第三話:エラー・パケットとりお先生の警告
――ガガガ、ガガガガッ!!!
生徒会室のスピーカーが悲鳴のようなノイズを撒き散らし、部屋のトラフィックが完全に凍りつく。俺がコーラのストローを咥えたまま眉をひそめたその瞬間、ノイズの壁を力ずくでぶち破るように、聞き馴染みのある、だけどいつになく緊迫した女性の音声ログがスピーカーをジャック(上書き)した。
『――晴明君! 博雅君! 生徒会室の回線、繋がってる!?』
「……りお先生? スピーカーのプロトコルを直電してくるなんて、一体何事やねん」
俺が椅子の背もたれからゆっくりと体を起こすと、りお先生の焦りを含んだ声が、決定的な最悪のバグデータを一気にコンパイル(送信)してきました。
『旧校舎の一階の女子トイレのセクターで、さっき風紀委員の見回りパケット(緊急連絡)が上がったのよ! 新一年生の女の子が一人、奥から三番目の個室に入ったきり、完全に行方不明になってる! 風紀委員がドアを蹴り破って中をスキャン(確認)したらしいんだけど……誰もいないの。それどころか、個室の空間自体の座標が、内側から完全に消失しかけてるわ……ッ!!』
「――ッ!?」
りお先生のその具体的な被害状況が空間にレンダリングされた瞬間、博雅が「本当に……ハナコさんのバグが動き出したんか!」と世界史の教科書を叩きつけて立ち上がった。道満もノートを握りしめたまま顔を青くし、副会長の有世が即座にタブレットを叩いて現場の地脈データ(スキャン結果)を同期し始める。
「晴明先輩、一階の女子トイレの該当座標、霊的エネルギーのトラフィックが異常値まで跳ね上がっています! 完全に空間隔離エラーが走ってます!」
有世の冷徹なプロット分析を聞きながら、俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと冷たい金属音を響かせた。
おいおい、マジかよ。さっき「俺たちに意味あるか?」ってスルー・プロトコルを起動したばっかりだぞ。システム(世界)の嫌がらせにしては、ちょっとパッチの適用速度が速すぎやしねえか。
「……はぁ、マジかよ!」
俺は心底気怠そうに頭をガシガシと掻きながら、深く、深い溜息を吐き出した。
「やりたかないねー、ホンマによー……! 最高管理者(生徒会長)になった途端に、これかよ。……行くぞ博雅、道満、有世! 新入生のログが完全にデリートされる前に、その『三番目のハナコさん』のシステムエラー、俺たちの手で直接タスクキル(強制終了)しに行くぞッ!!」
俺たちは生徒会室のドアを蹴破るようにして滑り出ると、新学期のピンク色のノイズが渦巻く廊下を、最悪の隔離バグが発生している一階の女子トイレセクターへと向けて、全速力でスプリントを開始した。




