↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
移動商人の私が、嫌われ者のお姫様に転生してしまった件  作者: なずな
レグラント王国:市井編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/61

第29話 危険な道のり

王都を出て漁場へ向かうメンバーの中に、エマにもついてきて欲しいと頼んだレティシア。

エマの心の壁を壊すことはできるのか…

「王子は雑すぎるんですよ!服がかわいそうです!」


「じゃあクリスタの袖はどうなんだよ!焦げててかわいそうだろ!」


「あたしのは…わざとじゃないからしょうがないですよね?!」


「じゃあオレもわざとじゃない~♪」


天井もない質素な木製の荷馬車の上で、テオドールとクリスタが激しく言い争いをしている。

テオドールの着ている服は襟元が10センチ程ビリビリに破けており、一方クリスタは片手の袖が焦げていて真っ黒になっている。

レティシアは言い争う二人を注意する気力もなく、ぐったりともたれかかって座っていた。


「姫様、明日の昼には到着しますよ~」


隣に座っているエマが、レティシアの頭を優しくなでる。


レティシアはエマの片腕に無言で抱きついた。


荷馬車の馬に乗って手綱を握っているのは、お忍びスタイルのクロードだ。

後ろの愉快な痴話喧嘩など、まるで聞こえないかのようにずっと前を向いている。


―出発前からこれだもん、さすがにうるさくて疲れた…


荷馬車には野営するための道具と、数日間の食料や料理道具も載っていた。

王都から漁場までは、丸二日と少しかかる。

一日目の途中までは見晴らしの良い草原地帯だが、その後は海まで鬱蒼と生い茂る森の中の小道を進んでいく。

現在は絶賛森の中であり、魔物との遭遇率が上がる地帯だ。


―人数多い旅ってのも考え物だな~


レティシアはミーナの時の兄と二人の楽しい旅を思い出しながら遠い眼をした。




昨日の朝。

王都の市井を通り抜けた草原地帯の片隅に、屋根のない荷馬車とローブを着たレティシア達がいた。


傍らには平民の服装のギルバートと、ローブのフードを深く被り、顔が半分以上隠れたライオネルもいた。


ギルバートがエマに近づいて何かを渡す。

その手に握られていたものは、見習い騎士が身に着けている実剣だった。


エマは差し出されたそれをまじまじと見つめた。


「必要になったら使ってください。こんなものしか準備できませんでしたが」


ギルバートは優しく笑った。


エマは数秒無表情で剣を見つめると、両手で受け取り微笑みながらギルバートを見た。


「使うことがなければ嬉しいですね~」


レティシアはその様子を遠くからそっと見ていた。

近くで喧嘩しながら追いかけっこをしているクリスタとテオドールは何も見ていないようだったが。


レティシアにライオネルが静かに近づいてきた。


「絶対に一人にはなるな。己の弱さを自覚しろ」


いつも通りの冷徹な瞳でそう言うと、走り回っているテオドールの方へ歩いて行った。


―やっぱり優しい人なのかな


レティシアは片手を握りしめて顎に当てながら考え込む。


走り回っていたテオドールはライオネルに話しかけられてすぐに大人しくなった。

クリスタも久しぶりに面と向かって話すことができて嬉しそうだ。


ライオネルは最後にクロードに話しかけると、ギルバートの隣に戻った。


こうして一行は、二人に見守られながら出発した。




そして現在、一日目の野営を挟んで二日目の移動日となったわけだが、クリスタの焦げた袖は野営の際に鍋の火で焦がしたもので、テオドールの破れた服は今朝着替えるときに力任せに着た結果である。


出発前から騒がしく喧嘩していた二人が、一日目の移動中に大人しくしているわけもなく、レティシア達はうるさい様子を永遠と見せられている。


こんなに騒ぎながらの移動であれば、かえって魔物も近づかないかもしれない。


「ねえエマ、レティちょっと眠ろうかな」


レティシアは隣に座っているエマの膝の上に横になった。


「安心して眠ってくださいね~」


エマはレティシアの頭を優しくなでる。


レティシアが耳をふさいで眠りに付こうとしたその時、馬が甲高く鳴いて荷馬車が急停止した。


驚いたクリスタとテオドールが体制を崩して倒れ込む。


レティシアが顔を上げると、クロードが馬から降りて剣を抜いていた。


クロードの視線の先には2メートルを超す巨漢の熊が両手を広げて立っていた。

目が血走っており、鼻息が非常に荒い。


テオドールが剣をもって荷馬車から跳躍し、クロードの隣に軽く着地した。


クリスタも近くで迎撃態勢に入っている。


クロードが無言で熊に向かって走り出し、重たい一撃を振るう。


熊は片手で受け止めると大声でクロードを威嚇した。


そしてもう片方の手を勢いよくクロードめがけて振りかぶる。


刹那、熊の振りかぶった腕が宙を舞った。


腕の消えた部分は綺麗な氷で覆われている。


熊の斜め下には、剣をもって鋭い視線を向けるテオドールがいた。


熊は雄たけびを上げながら一歩後ろへ後ずさる。


一瞬で高く飛び上がったテオドールが熊の首めがけて剣を一線に振るった。


熊は声を上げることなく全身が氷で覆われ、一瞬にして砕け散り塵となった。


数秒の出来事に、レティシアは瞬きもできず魅入っていた。


テオドールは振り返ると八重歯を見せてにかっと笑う。


「やっぱ魔物だったな!」


クロードは隣で静かに剣を納めた。


クリスタは緊張を解いて、息を吐きながら座る。


「この道、あんな大物が出るようなとこでしたっけ?アリスの父ちゃんも心配になりますね」


クリスタは困った顔をしながら言った。


「こっちの方にも討伐に来た方がいいよな~、なあクロード…」


テオドールが荷馬車の方へ歩きながらクロードへ話しかけようとした時、突然二人の横から黒い何かが横切った。


レティシアが数秒後目にしたのは、木に叩きつけられて気を失うテオドールとクロード。

そして、血走った目でよだれを垂らした屈強な男だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。