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第四話:ハッキング・ハナコ・隔離レイヤーの攻防

 新学期のピンク色のノイズを引き裂きながら、俺たちは旧校舎の一階女子トイレセクターへとログイン(突入)した。普段なら男子禁制のその空間も、今はそんな表社会のプロトコル(倫理)を気にしてる場合じゃねえ。


「――っ、誰か、助けて……っ! 暗くて、何も見えへん……っ!!」


 その瞬間、奥から三番目の個室のドアの隙間から、スピーカーが音割れしたような新一年生の悲鳴のログ(パケット)が漏れ聞こえてきやがった。


「――させるかァッ!!」


 その悲鳴を耳にした博雅が、全身から激しい黄金の氣を爆発させ、勢いそのままに個室のドアへ先陣を切って突撃しようとした、まさにその時だ。


「待てって、博雅!」「アホか、止まりぃな!」


 俺と道満が左右から滑り込み、博雅の戦闘用コートの袖を力ずくで引っ掴んで、その無鉄砲なアクセスを強制停止ホールドした。


「放せ、晴明! 中の女の子のログが完全に消去デリートされかけてるんだぞッ!」


「だから落ち着けって言ってんだわ! アホか? 氣だけでどないか出来る状況ちゃうやろ!」


 俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと軽い金属音を響かせてタバコに火を付けながら、博雅を睨みつけて鋭いクエリ(一喝)を飛ばした。深く紫煙を吸い込み、ふぅ、と吐き出す数秒のタイムラグ。それ自体が、俺の脳内CPUの熱を無理やり冷ますためのデバッグ・プロセスだった。


 道満もピンクのペンを構えながら、目の前の最悪なバグデータを博雅の網膜へ同期スキャンさせた。


「博雅、よう見ぃ! あの個室、空間そのものが歪んだ漆黒のノイズ(結界)で満たされとるんや! 今のあんたが無理やりログインしたところで、ハナコさんのシステムエラーに巻き込まれて、あんたの魂のリソースまで一緒に別次元のアーカイブへ強制転送されるのがオチやで!」


「……っ、クソッ!」


 博雅が悔しそうに歯噛みし、黄金の氣を抑える。

 有世が背後でタブレットを高速で叩き、隔離結界の暗号コードを俺たちに同期(共有)してきた。


「晴明先輩、道満先輩! 結界のファイアウォール、かなり強固です! 通常のデバッグ術式じゃ弾かれます!」


「やりたかないねー、ホンマによー……。道満、合わせるぞ。一パケットのズレもなく、その不気味な漆黒のノイズ、裏から直接ハッキング(解凍)したるわ」


「おう、うちの呪術コードとあんたの無色の氣、完全同期シンクロや!」


 俺と道満は三番目の個室の前に両手を突き立て、脳内の演算回路を限界までクロックアップさせた。

 女の子の悲鳴の音声パケットが秒単位で擦り切れていく極限のタイムラインの中で、俺たちの手による、隔離レイヤーへの強引な術式ハックが静かに開始された。

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