ドワーフの言い分に全くもって賛成だが、軍上層部からの命令である以上従うほか無かった。
軍上層部には、まともな判断が出来る者が一人も居なかったらしい。
ギルバート閣下ならばどうしただろうか?
何度も自問し、答えの出ない問を今もまた繰り返した。
「将軍、そろそろ」
机上の地図を睨んでいた所をパートナーのヒルデに促された。
「ああ、わかった。ターオーブ殿、あとは頼みます」
「は。ご武運を」
同じく机上の地図を睨んでいるターオーブに本陣の護りを任せ、席を立つ。
さて、いよいよだ。
事前の作戦会議で考えられる事態への対応を含め、入念に打ち合わせを行った。
こちらの戦力は巨兵10機と神の勇士兵2騎。
それに対しクドナル軍の戦力は、巨兵13機。
聖騎士の人数は正確には不明だが、あちらの将も聖騎士だろう。
もし複数の聖騎士がいた場合、こちらの勝機は無いに等しいが、こちらで得ている情報では聖騎士は敵将のみ。
敵将の名はワイト・ビネガー。
知っている限りでは両手持ち大戦斧を振るう神の勇士兵を駆る。
残念ながら武器だけでは契約した英霊の名は判らない。
大戦斧を使う過去の英雄はそれなりに数が多い。
特にドワーフの戦士はたいてい大戦斧だ。
将であるワイト・ビネガーはセオリー通りの用兵を好む知将と聞いている。
本当にあちらの神の勇士兵が1騎のみならば、セオリー通り本陣の護りに巨兵を最低3機残すはずだ。
それに対し、こちらは巨兵1機とターオーブの神の勇士兵を残し、巨兵9機を出す。
それでもテリア9+1 対 クドナル10+1 と数の上では不利のままだ。
敵は数の有利を活かそうとするだろう。
数の不利は少数程差が大きい。
10対11では実は大きな戦力差にならない。
だから2手に分けてこちらの戦力を2分させようとするはずだ。
クドナル側のこちらの戦力を当然分析しているだろう。
であれば、巨兵6機と、神の勇士兵+巨兵4機で軍を分けるだろう。
向こうはこちらに神の勇士兵2騎いることは恐らく知っているだろうからだ。
神の勇士兵は戦力計算上は巨兵3機に相当すると考えられている。
だからこちらが本当に戦力的に不利かと云えばそうではない。
巨兵1機を残し、ターオーブにを出撃させるだけでいい。
しかし、今回ターオーブを護りに置いくことにした。
バークイの馬鹿息子の監視も兼ねているからだ。
あのバークイの事だ。どさくさに紛れて奪還しようと企んでいるかも知れない。
もし馬鹿息子を奪われれば、戦の後が大変になる。
きっちりと王都に連行し、正規の軍法会議にかけなければならない。
本当にどこまでも足をひっぱってくれる親子の顔が思い浮かび、あまりの忌々しさに思わず顔をしかめた。
あの糞共がいなければ、今回の戦はもっと楽だった。
いや、そもそも戦にならなかったに違いない。
兎も角、内部にも敵がいる今回の戦では殲滅よりも膠着に持ち込み、引き分けに持ち込むのが目的だ。
今回こちらは防衛戦なのだ。
だから追い払えればそれでいい。
騎士達の巨兵のへの同化が終わり、巨兵【タイタンⅡ】がズラリと整列してる。
俺はヒルデと共に巨兵達の前に立つ。
「ヒルデ始めてくれ」
「はい、将軍」
俺の指示を受け、ヒルデが胸前で両手を組み祈り始めた。
ヒルデの体が光り、徐々にその光は強くなっていく。
そしてそれは俺を飲み込み光の柱となった。
☆☆☆☆☆
『敵は将軍の読み通り、2手に分かれていますね』
『ああ』
お互い目視可能な位置で陣を敷いている。
だから互いにある程度敵の動きは見えている。
特に巨兵のような巨大な兵器の動きを見逃すのは逆に難しい。
クドナル軍は本陣の護りに巨兵3機を残し、敵将ビネガーの率いる巨兵4機と巨兵6機の2軍に分けたようだ。
ここまでは予想通り。
こちらも敵に呼応し2軍に分かれる。
ターオーブはの部下が率いる巨兵6機と俺が率いる巨兵3機。
敵の巨兵6機にこちらの巨兵6機を当てる。
