第五十八話:コレクターの終焉と暴かれた裏コード
純銀の滅殺の力を乗せた銀の神々の直撃を受け、路地裏のコンクリートに顔面から激しく叩きつけられた薊は、もはや自慢の長い髪を弄ぶ余裕すらなく、血反吐を吐きながら無様に這いつくばっていた。
禍々しかった漆黒の衣装はズタズタに引き裂かれ、そのナルシストな面影はどこにも残っていない。だが、奴の瞳の奥に宿るどす黒い怨念の波形だけは、未だに狂暴な光を放ち続けていやがった。
「おのれ、平安の末裔どもが……! だが、私のコレクションはまだ終わらない……!」
薊が震える指先で再び血の印を結び、床に転がっていた髑髏の残骸から最後の怨霊を無理やり引きずり出そうとした、まさにその瞬間だった。
「……はぁ、往気悪いわ。もう喋んなや、痛い奴」
俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、掌の中でカチャリと冷たい金属音を響かせながら、気怠そうに薊の目の前へと歩み寄った。
そして、奴が次の呪文を紡ぎ出すよりも早く、右手の指先から放った騰蛇の黒紫の業火を、その這いつくばる胸元へと容赦なく、真っ正面から叩き込んでやった。
――オガァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
最後の悪あがきごと、薊の存在そのものが分子レベルで一瞬にして焼き尽くされ、路地裏の冷たい夜気のなかに、チリ一つ残さず完全消去されていく。
学園の怪談騒ぎから、九州の睦会、そして日本一の菱王会すら巻き込んだこの街の最大の歪みが、今度こそ根こそぎタスクキルされた瞬間だった。
「――晴明先輩、終わりましたね。……これで、奴の持っていたすべての遺留品が確保できました」
立ち込める硝煙の向こうから、有世が静かに歩み寄り、薊が消え去った床に残されていた不気味な文様の電子端末と、血に汚れた古い巻物を迷いなく掴み取った。
有世はそのシャープな瞳のまま端末の画面を鋭く叩き、すぐに俺と博雅、そして道満の三人に向けて、暴き出したばかりの真の裏データを差し出してきた。
「睦会や教頭、これまでの残党をすべて裏の回線で動かして、奴が本当に狙っていた神戸の真のデータ……。その全貌が、このなかに暗号ログとして残されています。奴らの次の陰謀は、この神戸の地脈を丸ごと売り渡すどころか……」
有世のその言葉が静まり返った路地裏の空間に響いた瞬間、博雅が低く腕を組み、道満も冷たい缶コーヒーを握る指先に、再び冷徹な緊張感のコードを走らせた。
「……ハッ、上等やんけ。どこの誰がどんなメインプログラムを走らせてこようと、俺たち掃除屋がやることは一つしかないやろ」
俺は深くタバコの煙を吐き出し、消えかけた街灯りの向こう側、完全に静寂を取り戻した神戸の夜のストリートを、鋭い最高管理者の瞳のまま見据えてやった。
コレクターの党首という最大のエラーを片付け、今度こそ一件落着だと思った途端にブートされる、世界の真の本編。
新生徒会を乗せた俺たちのストリートのタイムラインは、ここから西日本の裏社会全体を丸ごとオーバーレイしながら、さらに狂暴にクロックアップしていきやがるんだ。




