第4話 冷徹な王子と小さな交渉人
侍女に舐められ笑われるマリアンヌ
その空気をぶち壊して現れたのは、王子「ライオネル」
彼の登場にその場の全員が怯える中、どうなってしまうのか
「この惨状はなんだと言っている」
ライオネルは冷たい表情を一切崩さず、もう一度言葉を放った。
その場にいる全員が固まっていて、誰も口を開くことができない。
ライオネルは横に置いてある、姫の食事とは思えないパンとスープに視線を落とす。
そして無言でパンを持ち上げ、マリアンヌを見据えた。
「どういう教育をすれば、侍女がこんなゴミくずを運んでくるんだ?」
「申し訳ございません」
マリアンヌはすぐに膝をつき、頭を下げる。
「私は謝罪が聞きたいのではない。理由を聞いている」
ライオネルは淡々と続ける。
「私が至らぬばかりで、ご迷惑をおかけしています」
マリアンヌは頭を下げたまま答える。
ライオネルはふーーっとため息をついた。
「ここにいる侍女たちは解雇だな」
その言葉を聞いて、おびえた表情で固まっていた侍女たちが慌てふためく。
「殿下ッ!お待ちください困りますッ」
ライオネルの近くにいた侍女の一人が、泣きながら彼の足を必死に掴んだ。
「邪魔だ、触るな」
ライオネルは侍女の手を足で雑に振りほどいた。
彼に泣きついていた侍女は、なす術もなくそのまま床に後ろから転ぶ。
「仮にも一国の姫の住まいだ。こんなことが許されると思っているのか」
ライオネルは少しだけ怒りの混じった声色で言うと、連れてきた数名の兵士に、食事を持ってきた侍女たちを城の外へ引きずり出すよう命じた。
「お許しくださいッ」
兵士に腕を掴まれ、泣き叫びながら連れていかれる侍女たち。
レティシアは一連の流れを、瞬きを忘れて見ていることしかできなかった。
侍女たちを退場させた後、ライオネルはマリアンヌに視線を戻した。
「何をしている、お前も解雇だ」
マリアンヌは驚いた表情で顔を上げる。
「待って!
レティシアは思わず叫ぶ。ライオネルの冷たい視線が即座にレティシアに刺さる。
ください…」
レティシアは彼の鋭い眼光に怯み、思わず一歩後ろに退いた。
―だめ、、、ここで交渉から引いたら、マリアンヌを失うわ
―交渉するときは堂々と、兄さんの教えを忘れたの私!
「マリアンヌがいなくなったら、このお城のお金が大変なことになると思うんです…」
レティシアは小さな体で、精一杯の声を出して堂々とした態度をとり、ライオネルをまっすぐ見据えながら言った。
―マリアンヌの帳簿を盗み見たけど、商人でも唸るくらい完ぺきだった
―私でもあそこまでできるか分からないくらい、兄さんならできそうだけど
「それはどういう意味だ?」
ライオネルは依然として淡々と続ける。
マリアンヌはどうしたらいいか分からず、レティシアとライオネルを不安そうに見ている。
「このお城のお金は、マリアンヌが守ってくれてるんだよね!」
レティシアは必死に訴えかけるような目でマリアンヌを見つめた。
「そうなのか、答えろ」
ライオネルはマリアンヌに視線を移す。
膝をついていたマリアンヌは立ち上がり、どこかの引き出しから冊子をいくつか持ってきてライオネルに渡した。
「姫様の住むこの離宮、アルキオネ宮の主計は、すべて私がつけています」
ライオネルは無言で渡された冊子にパラパラと目を通す。
―この王子様って年いくつだろ、マリアンヌのすごさが伝わるかな、、、
レティシアは心の中で不安を感じながらも、信じて見守ることしかできない。
冊子を全て見終わったライオネルは、ふーーっとため息をついた。
「お前は確かに優秀かもしれないが、お前ひとりで全ての管理は不可能だな」
彼の冷淡な言葉を聞いて、レティシアは青ざめてしまう。
―どうしよう、次なんて言えば、、
「宮をまとめる人物は新しく必要だろう。お前は人を見る目が無いし配置が最悪だ。料理長も必要だな。それから荒れた庭を管理するやつも、
お前がいくら優秀でも、人間一人でできることは限られている。
マリアンヌ・エインワーズ、お前はアルキオネ宮の主計に専念するべきだ。姫の身の回りの侍女も増やせ」
ライオネルから放たれた思いもよらない言葉に、マリアンヌとレティシアは驚いて顔を見合わせた。
「お前以外の侍女は解雇だぞ、何をしているさっさと動け」
マリアンヌの解雇を防いでほっとしたのもつかの間、
レティシアはハッとしたようにライオネルを見た。
「待ってください!」
「なんだ、まだ何かあるのか」