こちらは防戦に専念する様に指示してある。
敵の狙いが戦力を少数化させて戦力差を顕著にすることにあるならば、あちらも巨兵6機は主攻ではないだろう。
本命は敵将自ら率いる軍だ。
しかし、今回俺の率いる巨兵を操る騎士達は、我軍の誇る精鋭騎士。
ギルバート閣下が鍛えに鍛えた猛者達である。
軽装の巨兵4機など問題にならない。
『敵右軍、左軍共に動き出しました』
『では、こちらも開始しようか』
本陣に向けて、ハンドサインを出すと、本陣から信号弾が発射された。
ビーーーと音を鳴らしながら赤い発光体が飛んで行く。
戦闘開始の合図である。
信号弾の発射に合わせ、こちらも一斉に動き出す。
以降は本陣はターオーブに、左軍については左軍の指揮官に任じたターオーブの部下の判断に任せるしか無い。
接触は互いの陣より此方の陣側になるだろう。
こればかりは巨兵の足の速度に違いが在るから仕方がない。
こちらから仕掛けたとしても結果はさして変わらない筈だ。
お互いがもう少しで接触するという所で足を止め睨み合った。
こちら右軍と敵左軍どちらも将の神の勇士兵が率いる主攻同士だ。
『随分と慎重だな。ヒルデ、あいつに見覚えが無いか【シスレオカ】に聞いてくれ』
『はい、将軍』
俺はヒルデが契約する神の英霊【シスレオカ】に敵の神の勇士兵の名前を知らないかヒルデに尋ねさせた。
神の勇士兵の名前がわかれば、得意と弱点が判る場合がある。
特に【シスレオカ】は古代の英雄で古参の神の勇士兵と言われている。
その分、多くの神の勇士兵を知っている。
『残念ながら知らないそうです。将軍』
『そうか残念だな』
目の前の素性不明な神の勇士兵は、風の神に属する英霊には違いないだろう。
だが、どう見ても重戦士で身軽そうには見えない。
身長からすればドワーフの英霊ではないだろうが、かなりガッチリとした体型に重装甲の深緑の金属鎧を纏い、ヘルムに2本の角を生やしている。
ガッチリした体型にも関わらず、太い腕が目立つ。
異常に太い腕だ。
両手持ちの大戦斧を軽々と振り回すだろう。
素性は解らなかったが、パワータイプなのは間違いないだろう。
さて睨みあっていても埒が明かない。
こちらから仕掛けるべきか。
『味方左軍、敵右軍と戦闘を開始しました』
ヒルデから報告が入る。
神の勇士兵の依代となったヒルデは体の自由が効かない代わりに意識を多方向に向けることが出来る。
こうして聖騎士は目の前の敵に専念しつつも周囲の状況を把握することが可能となるのだ。
ちらりと意識を左軍に向ければ、ヒルデが左軍の状況を映像で視界の片隅に写してくれた。
そちらは現在お互いにサブウェポンを投げ合い牽制しあっている様だ。
武器を構えなす。
【シスレオカ】の武器は両手持ちの両手剣。
しかし、愛用武器に反して【シスレオカ】は護りに特化した神の勇士兵だ。
この一見パワータイプに見えるのに騙されると、痛い目に合うのだ。
こちらも動こうとした瞬間、ヒルデが悲鳴を上げるように叫んだ。
『将軍!!敵本陣の巨兵3機 味方左軍に向けて動き出しました』
『何だと!!』
やられた。
こちらが囮で向こうが主攻だったのだ。
3機が敵右軍に加われば6対9。
まさか本陣の護りを捨てるとは。
戦力差が勝敗を分けるの大きな要因なのは、巨兵だろうが生身だろうが対して変わらない。
不確定要素の多い神の勇士兵を排除し、巨兵同士の戦いで戦力差を生み出すのが敵将の作戦だったのだ。
★★★★★
side:クドナル王国将軍ワイト・ビネガー
戦場の地にて
『勝ったな』
敵がこちらの動きに呼応して軍を2手に分けて動き出した。
それを見て思わず呟いてしまった。
『まだ始まったばかり。ワイト、気を抜いては駄目ですわ』
『ああ、そうだな』
パートナーであり妻の聖女ジェシアが窘めてきた。
ジェシアは軍内では俺を名字呼びだ。
軍内で名前呼びするのは男女の関係を見せる事に繋がる。
