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第五話:コア・ブレイカー・異次元へのログイン

 ――キィィィィィィンッ!!!


 俺と道満の指先が漆黒のノイズに触れた瞬間、女子トイレの狭い空間を、脳みそを直接金属のヘラで削り取られるような最悪のエラーノイズ(精神攻撃)が走り抜けやがった。


「――がっ、あ……ッ!?」

「う、うちの、脳内の演算回路メモリに直接パケットを流し込んできよる……っ!」


 ハナコさんの本体による、内側からの狂暴な逆ハッキング。網膜の視界がバグったテクスチャのように激しくブレて、意識が強制シャットダウン(気絶)しかける。

 だが、その最悪のノイズを正面から受け止めたのは、背後に控えていた有世の迅速な防衛パッチだった。


「――させません! 【土御門流:ファイアウォール(遮断結界)】!!」


 有世がタブレットの画面を高速でスライドさせると、俺たちの脳内プロトコルに強固なセーフティ・バッファがオーバーレイ(上書き)され、精神侵食のノイズがミリ秒単位で完全に遮断された。


「晴明先輩、道満先輩、今のうちにデコードを! 私のデバイスの防壁、あと数秒しかリソースが持ちません!」


「サンキュー有世、上出来やん! 道満、一気にクロックアップ(最大出力)でいくぞッ!」

「おう、合わせるで晴明……! ――ハック(解凍)完了やァッ!!」


 俺の無色の氣と道満の呪術コードが完全に重なり、爆音と共に、奥から三番目の個室を包んでいた漆黒のノイズ(結界)に決定的な「亀裂バグ」がピキピキと走り抜けた。


「――今だ、博雅ァッ!! その隙間コアをブチ抜きやがれッ!!」


 俺のクエリ(叫び)に、すべてを理解して後ろに控えていた博雅が、一ビットの遅れもなく完璧に同期リブートした。

 その両手に、凄まじい高密度で凝縮された『氣の弓』がレンダリングされ、弦が限界まで引き絞られる。番えられたのは、眩い光を放つ純度100%の『黄金の矢』だ。


「――叔父さんの時だけじゃない、俺の矢は……! 目の前のバグ(怪異)も、一パケット残さず撃ち落とすッ!!」


 ――ヒュ、ドガァァァァァァンッ!!!!


 放たれた黄金の矢は、空間のノイズごと個室の木製のドアを文字通り分子レベルで粉砕し、結界の奥深くに隠蔽されていたハナコさんのシステムコアを正面からブチ抜いた。

 バグが弾け飛び、個室の奥のテクスチャがガラスのように激しく割れて反転していく。


「行くぞ!!」


 ドアのあった場所に口を開けたのは、ただのトイレの個室なんかじゃねえ。ハナコさんが強制展開した、冷たい奈落の闇が広がる『異次元のセクター(バグ空間)』だった。

 俺たちは粉砕されたノイズの残響を浴びながら、行方不明の新一年生をサルベージ(救出)するため、その悍ましい闇の奥底へと一斉にログイン(突入)を開始した。

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