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女装パブ『マドモアゼル』を裏口から入店すると、店長のアキナさんがメイクをしているところだった。
「シュウちゃん。今日は早いのね」
「はい。今日買ったばかりの服を着てみたくて」
「しかも、彼女と同伴だなんて。隅に置けないわね」
もろもろの事情から、桃子さんと僕がつきあっているのは知れている。今さら隠したって損しかない。
「試着室貸してもらえますか?」
「いいけど、どうしたの?」
ほんのわずかながらでもカーテンで仕切った試着室がある。
「山川さんにも着替えてもらおうと思って」
僕が言ったらあらまぁと、目を丸くした。
「それを早く言いなさいな。いよいよ男装するの? あなたスタイルいいから似合いそうだわ」
なぜか桃子さんの男装にノリノリなアキナさんは、すねげをワックスでべりっと剥がした。
「じゃあ、お借りします」
桃子さんは恥ずかしそうに紙袋を抱えて試着室に入った。
「どう? 今日は彼女と一緒に店に出てみない? 男装女子にシュウちゃんを取られたとわかれば、お客さんも納得するでしょうよ」
「それもそうですね。どうします? 山川さん」
「え? なに? わたしも店に出るの? この姿で?」
桃子さんがカーテンを開くと。とても美しい細身の殿方に扮した彼女が恥ずかしそうにたたずんでいた。
「あら? 想像以上じゃない」
アキナさんは電子タバコをくわえて桃子さんに歩み寄った。
桃子さんの衣服の細かなところまで直したところで、いいわ、と乙女のポーズをした。
「キレイ。なによりキレイ。シュウちゃんがカワイイ系だから、すごくいい。この店、今日からコスプレパブにしようかしら?」
それもありなんじゃないかと思った。
僕も、今日買ったばかりの服に身を包んではにかむ。我ながら似合う、というよりも、桃子さんのチョイスが完璧すぎた。
「こんな美男美女カップル、滅多にお目にかかれないわっ」
アキナさんは感無量とばかりに打ち震えた。
どうやら今日もお店は大盛況になりそうな予感がする。
臨時収入が入ったら、またデートできるし、服も買えるし、本当桃子さんの恋人になれてよかった。
つづく