それをジェシアは嫌った。
例え実務室内で2人きりであってもだ。
だから我々を夫婦だと知らない者は多い。
しかし、神の勇士兵を顕現させている時、我々の会話を聞ける者は我々以外は契約した英霊しかいない。
だから、ここではジェシアは私を名前で呼ぶ。
その方がシンクロ率が高くなるという理由もある。
味方左軍(テリア側で言う敵右軍)が戦闘を開始するまではジェシアの言う通り気を抜けない。
突如本陣付近まで引き返されされては堪らないのだ。
テリアには聖騎士がもう一人いると情報を得ているからだ。
その場合こちらの右軍は一気に一掃されてしまう。
だから本陣の守り3機が参入することを気取られる訳にはいかなかった。
私が率いる右軍は敵将を引き付けるための囮だ。
対峙さえしてしまえば封じ込めるは容易い。
☆☆☆☆☆
目の前に敵将が駆る神の勇士兵がいる。
両手持ちの大剣を構えている。
体格も良いが引き締まった感じの体型でジェシアの【ダンダルフ】ほど筋肉膨れしていない。
武器からするとパワータイプだろうが、【ダンダルフ】なら力負けは無いだろう。
【ダンダルフ】と匹敵するパワーを持つのは【破砕のデリカット】の神の勇士兵だけだろう。
こちらから仕掛ける気は無かったが、案の定向こうも同様らしく対峙状態となった。
いきなり仕掛けてこないだろう事は予想できた。
優秀なのだろうが、今回はその優秀さが仇となる。
【破砕のデリカット】の様に何も考えずに全軍一丸となって突撃してくる方が今回は厄介なのだ。
突撃の勢いを止めるのは難しい。
重装巨兵なら尚更だ。
本陣にあの御方達がいる。
本陣を突かれるような事態は許されない。
そうなった場合、止める自信はあるが、こちらの被害も無視できない。
この後アマリア軍への対応をしなければならない事を考えても消耗戦は避けたいところ。
今回この作戦を選択したの我軍にとっては敵将の判断は僥倖だった。
なにせ戦闘開始直前にアマリア軍の南下を知ったのだ。
こちら戦に時間を取られる訳にはいかない。
テリアの本陣を早期に蹂躙し、この戦を終わらせなければならない。
『ジェシア、あの神の勇士兵を【ダンダルフ】は知らないか?』
『ええ、聞いてみたけど分かりませんでしたわ』
『そうか、見た目では【ダンダルフ】と同じパワー型に見えるな』
『ワイト、見た目で判断するのは』
『ああ判っている』
しかし戦績に対し、この神の勇士兵の情報はあまりに少ない。
イエットの上司だった【不死身のギルバート】の神の勇士兵については回復能力を持つという判りやすい能力で目立っていた。
一見判りにくい能力を有しているのなら慎重に進める必要がある。
あくまでこちらは囮だ。
敵将イエットにはここで釘付けになって貰わねばならない。
あちらが警戒して様子見でいてくれるのはこちらとしても有り難い。
『左軍、敵右軍と戦闘を開始したわ』
さて作戦通り動いてくれればそろそろか。
どうやら、敵はこちらの作戦に通りに、騙されてくれたようだ。
敵の神の勇士兵が武器を構え直した。痺れを切らして仕掛けて来るようだ。
こちらも大戦斧を持つ手に力を込める。
これからが本番だ。
本気で潰しはしないが逃しもしない。
『ワイト、本陣部隊が作戦を開始。敵将の驚く顔が見れないのが残念ね』
『全くだ。しかしこれで向こうは死物狂いになる。抑えるぞ、ヒルデ』
『判ったわ、ワイト』
そう言った直後、敵将が動いた。
敵神の勇士兵が大剣で斬りかかって来るのを大戦斧で受ける。
そしてそのまま力比べに移行する。
本気で押し返す必要はない。
あくまで引き付け続けるだけだ。
イエットの率いてきた巨兵も動き出す。
それに対しこちらの巨兵も動き出す。
敵の巨兵は重装巨兵だが、倒す必要はないのだ。
こちらは軽装の強みを活かし動きで翻弄し続けるだけでいい。
☆☆☆☆☆
『ワイト』
『どうした?』
戸惑いがある口調で俺を呼ぶジェシア。
何か起こったか?
