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第六話:ディメンション・ハック・本尊のレンダリング

 ――ズ、ズズズン……ッ!!!


 奥から三番目の個室のドアをブチ破り、俺たちがログイン(突入)したその異次元のセクターは、最悪にバグり散らかした歪んだレイ空間だった。

 一歩踏み出した瞬間、重力のベクトルが真横に書き換わり、距離のログが無限に引き伸ばされるような感覚が網膜のOSを狂わせる。真っ直ぐ進もうとしても、空間のテクスチャがエラーを起こして元の座標へ強制ループ(引き戻し)させられちまうんだ。


「――っ、なんやこれ! 上下左右のプロトコルが完全にバグっとるやんか!」


 道満が戦闘用コートの袖を振り回しながら、足元の見えない虚無の床に足を取られる。博雅も黄金の氣を滾らせるが、空間そのものが歪んでいては、自慢のフィジカル(氣の矢)も正確にスキャン(狙撃)できねえ。


「晴明先輩、空間の歪み(パケットノイズ)が激しすぎて、私のタブレットによる解析が追いつきません!」


 背後で有世がデバイスを叩きながら叫ぶ。

 タイムラインのゲージ(新入生の命)は秒単位で削られてるんだ。こんなハナコさんのローカルルール(バグ)にいちいち付き合って、処理落ち(足止め)させられてる暇なんか一ビットもねえんだわ。


「……やりたかないねー、ホンマによー。他人の作ったクソみたいな初期設定フィールドで踊らされるの、一番嫌いやねん」


 俺は一歩前に踏み出すと、ポケットからジッポを抜き出す暇もなく、右手の指先だけで一瞬にして複雑な印を連続コンパイル(結印)した。


「――繋がれ、【天空テンクウ座標反転ディメンション・ハック】!!」


 俺の「無色の氣」が空間の四方へと走り、ハナコさんのバグ領域を丸ごと覆い尽くした。次の瞬間、空間の重力も距離のログもすべてが強制リセット(上書き)され、俺たちの足元は、俺のシステムが100%制御する『完全な正常値マイ・フィールド』へと書き換えられた。


「……ふぅ。これで真っ直ぐ歩けるやろ」


 空間が安定した瞬間、有世のタブレットが正面の座標に一つの消えかけている『魂のログ』をスキャン(検知)した。


「――晴明先輩、正面ですっ!」


 そこには、真新しい制服を血のような漆黒のノイズで汚され、意識を完全にシャットダウンされてぐったりと倒れている、新一年生の女の子の姿があった。


「よし、サルベージ(救出)するぞッ!」


 博雅がその女の子を抱きかかえようと全速力で駆け寄った、まさにその瞬間だった。

 女の子の背後の闇が、ドロドロとした最悪のエラーコードとなって一気に膨れ上がり、そこから『本物の姿(特級エラー)』を現したハナコさんがレンダリング(顕現)されやがったんだ。


 ――アアア、アガガガガガガガッッッ!!!!


 耳を劈くバグ音(絶叫)と共に姿を現したのは、ベタな赤スカートの怪談なんかじゃねえ。顔のテクスチャが完全に崩壊し、おびただしい数の血塗られた触手を全身から引き裂くように伸ばした、異形の大規模システムエラーだった。

 ハナコさんの本尊が、新入生のログごと俺たち全員を一括消去デリートしようと、その凶悪な爪を振り下ろしてきやがった。

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