『どうにもテリアの巨兵が弱いですわ』
『弱い?』
『ええ、もうじき敵右軍を殲滅できそうよ』
『はぁ? 早すぎるだろ』
『ええ、装甲がいつもより薄いみたいね』
テリアは何を考えているのだろうか?
重装巨兵の装甲を薄くした所で、我軍の軽装巨兵の様に身軽に動ける訳がない。
ジェシアが左軍の戦いぶりを視界の片隅に映してくれた。
後で戦闘に参加した3機が遊軍として敵巨兵を括弧撃破していく様子が映った。
何とか固まって防御体勢にするのを許さず殲滅していく。
装甲を軽くしたところで重装巨兵が素早く動ける訳がない。
機動力を生かした我軍の巨兵達に集結を阻止されている。
テリアが何を考えて軽装の装甲をつけたのかは知らないが全て裏目に出ている。
『意味が判らんが、こちらの予定より早く片付くならいいさ』
『そうですわね』
こちら側は予定通り膠着している。
どちらも数を減らしていないが、この戦の勝敗は見えた。
せめて将の首だけでもなどと考えられては堪らないので一旦引き、体勢を整え直した。
そして牽制しながら動きを封じる。
機動力の勝る我が軍の方が、そういう駆け引きでは圧倒的に有利だ。
『敵右軍の魔力反応全て消失、制圧完了です。このまま敵本陣に向かいます』
『勝ったな』
今度こそ勝利を確信した。
★★★★★
Side:ターオーブの部下ジョイ・タソウク
戦場の地にて
変な軽装甲のせいで動きに違和感がある。
それは絶対皆同じく感じている筈だ。
この装甲は元々この国で作っていた巨兵の装甲でかなりの骨董品だった。
それを無理やり【タイタンⅡ】に取り付けしたのだ。
昔の巨兵2機分の装甲で【タイタンⅡ】1機分だ。
鱗衣装甲だから出来た荒業だろう。
よく残っていたなという呆れと。
なんて指示をだしやがるという怒りが混ぜこぜになっている。
将軍からの指示は防戦に徹する事だった。
だから最初は散開し、徐々に密集防御陣形に移行する予定でいた。
最初から密集していてはこちらの作戦を見抜かれ、抜かれてしまう可能性があった。
最初はサブウェポンの投げ合いで始まった。
盾だけは重装の時の物を持った。
盾に関しては上層部の指示が無かったから将軍のせめてもの苦肉の策だった。
その盾のお陰で敵の投槍を躱す事は出来ずとも被害を受けることは無かった。
しかし盾は使い物にならなくなった。
直ぐに劣勢になった。
作戦で防御に徹しているのではなく、劣勢故の防戦だった。
敵は果敢にもこちらの1機につき1機張り付き集団戦を阻止してきたのだ。
敵の軽装巨兵は無理をせず確実にこちらの装甲を削っていく。
こちらは攻撃は躱され全く当たらない。
装甲を生かした戦いが出来ないのが痛い。
集団戦に移行できず、苦戦している時だった。
視界に新たに巨兵3機が向かって来るのが見えた。
☆☆☆☆☆
「くそ!」
また1機喰われた。
新たにやってきた敵巨兵3機は遊軍としてこちらを各個撃破している。
ここが俺の終着点らしい。
騎士である以上戦場で死ぬのは本望だ。
俺は騎士爵を持つ下っ端だが一応貴族で妻も息子もいる。
だが息子も成人した。
息子は騎士にはならず平民として生きるらしい。
孫どころか結婚相手すらまだ見つけられない息子だ。
それらを見れないのが未練といえば未練か。
いつの間にか俺1機となっていた。
敵の槍が左脇腹に刺さった。
刺さった槍を持ち振り回そうとした時、今度は左膝に槍が刺さり動きが止められた。
正面の巨兵が槍を構えている。
狙いは魔導球か。
右肩に衝撃が走る。
視界の端に槍で貫かれいるのが見えた。
とうとう武器を振るう事も出来なくなってしまった。
1機も道連れに出来ないのは不甲斐ない限りだ。
「閣下申し訳ありません。自分は此処までです」
自然と出た言葉はイエット将軍にではなく、ギルバート閣下への謝罪だった。
閣下はなんとしてでも生きろとよく言っていた。
それが出来そうもない事への謝罪だった。
敵巨兵が槍を突き出して来た。
スローモーションで槍の穂先が迫って来る。
全身に衝撃が走り、映像が途切れた。
そして意識を手放した。
★★★★★
side:テリア王国将軍イエット
戦場の地にて
『将軍、味方左軍の魔力反応消失。全滅です!!』
『くそ!!』
全てが裏目に出た。
装甲の事も軍を2つに分けたことも。
敵将がこちらの動きを封じつつ距離を取った理由も判る。
こちらが被害無視で敵将だけを狙うのを警戒しているのだ。
こうなったら本陣に急ぎ戻らなければならないが、まさか敵将を目の前にして背を向ける訳にはいかない。
機動力もあちらが上なのだ。
敵右軍の巨兵9機はそのまま健在、本陣に向かわずにこちらを包囲する手段も取れる。
しかしそれをせず本陣を襲うのは、最後に我々を殲滅するつもりだからだろう。
先に我々を殲滅させる動きを見せればターオーブは残る巨兵を捨ててでも撤退する。
今も既に撤退準備が行われているだろう。
逃げる生身の兵を巨兵で攻撃するのは騎士として恥ずべき行為だ。
戦を司る女神【ラーファル】の嫌う行為でもある。
しかし、将が健在の今は撤退することが出来ない。
ターオーブに指揮権が無いからだ。
そういった理由でまず本陣を落とすのだろう。
しかしこちらには打つ手が無い。
『ヒルデ、済まない事になった。せめて敵本陣に一撃加えるぞ!』
『将軍まさか……はい!最後の意地をみせてやりましょう!』
『敵が本陣を落とすならこちらも落とす。もし生きて帰れても責任は取らなければならないが』
この場で顕現を解き、召喚馬で敵陣に接近。
その間にヒルデには祈りを捧げてもらい再顕現にて敵陣を急襲する。
成功する確率は低い。
先ずはこの場を抜けなければならないのだ。
追撃もあるだろうし、敵本陣からの攻撃もあるだろう。
そもそも騎士に在るまじき戦いだが、どうせ俺に未来はない。
ヒルデを巻き込むのは心が痛む。
だがヒルデも覚悟は出来ているだろう。
閣下の軍を守りきれなかった事だけが無念だが、勝敗は兵家の常だ。
俺が覚悟を決め仕掛けようとした正にその時、ヒルデが叫んだ
『将軍!左軍側に強大な魔力を感知!!』
ヒルデの叫びに思わず視線を左軍側に向けた。
そこには、敵右軍の側面の森より立った光の柱があった。
続く




